■一覧に戻る
■ページ指定
■別話を閲覧する
■感想を見る・書く
マブラヴ 転生者による歴史改変
12話
(マブラヴオルタネイティヴ)
  [→]  【PAGE 1/3】
 「違うぞ、まりもん。気を周りに同化させるんじゃなく、自分に集中させるんだ。自分を世界に見せつけるんだ、俺はここだと主張するんだ、世界の中心で愛を叫ぶんだ!」

 「隆也くん、またわけのわからないこといってる…」

 というわけで、絶賛気の使い方講習中です。
 ちなみにまりもは気を周囲の波長に同化させるセンスが優れているようで、放っておくと周囲の気に溶け込んでおれでさえ見失ってしまう。
 なんかおかしいな、と思ってよくよく見ると特殊技能に『気配同化』が追加されていた。状況から察するに、体内の気と周囲の気との調和を図ることで取得が可能なようだ。でもこれってある意味暗殺者向けの技能だよな。
 だが大切なのは己の気を高めることだ。これには自己をしっかりと持つことが影響してくる。
 つまり個としての意識が強ければ強いほど、一人の人間であることを意識し、おれはおれだと大声で叫べるものほど気は強くなっていく。
 というわけで、レッスン1、自己主張しよう、を実践中なのだ。

 「さあ、まりもん、リピートアフタミー、おれってストロングだぜー!」

 「えー?なんか馬鹿みたいでやだ」

 言うに事欠いて馬鹿見たいと言いやがった。おのれまりもんめ。

 「いいだろう、そういうことを言うやつにはそれ相応の報いを受けさせるのもまた、師匠たるおれの努め。そう、心を鬼にしてまりもんを鍛え上げてやろう」

 「なんかすごく嫌な予感がしてきたよ…」

 まりもが不安そうな顔をしたが、時すでに遅い。おれの怒りは有頂天、もはや何人たりともおれを止められないぜ。

 「ふふふ、謝るなら今のうちだぞ、まりもん。許しを請うのなら、おれにも憐れと思う心が芽生えないこともないぞ?」

 「そうやって謝って、許してくれたことってあったっけ?」

 「あれ?なかった?」

 こくり、と頷かれてしまった。あるぇ?そうだっけ?うーん、そう言われてみれば、そうかもしれんな。

 「わかった、それじゃ、まりもんには諦めてもらおう」

 「ふえええ、やっぱりそうなるんだ」

 半泣きのまりもを眺める。いやあ、実に心温まるやりとりだな。
 え、全然そうは見えないって?うん、実はおれもそう思う。

 「というわけで、まりもんの心をえぐる逸話シリーズその1。まりもんは去年の冬におねしょで敷き布団に世界地図を描いてしまいました、ええ、それはもう見事なまでな世界地図でした!」

 「ええ!?ど、どどど、どうしてそれを隆也くんが!?」

 ふふ、慌てておるわい。日々のまりもの健康チェックの成果がまさかこんなところで日の目を見ようとは。
 ん?誰だ、今そこでストーカー乙、とかいったやつは。
 いいか、これはおれの親心だ。まりもがいつも健康でいられるように、と常に気をつかっているのだ。決してやましい目的などではない。
 ストーカーなどとは違うのだよ、そう、いわばこれは真なる心、すなわち真心なり。

 「ふふふ、慌てるでないぞ、まりもんよ。おれのまりもんの心をえぐる逸話シリーズは108まであるでな」

 「っっっ隆也くんのばかーーー!」

 恥ずかしさと怒りの混じった真っ赤な顔のまりもから強烈な気が吹き付けてきた。と思った瞬間、おれは空を飛んでいた。
 何を言っているのかさっぱりわからないと思うが、これは事実だ。
 まあ種を明かすとまりもが羞恥と怒りのあまり感情を暴走させて、おれに向かって気を放ったわけだ。
 むう、まだまだ精進が足りんな。この程度のことで心を動かされるとは、なんのための精神鍛錬だったのだ。
 これは今一度まりもの精神修行をする必要があるか?
 そう、あのおれの心の中に眠るSっ気を微妙にくすぐるうれし恥ずかしい修行をもう一度。
 うん、悪くない、非常に悪くないぞ。
 などと思考する間に、おれの体は落下を始めている。

  [→]  【PAGE 1/3】

■感想を見る・書く
■別話を閲覧する
■ページ指定
■一覧に戻る