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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史改変の章その2
(マブラヴオルタネイティヴ)
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 ここ帝国軍技術廠で一番忙しい人物は誰が、と問われると、10人中8人は彼の名前を挙げることだろう。

 その彼の執務室に軽快なノックの音が響く。

 「小塚技術中尉、よろしいですか?」

 「構わない、なんだ?」

 執務机の上には山のような書類が積まれており、彼はその中に半分埋もれるようになっていた。だが返す声も、その態度も毅然としたものだ。
 書類仕事のせいで疲れがたまっていようが、帝国軍人としての矜持がそれを表に出すことをよしとしない。
 帝国軍技術廠きっての堅物との風評に偽りはない。よく言えば謹厳実直、悪く言えば融通の利かない頑固頭。
 だが一部の者は知っている、それが単なる見せかけだけなのだと。帝国のためなら法に触れようがなんだろうが手段は問わない、清濁併せのむ合理的な思考の持ち主だと言うことを。

 「はっ、先日ロールアウトした『撃震』の稼働データを持って参りました」

 「ごくろう、悪いが見ての通り多忙でな。簡単な口頭での説明を頼みたいのだがいいか?」

 「はっ、了解いたしました」

 技術士官からの報告は、小塚の予想の範疇だった。それを確認できた小塚は、技術士官に山積みになっている資料の上に持ってきた資料を置くように指示した後、退出を促した。

 「まさか本当に5%の性能向上が見られるとは。柊町か、彼の地には魔物でも住んでいるのか?いや、帝国を守護する神獣か?」

 ぼつりつぶやく小塚に届けられた報告は、主要部品全てを柊町の工場で作らせたものを使用した撃震の機能評価についてだった。
 以前技術者たちの報告にあった通り、従来の撃震に比較して5%の性能向上。
 その下地作りととして、最重要部品にのみ絞ったが、柊町産の部品を使用した撃震を作成、その評価運用を行った結果が、今小塚が埋もれている書類だった。
 既存撃震と比較して3%前後の性能向上。
 ある者は驚喜し、ある者は否定し、ある者は半信半疑という実に微妙な反応で受け止められたこの結果をもって作成された、柊町で生産される部品の精度の高さ、品質の良さを証明するための資料作成、その実地検証について報告書。
 小塚の半年はこれらの処理をひたすらに行うためのものだった。
 しかも部品の制作場所については、機密扱いという普段なら考えられない処置を持ってだ。

 これについては、軍需産業、彼らからのバックアップを受けている技術将校から一斉に批難の声が上げられた。
 ようするに、出所も確かに証せない部品を使用するなど言語道断、だの、量産体制が整っていない一品物の部品を使って性能をごまかしている、などだ。
 彼らの思惑は分かっている。出所さえ分かれば生産地の工場に対して自身のもつ強大な権力を持って介入。その後は技術を搾り取るだけ搾り取って、その成果を自身たちが作り出した物だと言い張るつもりだろう。恥も外聞もない、権力と欲望にまみれた連中、それが小塚の抱く彼ら軍需産業およびそれをとりまく技術将校たちへの評価だった。人類存亡の危機が間近にせまっていながらもなお、この浅ましいまでの自己中心的な言動。
 そのためにも、制作場所については機密扱いせざるを得なかった。
 柊町が持つ潜在能力、つまり未来の可能性を、その場その場の損得でしか物事を判断できない金の亡者につぶさせてはいけない。これは小塚の判断でもあり、彼の直属の上司の判断でもあった。
 加えて理由はもう一つある。
 鎧衣左近主任の忠告だ。

 「物資の精度向上、これは確かに工作機械の性能向上の恩恵ゆえですよ、小塚中尉。そこにはあの大国の思惑も、その他の政治的な思惑も一切絡んでいない。それは自信をもって証言できます。だがならばなぜ、このような劇的な工作機械の性能の向上がなったのか?天の女神の贈り物か、はたまた地の魔神に対価を差し出して引き出した物か。答えは簡単ですよ、その中心には一人の人物がいる。その人物がは我々の埒外にある人物であり、今回の騒動の元凶とでもいうべき人物です。ですが今は私の口から言えることはただ一つ、あの地へのうかつな干渉を行うな、ですな。元凶となった人物はとにかく面白い、だが面白いが故に予測が付かないのですよ。従って今は静観するのが正解でしょう」

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