■一覧に戻る
■ページ指定
■別話を閲覧する
■感想を見る・書く
マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史改変の章その3
(マブラヴオルタネイティヴ)
  [→]  【PAGE 1/3】
 広大な空間には、汗の臭い、油の臭い、そして火薬の臭いが漂っていた。
 ここ帝国軍技術廠13特殊実証実験部隊所属の工房には、静かな熱気が漂っていた。
 ここにいるのは、いずれも帝国軍においては異端児。
 むろん、世間一般で言うところの異端児ではない。
 すなわち、常に最先端の技術を、常に最高の技術を、どん欲に、国、人種などというくだらないものに捕らわれることなく追求するものたちの集団、それが彼らである。
 通常に考えれば、実に合理的な考え方である。常に最新を求めてなにが悪いのか?常に最高を求めてなにが悪いのか?
 その彼らを異端児と言わざるを得ないその答えは、彼らの置かれた政治的、軍事的な立場にある。
 今の帝国軍でもっとも権勢を誇っているのは国粋主義者たちである。
 日本こそ至高、それ以外はとるにたらない。
 己の持つ価値観こそ全てであり、外からもたらされたもはなすなわち、愚劣である。
 実に稚拙な考えであり、実に狭量な思想である。
 思い出すがいい、愚かなるものよ、戦国の世、鉄砲を伝えたのは誰であったか?
 記録を紐解くがよい、盲目たるものよ、閉塞に満ちた封建制度に風穴を開けたのは、なにものであったか?
 思い知るがよい、無知蒙昧たるものよ、今世界の先端を走る兵器を作り出したのは、いったいどこの国であったか?
 故に祖国への忠誠よりも、より優れた技術を求める者たち、国粋主義者なぞくそくらえ、そんな者たちがつどうのが帝国軍技術廠13特殊実証実験部隊である。
 誰よりも技術にどん欲で、誰よりも新しい技術をもとめる者たち、ある意味この技術廠の中ではもっとも優れた者たちである。
 そんな彼らはしかし、軍からは煙たがられ、技術廠からは厄介者あつかいされる始末であった。
 だがしかし、捨てる神あれば拾う神あり、いまここに彼らをして刮目せざるをえない事態がおこるのであった。

 「さて諸君、諸君らは爪弾きものの集団である。だが同時に最高の技術者である」

 小塚技術中尉の小気味よい演説が工房に響き渡る。

 「ここに、諸君たちの知的好奇心を満たすものがある。諸君たちの飽くなき探求心を刺激するものがある」

 キャットウォークから居並ぶ精鋭たちを睥睨する。そこに見下す感情はない。ただただ、憐れみがある。
 その憐れみこそが、自身が受けた衝撃を彼らが受けてしまうことに対する憐憫であることに気づくものは当然いない。
 当たり前だ。技術者が新しい技術に衝撃を受けるのまでは理解できても、理解の埒外にある技術にぶつかった際に受ける衝撃、それについて痛いほど知っているのは今のところ小塚だけなのだから。

 「当然これには守秘義務が伴う。それも謹慎、懲戒免職、そんな生やさしい処分ではない。すなわち、己の命を対価とする処分である」

 小塚の言葉にも、熱狂は醒めることなかった。むしろさらにその度合いを増していく。
 それほどまでの技術とはなんだ?それほどまでの新しいものに我々は触れることが出来るのか?
 技術者としての至極当然の反応。
 誰一人ともこの場を離れようとするものはいなかった。
 小塚はそれを小気味よいものと捉えていた。そしてその反面、彼らをいかにして一刻も早く立ち直らせることができるかを思案していた。

 「まず諸君らに見せるのは「真・近接戦闘長刀」と仮称している、近接戦闘長刀だ」

 スポットライトが、工房の奥に置かれていた「真・近接戦闘長刀」に浴びせられた。
 今までの近接戦闘長刀とはことなる、日本刀を思わせる優雅なフォルム。皆の口から感嘆の声が漏れる。そして同時に、疑問の声も。

 「あんな形状で実戦に耐えられるのか?」

 「見た目だけは大したものだがなあ、あれじゃ、実戦には不向きじゃねえか?」

 なるほど、見た目だけはそうだろう。

  [→]  【PAGE 1/3】

■感想を見る・書く
■別話を閲覧する
■ページ指定
■一覧に戻る