■一覧に戻る
■ページ指定
■別話を閲覧する
■感想を見る・書く
マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史介入の章その1
(マブラヴオルタネイティヴ)
  [→]  【PAGE 1/3】
 帝国の政治情勢は混迷を極めていた。
 国産の最新鋭兵器群、最新技術の粋を集めた試作型戦術機の製造、それにより声を大きくし始めた国粋主義者たち。
 米国の密命を帯び、その技術の出所を探ることで息を吹き返すことを目論む親米派たち。
 同じ日本人同士でありながら同床異夢を体現する愚か者たち。
 そんな中にあって、引き裂かれた双子の思いにわずかでもでも応えようとする煌武院家に縁浅からぬ者たちの思惑。
 そんな絡み合った構図の中で、今回の物語は始まる。



 「了解、作戦を中断し、至急本邸に戻る」

 無線に答える声に、少女は絶望が胸を満たすのを感じた。

 光と影。
 煌武院家に生まれた二つの命は、その伝承により、生まれた瞬間から運命を分かたれた。
 ひとつは光を司る名の下に、表の世界から様々な者たちの盛大な祝福を受けながら。
 ひとつは影を司る名の下に、裏の世界の事情をしるものたちからささやかな祝福と憐憫を受けながら。

 それがまみえるはずだった。
 ほんのわずか一時でも、分かたれた二つの宿命が交差するはずだった。
 少女は、生まれて未だに一度も見たことのない自分の半身を思って、心躍らせてその時を待っていた。
 たった一瞬。わずかな時間。
 それだけで十分だった。本来ならば決して交わることのない、二つが、たとえわずかと言え出会うことが出来る。少女は、それが如何なる奇跡の元に可能なのかわかるほどに聡明だった。
 その思いが無残にも引き裂かれようとしていた。
 ゆえに、普段なら少女は自分が思いもしない行動に出た。
 乗っている自動車が停車した一瞬、左右を挟む護衛の間をするりとくぐり抜けて、自動車の扉を開け放ち、外へと飛び出したのだ。
 凄腕の護衛たちの脇を抜ける、それがいかに困難なことかを少女は当然知らない。しかし、現実にそれは起きた。
 慌てて追いすがろうとする護衛の行く先を、疾走する車の列が阻む。
 車列がなくなり、追いすがろうとした護衛達の目に映ったのは、人通りのない路地だけだった。

 そこに因果律の干渉があったのか、それは定かではないが、そもそも彼女たちの邂逅は因果律により定められていたものだ。ならば、干渉がないと思う方が不思議だろう。
 そう、そこにある要素を持つ人物が絡んでこなければ、誰もがそう思っただろう。

 「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 全力疾走を続けた足はすでに悲鳴を上げている。呼吸においてはもはや真冬の日本海なみの荒さだ。
 それでも少女は足を止めない。本来であれば車で悠々と乗り付けれていたであろう邸宅に向かって。
 そうなった経緯は至って簡単だった。煌武院家を支えるものたちが善意で取り付けた、分かたれた双子の邂逅、その日に奇しくも「試作型撃震・弐型」のお披露目会が行われた。そのために各国の諜報員がこの帝都にこぞって結集してしまったのだ。
 煌武院家はおろか、将軍を筆頭とする組織にとって、対外的に秘事の一つと言える双子の存在。
 それを感づかせるわけにはいかず、運命の再会は急遽取りやめとなった。このことにより、二つに分かたれた運命は二度と交わることはなくなったであろう。本来であれば。
 だが本来の流れ、すなわちAL支配因果律において、双子の少女の邂逅は絶対であった。行われた因果の介入により、少女は本来厳重であるはずの護衛を難なく交わし、無事に脱出を行うことが出来た。
 そこまでは本流通り。因果の支配のうち。
 だがしかし、ここに絶対的な違いが起こる。すなわち、

 「あっ」

 足を躓かせて転ぼうとする少女。それをすばやく抱き留めてすくい上げた者がいる。

 「おいおい、大丈夫かよ、お嬢ちゃん。あ、心配するなよ、おれは紳士だからな。幼子に危害を加えるようなことはしないぞ、絶対にな。ん?」

 立花隆也、「因果律への反逆」を持つ者の介入である。

  [→]  【PAGE 1/3】

■感想を見る・書く
■別話を閲覧する
■ページ指定
■一覧に戻る