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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史改変の章その5
(マブラヴオルタネイティヴ)
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 「第1小隊、おまえらは下がって補給を受けろ。第2、第3小隊、真・120mm滑空砲で突撃級を寄せ付けるな!」

 周囲に立ちこめる粉塵は、戦術機の操縦席にまでは回ってこない。
 画面越しに戦況を眺める、そんな気分に小塚は陥っていた。


 崩壊は唐突だった。
 最初は前線の統一中華戦線部隊の側面支援を命令として受けて、それを淡々とこなしていた。
 気がついたら8分はとうの昔に経過していた。
 向かってくるBETA相手に獅子奮迅の働きを見せる統一中華戦線。
 それを誇らしくも思い、またうらやましくも思う。
 人類の仇敵であるBETA、その最前線で戦う彼らのその姿。同じ軍人として、また人類の一人として、羨望を抱かざるを得ない。
 それが小塚たち、帝国軍大陸先遣隊第13中隊の面々の思いだった。
 だがそんな小塚たちの思いを吹き飛ばすように、それは起こった。

 コード991発生。

 BETA進行を真っ向から受ける統一中華戦線部隊のその側面に、BETAが出現しようとしたのである。

 「全機緊急回避、出現予定地点から距離をとれ」

 小塚の命令が中隊全員に行き渡る前に、地面が噴火した。
 それは、そうとしか表現出来ない現象だった。
 もうもうと立ちこめる粉塵のなか、その異形たちはたたずんでいた。

 「撃て、撃ちまくれ」

 小塚の命令は悲鳴に近かった。だが、訓練された彼らは敏感に反応した。
 手にした『先行量産型真・36mm突撃砲』をおぼろげに浮かび上がる異形に向け、トリガーを引き絞った。
 小気味よい炸裂火薬のはぜる音を聞きながら、小塚の思考はようやくいつものそれへと切り替わっていった。

 初手はよし、次は遠距離からの120mm弾のシャワーか

 WS−16Bと違い、こちらの『先行量産型真・120mm滑空砲』は弾数が桁はずれだ。それを弾幕代わりに打ち込めば、いかにBETAといえども、その進撃を停滞せざるをえまい。
 問題は、後方支援装備の1個小隊以外は、1つしか『先行量産型真・120mm滑空砲』を装備していないことだが、こちらはWS−16Bとは違いマガジン装填式だ。補給速度は以前に比べて雲泥の差だ。
 旨く後方支援装備の第1小隊と連携を取れば何とかカバーできる。

 「第2、第3小隊は真・36mm突撃銃で弾幕をはれ。その隙に第1小隊は真・120mm滑空砲で確実に相手をし止めろ」

 シミュレーター上では、従来の36mmでは不可能だった突撃級の足止めを、『先行量産型真・36mm突撃銃』では行えるようなっているはずだった。
 そして、『先行量産型真・120mm滑空砲』にいたっては、正面から突撃級を仕留めることさえ可能になっていた。

 「ちっ、着弾の噴煙で視界がきかんか。全員、光学視界から赤外線に切り替えろ!」

 「了解」

 赤外線で得られる情報を元に、各小隊が適切なフォーメーションを組み、適切な打撃をBETAに与えていく。

 「レンジャー1より、CP、レンジャー1より、CP、聞こえるか?」

 「こちらCP、回線感度は良好です。なにか?」

 竹中中尉のいつもの涼しい声が聞こえてくる。
 小塚の熱くなりすぎた頭も、少しは冷える思いがするほどだ。

 「俺たちが支援していた統一中華戦線の部隊は無事か?」

 「ええ、もともとレンジャー中隊の支援をあまり当てにはしていなかったようですし、大して動揺もなく作戦を続行中です」

 「そうか、なら、あとはおれたちがこの鉄火場を乗り越えればいいだけだな」

 「ええ、そうですね。全員分の戦勝祝いを用意しています。大尉には欠員を出さないよう、指揮をお願いいたします」

 「ちっ、軽くいってくれる。了解、わかった、当てにせずに待っていろ」

 とりあえずこちらの支援が途切れることで肝心要の戦線に影響がないことは確認できた。ならば後は、自分たちの生存を第一に考える。

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