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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史改変の章その7
(マブラヴオルタネイティヴ)
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 「これはこれは小塚外交官、どうされました?」

 「いえ、少し酔ったようです」

 「それはそれは、少しお休みになってはいかがですか?」

 「ええ、それではお言葉に甘えて」

 小塚一郎外交官、在米日本帝国大使館の一員は、壁際に並べられたイスに腰掛けた。
 まったく、どうにかならないものか。
 小塚は心の中で愚痴っていた。ここ連日催される晩餐会、いずれも米国の誇る兵器開発企業が表で、裏で絡んでいるものばかりだ。
 目的は分かっている。
 1987年に全世界に向けて発信された試作型撃震弐型、その技術を巡る謀略の一つの姿に他ならない。
 自分は弟たちとは違って、技術分野については詳しくはないが、まわりの様子と配られた資料からそれがいかに帝国に莫大な利益をもたらす物かは推測ができた。
 管制ユニットについては今まで米国産のものが世界共通のものととなっていた。それが、撃震弐型の管制ユニットは従来の管制ユニットをはるかに凌駕する性能を持っていたのだ。
 当然各国はこぞってその情報開示を日本帝国に迫った。米国などは、露骨に国連の影響力を利用してきさえもした。とうぜん誰もが一悶着起こると予想しただろう。だがそれを裏切って、日本帝国はあっさりとそれを了承したのだ。
 理由としては、全世界の衛士の生存率を向上させるために、有効な技術は安価に提供する、という大義名分だった。
 それにより日本帝国の国際発言力は飛躍的に増した。対照的に、高いライセンス料をむさぼってきた米国に対する風当たりは当然強くなる。
 おかげで、この手の催し物を隠れ蓑にした、米国企業からの接触が後をたたない。
 正直自分は外交官には向いてはいないのだ。とはいえ、将来的に政治家を目指すためには諸外国とのやりとりのノウハウは必要になってくる。これも来るべきその日のための修行と思って小塚一郎はあきらめにもにた心境で現状を受けいれることにした。

 「これも公務か、致し方なし」

 再び立ち上がり、晩餐会の中へと泳ぎだしていく。それを迎えるのは、獲物を狙う目をしたハゲワシども。
 さてさて、たかだか一外交官たる自分を狙ったところで引き出せる物はたかがしれているというのに。それだけ必死だと言うことか。
 冷静に分析しながら、気持ちを切り替える。相手がハゲワシだからといって、やすやすと欲しい物をくれてやるわけにはいかないのだ。いかに相手から相応の対価を引き出すか、そしていかにこちらの手札を出さずにすむようにするか。
 駆け引きというなのゲームは、まだ始まったばかりだった。



 「CIAはなにをやっていたのだ!86式兵装のせいで、兵器部門の収益が下がっている今日、戦術機の核となる管制ユニットの技術までも、先を取られるとは。しかも、なんの情報もなしに突然の発表だ!これは情報統括部門の怠慢にほかならないのではないのか?」

 「いえ、ですから何度も申し上げているように、あの国の技術廠は実に閉鎖的なのです。しかも開発の主体となった13特殊実証実験部隊というのは、さらに閉鎖的な連中でして。いかに我々といえどもうかつには手出しできない部署なのです」

 「だが、だからといってこれだけのビッグプロジェクトだ、そのしっぽさえつかめないというのはありえん」

 兵器産業から多額の献金を受けているので有名な閣僚の一言に、CIA長官の目元にけいれんがはしった。
 そうなのだ、そこなのだ。他の議員は見落としているのか、意識的にわからないふりををしているのかはわからない。だが、これだけの完成度を誇る兵器、その開発過程が全く外部に漏れていないと言うことは実に異常な出来事だった。
 まさに突然虚空から現れたとしか思えない兵器群の数々、そして自分たちの常識をあざ笑うかのような新機軸の改良を施されたF−4、いやこの場合は撃震弐型といったほうがいいか、これらの出現には実に不条理なことが多く存在した。

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