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マブラヴ 転生者による歴史改変
22話
(マブラヴオルタネイティヴ)
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 BETAの駆逐にかかったのは実に3分弱。
 全力のおれに対して、小型種BETAどもは少々物足りない。
 BETAの反応が完全に消えたのを確認して、生存者の救出にかかる。
 だが、気の反応から察するに、状況は絶望的だ。
 周囲を見渡すと、上半身が半分欠けた人間の死体、地面に叩きつけられたまま絶命している死体、人間の形をかろうじてとどめている物体とした表現できない死体、死体、死体、の山だ。
 それでも三人。まだ生きているんだ。
 急いで救出を行ったのだが、正直に言おう、手遅れだ。
 ここが最新医療設備の整った病院であればなんとか、というレベルの重傷を負った3人を地面に横たえる。
 一人は中年の男性、右肩から先がむしり取られている。決定的に血が足りない。止血もここまで主要な血管が破壊されていては、無理だ。むしろよく今まで生きていたなと感心するほどだ。
 一人はまだ若い、17〜8の少年。こちらは打撲による内臓破裂。しかも致命的なことに肺に肋骨が刺さっているようだ。これも即死しておかしくない状態だ。
 最後は妙齢の女性、左足が付け根辺りからごっそりとなくなっている。失血性のショック状態でこちらもいつ死んでもおかしくない。
 歯がゆい。
 技術はある、経験もある、知識もある、なのに道具がない。そのせいで手も足もでない。
 なんためにおれは今まで技術を磨いてきたのだ。まりもを助ける?そう、その通りだ。だがまりもが危機的な状況に陥ったときに、道具がありませんでした、ですむのか?
 そんなこと許せるはずはない。
 ならばどうする?答えは簡単だ。今のおれに出来る全力を尽くす。
 優先順位、ブラックラベルをつけるのと同じ順番で死亡確率が高い人間を選別。
 1位はおっさん、2位は少年、3位は女性。
 いいだろう。因果に抗うものの抵抗を見せてやる。
 気による人体の活性化。それは自分の身体で証明済みだ。ならば、それを他人に施せばどうなるか?
 答えは、気の性質の違いによる拒絶反応、それが極端に出た場合が爆発という現象だ。
 だが逆に気の性質を合わせてやればどうなるか?気の贈与、気による体内器官の活性化。病気、外傷により弱っている体の治癒さえも可能になる。
 まずは相手の気の性質を分析、与える気の性質を合わせる。脳内シミュレーションでは何度となく行っている作業だが、さすがに本番は緊張する。
 最初はおっさんだ。
 気による同調。血管の癒着、傷口をかさぶたで覆う。臓器に気を流し、無理矢理造血を促す。おれの気により無理矢理強化された臓器は、その無茶な要求に応えた。
 おっさんの顔に血の気が戻っていく。
 それと同時に少年の治療も行う。
 並列思考様々だ。
 内臓破裂系の処理は困難を極める。なぜなら臓器が破裂して元の形をとどめていないからだ。おまけに胃腸なんかが破裂すると内容物が体内にぶちまけられてしまう。
 ではどうするか?
 答えは意外と単純だ。
 右手でおっさんに気を送り込みながら、左手で少年の腹をかっさばく。
 盛大に出血するのを横目に、絶妙に制御された気を腹の中にぶち当てる。要するに生理食塩水で洗浄するところを、気で代用したわけだ。
 直接手を傷口に突っ込んで肺に刺さった肋骨を抜き取ると、すぐさま傷口を押さえ込み、少年用に調整した気を送り込む。
 傷口の癒着、損傷した臓器の回復。完全に元にはもどらないが、とりあえず命の危機を脱するのには十分だろう。
 最後の女性に取り掛かる。
 こちらは意外と簡単にことはすむ。もともと失血によるショック状態なので、傷口の修復、造血も気により無事終了。
 こうやって考えると、気ってのはすごいな。このあいだようやく脳内シミュレーションで気の検出に成功したけど、これは最優先で解析すべきだな。

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