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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史改変の章その8
(マブラヴオルタネイティヴ)
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 「それで、調査結果は?」

 ラングレーの中でも、もっとも厳重な防諜対策が施された部屋。
 その中に響く声にはいらだちが籠もっていた。
 それに気づいたのか、報告を告げるためにこの部屋を訪れた男の顔に怯えが走る。

 「いえ、それが進捗ははかばかしくなく…」

 「ふざけるなっ!」

 大きな声が響く。声を出したのこの部屋の主、CIA長官だ。
 その苛立ちの原因はひとえに、日本帝国の軍事技術の諜報活動に関する報告によるものだ。
 日本帝国の軍事技術部門への諜報活動の強化を命じ、巨額の予算と人員を割いて得られた結果が、進捗がはかばかしくなく、の一言なのだ。CIAの面目丸つぶれである。

 「いったいお前達極東支部へ、どれだけの資金と人員をつぎ込んだと思っているんだ!それが進捗がはかばかしくない、の一言ですまされると思っているのか!」

 「も、申し訳ありません。ですがまったく動きがないのです。あの帝国軍技術廠13特殊実証実験部隊は異常なのです。特にそのトップに位置する小塚三郎技術大尉については、もはや天才か、奇才かとしかいいようがありません」

 「どういうことだ?少しはまともな弁解を聞かせてもらえるのだろうな?」

 長官は冷静さを取り戻すように大きく深呼吸をし、自らの席である長官用のイスに座り直した。

 「は、ここ数ヶ月の調査内容から察するに、日本帝国における開発の成果はこの小塚三郎技術大尉によってもたらされたものと考察されます。」

 「なにを言うかと思えば気でも狂ったか?たった一人の人間にできることなどたかがしれている。それにだ、実戦検証はどうなのだ?その動きすら貴様らは掴めていないではないか!」

 「それが、先ほど報告した内容の意味です。『特にそのトップに位置する小塚三郎技術大尉については、もはや天才か、奇才かとしかいいようがありません』これは比喩でもなんでもなく、事実です」

 「どういうことだ?」

 意味が分からない、といったCIA長官の顔を見て、さもありなんと報告を行った男は頷いた。

 「つまり全ての開発を小塚三郎技術大尉が行っていると言うことです。しかも、実施検証なしに」

 「バカな!ありえん。そんなことが可能な人間いると、本気で思っているのか!?」

 「落ち着いてください長官。我々もそれについてはさんざん議論してきました。ですが、その議論の結果、もたらされた結果こそが今報告した内容なのです」

 事実、彼の元に集まった資料はそのことを裏付けていた。突然湧いて出てきたような技術は全てこの小塚三郎技術大尉が発信源となっている。しかも彼は自身の執務室に閉じこもって作業を行っている。極秘裏に外部との連絡を取っているのではとの推測の元、様々な諜報活動を行ったが結果はシロ。彼は独力で今までの技術を開発したことになる。実地検証さえせずにだ。
 ここまで条件がそろえば、もはや疑いようがない。彼は天才だ。いや、天才という言葉さえ彼には生やさしい。奇才、そうまさに奇才としか言いようがない。
 そのことを一心に訴える男の様子に、長官の険しい表情も徐々にだが和らいでいく。そう、彼は小塚三郎技術大尉と言う男が、人類史上まれに見る奇才と認識したのだ。
 当然この会話を本人が聞いたら、即座に否定することは間違いない。だが、客観的事実は彼らの言うとおりであった。
 どの諜報組織の網にも引っかからずに警戒厳重な技術廠に自由に出入りする所属不明の少年の姿など、完全に彼らの思慮の埒外であった。

 「それほどの男を、日本帝国は従えていると言うことか。どうにかならないのか、その男?」

 「は、兄弟が他に二名おりますが、両者とも帝国に深く関わっているため、容易に手出しはできない状況です」

 「女はどうだ?」

 「それが、あまり興味を示さないようで。色町に出かけたという報告はありますが、特定の個人に入れあげているという報告もありません」

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