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マブラヴ 転生者による歴史改変
25話
(マブラヴオルタネイティヴ)
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 「ねえ、隆也くん、最近なにかあったの?」

 「え、まあ、あったといえば、あったかな。よくわかったな、まりもん」

 「ふふ、隆也くんのことなら、大概のことはわかるわよ」

 茶目っ気たっぷりに笑うまりもん。

 「まあ、付き合いが長いからな」

 ぶっきらぼうに答えるおれ。
 BETAとの初めての実戦を経験した直後の、まりもとの訓練。
 どうやらにまりもはおれの様子に気づいたようだ。さすが腐れ縁、というべきか、それとも恐るべし女の勘、と言うべきか。
 ちなみにこの間確認したら、女の勘がLV4になっていた。どこまであがるんだよ、一体。
 おれ自身も自分の変化はある程度自覚している。なにせ、本物の実戦を経験してきたのだ。
 そして、実際にBETAに蹂躙される人々を見てきた。生きたまま食われる人、括り殺される人、吹き飛ばされて全身を強打して死ぬ人、様々な人々の死を見てきた。
 今までだって死んでいく人間はある程度見てきた。寿命で死ぬ人、事故で死ぬ人。病院に入り浸っていると、その程度は慣れたものだ。
 だが、戦場での死はまた違っていた。不条理に挑んで、不条理に死にゆく人々。死を覚悟しながらも、死を恐れ、そして死んでいく人。
 誰が言ったか知らないが、本当に戦場ってのは地獄だ。あの凄惨な悲鳴は、耳にこびりついてなかなか離れない。それでも割と普通に生活できるあたり、我ながらあきれるところか。
 おれの中で何かが変わったとしても、それは仕方のないことかもしれない。いや、変わらなければいけないのか。そうでなければ、これから来たるであろう運命に抗うことなど不可能なのか?

 「大丈夫よ、隆也くん」

 静かなまりもの声がおれを思考の沼から引き戻す。

 「隆也くんは大丈夫。隆也くんは、隆也くんなんだから。だからそのままで大丈夫」

 まりもの瞳は真剣な色を浮かべていた。真剣ででもどこか安心させるような包み込んでくるようなその瞳を見て、おれは思考は明晰になっていた。

 「そうだな、まりもん。その通りだ。おれは、おれのままでいいんだ」

 「うん」

 「というわけで、まりもん、最近おっぱい大きくなってきたよな?やっぱあれか?自分で揉んでがんばって豊胸に励んだりしているのか?」

 瞬間、まりもの瞳の色が変わった。
 あれ?なんか失敗した?まりもの雰囲気が一気に豹変したよ?

 「あんた、相変わらずバカよね。まあ、アタシも安心したけど」

 後ろから夕呼の声が聞こえるが、そんなことはどうでも良い。今は目の前のまりもの怒りの気の方が問題だ。すでにそれは殺気に近しいまでのレベルになっている。
 身の危険を感じたとき、その声が響き渡った。

 「隆也くんの、すけべー!」

 「ぬぼぅ!」

 まりもの怒りの一撃に、言葉の通りに宙を舞うおれ。気の強化がなければ、頸椎骨折どころか、首から上が吹っ飛ぶ一撃だ。さすがまりも。おれの一番弟子だけはある。
 愛弟子の成長に喜びを覚えれば良いのか、それともその成長の成果を自分の身で試さないといけない不条理さに憤りを感じればいいのかよくわからないまま、おれは重力から解放された浮遊感を感じていた。



 正座って辛いよな?
 うん、おれはまりもの説教を小一時間正座で受けていた。ちなみに下は地面なんで、ごつごつと小石が当たって痛いことこの上ない。まあそれは、気による強化でごまかしているんだけど。それでも足のしびれはどうにもならず、おれはひたすら耐えていた。
 後ろでは珍しく夕呼が、武と純夏の勉強を見ていた。あの夕呼が年下の勉強の面倒を見るなんて、はっきり言って、明日は槍が降ってもおかしくない。
 でもどこか楽しげだな。案外夕呼に教師ってのもあってるのかも。

 「隆也くん、どこ見てるの?」

 「あ、いや、べつにどこも見ていません」

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