■一覧に戻る
■ページ指定
■別話を閲覧する
■感想を見る・書く
マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史改変の章その9
(マブラヴオルタネイティヴ)
  [→]  【PAGE 1/3】
 帝国軍技術廠、今や世界の兵器技術者達からもっとも熱い視線を浴びている名前である。
 そしてその技術廠を代表する一人の人物、小塚三郎技術大尉。
 兵器産業に従事する人間でこの名前を知らないものはもぐりとさえ言われる。
 そんな彼の執務室、その机の上には二つのファイルが置かれている。
 『量産型撃震弐型性能評価試験結果報告書』
 『次期日本帝国配備戦術機選考試験結果報告書』
 そう、1987年に世界に公開された試作型撃震弐型に、立花隆也の改良案に基づく改修を施した量産機が完成し、その性能評価試験が先日まで行われていたのだ。
 おまけに無謀なことに、それと平行して次期日本帝国の正式採用機トライアルへ撃震弐型を出していた。
 本来ならばあり得ない。性能評価と同時並行してトライアルに出すなど、もはや笑い話にすらならない。自殺行為といっていいだろう。
 だが、誰もその判断を下した小塚に意見をすることはなかった。
 撃震弐型に関わった者は、その性能に絶対なる信頼を寄せているが故に。小塚を知るものは、彼が無謀な賭など決してしないと知っているが故に。
 結果は、言うまでもない。
 小塚と撃震弐型はその周囲の信頼に応えたのだった。

 「第二世代以上、第三世代未満か」

 小塚の口から漏れるのは評価試験の内容だ。数値の上では確かに第三世代に要求される水準に達していないものが多くあるが、逆に第三世代の基準を遙かに凌駕している数値も幾つか見受けられる。
 パイロットへの負荷軽減、複雑な三次元軌道に対する各部位の耐久性および戦闘継続時間、武器の搭載量などだ。
 運用実績、信頼性、機種転換にかかるコストなどは、未だ構想段階の第三世代とは比べるべくもない。

 「実際のところ、準第三世代と言ってもいいほどの性能だな」

 評価試験の結果でも、第一世代の設計思想、重装甲による防御力重視の撃震の改修機とは思えないほどの高機動性をたたき出している。
 現に同時にトライアルを受けた第二世代の陽炎をすら凌駕するものだった。
 これほどの技術を、最初から高機動による回避重視の設計思想の第三世代への製作につぎ込めば一体どれほどの数値をはじき出すのか。評価試験に関わった技術者達の表情は非常に明るい物であった。ただ、耀光計画に参加している技術者たちを除いてではあるが。
 耀光計画、日本帝国軍がその威信をかけて取り組むビッグプロジェクト。国内でも有数の兵器製造業社、優秀な技術者を集めて、第三世代の戦術機を一から作成するというそのプロジェクトは、今暗礁に乗り上げかけていた。
 現場から上がってくる様々な要求、F−15に代表される第二世代の性能、そしていま新たに壁として立ちはだかる準第三世代ともいえる撃震弐型。
 耀光計画に関わる者たちは、最低でもこれらすべての条件をクリアする性能持つ機体を作り出さなければいけないのだ。その重圧は当事者にしか分からないが、相当な物だというのは想像できる。
 そんな彼らの中から、小塚三郎技術大尉へと協力を仰ぐ者がいても不思議はない。むしろそれは、必然とも言えることだった。

 「さて、どうするか。F−15の徹底的な解析、そして改修機である陽炎を作ることによる技術蓄積。それだけやってもまだ、下地としては足りないか。やはり第二世代以降のコンセプトに対する技術理解に根本的な問題があるな」

 問題はそこだった。撃震弐型に代表されるように、第一世代に対する技術蓄積はもはや日本帝国は世界でもトップレベルといっても過言ではない。
 いっそのこと第一世代のコンセプトをさらに発展させる方向で考えてはどうだろうか?
 高機動、高火力、高出力。重量級の装甲を持ってしてもそれを苦にしないだけの高速機動が可能な出力と起動時間を確保できれば、なんら問題ないのではないか?

  [→]  【PAGE 1/3】

■感想を見る・書く
■別話を閲覧する
■ページ指定
■一覧に戻る