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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史改変の章その13
(マブラヴオルタネイティヴ)
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1991年 晩冬 インド戦線

 「相変わらず倒しても倒してもうじゃうじゃと湧いて出てくる奴らだ。CP、第二中隊の奴らが、少し前に出すぎだ、第一、第三との連携をおろそかにするなといっとけ」

 小塚次郎少佐の張りのある声が、CPに待機する竹中大尉の鼓膜を心地よく震わす。

 「CP竹中大尉、了解しました。第二中隊の無能ども、隊長のお声が聞こえたのなら、さっさと連携を取れる位置にまでさがりやがれ、この駄犬が!」

 小塚少佐の命令通りに竹中大尉が第二中隊に向かって指示を飛ばす。なにやら小塚少佐が出した指示と本質的には同じでありながら、ひどく侮辱的な響きがするが気のせいだろうか。

 「あー、Eナイト1より、CP?」

 ちなみにEナイトのEはエンペラー、皇帝である。すなわち日本帝国の皇帝を守護すると言う意味合いのコードネームである。Gナイトという案もあったのだが、斯衛がうるさく言ってきそうだから、という小塚少佐の一言で没になった。
 実際のところ皇帝の方が位が高いのだが、将軍に比べて皇帝は雲の上過ぎて今ひとつなじみがないのが現状の日本帝国民である。

 「なんでしょうか、Eナイト1?」

 「俺、そんな過激な命令だしてないよな?」

 「小塚次郎少佐の意に反して動くような無能な中隊員は、本来なら我らが帝国陸軍大陸派遣第13大隊には存在しません。ですので、やつらの扱いは犬で問題ありません」

 竹中大尉の平然とした回答に、小塚少佐は彼女の機嫌の悪さを見てとった。
 原因は、あれだろう。本来なら今日は休日で、一日デートだったところをBETA襲来でパーになったことだろう。
 小塚次郎少佐、37歳。竹中冷子大尉、29歳。いつのまにやら結婚を前提としたお付き合いを始めていた2人だった。

 「いや、あの、まあ、ほら、あれだ。奴らだって、血気盛んな年頃なんだし」

 小塚少佐がフォローを入れるが、冷徹な表情でそのフォローを却下する竹中大尉。

 「だとしたらなおさらです。BETA戦での敵中孤立がどれほど危険なのかもわきまえない若造ごとき、犬以下です。それを御し得ない中隊長など、ゴミですね」

 「ひでぇよ姉さん、俺の方が階級は同じでも先任なのに」

 「だまれ、Eナイト2」

 「ひぃ、すいみません、直ちに連携を取り直します!」

 ただでさえ小塚次郎少佐が中隊を率いていたころからの熟練CPだ。それが今では大尉階級を持って、大隊のCPを担当している。
 古人曰く、お局様を怒らせるな、その後には不幸しか待っていない、だ。Eナイト2を冠する、第二中隊を率いる大尉はあっという間に白旗を挙げて、全面降伏をした
 軽くため息をついた小塚次郎少佐は、ここ数ヶ月での身辺の激変具合に思いをはせていた。



 きっかけはなんだったろう。
 確か、インド軍の要請を受けてインド戦線を主戦場とし始めた半年ほど前のことだろうか。
 小塚らしくもない、へまをやらかして、大けがを負ってしまったのだ。
 その看病に当たったのが竹中大尉だ。ちなみに帝国軍の派遣に伴い、大隊付きCPということで、竹中の階級は中尉から大尉に昇格している。

 「なんか、ずいぶんと甲斐甲斐しいな。もしかして、俺が好きだったりとか?」

 冗談交じりの小塚の言葉に、竹中は顔を真っ赤にしながら首を縦に振った。

 「え?うそ、ほんとうに?」

 「はい、小塚少佐が死ぬかと思ったとき、自分の心がようやく分かりました。お恥ずかしながら、恋をしたことがないので、気づくのに時間がかかったようです」

 などと恥じらった様子の竹中に、小塚は今までの長い付き合いの中でも感じたことのない女を見てしまった。
 それ以降、2人の仲睦まじい様子が隊内で頻繁に目撃される、といえば、そうでもなかった。
 竹中は基本、公私混同をしない。逆に2人きりになったときのギャップが凄いのだが、それは小塚だけの秘密だ。

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