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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史改変の章その16
(マブラヴオルタネイティヴ)
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1992 晩冬 アラスカ

 ロシア租借地としてロシアの支配下に置かれたアラスカ。
 その中にあって、特に厳重な警戒区域に立てられた建物がある。
 ソ連が世界に誇る偉大なる技術開発局が管理する建物だ。
 もっとも、自身が盛大に称える実績と世界からの評価が一致しているかどうかは甚だ疑問である。
 その一室。豪奢ではあるが、決して華美ではないその一室に二人の男がいた。
 一人は30代半ばの精悍な顔つきをしており、鍛え上げた肉体をソビエト連邦の軍服に包んでいる。ただ身に纏う雰囲気は、軍人と言うよりは、裏の仕事に手を染めた者特有の空気だ。
 一人は50代ごろだろうか。肥満体を絵に描いたような体つきをし、豪華イスに窮屈そうに身体を押し込んでいる。有り余る贅肉のおかげで、首が見えないほどだ。

 「では同志バザロフ、未だに日本帝国の撃震弐型の鹵獲は行えていないということか?」

 「はい。撃震弐型についての技術情報は、日本帝国が積極的に提供していることから問題はありませんが、肝心の実機となると入手は困難を極めます。ここは日本帝国と正式に技術提供交渉を行った方が良いのではないかと」

 バザロフと呼ばれた男の声は、前の豪華な席に座るでっぷりと肥えた男の声により打ち消される。

 「同志バザロフ、それは非常に問題だ。我々が東洋の猿に技術的に遅れを取っているのは耐え難い屈辱なのだ。その状況で、やつら相手に教えを請う?君には誇りというものはないのか?一度シベリアの最前線で自分を見つめ直してくることを薦める」

 「っ!申し訳ありません。口が過ぎました。ですが、このままでは、現在のジュラーブリクの強化プランの進捗に大幅な遅れが発生することは必至です」

 顔色を変えたバザロフが先ほどの失言をわびるのを、でっぷりとした男は粘つくような目で見つめていた。
 Su-27 ジュラーブリク、今年の配備が決定しているソ連の新型戦術機である。
 本来であれば、自信を持って世に送り出されるべき機体であったが、日本帝国の撃震弐型よりも配備が遅いにも関わらずに、有視界戦闘でのジュラーブリクと撃震弐型のキルレシオは5:1と決定的にまでに戦闘能力が劣っていた。
 この事態を憂慮したソ連上層部が慌ててジュラーブリクの強化プランを指示したのは当然の流れである。ちなみにジュラーブリクには、撃震弐型の技術はあまり採用されていない。
 唯一積極的に採用されたのが管制ユニット周りの技術だが、逆を言えばそれ以外は純国産品である。それはソ連の大国としての驕りであり、意地でもあった。
 その結果が、さきほど言ったような圧倒的な性能の差としてあらわれたのは皮肉としかいいようがない。
 現場においては早々に独自の改修による性能向上をあきらめ、撃震弐型の技術を採用することで強化を図ろうとした。日本帝国は人類の戦力の底上げとして、格安で技術提供を行っているが、表だって技術協定を結ぶことは上層部が許さない。
 困った開発部隊は、撃震弐型の鹵獲を画策したのだが、これが思わしくない。
 戦場での撃震弐型の撃墜率が恐ろしく低いのだ。おまけに破棄された機体については、各国がこぞって争奪戦を繰り広げているので、結果的に手に入るのはぼろぼろのパーツが良いところだ。
 状態のよい撃震弐型を手に入れるには、正式に日本帝国に打診するしか今のところ手がない。
 日本帝国は先ほども言ったように、人類全体の戦力の底上げを図っているため、政治的な軋轢さえなければ最新技術の固まりであることを考えれば格安といっていい価格での購入が可能なのだ。

 「同志バザロフ、君は柔軟性が足りない。確かに上層部は日本帝国との技術交渉などは行わないだろう。だが、他の国はどうだ?日本帝国ほどガードが堅くなく、それでいて日本帝国からの技術供与を受けている国など探せばいくらでも見つかるだろう?」

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