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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史介入の章その6
(マブラヴオルタネイティヴ)
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1992 晩夏 日本帝国 伊隅邸

 その日、伊隅邸では家族会議が開かれていた。
 何せ成績優秀で自慢の次女であるみちるが、

 「私は衛士になる!」

 と宣言し、推薦のあった柊町にある帝国白陵大学付属柊学園をけって、日本帝国軍所属柊町高等部衛士育成学科に進学すると言い出したのだ。
 両親はびっくりするわ、姉はおろおろするわ、二人の妹は危ないよといって心配するわでてんやわんやだった。
 衛士育成学科とはいえ、一般教養については普通の高等部と変わらないし、それに衛士用のカリキュラムが加わるだけだ。その一般教養についても、かなりのレベルで、下手な高等部など足下にも劣らない。
 ある意味軍部のエリート養成所といってもおかしくない。
 もっとも、本当にエリートになるためには、その後帝都にある帝国軍事大学に進学する必要がある。しかし、衛士育成学科などの学科に身を置いていれば優先的に進学先の席が用意される。
 というわけで軍事関係のエリートになるためには、衛士育成学科に通うことはマイナスではないのである。
 とはいえ、みちるは先ほども言ったように成績優秀だ。高校を卒業してからでも十分に進学できるだけの能力はあるはずだし、そもそも軍事関係に進む必要性がまったくない。
 折角の十代の青春時代を、軍事訓練関係でつぶさせるのをよしとする家族はそういないだろう。ましてやそれが女の子であるのならなおさらだ。
 というわけで、みちるは家族全員からの反対を受けていた。
 だがそれくらいで意志を曲げるみちるではない。

 「BETAを一刻でも早くぽこぺ、もとい地球から排除するために、私は私の出来ることをしたいの」

 必死に両親を説得、特に心配性の姉に対しては、

 「大丈夫よ、姉さん。私はBETAよりも怖い存在を知っているから」

 と訳の分からないことを言って、無理矢理説得していた。
 ちなみに、みちるがやたらと地球をぽこぺん呼ばわりしそうになっていたが、その理由を知るものはこの因果律の流れの中ではいない。
 BETAよりも怖い存在というのは、言わずもがなである。彼女の指導を行っているまりもだ。
 というか、隆也に懲らしめているときのまりもと言うべきか。思い出すに恐ろしい折檻の数々を受けながらも、その次の日にはけろりとしている隆也も大概と言えば大概であるが。
 初めてその光景を見たとき、いつもにこにこ時には厳しいまりものイメージが百八十度変わったのを覚えている。

 それはともかく、なぜみちるがBETAの脅威を知っているか。それには理由がある。
 隆也が練った精神の能力値向上プランに、BETA戦の実戦映像を見せる、という項目が加わったからだ。
 この項目の発想の元になったのは、衛士育成学科に無理矢理組ませたカリキュラムに、BETA戦の実情を訓練生に知らせるためのものだったが、その結果は劇的だった。
 中にはその光景のすさまじさに精神的拒絶を起こし、衛士としての将来を断念したものさえ現れた。
 ただ隆也が着目したのそこではない、そのカリキュラムを越えることで訓練生の精神の値が驚異的な伸びを見せたことだった。
 そのために、マブレンジャーたちへの精神向上カリキュラムに、BETA戦の実戦映像鑑賞が追加されたのは必然と言えるだろう。
 もちろん隆也が用意する映像だ。生半可なものではない。通常の戦闘映像に加え、補給部隊が急襲されたときに撮影された映像、駆動系が壊れた上にベイルアウトが不可能になった戦術機に群がる戦車級、その機体内の衛士の最後の絶叫、などトラウマ確定ものの厳選映像の数々だった。試しにまりもに見せたら、あまりの凄惨さにまりもから猛烈な抗議がされたほどだ。とはいえ、結果はしっかりとでており、まりもの精神値は映像を見る前と後で10も違っていた。驚異的な伸びである。

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