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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史介入の章その8
(マブラヴオルタネイティヴ)
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1993年8月 インド後方支援基地

 ラリーサ・ドゥヴェは、オルタネイティヴ3の第二世代として生み出された人物である。
 彼女の他の第二世代の殆どは、実験により命を落としている。実験と言っても、非人道的な人体実験からBETAへのアプローチまでその詳細は様々だ。
 人体実験からは、次世代の糧となるための貴重なデータが得られているし、BETAへのアプローチについては良好な結果は出ていないが、この計画の命題を考えれば全く問題のない行動だ。
 そう、彼女には問題意識を覚えることすら無かったはずである、本来であれば。
 そこには、おそらく彼女へ遺伝子提供を行った人物の能力が由来する。その能力とは、すなわち予知能力。
 それにより彼女は多くの人々の未来を見ることができた。だがそれはオルタネイティヴ計画には無用な能力。計画実行に求められるのは異星起源種との意思疎通を可能とする能力であるリーディングとプロジェクションであった。
 彼女は自身の能力により、最悪の選択を避けることが出来た。つまり自分がその能力に目覚めたことを知らせれば、リーディング、プロジェクションの強さと天秤にかけられ、結果未来予知を研究する方が有意義であるという結論が出ること。それにより自分は別の能力開発セクションに送られ廃人になるまで予知能力の研究を行われたのちに、遺伝子サンプルを取り出されて破棄されるということ。
 幸いにして彼女には多少なりともリーディングとプロジェクションの能力を発現することが出来た。そのため彼女は、自分の真の能力を偽って日々を過ごすこととなる。
 祖国を、そして他の兄弟姉妹を騙しているという負い目はあったが、それ以上に自分が無意味に殺されることに抵抗があった。
 自分はオルタネイティヴ3のために生まれたのである。それがそれ以外の目的のために利用されてそのあげく死んでいくなど、それは死よりもなお恐怖を覚える屈辱であった。
 自身の能力を隠して生きていく日々。
 だが第二世代の能力者は、能力の低さ故に破棄が決まった。破棄とはいえ、生体実験に回されるようなことはない。簡単に言えば、前線送りだ。
 その結果として、残り少なかった第二世代の子供達はわずか数人にまで減ってしまった。そのわずかな生き残りの中に、彼女は当然のごとくいた。自らの持つ予知能力を最大限に生かした結果だった。
 オルタネイティヴ3に自身の存在を賭けたにもかかわらずに、一方的に破棄された彼女。だが、それ以上に無意味に死んでいった兄弟姉妹たちの無念が彼女の胸を焼いていた。
 結果として再びオルタネイティヴ3直属の作戦部隊特殊戦術情報部隊に着任した彼女に渡された命令は、第四世代の子供達のお守り兼ねたスワラージ作戦への参戦。
 彼女の胸中は複雑であった。再びオルタネイティヴ3を、彼女の兄弟姉妹たちが果たせなかった目的を果たすために力を振るうことができる喜び。自分たち以上の力を持つ、そして自分たちが行うことが出来なかった祖国への貢献が出来る第四世代の子供たちへの嫉妬。なによりも、裏切られたと思った祖国への愛憎。
 しかしなによりも彼女の胸を占めていたのはたった一つのビジョン。すなわち自身の死。
 それはどうやっても覆しようがない未来だった。今までも絶望的な状況に陥ったことがあったが、それでも彼女は生き残ってきた。それはどこかにかならず自分が生き残るビジョンが見えたからだ。
 それが今回は見えない。そう、まるで自分の死を宣告するかのように。どのビジョンも自分の死を映していた。
 レーザー級に撃ち落とされる未来、突撃級に吹き飛ばされる未来、戦車級に食い散らかされる未来。全ては死に染まっていた。
 そこで初めて彼女は、自分が妙な安堵感を覚えていることに気づいた。

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