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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史介入の章その12
(マブラヴオルタネイティヴ)
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1993年9月 欧州連合 各国首脳会議

 「スワラージ作戦、ついに始まりましたな」

 それは時計の針が8時を指したと瞬間にイギリス代表の口から出た声だった。
 会議室には2つの時計、一つは会議が行われているイギリスの標準時、そしてもう一つはスワラージ作戦が行われる地の現地時間に合わせてある。
 そして、その場にいる全ての首脳の目は、作戦が行われる地の時刻を刻む時計に釘付けだった。
 スワラージ作戦、国連主導のもとに、アフリカ連合と東南アジア諸国が参加する一大ハイヴ攻略作戦。EUの各国も様々な支援物資の供給を行っている。そして極東の国、日本帝国。
 彼の国もまた二個連隊を軍事支援として参加させており、なおかつ、新型戦術機および新型戦術機用兵装の投入計画も確認されている。
 この作戦が成功すれば、人類史上初のハイヴ攻略がなる。しかもポパールハイヴは位置的にオリジナルハイヴ攻略への橋頭堡の確保という意味合いでも重要な場所だ。
 そう、成功すればだ。人類の長年の夢であるハイヴ攻略、今までも数々の作戦が実行されたが、いずれもBETAの圧倒的物量を前に失敗に終わっている。払った犠牲も決して少なくない。
 今度こそは、そう思いながらも、人類は敗北を続けてきた。そして、ついにはユーラシア大陸の殆どをBETAどもの支配下におかれる事態になってしまった。
 それに対して今回の作戦はどうか?

 「結果がどうなるにせよ、この作戦が今後の人類とBETAとの戦いにおよぼす影響は計り知れない。それだけは確実ですな」

 フランス代表が口にし、作戦の実行スケジュールに目を通す。散々目を通した後なのだろう。手にしたスケジュール表はしわしわになっている。

 「新型ミサイルに、M01弾頭、以前よりも遙に強化された戦術機、そして戦術機用の八九式兵装。陸戦支援砲の改良、戦車の緊急離脱装置及び連射機構。今までとは火力が桁違いに上がっている。楽観視は出来ないが、そう悲観したものでもないと、専門家も言っている。勝率は悲観的に見積もっても五分五分だというくらいだ。ハイヴ攻略、決してあり得ない話ではない」

 ドイツ代表が厳つい容貌に似つかわしい硬質な声で、人類の勝利に対する可能性を口にする。

 「そうそう、おまけに今回は国連低軌道艦隊からの地上爆撃、軌道降下突入戦術など新しい戦術も実戦で行われる。いくらBETAでも今までのようにはいかないはずですよ」

 場の雰囲気を軽くしようという意図かは不明として、軽口を叩くイタリア代表。

 「なんにせよ賽は投げられた。あとは結果を待つのみですね」

 スペイン代表の言葉に、一同は首を縦に振り、戦況を知らせるディスプレイに目を向けた。
 長い一日が始まろうとしていた。



1993年9月 日本帝国 某所

 「始まるな。この作戦での結果如何により、我々が準備を推し進めている第四計画がどうなるかが決まる」

 「そうですわね、榊外相」

 口元に髭を蓄えた厳めしい顔つきの男、日本帝国外務大臣榊是親の声に、理知的な女性の声が答える。
 日本が着々と準備を推し進める第四計画、その責任者となるべく期待されている女性、香月夕呼、その人である。
 わずか19歳とは思えないほどの落ち着きと、深い知性と感じさせる瞳、政界の海千山千の狸どもを相手にしてきた榊をして、容易な相手ではないと思わせる何かをもつ女性である。
 ESP能力者によるBETAとの意思疎通、情報入手を目的とした第三計画。このスワラージ作戦で一定の成果を出さねば、第四計画への移行は時間の問題となる。
 そのためにこの作戦は重要な意味を持つものなのに、目の前の女性はその意味を理解できていないのではないかと思わず疑うほど泰然としている。妙に緊張している自分がまるで格下であるかのような錯覚を榊に思わせる。

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