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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史介入の章その13
(マブラヴオルタネイティヴ)
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1993年9月 ポパールハイヴ周辺 スワラージ作戦最前線

 「フェイズ1順調に推移中。現在、ミサイル第五波の発射準備中」

 管制ユニットで目をつむりながら戦況報告に耳を傾ける小塚次郎少佐。彼が搭乗する撃震弐型には九十三式電磁投射砲が握られている。
 抜群の破壊力を誇る代わりに重量もそれなりとなり、かなり機体の機動性に影響する兵装だが、今回の作戦での運用方法では問題ない。
 運用方法、つまり、移動砲台の役割だ。混戦の中で動き回るのではなく、接敵開始時の的の駆逐、及び接敵後の支援砲撃が与えられた役割だ。
 元々接近戦に重きを置く日本帝国軍の戦術機運用方針からは若干はずれているが、これだけの邪魔な大物をもっての混戦はあまりに危険が大きすぎる。
 従って、全機が九十三式電磁投射砲を持っている帝国軍第十三戦術機甲大隊の面々は、いずれもここ最近必死に砲術戦の訓練を行ってきたのだ。
 余談だが、久しぶりに近接格闘戦が楽しめる、と思って参加した新人歓迎の模擬戦で一方的にぼこられたのは、彼らの心に軽いトラウマを残している。

 「Eナイト1より、CPへ、地表部に展開したBETAの状況は?」

 「こちらCP、現在72%前後の壊滅を確認。衛星からの情報とミサイルの能力からして、第五波着弾後は、90%程度が壊滅されると予測されます」

 「Eナイト1了解。おい、聞いたか、地表部に残された憐れなBETAは10%、ざっと1万程度だ。九十三式電磁投射砲のデビュー戦としては少々数が少ないが、本番前の肩慣らしだ。各中隊ごとの陣形を維持し、戦線への突入準備!」

 「「「了解」」」

 各機が電磁投射砲を両手で抱えながら、前線に向かって匍匐飛行を行うなか、まりも操る先進技術実証機撃震参型もそれに続く。
 1機だけ他の撃震弐型と比べるとやたらとずんぐりむっくりしているその機体は、周囲に展開している部隊からの注目の的だった。
 日本帝国が送り込んできた新型戦術機。それもたったの1機だ。データ取りにしては数が少なすぎる。一体何を考えているか。どのような性能を持っているのか。
 そしてなにより、この戦術機がもたらすであろう新たな技術革新が今後のBETA大戦に如何なる影響を及ぼすのか。各国の情報戦は熾烈を極めているが、とうの先進技術実証機撃震参型にのるまりもは呑気なものだった。
 初めて立つ戦場に緊張はある、生死を賭けたやりとりに興奮もある。だが、同じ戦場に隆也がいると思うだけで心が軽くなる。
 初陣の衛士が迎える死の八分、それは彼女に対してはあまりに低いハードルなのかもしれない。せめて、死の八万とかにしたほうが良いのではなかろうか、と後の戦術評論家は残している。

 「お、動き出したな」

 そんな光景を遠く離れた場所から観察する人間、立花隆也は自機の調子を確認しながら、第十三戦術機甲大隊が陣形を組んで移動するのを見守っていた。
 光学迷彩、ステルス塗料の働きはばっちりらしく、すぐ近くに展開している部隊に見つかった様子もない。

 「さて、それじゃこちらは本命のAL3直属部隊とやらの様子を見に行くか」

 AL3、オルタネイティブ3直属の部隊である特殊戦術情報部隊。一個連隊に匹敵する108機の戦術機を投入して行われるBETA相手の意思疎通、情報入手計画。
 そもそも隆也がこの部隊に注目したのは、オルタネイティブ計画の存在を知ったためだ。
 内容はともかく、彼の注意を一番に引いたのは、ALTERNATIVE、の綴り、なにより彼の恋人である香月夕呼にその計画の関係者から接触があったことだ。
 ちなみに夕呼は、隆也に一言も情報を漏らしていない。たまたま夕呼の身辺警護用の網に、AL計画から派遣された人員が引っかかっただけだ。
 AL支配因果律、彼が挑み続けている姿の見えないそれを打破する糸口と見て取った隆也は、様々な手段を講じてこの計画の情報を収集し、そして脱力した。

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