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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史介入の章その17
(マブラヴオルタネイティヴ)
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1993年9月 インド後方支援基地 総合司令所

 作戦は順調に推移していた。ハイヴ突入部隊に対して、謎の支援者からBETAのハイヴ内における分布図データが発信されたりと、予想外のことは幾つかあったが、作戦は無事に第五フェイズまで移行していた。
 地上に展開しているBETA勢力の大半を無効化し、このまま行けば本当に史上初のハイヴ攻略が成功するはずだった。
 あとは反応炉破壊の報告が入ってくるのを待つだけでよかった。
 そう、この報告が入ってくるまでは。

 「大変です、ハイヴより北、500kmの地点でBETAの姿が補足されました!」

 「なっ!?どういう事だ」

 総司令のシブ・バーダーミの声が司令室に響き渡る。皆沈黙し、その返答に耳を澄ましている。
 ここに来てのBETAの増援。タイミング的には最悪だ。

 「監視衛星の映像によると、オリジナルハイヴからポパールハイヴに向かって地中進行していたBETA群が地上に展開した模様です。数は、およそ10万」

 「10万だと…」

 「おそらくオリジナルハイヴからの定期的な補充部隊だと思われますが、詳細は不明。過去にも何度か同じような事態が観測されましたが、そのときとは比較にならない規模です」

 オペレータの声にも震えが混じっている。

 「ハイヴ突入部隊の状況は!」

 「降下部隊が現在中層に展開中。攻略までまだ時間はかかると思われます」

 「くそっ!最悪だ」

 シブ・バーダーミの頭の中に幾つかの選択肢が現れる。
 一つはハイヴ突入部隊を見捨てること。悪手ではあるが、うまくいけば反応炉の破壊は行える。ただし、本来なら英雄としての帰還を果たすはずの降下部隊は、その後に殺到する10万のBETAに圧殺されることだろう。
 隆也が聞けば、BETAの性質、反応炉が破壊された場合には、別のハイヴへと移動することを指摘して、その方法を直ちに採用するだろうが、生憎とハイヴの攻略が一度もされていないため、反応炉破壊後のBETAの行動パターンは未知数となっている。
 無知故の悩みだが、それを指摘できるのは誰もいない。
 もう一つは、直ちにハイヴ突入部隊を撤退させ、ハイヴ攻略作戦を再度練り直すこと。これには当然のことながら戦略物質の補充の問題が挙げられる。
 今回の作戦においてすでに使用された武器弾薬は相当な量におよぶ。これを再び蓄えなおすためには、ある程度の時間が必要になってくる。どんなに楽観的にみても数年はかかる。
 幸い地上戦力の消耗率は2割程度と、挽回はまだ十分に可能な被害だ。もっとも通常での戦闘で2割も被害が出ていれば、そうとうなダメージだが、BETA戦となるとその値はかなり軽い方だ。
 BETA戦はいろいろな意味で、通常の戦争と異なる。
 最後は、ハイヴ攻略を行いつつ、北方から迫り来るBETA集団を迎撃すること。
 だがこれにはかなり難しい。
 今ハイヴの南方から攻め上がっているため、まったく反対に軍団を配置する必要がある。支援砲撃も満足に行えない可能性も高い。
 少数を犠牲にしてでも、ハイヴの反応炉を破壊する。ハイヴ突入部隊は全員が死を覚悟しているはずだ。
 悩んだ末に、シブ・バーダーミが出した結論は、偶然にも一番いい手だった。

 「作戦は続行する。ハイヴ突入部隊には死を覚悟してもらう」

 ざわりっ、と司令室の空気が揺れた。
 誰もがシブ・バーダーミの立場になれば、苦しい選択を迫られるだろう。それがわかっているがゆえ、彼の言葉の重みを、彼がハイヴ突入部隊の死の責任を背負う覚悟を決めたことを感じていた。
 先ほどまでのハイヴ攻略の成功が見えてきて明るい雰囲気が漂っていた司令室の中を、今は重い沈黙が満たしていた。



1993年9月 ポパールハイヴ周辺 スワラージ作戦最前線(日本帝国担当戦線)

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