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過去の栄光〜光と影の兄弟〜
第3話 逆転
(オリジナル)
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さて、どうするか。

俺は腕を組み、目を瞑る。

今はHR中だが、一番後ろなので問題ない。

それよりも....

「安請け合い、しすぎたな.....」

よく考えると今の洸也はボクシングは全国レベル。

それに比べ、俺は小学校でボクシングをやめ、それ以来格闘技をしていない。

今のまま洸也と戦えば、十中八句、洸也の勝ちだろう。

「まぁ、負けても勝っても俺にとっては何のデメリットもないが、ただ負けてやるのは癪だ。」

本当は負けるつもりなどないが。

俺は洸也ほどボクシングをしていないが、1つだけ勝っているものがある。

それは、才能だ。

生まれ持った天才としての素質。

実際、昔はそのお陰であらゆる勉強もスポーツもしたことがないものですら普通以上の結果を出してきた。

....そのせいで洸也は自殺未遂を起こしたんだが。

「.....ではこれでホームルームを終わります。まだ委員長はきめてないので出席番号1番の人、号令をお願いします。」

「はい.....」

鏡 狂歌。

よりによってあの女が一番か。

本当に今日は厄日だ。




ホームルームが終わると、生徒達は各自帰り支度を始める。

今日の日程は始業式だけで、授業もなく午前中で学校は終わりだ。

そんな中、俺は1人、図書室に向かっていた。

目的は格闘技の本を探すためだ。

馬鹿正直にボクシングで挑んでも、数十年努力した洸也には勝てないだろう。

才能にも限界がある。

だから俺は自分の[才能]をフル活用することにした。

1つのもので勝てないのなら、別のもので補えばいい。俺にはそれが可能なのだから。




図書館に入ると目的の本がある本棚を探す。

見つけたのは、空手、合気道、ボクシング、柔道、CQC。

最後以外は一般的に知られている格闘技だ。

次にそれらを読破していく。

普通なら読んだだけで体が覚えるはずはないが、俺は違う。

試しに数分後にはその本に書かれていた事が出来た。

極めた、とは全然いえないが、少なくともその辺の部活生よりは上手いだろう。

ただ、問題なのは、CQCだ。

これは柔道と空手を合わせたようなもので、動きが少し複雑だった。

だが数十分かけてやったお陰で出来るようになった。

それでも、たった数十分だ。

......たまに自分の才能が恐ろしく感じる。

そう思いながら俺が自嘲気味に笑っていると背後から声が聞こえた。

「あの、図書館では静かにした方がいいですよ。」

俺は反射的に顔を歪めた。

その声が聞き覚えのある声だったからだ。

「何のようだ?鏡。」

俺は振り向かず、声を低くしたまま聞く。

姿は見えないが、鏡がビクビクしているのが何となく分かった。

「あの、図書館では静かにって言いにきただけ」

「ならもう大丈夫だ。俺はもう帰る。」

俺はそう言うと無造作に格闘技の本をもとの棚に戻し、出口に向かった。

「待って!」

その叫びと同時に俺の服が掴まれた。

チッ、どこまでも鬱陶しい女だ。

「....離せ。」

「嫌!だって、ヒック、私のためにあなたが洸也君と決闘するんでしょ。」

鏡が俯いたまま吐き出すように言った。

「はぁ?」

それを聞いて、俺は.....呆れて笑った。大声で。

予想外の反応だったのか、鏡は涙でグシャグシャの顔を隠すこともせず、俺を見る。

「ク、ハハハ!お前、本気で言ってるのか?だとしたらお前の頭にはかなりの広さでお花畑が広がっているんだろうな。」

「どういう、意味ですか....」

鏡が小さく呟いた。

「簡単な話だ。確かに原因はお前だが、俺はお前の為にしてるんじゃない。分かったらさっさと手を離せ。」

俺が服を強く引くと鏡の手は呆気なく離れた。

その間も鏡は項垂れたままだった。



次の日。

何事もなく登校した俺を、3人の美少女を引き連れた洸也が校門前で待っていた。

これを一般的にはリア充というんだろうな。

そんなどうでもいい事を考えながら、洸也の前.....を通りすぎた。

いち早く反応した洸也の取り巻きの女子生徒は俺の前に立ちはだかる。

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