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遊戯王GX 正直者の革命
第二十七話 馬鹿 (みねうちでもショック死したり物理的に死んだりすることもあるらしい)
(遊戯王GX)
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『♪♪〜♪〜♪〜♪〜............』
ケータイが鳴っている。
沈みかけた意識がゆっくりと浮上する。
もう体が動かない。
そう感じているのに、不思議と俺の手はポケットのケータイに伸びた。
それはきっと
こんな時に電話をかけてくるのは、あの人しかいないと思ったからだろう。
朦朧とした頭で、電話に出る。
『お〜い、三沢、俺だ俺。いや〜、まずい事になってよー。
...................返事くらいしろよ。なんだ?怒ってるのかー?そんな覚えねーけど。
まあいいや』
いつも通りの先輩だ。
他人の都合なんて、ほとんど考えない。
『いや〜、I2社寄った帰りに歯医者に歯石取りに行ったらさ、帰ってから三沢に渡そうと思ってたリローダーパーミッション、いつの間にか取られててな?
どこのどいつがやったかわからないから、とりあえずそっちはI2社に任せて俺は帰りの船乗ってるんだけどさ、鍵光ってるだろ?
1回目は無視したんだけど、消えてすぐ、また光り始めたから、なーんかあったのかと思って。
あ〜、もしかして、三沢じゃない?三沢死んじまって、他のやつが電話取ってる?』
「勝手に殺さないでください」
一応、文句は言っておく。
『おう!いきなり話すなよ。びっくりするだろ。
ん〜、でも、息も絶え絶えって感じだな。闇のデュエル中?劣勢?死にそう?』
本当に軽い人だ。
でも、今は羨ましくてたまらない。
「残りライフ3400ですけど、死にそうな気分です」
『はぁ?初期ライフの半分以上残ってるのに死にそうって、貧弱すぎるだろ』
そうだ。
俺は弱い。
先輩も十代も、どんなに傷ついても、立ち向かえる。
『つっても、お前賢いからな。
俺も十代もバカだから、脳内麻薬ドバドバ出るんだろうな。痛くも痒くも怖くもない。
お前は、楽しく本気のデュエルできればそれでいいってやつでもないし。
うん。お前はそれでいいよ、それで』
「でも」
勝たなきゃいけなくて。
『なら戦え』
「でも」
もう痛いのなんて、御免で。
『ならノーダメで勝てよ』
そんな無茶な。
相手の場には四体もモンスターがいて、
伏せカードは三枚もあるというのに。
『いいからとっとと勝てよ。
大丈夫。お前は勝つ。俺が保証してやるよ。
メタ視点で魔女とバトりながら見てたわけでもないから、よく展開わかってねーけどさ、この流れ、お前の勝ちだろ』
流れ?
また先輩のとんでも理論か。
『仲間助けるために戦って、でも精神的に参っちまって、そしたら憧れの先輩から「憧れの先輩ではないです」突っ込みはえーよホセ。
......先輩から電話かかってきて、元気づけられて。勝ちフラグビンビンじゃねーか』
「その自信、本当に羨ましいですよ」
『えーっと、お前を信じる俺を信じろ、だったかな?
うん、確かそんな感じだ。
いいか、ここが勝負時だ。
死にたいなら勝手に死んでろ。
生きたいなら..................頑張れ。
頭働かせて相手の思考読んで嘘ついてはったりかまして意地張って、
惑わせて裏かいて隙突いて展開して一気に畳み掛けて勝ちもぎ取れ。
以上。頑張れよ〜』
電話は切れた。
ああ、なんというか。
そういえば、毎回こんな感じだな。
先輩がかっこつけてバカなこと色々言いたいだけ言ってそれで終わり。
とはいえ
それで元気づけられてしまう俺も、実はただのバカなのかもしれない。
「クククッ、最後のおしゃべりは終わったか?
お前のターンだ。せいぜい楽しませてもらおうか」
さて、整理しよう。
次のターンも、タイタンは無謀な欲張りの効果でドローできないが、インフェルニティ・リローダーの効果で手札を確保し、スナイプストーカーでこちらの守りを突破するつもりだろう。
俺の手札は三枚。
逆転のカードは、既に手中にある。
だが――――足りない。
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