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魔王日記
第八十一話 間章そして激動への空隙
(オリジナル)
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「へぇ、やるねぇ〜」

「何がですか?」

「僕のぉ、シナリオに介入してくる奴がいるよぉ」

「なっ……」



突然のものいい、小柄で肌色も不健康そうな白、だがいつもは柔和に見せている目を鋭くしている男。

プラーク・ヴェン・サンダーソンはそれでもいつもの如く壊れている。

破綻(はたん)している、そう感じるのは暗殺者ギルドの13番、ナンバーサーサーティーン。

彼がこの破綻している主に仕えるようになってもう1年近くになるだろう。

考えが読めないこの不気味な主は基本的に暗躍を邪魔された事が無い。

暗殺者である彼が読めないのだ、表の人間等に読めるはずがない。

それぐらいにどす黒い腹を持っているのがプラークと言う男だと、サーティーン。

彼の計画に介入してくると言う事は同じ舞台に立てるだけの悪徳を持っていると言う事になる。



「何者ですか……?」

「うーん、相手も自分の事を巧妙に隠してるけど……。

 これだけの事が出来る相手は2人くらいかなぁ?」

「それは?」

「メセドナの無冠王とザルトヴァール皇帝陛下。この辺まで諜報網を作ってるのはこの2人くらいのものだしねぇ」

「なるほど……、しかしメセドナの無冠王とは……」

「1年半、たったそれだけの時間でメセドナの特別自治区をまとめ上げてしまった彼だよ」

「リュウゲン・イシガミですか……」

「その通りさ、彼の行動力、計画立案能力は恐らく世界でもトップクラス。

 皇帝陛下ほどの軍事力はないものの、政治力なら彼の方が上だろうねぇ。そう考えると愉快でたまらないよ」



プラークは何か考えを巡らせているようだった。

だが表情はむしろ嬉々としていて、新しい玩具を見つけたような

嗜虐趣味な彼の事、えげつない事を考えているのは間違いないだろうが……。



「うん、そうだこう言う時こそ兄さんにお願いしようかなぁ」

「兄といいますと、ソレガン・ヴェン・サンダーソン様ですか」

「だね、そのために彼女に張り付けてたわけだし」

「それは……」

「分かってるよ。今はもういない、だからこそ使える手をね」

「……」



また、サーティーンは主の考えがわからなくなった。

そう、確かに暗殺者をはりつけてはいた。

しかし、最近その暗殺者からの連絡が途絶えた、確認に行かせた所によると失踪していた。

恐らくは殺されたか、仲間を吐かせるために監禁されているかのどちらかだろう。

張り付けていた暗殺者も一流の男、吐かされる前に自分で死ぬだろうとは思うが、

万一暗殺ギルドの事を吐いていた場合、色々と面倒になる。

それだけではない、ソレガンは独自の諜報網を築きつつある、恐らく暗殺者を張り付けていた事はバレているだろう。

現状で既に敵対に近い関係となりつつあるのだ、ソレガンとのパイプは断たれている。



「でもねぇ、こう言うのは別に本当に何かをする必要なんてないんだよぉ♪」

「それは一体……」

「それはぁ、会いに行ってのお楽しみにしておこうかなぁ」



実に楽しそうにプラークは話し続ける。

実際に動かす必要のないもの、そして、それがソレガンにとって対処し難いもの。

そう言う条件を考えてもサーティーンにはどうにも考えつかない。

やはりこの男は普通の男ではないのだと再確認する羽目になった。



「ディロンさん、大丈夫?」

「……アア」



ようやく雪が降らない地域に来たと思ったけど、山中を歩く事になればその限りじゃない。

ディロンさんに抱え上げてもらいながら、山中を踏破していく。

正直とてもまねできない。

この世界に来てからずっと、もう1年以上旅を共にしている巨人族の女性。

3m以上の体躯を持ち、モンスターなんかには絶対負けない。

無敵なんじゃないかなんてちょっと思ったりしてる。

実際ディロンさんが倒したモンスターの中にはディロンさんの倍はあろうかという体躯のものもいた。

でも時々不思議に思う、どうして私に付き合ってくれているのか?

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