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Job Frontier
つんデレ?な妻と陽気な夫 〜しばしの閉幕〜
(ファンタジー)
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晴天の下、山小屋から出て行く男は振り返って軽く手を振り、王城へ赴く。
それを見送る女は軽く手を振り、小さく笑みを浮かべ、部屋に戻る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
やあ、アルカードだよ。
タニアがボクの事を認めてくれてからボクはようやく仕事を見つけた。
王宮ギャンブラー……国王を楽しませるために娯楽の相手を努める仕事さ。
王宮で住まなくてはならない都合上、暫くは彼女ともお別れだ。
ボクとしては今の彼女の境遇的に葛藤状態だったけど、彼女を止める為だ。
ボクが自分の為に働かないのなら自分がナイトとして働く、なんて無茶な。
『新しい命』をもう少し気遣って欲しいよ。
じゃあ、また会おう、My Love Wife……
――――――――――――――――――――――――――――――――――
全く、私が働けず、お前も私のことを気にしてこもりきりでは意味無いではないか。
とりあえず、寝床に入り、腹をさする。
そして昨日の事を思い出し、瞬時に頬を赤らめる。
あの時は、アイツに感化されて素直になりすぎてしまったが、やっぱ恥かしい……
アイツは私がアイツを好きだと勝手に思い込んでいるだけだから、
私がわざわざ言い返す必要などまるで無かったのだ。
結局、あの後の夜……いや、なんでもない。
思い出しただけで顔から火が出る……
私と……その……えっと……いや、私の為に彼が頑張っている傍ら、
自分が何もしないのは本当に辛い。
戦士として育った私には、ずっとじっとしていなくてはならないなんて難しい。
金は時々アイツが送ってくれる。
……全く、アイツにはいつも助けられてばかりだ。
あの時だって……
※   ※   ※   ※   ※   ※   ※  ※  ※
ルインド国、それが私の生まれた王国だ。
『明日、この国は襲われる。じゃが、ワシに見える限界はそこまでじゃ。』
百発百中の易者(フォーチュンテラー)の予言に怯えた国中が、
相手に備え本格的な戦の準備を行った。
当然、我々王宮騎士団とて例外ではない。
『しっかしまさか、こんな事になるなんてね。』
『アタシ嫌だぜえ。国が襲われる、しか分からない予言とか、シボフラじゃね?』
『バカ、そーゆー事を言うな。アタシら死を恐れない女騎士団だぞ?』
隊長まで一緒になって大爆笑をしていた中、私は周りから見ても分かるほど
浮かない顔をしていたのだろう。ふいに一人が私に聞く。
『ん?どしたタニア。浮かない顔しやがって。お前らしくないぞ。』
『あ?ああ、そう見えたか。はは……ははは……』
その時は苦笑で流した私だが、勝気な女騎士が口が裂けても言えないだろう。
『何か、嫌な予感がする。』などとはな。
『ま、救援軍(アイツラ)の出番は無ぇかもな。』
本来なら私もそんな団長に同調するはずだが、その時ばかりは、
待機援軍という名の暇人共に出撃を止めておきたかった。

翌日、特に大きな事件が起こるでもなく、正午を過ぎようとしている城下町であった。
私は妙な人だかりを見つける。何があったか尋ね、示された方向を眼にすると、
一人の男が壁を垂直に上へ上へと駆け上がっていた。
新手の大道芸と思った人々が歓声を上げる中、私は遠目に見えていたのであった、
こちらを横目で見下ろし笑い、懐から小型の円筒形を引き抜く彼を。
――――――ダイナマイト――――――――
「に、逃げろ皆――――――――――――!」
ニ、三本の筒が落ちてきた時、その正体を判断した私は叫んだ。
しかし、私の大声に気を取られた隙に、予言と私の予感は的中した。
耳をつんざく様な轟音が当たり一帯に響き、同時に包み込むような熱気と煙が起こる。
「な、なんだあ!?」「い、痛えぇええ!!」
瞬時に距離を取った私はかすり傷で済んだが、あの近辺に居た者、
且つ辛うじて生きていたものは血だらけで原型の分からないような哀れな顔をしており、

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