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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史改変の章その32
(マブラヴオルタネイティヴ)
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1997年 初夏 日本帝国技術廠

 「以上が、AL4の技術部からもたらされた超弩級万能型機動要塞『雷雲』の仕様です」

 小塚三郎少佐の説明に、一様に帝国技術廠が誇る頭脳陣達が押し黙った。
 「雷雲」、その名を持つ機動要塞がそれだけ破格の性能だったのだ。
 航続可能距離実に3万Km以上、最高巡航時速1000Km/h、通常巡航速度800Km/h、内蔵可能戦術機16機。
 武装は主砲の荷電粒子砲、これは凄乃皇弐型の実に1.8倍の出力を持つ。次にサブで小口径荷電粒子砲が4門ときた。オーバーキルもいいところだ。
 電磁投射砲240mmが4門、電磁投射砲120mmが16門、M314搭載自律誘導弾発射口が36、と他の武装も充実している。
 ただこれを聞いた誰もがただ一つ思い描いたこと、つまり、どう考えても大艦巨砲主義すぎるだろ。
 この武装の前では、最低でも戦術機でなければ姿形が残らずに粉みじんになってしまう。
 対人類戦には決定的に向かない兵器、それが今回「雷雲」の説明を聞いた技術将校たちの感想だった。

 「我々が派兵する兵力、帝国軍海外派兵部隊第十三大隊はこの機動要塞に積み込まれるのかね?それにしては搭載可能戦術機が16機と少ないようだ?」

 質問をしたのは帝国技術廠の第壱開発局副部長、巌谷榮二帝国陸軍中佐である。
 技術廠という地味な部署にあってその名が広く知られているという意味では、小塚三郎少佐と双璧をなす。
 とはいえ、実績という面で言えば、小塚三郎少佐のほうがぶっちぎっているのだが、彼には隠れたブレインがいるため、一概に巌谷榮二が劣っているというわけではない。

 「それについては、こちらに別の資料があります」

 続いてスライドに映し出されたのは、陸上輸送艦「疾走」。この計画の前に中国大陸の最前線に如何に効率よく戦力を送り込むかを検討した結果、小塚三郎少佐から提案されたものである。
 これをAL4の技術部と共同で改良、開発したのがこの陸上輸送艦「疾走」である。
 ホバーとはいえ、その出力はとんでもなく高く、時速500Kmで陸地から約2mの上空を走り回るというびっくり玉だ。
 これほどのものがまだ実戦配備されていないのはひとえに、その継続時間だ。現在の試作品ではじつに稼働時間20分。全く役に立たない。
 そこで、注目されたのが雷雲との共同運用だ。
 必要な動力を雷雲から直接ケーブルを使って送り込まれることでその稼働時間を飛躍的に延ばすことに成功した。
 運搬可能戦術機も最大36機、つまり大隊規模の戦術機を運搬可能である。

 「『雷雲』とは、あれを稼働可能にするほどの余剰出力を持つのか」

 「はい。ただし、戦闘中まで牽引は不可能ですので、作戦空域以降は戦術機は自力での移動になります」

 「なるほど、だがそうなると補給の問題が残るのでは?」

 巌谷の鋭い目線が小塚三郎少佐に飛ぶが、彼は平然と受け流す。

 「戦術機がいなくなった陸上輸送艦『疾走』であれば、戦闘中の余剰出力でも十分随行が可能です。補給物資は『疾走』に積んでありますので、特に問題はありません」

 「む、そうか。ならばいい」

 巌谷が納得いったとばかりに頷くと、モニタに映し出された資料を見つめる。

 「作戦開始まであと三日。すでに九州防人基地には、作戦参加要員が集まっています。作戦開始の12時間前に基地を出発、『疾走』の最高速度に合わせて巡航、作戦開始領域まで到達する予定です」

 「なるほど。ところで軌道降下を行わない理由は何なのだ?」

 「やはり、地上からのレーザーによる迎撃を考えてのことだと思われます。ですが本当の目的は、おそらくAL4の実力、つまり本気になれば地球上のどんな勢力に対しても対応可能なことを知らしめる意図もあるかと」

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