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マブラヴ 転生者による歴史改変
歴史介入の章その42
(マブラヴオルタネイティヴ)
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1997年 初夏 カシュガルハイブを狙える宇宙空間 AL4専用研究機関宇宙ステーション

 「射線上の僚機の撤退が確認できたわ。『インドラの矢』の準備はいい?」

 「こちらはいつでも問題ありません」

 ビンゲン少佐が答えると、目の前の制御コントロール板に発射スイッチがせり出してくる。

 「宇宙―ステーションの各員に告ぐ。『インドラの矢』の発射が行われます、繰り返します、『インドラの矢』の発射が行われます。各員、十分に注意してください」

 隣で艦内放送をオペレーターが掛ける。ステーション内に一瞬騒然とした気配がわき起こる。
 宇宙ステーションに装備されている最強の対地上用兵装、「インドラの矢」
 全長20m、直径1mに及ぶ射出用超高温耐性分子結合体を音速の十数倍にまで加速して打ち出す戦術核を超える威力を誇る兵器。
 この兵器の最大の特徴は、射出用超高温耐性分子結合体を使用しているため、如何にBETAのレーザー属種のレーザーが高出力であろうと、決して迎撃されることはないと言うことである。
 打ち出された質量兵器は、狙いを過たずBETAへの必殺の一撃として地上に突き立つことだろう。
 なにせ射出用超高温耐性分子結合体は、ナノマシンにより組み立てられた人工鉱物でありその融点は太陽の中心温度である1600万度に匹敵するという、常識の埒外にある物質である。
 如何にBETAのレーザーが常識外れの高出力を誇り、空気中での減衰がほぼみられないものであるとはいえ、それはあくまでレーザー兵器という範囲内に収まる。
 だが今回射出されたものは、そもそも常識外れのBETAを相手にするためにさらに常識からはみ出した代物だ。年間生産量がわずか6本ということからその作成にかかる労力は計り知れない。

 「こちらでの解除コード入力が完了したわ。あとはお願いね」

 「了解しました」

 ビンゲン少佐が喉を鳴らすと、発射スイッチに手を伸ばし、一瞬の逡巡の後にボタンを押し込んだ。
 瞬間、ステーション内の電圧が弱まったのか、一瞬照明の光度が落ちるがすぐさま電力供給ユニットから電力の供給を受けて元の光度を取り戻す。
 宇宙空間では一瞬の電力停止さえも死に繋がるので、ビンゲン少佐の額にも一瞬汗が浮かび上がる。
 そんなステーションにいる人員達の気持ちも何するものぞと、リニアカタパルトで最終加速を終えた重質量の矢が宇宙ステーションから放たれた。
 全長100mを超えるリニアカタパルトから放たれた質量兵器が、今音速を遙かに超える速度で地表に立つ超重光線級へと向かって飛び立つ。
 打ち出された衝撃に宇宙ステーションが震える。
 それはその身がはき出した一撃が母なる大地に如何に凶暴な牙を向けるのか、それを知っているが故におびえているようにも見えた。

 「『インドラの矢』射出を完了しました」

 「そう、ご苦労様。念のために『インドラの矢』の次弾を装填しておいて。一撃目での状況次第では、第二射が必要になるかもしれないわ」

 「了解しました」

 ビンゲンは指示を受けると、第二射を行うために次弾の装填を開始する。
 「インドラの矢」が地球を穿つまでには準備は完了することだろう。だが二射目が不要であろうことは、ビンゲンは何となく感じ取っていた。



1997年 初夏 カシュガルハイヴ周辺

 「コード『インドラの矢』だあ?うーむ、ゆうこりんめいらん気を回しやがって。あれは国連にも秘密にしておきたかったはずだろうに」

 愚痴るのは隆也だ。
 量子電導脳で随時地球全体の情報連絡網を把握しているため、夕呼が「インドラの矢」を使用するのも、彼にとっては察知は簡単であった。
 おそらく夕呼は隆也が因果律をゆがめるために行動しているのを知って、少しでもそのリスクを減らすために隆也が重力偏差機関を使用しないように手を回したのだろう。

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