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Fate/blue night
9話
(fate stay night 碧の軌跡)
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宗司がその場所に辿り着いた時、既に決着が付いていた。
そこには既に士郎の姿はなく、凛とアーチャーだけだった。
話を聞いてみると、聖杯戦争の最中、士郎がセイバーも連れずに学園に来ていた。
その迂闊さと無自覚さに腹を立てたらしい。
殺してやろうと思ったが、何故か上手く行かず気がつけば痴話喧嘩に…。


戦いが終わり、士郎は結界を張った犯人を追って行ってしまったらしい。

「……そいつは、−ッ!?」

「どうしたのよ?」

「士郎が襲われている。何者だ?」

「何ですって!?」

「悪いが先に行くぞ」

宗司は凛の返事を待たずに駆け出す。
反応のある場所まで全速力で。
宗司は駆けながらも、自らの気配を周囲と同化するように務める。
嘗ての仲間から学んだ隠形の術だ。

『隠形・霧』

それは宗司の存在を完全に隠匿した。
廊下の窓が独りでに開き、風が流れる様に吹く。
その場にいた教師は、不可解な出来事に首を傾げるばかりだった。




現在、士郎は窮地に陥っていた。
サーヴァントらしき存在を感知してその後を追った。
聖杯戦争に巻き込まれ、犠牲になるであろう人を守りたいその一心で。
不気味な笑い声は校内裏の雑木林へと移動する。
逃がすものか!
士郎は必死で足を動かし、その存在を捉えた。
思わず息を呑む。
美しく怪しい紫の光が線を描くように流れた。
両眼を布で覆い隠した長髪の美女が蜘蛛の様に木の上から士郎を見下ろしていた。
身体を覆う衣服は露出も多く扇情的だ。
ゾクリ、そう感じた時には遅かった。
ジャラリと鎖が迫り鈍い光を放つ大釘が肩を抉る。

「ぐわっ!?」

痛みに歯を食いしばりながら士郎は思い知った。
追い詰めたのは自分ではない。自分は誘い込まれたのだと。
そして蜘蛛の糸に捉えられた獲物になってしまったと。

「……くっ」

士郎は抵抗むなしく鎖によって木に縛り付けられてしまっていた。
分かった事は三つ。
結界を張ったのは目の前の女。紛れも無くサーヴァント。
彼女の話から分かった事だが目の前の女性は英雄ではなく反英雄と呼ばれる真逆の悪しき存在であること。
そしてこのままでは自分は確実に殺されてしまうこと。
士郎は令呪を見つめる。
セイバーを呼べば助かる。
自分の無力を思い知った。
このままでは俺は正義の味方にはなれない。

「……、来い」

意を決してセイバーを召喚しようとしたその時、一陣の疾風が駆けた。

「……な、くっ!!?」

凄まじい突風と共に敵サーヴァントは吹き飛んだ。
何らかの武器で身体を横から振りぬかれたかの様に、その身をくの字に曲げて。
そしてその先の木をへし折り地に倒れた。

「…、宗司!?」

士郎はいつの間にか目の前に現れていた宗司の姿に目を丸くした。

「どうにか間に合ったみたいだな衛宮」

「あ、ああ…助かったよ」

士郎は腕に刺さっている大釘を引き抜き痛みを吐き出すように息をついた。

「何者ですか」

「この前のランサーにも言ったけど、そりゃこっちの台詞だろ。学園関係者じゃない不審者は、どう見てもお前だろ?」

「戯言を」

サーヴァントは短く笑うと跳躍、蜘蛛のような身のこなしで枝の上に飛び上がった。
そして、

「ちぃっ!?」

上空から強襲する。
鎖を蛇のように巧みに操り大釘を放ってくる。
宗司は素早く士郎の腕を掴むと横飛びで回避。
ドス、ドスと大釘が飛び退いた地点へと突き刺さっていく。
サーヴァントは更に凄まじい速さで突っ込んでくる。
そして蹴撃。宗司は士郎を突き飛ばすと同時に屈んで躱す。
背後に立つ木がまるで割り箸のようにへし折れ倒れる。
美しい脚線からは想像も出来ないほどの威力だ。

「あなた、本当に人間ですか?」

サーヴァントは宗司を追撃しながら疑問を投げかける。
サーヴァントとして自身の能力は優秀な部類に入る。
魔術師であろうと一般人であろうと、英霊の前には等しく無力だろう。
だのに目の前の人間を殺すことが出来ない。

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