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行き当たりばったりの協奏曲(改訂版)
8 発破をかけてもダメなものはダメ。
(機動戦艦ナデシコ×魔法少女リリカルなのは)
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翌日、リニスを実体化させたことによる不調は回復していた。
ラピスがつきっきりで看病をしようとしてくれたのは嬉しいが、実質あまり必要はなかった。
そもそも感覚の不調だけであったので、その日昼食の味がわからなかったという程度のことだ。
もっとも、回復を始めていた足の感覚は悪化し、回復の見込はしばらくないだろうという事態には陥っていたが。
人一人復活した代償としては安すぎるくらいだろう。
もっとも、リニスに言わせれば人造魂魄だからこそ、魔力の供給さえあれば体を形作れるのであって、
普通の魂を復活させる方法はないのだとか。
細かい理屈は分からないが、人造魂魄というのが、元々使い魔を作り出すために生み出された特殊な魂だかららしい。
魔法は魂の生成にまで手が届いているのだとすれば、恐ろしいと思わなくもないが、
リニスはそんなに便利なものでもないと否定した、むしろ演算ユニットの能力が強力だからこそであると。
納得はできないが、うなずいておくことにした。
それから数日、リニスが月村家になじみ始めたころ、事件は起こった。
元々、リニスを使い魔にした日からなのはとフェイトの姿を確認できなくなっていたのだが、
時々結界が発生するので、いないわけではない事は知っていた。
しかし、その日、海にできたその結界はたわみ始めていた……。
「あれは、まずいんじゃないのか?」
「……そうですね。恐らく中の魔導師の魔力が尽きかけているのでしょう」
「中にいるのはフェイトかもしれないぞ?」
「はい、だから待っています。マスターの許可があるのを」
「……いってくるといい」
笑顔で言い返すリニスに、律儀な奴だなと苦笑して許可を出すが、リニスはそのままの笑顔で否定する。
「駄目です」
「???」
「あのですね、私が実体化しているにはマスターの近くである必要があるんです」
「演算ユニットは宇宙全体をカバーしているはずだが?」
「いえ、むしろマスターの認識範囲から外れると私は魔法を使えなくなります。
そして、マスターの行動する範囲から大きく外れた場所へ行けば実体を失うのです。
これは演算ユニットをカスタマイズしてしまったマスターの責任です」
「うっ……だがどうするんだ? 俺は海の上に浮かぶ術なんてないぞ」
正直そんな制約は初めて知った、リニス自身も初めて知ったらしく少しすねている。
なんでも、俺の代わりにバイトに行ったとき魔法が使えなくなったらしい。
それに、買い物をしてこようとして商店街に行き、ついでに町を見渡すために丘のほうへ少し寄ろうとしたら、
突然腕が消えて買い物袋が地面に落ちたとか。
実際の経験に基づくそれだけにちょっと必死の目で俺を見ている。
「大丈夫です。私、これでも元々大魔導師と呼ばれた人の能力のほとんどを受け継いだ強力な使い魔ですから」
「なっ!?」
「浮遊系の魔法も多数取り揃えています」
言いながら、車椅子ごと俺を浮かせる。
俺はその浮遊感に居心地の悪さを覚えるが、リニスも少し焦っているのだろう杓子してくれる様子はなかった。
「では、結界の近くまで跳びます」
「跳ぶ?」
「はい、しっかり車椅子につかまっていてくださいね」
次の瞬間、俺は海の上にいた。
そう、瞬間移動に近い何かをリニスはしたのだ。
こんな魔法があるならボソンジャンプはいらないんじゃないかと俺は考えたが、
詠唱時間や位置指定、周辺魔力の調査が必須であるため戦闘中に使う事は難しいが、移動や逃走には向いているそうだ。
元々はボソンジャンプもジャンプインやアウトにタイムラグがあったので移動くらいにしかつかえなかったのだが……。
「では突入します、出来るだけサポートはしますが……」
「車椅子では何もできんしな、じっとしているさ」
「はい、あまり行動しようとしないでください」
結界内に突入した直後、海が凄まじい荒れを見せ始める。
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