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行き当たりばったりの協奏曲(改訂版)
4 車椅子は四つ角を曲がれない
(機動戦艦ナデシコ×魔法少女リリカルなのは)
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車椅子に乗って月村家へとまた戻る。
そうしていると、やはり心苦しくもある。
ラピスやすずか、ノエルや忍、いろいろな人に世話になりながら俺は何も返すことができない。
それどころか、俺の持つ演算ユニットが危険を呼び込む可能性すらあった。
しかし、俺はその事を誰にも伝えていない。
ラピスにさえも……。
月村家に戻ると猫達が出迎えてくる。
すずかが大の猫好きであるためか、前からなのかは知らないが、この屋敷では猫を沢山飼っていたらしい。
貰われたり、寿命だったりで、かなり数は減ったらしいがそれでも5匹今も住んでいるようだ。
「ジェラールにバルタザールただいま。ウィニッチはそこの影ね、恥ずかしがりやなんだから。
フェイムとパニーラは……お出かけ中かな?」
「良くそんなことがわかるな?」
「長い間一緒にいるとなんとなくわかるんです」
「しかし、猫か……久しぶりに見た気がするな」
「私、はじめて……」
そうかラピスは基本的に動物と会うような環境にはいなかった、
それでも犬は月基地でも飼われていることがあったせいもあり、時折見かけていたが猫はまだない。
基本的に宇宙では猫をネズミ捕りとして使うことが難しいため、愛玩用としてしか使えない。
そして、月は地球と違って物資はかつかつなのだ、ペットに食わせる飯はない。
しかし、犬も番犬としては用なしだがは家畜を飼う際には役にたつ。
そのため、それなりに普及しているようだった。
そんなわけもあって基本的に外に出ないラピスは猫を始めて見ることになる。
「あっ、そうなんですか。では触ってみます?」
そういってすずかは猫を差し出すが、ラピスは俺の後ろに隠れて猫を伺っている。
猫はすずかに抱き上げられてもあまり動きを見せない、少しうざったいような感じだが、それだけだ。
だが、ラピスの前に差し出されたとたんフギャ! と警戒の声をあげた。
「ラピス、あまり警戒するな。猫は警戒されていると感じると自分も警戒する」
「……そうなの?」
「ええ、だからもっと気軽に触れてあげてください。うちの猫は人懐こいですから大丈夫です」
「うん、わかった」
それでも、まだ少し警戒しているようだが、ラピスはそっと猫に触れる。
猫は少し嫌そうな顔をするが黙って触れさせた、そのことに気を良くしたラピスが大胆に猫に触れる。
すずかは面白がって猫をラピスに渡した、ラピスは一応抱きかかえたもののどうしていいのかわからず困っている。
そうこうしているうちに猫は抱かれることに飽きたのか、ラピスからささっと飛び降りて走っていってしまった。
「逃げられた……」
「あははは、猫は気まぐれだから。またさわらせてくれるよ」
「もふもふ、気持ちいい」
「うん、そうだね。猫はもふもふだよ♪」
すずかは共感できたことが嬉しかったのか、笑顔でラピスにうなずく。
ラピスもどこか嬉しそうにはにかんでいた。
俺は、そんな二人を見ながら表情を緩めている。
ふとその姿を見るものが他にもいることに気づいた、玄関口でノエルが凝固したように動きを止めていた。
「お迎えのようだぞ? そろそろ屋敷に入ったほうがいいんじゃないか?」
「はい、じゃあラピスちゃんアキトさんは私が押してくね」
「……(コクリ)」
ラピスが素直に従ったところを見ると、すずかとの仲が深まったようだ。
俺としてもこれは嬉しいことだ。
できればこの調子で馴染んでいってくれると嬉しいと思う。
そうして夕食を済まし、部屋に戻ってからしばらくのこと。
忍がまた俺の部屋に尋ねてきた。
「どおも、今日はすずかと出かけたんだって?」
「ああ、図書館に案内してもらった」
「なんというか、真面目ねー。せめてすずかの遊びに付き合ってあげる寛容さを持ちなさいよ」
「今の俺では難しいな、手足が自由に動くようになれば付き合うが」
「面白みのない答えね」
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