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行き当たりばったりの協奏曲(改訂版)
3 図書館の三人目
(機動戦艦ナデシコ×魔法少女リリカルなのは)
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「ほう、アンタがすずかをたぶらかしたっていう変態ね?」


その女性の初対面第一声はそんなものだった。

俺はまだ目がはっきり見えていないが、頭の方には紫色がついている。

姉妹そろって室内で帽子をかぶっているのでもない限り、二人とも紫色の髪を持っているのだろう。



「どういう理屈でそうなったのか、是非聞きたいものだが」

「そうね、見た目かしら?」

「……それは一本取られたな」

「それより、テンカワ・アキトとかいったかしら。その少女は血縁というわけじゃないわよね」

「ああ、そうだな」

「場合によっては警察に通報することになるけど?」

「それは俺の事情を話せということか?」

「それ以外に聞こえたら、貴方の頭はスカスカね」

「おい、忍……あまり深く関わろうとするんじゃない。お前もわかるだろ?」

「でも、妹が最初に連れて来た男ですもの、気になるわ」




忍と呼ばれた女性がここの主であることは聞いているが、もう一人は知らない。

ラピスとすずかはノエルに連れられて居間で夕食を取っているらしいので今この場には3人ということになる。

しかし、月村忍とこの男の関係はなんとなくわかるが、男からは独特の覇気が出ている。

恐らく強い、月臣らのような達人だけが持つ独特の雰囲気を持っている。

もっとも、俺に判るのはそれだけだ、そもそもほとんど見えていないのだから細かいことまではわからなかった。

それに対して、忍と呼ばれた女性はどこか面白がっている雰囲気を見せている。



「まあ、こんな年上の男をすずかの夫に認めるわけにはいかないけどね。

 あの子は私の宝物なんだから」

「……まったく、ついこの間までとは別人みたいだな」

「別にいいでしょ、いろいろ手に入ってうれしいのよ私は」

「なんにせよ、この男には闇がある……」

「それは否定しない。俺はそういう面を持っている」

「ならばあまり表の人間に関わるな。お互いが不幸になる」

「あれ、恭也はそんな私を恋人にしてくれたんじゃないの?」

「いや、それはだな……」

「大丈夫よ、言いたい事はわかってる」

「……」



恐らく恭也とか言う男が言いたいのはこの家の人間が負うことになるだろうリスクのこと。

対して彼女はおそらく自分たちと俺のことを重ねている?

ならばただのカップルということはありえないのだろうな。



「兎も角、今の俺は手も足も出ない。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

「なら、聞いてもいい? あなたたちの事情」

「事情か……言っても信じてもらえるかわからないが……」

「信じるか信じないかは私が決める、貴方は兎に角話してみて」

「ふむ、細かい事情は省かせてもらう。

 俺達はこの世界とは違う世界から来た。

 転送装置とでも言うべきもの、それの取り合いの末、緊急脱出装置代わりにそれを使用した結果だ」

「またえらくアバウトな説明ね……でも、理屈としては一応説明できなくもないか」

「突拍子もない話だな……だが世の中には突拍子もない話は結構転がっている、迂闊に否定はできないが……。

 重要なことを話していないな?」

「その辺は個人の事情だ。それに、この世界に追手が来ているわけでもない」

「なるほどね……とりあえずは信用するわ」

「いいのか?」

「こんな恰好をした人間、映画でもなければお目にかかれないでしょ?」

「確かに……な」



こうして俺達はしばらく月村家の世話になることになった……。


月村家に世話になって2日目。

目が見えるようになった俺は次は体を動かそうと四苦八苦している。

しかし、実質的には腕が不完全に動くのが限界だ。

そこで、車椅子を用意してもらうことになった。

俺は遠慮していたのだが、何やら月村姉妹は嬉々として引き受けていた。

いったいどういうことだと思っていたら、えらく斬新な車いすを用意されることになった。



「ちょっと聞いていいか……コレはなんだ?」

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