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行き当たりばったりの協奏曲(改訂版)
6 六つの影が動く時
(機動戦艦ナデシコ×魔法少女リリカルなのは)
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俺がこの世界にきて二週間になる。

おおよそ、体の感覚はつながってきたのだが足はなかなか完全にならない。

リハビリのようなこともしているが、

演算ユニットの計算がいつも頭に流れ込むせいで逆に取り戻した感覚も持って行かれそうになったことも何度もあった。

ただ、翠屋のバイトとして少しは慣れたらしく、最初のころのように運んだり料理をする人の邪魔になる回数も減った。

動き回るとすぐ邪魔になるのでもっぱら生地を練るのが俺の仕事だが……。

仕事の帰りに何度かフェイトを見かけたので、作った菓子の評価を頼んでみることにした。



「あっ、このクッキーおいしいです。ケーキは甘さ控え目なんですね」

「そうかい? アタシは物足りないよ、もうちょっと甘くしてもいいんじゃないかい?」

「うん、こっちもおいしいです」

「そうか、甘さの調整はどうしてもその日の調子に左右されがちだから気をつけることにしよう」



しかし、フェイトという少女の周りには何か温かなものが付いているように見える。

彼女を取り巻いている光の粒子に交じって何かが明滅している。

俺はふと、それを手で触れてみた。



「っ!?」



触れた先から演算ユニットが過剰に反応する、そもそも物質なのかすらわからない光にこれほど反応するとは。



「あの、何かあったんですか?」

「いや、特に何かあったわけじゃない」

「……ふーん、いくらフェイトが可愛いからって、おさわりは厳禁だよ」

「ちょっ!? アルフ!?」



してやったりの顔で俺にいやみを言うアルフと顔まで真っ赤なフェイト。

こんなふうにいつでも話せればいいとは思うのだが、心配事があるのだろう、すぐにまた表情をもどす。

それを知ってか、目線で訴えるアルフに俺はひそかに頷きながらおどけて話す。



「それはそれは、訴えられたら大変だな。今日はこの辺で退散することにするよ」

「えっ、あの……あぅ……。また、来てくださいね」

「次はもっと完成度の高いお菓子をもってくるよ」

「菓子もいいけど肉とか持ってきてくれよ!」

「ちょっ、アルフ!?」



すっかり動揺したフェイトを前に俺とアルフはひとしきり笑って、それから俺は家路についた。

夜の帳はとうに降り、夕食の時間だろう、遅れて帰ってきたことに文句を言われるだろうなとは考えていた。

しかし、返ってきた俺は別の意味で驚くことになる。



「遅い! 終了時間は同じだったのにどこをほっつき歩いてたの!?」

「すまない、少し寄り道をな」

「まったく、今日ははじめての……おっとそれは後のお楽しみよね。ノエル、どんな感じ?」

「はい、あともう少しで出来ると思われますので、手を洗ってお待ちください」

「いったい……」

「遅れてきた人には内緒♪」



ノエルに言われた通り手を洗いに行って戻ってくるとちょっとほっぺを汚したり、指に絆創膏をつけている二人の少女がいる。

それで、だいたいの事はわかってしまった。

今日は忍の他にも恭也も来ているようだ、遅れてなのはも入ってきた。



「こんばんは! お兄ちゃんが面白いから来いって言ってたので来ました」

「こら、俺はそんな事は言ってないだろう?」

「いらっしゃい、なのはちゃん。へーそんな事言ったんだ」

「ちょっと待て、俺はな……」

「はいはい、ともかく今は彼女たちがメインでしょ?」

「そうだったな」



ドギマギしていた恭也をほったらかしにして、俺達は席に着く。

ノエルが料理をカートに乗せて運んできた。

予想どうりというか、料理は少しいびつで、まだ改良の余地を残していた。

料理は肉じゃが、味噌汁、サラダにごはんという微妙に和洋折衷だが、まあ、料理しやすいものではあった。

すずかとラピスが食い入るように見ている。

恐らくだが、ラピスは完全に料理は初めてのはず、料理の分担は……サラダと味噌汁だろうとは思うのだが。

俺はいつの間にか全員の視線が集中しているのを感じていた、恐らくおよばれの二人も最初に食べる勇気はないということか。

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