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甘い甘いケーキを食べましょう
(機動戦艦ナデシコ×PSO2)
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寒さも厳しくなってきたアムドゥスキアの浮遊大陸にて、アキトは今日もダーカーを殲滅すべく愛刀を片手に駆け回っていた。

アキトにとって四季など関係は無い。

宇宙の敵が寒くなってきたからといって攻勢を弱めることがないように。

アキトもただ、己に課せられた責務を果たすべく刀を振るう。

バイザーの下の瞳には一点の曇もなく、躊躇も無く。

そうして周囲一帯のダーカーを殲滅したアキトは一息吐いてヤシャと呼ばれる刀を鞘に収めた。

ふとそこで後方に気配を感じ、だが敵意は感じられなかったため構えずゆっくりと振り向く。


そこには普段ならば考えられない人物が立っていた。


「ねぇ、アキト?」

「クーナか…なんだ?」


クーナと呼ばれた少女は、いつもならば始末屋としての格好をして惑星に降り立つものだが、今日は何故かシップでアイドルとして活動する時のままだ。

そのことに違和感を抱かずにはいられなかったが、アークスとして動いているのではないのだろうと内心で己を納得させる。

当の本人はそのことを全く意識してないのだろう。

若干顔全体を桃色に染めながら、上目遣いでアキトを見つめていた。


(何だ、この状況は…?)


アークスとして動いている時は沈着冷静で、アイドルとして活動している時はニコニコと笑顔を振りまく少女、それがクーナだ。

だが、どうしたことか。

今眼の前でもじもじと体を揺らし、人差し指を突き合わせている様はまるで普段の彼女からは想像できないものである。


―――風邪だろうか?


確かにそう考えると彼女の顔が赤い理由も、普段ならば考えにくい惑星内でのアイドルの格好も納得が行く。


(六芒均衡が風邪じゃな…)


ここまで来た理由はわからないが、熱があるのは確かだろう。

アキトに何か用があったのは間違いないだろうが、体調を整えてからでも遅くはないだろう。

緊急の要件ならば別のルートで連絡が来るだろうし、恐らくは私用だろうと判断。

一旦シップに戻るかと思い、口を開こうとするが先を越されてしまう。

だが、相手の口から飛び出してきた言葉にアキトはつい眉を顰めてしまう。


「アキトはクリスマスって空いてないの?」

「…何?」


一体何を言い出すのかと思いきや。

それよりもそんな単語を耳にしたのは久しぶりだ。

そもそもアークスとして戦う自分には縁のないものである。


「いきなり何を…」

「い、いいからっ。―――ねぇ、空いてるんだったらクリスマスライブの後、食事でも行かない…?」


心地よい温度の風が二人を横切る。

少女はアキトから目を離さず、アキトもまた少女の真剣な眼差しから逃げることは出来ないと見つめ返す。

この状況の意味を理解できないながらも、アキトは少女の意思を汲み取って軽く息を吐いた。


「まさか天下のアイドルから食事に誘われるなんてな。

 ―――少し待ってくれ、確認する」

「う、うん…」


マントの下から手を出してモニターを展開する。

黒のハーフグローブを嵌めた手を動かし、自身の行動スケジュールを確認する。

シャオからの任務依頼は今のところ来ていない。

ルーサーを倒したことだし、今しばらくは内部の改革に力を入れているのは知っている。

だからこそこうして一人でダーカーを殲滅しに来ているわけだ。


「…大丈夫だ。クリスマスなら空いている」

「そ、そっか。じゃぁ約束! ライブが終わったらいつものところに来てね!」


顔の赤いまま、はにかんだ笑みを浮かべるとクーナは霧のようにその場から消え去る。

言い逃げの展開にいつものクーナとは全く違うなと頬を掻き、スケジュール帳に予定を打ち込んだ。





『―――まだ立ち上がるのか! 何が貴様をそこまで動かす!』

『…他の連中のことなんて知ったことじゃない。シオンも、アークスも関係ない。

 俺は、昔からお前みたいな奴が死ぬほど嫌いなんだよ、このクズ野郎が…!』

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