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Muv-Luv ノイマンのおとぎばなし
第42話 善と悪の彼岸で(中)
(マブラヴオルタネイティヴ)
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作者よりのお知らせ

今回の話を読んで分からない部分が多いと思った方は 第5話 昔々、日本という国で… を併読される事をお勧めします。
 
 
 
【1993年10月30日 伊豆諸島沖 万能プラント・オノゴロ】


「そもそも何故君や私はこんな状況に陥ったのだろうね、文殊君?」

私がそう訊ねると、当プラントのメインコンピューターにしてツンデレ眼鏡っ子の彼女は白けたような冷たい視線と共に返事をかえして来た。

「ついに脳の記憶保持能力が低下したのですか? 我々がここにいるのは元の世界でのテロの結果及び原因不明の何らかの力が作用してこの世界に来たせいでしょう?」

「そうだね(笑)では文殊君、そのきっかけとなった『テロ』は何故発生したのかな?」

「何者かによって煽られた『第二日本』のテログループが起こした物ですが、それが何か?」

「そのテロリストたちを煽ったのは一体誰かな?」

「それは…」

「いやそれ以前に普段はあの幕張の『隔離区画』にいる連中が一体どうやって、どこからN2爆弾なんて代物を調達出来たんだろうね?」

「………」

「考えてみればおかしいんだよ、確かにあの『第二』のテロリストたちは反社会的行動を自慢し、大小様々なテロ行為も行って来たけど、今回のように大量破壊兵器まで持ち出す事はなかった…というか連中にそんな物を自前で用意する資金力はなかったはずだ」

私の言葉を文殊君は無言で聞いている。

「それだけじゃない、そもそもこの『オノゴロ』は連中の攻撃目標としてはかなり優先度が低かった物だ。
それなのに奴らはどうやってか手に入れたせっかくのN2爆弾を『ここ』への襲撃用に使ったのも不自然だ」

「この『オノゴロ』の防御力を考えれば妥当な破壊力ですが?」

「…第二のチンピラテロリストがどうしてそこまで知っていたのかな?」

「それは…何処からか情報を得ていたのでは?」

「ではその何処からかは一体どこだと思う? このオノゴロの正確な情報を知っているのは政府や所管官庁の上層部と担当者、後はこれの設計製造に携わった『第三』の技術者たちだけだ。 あの第三のオタク技術者たちは『第二』の連中を『時代遅れの精神異常者』と呼んで毛嫌いしているし、間違っても奴らに漏らしたりはしないだろうね……ここを、いや『君たち』を危険に晒すような情報は」

それを聞いた文殊君は不機嫌そうに顔を顰めた。
どうやら彼女(たち)は自分たちを創造した『第三日本』の技術者さんたちが与える『萌え』という名の愛がありがた迷惑に感じるらしい…どうでもいい事だが。

「さて第三が情報を漏らしたのでないとすれば政府側からという事になるが、過去の情報漏えいやテロ事件の教訓から我が国の情報管理体制はかなり厳しい物になっているし、とてもじゃないが第二の連中に盗み出せたとは思えないね」

「では一体誰がどこから情報を盗み出したと?」

「…おそらく誰もそんな物は盗んでいないだろうな」

「はあ?」

一体コイツは何を言ってるんだという顔で文殊君がこっちを見てる。

「だからだね、そもそも第二の連中は自分たちが何も知らずに踊らされてただけだろうと言ってるんだよ」

その言葉を聞いた文殊君は無表情で尋ねて来た。

「ではあなたは一体誰が、何のためにあのテロを仕組んでN2爆弾まで与えて第二のテロリストたちを焚き付けたと仰るのですか?」
 
 
 
 
「…我が国の政府だと、私はそう思ってる」
 
 
 
 
一体何故、我が国の政府が自国の造った最新プラントを、それもテロを装ってまで破壊したのか?…多分誰もがそう疑問に思うだろう。
それを説明するにはまず、この『オノゴロ』が作られるに至った事情から知らなければならない。
 
 
 
我が国が『日本連合』と名前を改めた2180年代初頭、政府は国内の治安維持や首都機能の老朽化に頭を悩ませていた。

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