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Muv-Luv ノイマンのおとぎばなし
第43話 善と悪の彼岸で(後)
(マブラヴオルタネイティヴ)
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【1993年10月31日 伊豆諸島沖 万能プラント・オノゴロ】

「…よし、これで問題なしだな」

「…その異常者丸出しの姿のどこが『問題なし』なのですか?」

パーティーに出席するための服装を整えた私の背後からジェニファー君のお声がかかる。

「どこがいけないのかね? ハロウィンパーティーに出席するのに?」

「…ハロウィンパーティーに何故『なまはげ』の姿で行くのでしょう?」

「いや最初はアイスホッケーのマスクにチェーンソー持って行こうとしたんだが、周りの人が『それは危険だ』とか言うのでこっちにしたんだがね?」

こんにちは皆さん、相馬剣四郎です。
どうにかこうにか文殊君を説得する事に成功した私ですが、ここをしばらく空ける前に色々やっておかなきゃいけない事もあるのです。
その内の一つを消化すべく、これから国連軍基地(オノゴロV)で行われるハロウィンパーティーに出席しようと準備してるのに横で見てるジェニファー君の蔑みの視線が痛い痛い…

「…それで、本当にそのベックマンという軍人とコネクションを繋げるおつもりですか?」

「まあね…どうやらあの鎧衣さんとやらは榊大臣たちとも裏で繋がっているようだし、ここは彼の紹介に乗ってみようかと思っているんだよ」

「どんどん深みにはまっている気がしますが…この世界の事情に」

確かにそうだが…だが本当にシャレにならない事態が来ないという保証もない以上、こちらとしても色々と対応策を用意しておく必要があるだろう。
まずはその辺を見極めるべく、この『なまはげ』の姿で『彼』と会って顔繋ぎだけでもしておいた方がよさそうだ…後々のためにね。

「それじゃ行ってくるから後はよろしくね、ジェニファー君」

「…どうぞお好きなように」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
【帝都 京・日本帝国首相官邸】

「…では、豪州政府はこちらが提示した案で満足してくれる訳かね?」

「はい、彼らとしても下手にこちらを刺激するよりも自分たちの国土からより効率良く資源を採掘出来る機械や技術を導入する方が得策と見て、ほぼ丸呑みで応じてもらえました」

相向かいで語り合うのはこの官邸の主である内閣総理大臣と、榊是親外務大臣である。

「ふ…こちらが資源活用を極限まで高める技術を手にする『可能性』を仄めかしたのが効いたか」

少しばかり悪党気味の表情でそう言った総理に榊も人の悪い顔で応じる。

「おかげで漁業に関してこれ以上は無理な干渉を強いる事はないという確約も得ました…その代わりと言っては何ですが、例の『カクテルグラス』は当面帝国のみが保有運用するという条件を出してきましたが」

「ふむ…それは別に構わんだろう? どの道我々もそう世界各国への『慈善事業』をやっていられる状況ではないのだからな」

「は…既に欧州連合には『オノゴロT』型の移動要塞を提供済みですし、少なくとも当面国際社会への義理は果たしたと言えます…少なくとも表向きは」

裏に回ればどんな無理難題や謀略を仕掛けて来るか分からない…言外にそう語る榊に総理も重い表情で同意する。

「そちらの方は内務省と情報省に頑張ってもらうしかなかろう…しかしこの先厄介なのが朝鮮半島を中心にした我が国と統一中華、そして米国のパワーバランスだな」

「はい、それが現時点での最大の難問と言えましょう」

「榊さん…正直半島はどの程度持ち堪える事が出来ると思う?」

諦観と、そして僅かな望みを込めたような総理の問いに対し、榊の回答は重く、無情だった。

「10年は持って欲しい…と言いたい所ですが、現実にはその半分持てばいい方でしょう」

「…やはりな」

朝鮮半島を防衛する主力は韓国軍、そして米軍と帝国軍(名目上は国連軍)であったが、韓国軍側と国連軍側との連携は必ずしも万全とは言えず、実際に半島防衛戦が始まった時に上手く機能するのか不安もあった。

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