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俺の片目は戦争兵器
バイト代か命か
(オリジナル)
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春、真っ只中。暖かい風が俺の頬をかすれる。
「ここか明夏の言ってた喫茶店は」
今からバイトをするにあったての顔合わせなどをするところだ。
それにしても何の特徴もない店構えだな。平凡にも程がある。
「そろそろ入るか」
俺は入り口を開けた。
店の中も平凡だった。ここなら普通の喫茶店らしく安心して仕事ができそうだ。
「来ましたかバイトさん」
店の奥から出てきたのは体の細身の男性だった。
「よろしくお願いします」
「私は店長の磯山 舞喜(いそやま まいき)こちらこそよろしく」
私って言ったぞ? 気のせいか。
「仕事について説明したいからついて来て」
「わかりました」
俺は磯山さんに言われるがままついていった。
「ここで話しましょうか」
「俺は何の仕事をすれば」
バイト代がもらえれば何でもいいのだが。
「まずやってほしいのはゴミ出し、そのあとは業者が宅配便を届けに来たらその荷物を厨房へ持ってきてちょうだい、あとは店のヘルプに入って」
簡単なバイトだ。これくらいなら俺でも出来そうだ。
「もう少しで開店だからこの服来て」
俺が渡されたのは女性用いわばウエイトレスの服だったのだ。
「せんえつながら聞きますけど、なぜ女性用何ですか?」
「聞いてなかったの? ここオネェ喫茶なの」
聞いてねぇよ。
明夏にはめられた。
「迂闊だった・・・・・・」
俺にだって羞恥心はあるんだよ。
「そこにゴミあるから頼んだわよ」
玉砕上等、やってやるよ!
と意気込んだもののやはりこの格好は恥ずかしい。
「くたばるまでやるしかない」
まずは、ゴミ出しから。
俺はゴミの入った袋を持って路地裏に繋がる裏口を開けた。
ゴミを入れるバケツがあるはずだから、あった。
「この中に入れればいいのか」
俺はひとつ目の仕事を果たした。
「業者が来るまで店のヘルプか」
俺が見た光景は地獄だった。
昼間から物好きがオネェ喫茶に来ている、さらにお茶を出すのも作るのも全てオネェがやっている。
ヤバイ、吐き気が。
俺は耐えられなかった。そのまま倒れてしまった。
まだ立てる。バイト代のためなら立てる!
俺は力を振り絞り立ち上がった。
「ヘルプお願いします」
「今、行きます」
吐き気なんて吹っ飛んでいた?
俺はきりっとしていた。
オネェなんて怖くない。そう信じることしかできなかった。
「そこにあるコーヒー茶色の服来てる人に持ってって」
「わかりました」
体が自然に動いている。これなら働ける。
俺はバイト代のためだけに働いた。
「お疲れさまーいい働きぶりだったわよ」
「ありが・・・・・・とうござい」
俺はその場に倒れた。
意識が戻ってきた。
俺は目を開けた。
「ここはどこだ」
「やっと起きたのね、ごめんね無理させちゃって」
仕事じたいがキツいわけじゃない。
その格好、いい加減やめてくれ。また意識が飛んでく。
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