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Fate/Heroes of mythology〜神域追想呪界〜
出会い
(Fate/stay night×乃木若葉は勇者である)
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レイシフトが終わり、立香が目を開けた瞬間、猛烈な喉と皮膚を焼き尽くす絶望的な痛みが始まった。
「っ!? カハッ・・・ヒュー・・・ヒュー・・・」
呼吸が出来ない。
痛みの原因を知るべく、激痛の中何とか周囲を見回すと、その原因はすぐに分かった。
視界を埋め尽くすのは焼け爛れ、燃え落ちた文明の名残。
それを灼熱の炎が舐め上げ、文明の残滓すら残さず駆逐していっている。
今、立香は生きたまま焼き尽くされようとしていたのだ。
「マスター!? これを!」
誰かが何かをしてくれた瞬間、立香は呼吸が出来るようになったと共に全身を苛む熱傷の痛みから解放された。
「マスター!? 御無事ですか? たった今火除けの加護と治癒の加護が掛けてある、まじゅつれいそう? を起動しました」
「あ・・・御前・・・? あり・・・がとう・・・」
傍で自分を心配そうに見つめているのが巴御前だと解った立香は何とか声を絞り出し、礼を言う。
メディアリリー特製の治癒礼装一式は、魔力さえ通せば誰でも起動出来るようになっていたので今回はそれが功を為した。
あれが何らかの詠唱をしないとならないモノだったり、構造が複雑なモノだった場合、巴御前は起動すら出来ず、立香は今も全身を焼かれていて起動する以前に燃え尽きていただろう。
「マスター、酷な事を言いますがすぐに戦闘の用意を。敵です」
何とか安全を確保した立香に、巴御前が普段のたおやかな乙女のそれではなく、武人としての声で敵性体の存在を伝える。
周囲を見回すと、焼け崩れた建物の間や空に白い袋の様なものに巨大な口が付いているナニカが大量に浮遊しており、それらは一直線にこちらに向かって来ていた。
「・・・あ・・・あ・・・あああ」
白いバケモノを見て立香は強烈な恐怖に襲われた。
アレはただただ人を喰う事、人を滅ぼす事にのみ特化したモノ。
何の感情も持たず、本能すら持たず、ただただ機械的に『人間』を屠殺するモノ。
天を白く埋め尽くし、天より落ち来るモノ。
それが何に於いても『恐ろしい』と本能が叫んでいる。
アレはダメだ。
アレの存在は決して『人間』は許容出来ない。
「牛若、御前、酒呑、倒して! アレ全部!」
「承知しました、主殿!」
「拝命賜りました。マスター」
立香の指示を受けて二人がバケモノに突撃していく。
しかし、そこに酒呑童子の姿は無かった。
「酒呑? 酒呑、何処!?」
立香は酒呑童子の姿を探すが、周囲は総て白く染まり酒呑童子の姿は全く見えない。
それどころか魔力パスを通じての居場所すら認識出来なくなっていた。
「マスター! 今は目前の敵に注力を!」
「分かった!」
巴御前に諭され、立香は酒呑童子を案じながら目前に迫るバケモノと交戦を始めた二人のサポートを始めた。
四方八方から視界を埋め尽くすほどのバケモノが殺到してくる。
二人はそれぞれが一騎当千の英霊。
生半可な援護射撃など邪魔にしかならない。
なので、此処で出来る最高のサポートは逃げ続ける事だった。
ただ闇雲に逃げるのではなく、牛若丸や巴御前の位置を把握し、常に二人のどちらかの視界に入っており、かつ攻撃射線上におらず攻撃範囲内にいる事。二人の動作の邪魔にならない事。
それを可能とするため、自身の魔術回路を全力で起動させ、身体強化と未来予測に魔力を割り振る。
これまでどんなに困難な戦いもこうして突破してきた。
だが、今回ばかりはそれでどうにかなるものではなかった。
一騎当千の彼女等二人を以てしてもバケモノの津波は捌ききれず、徐々にバケモノの包囲網は狭まり始めた。
あと一人、あと一人足りない。
牛若丸の俊足の剣舞の隙を埋め、巴御前の背後を護る誰かが欲しい。
「誰か・・・誰かいないの? 酒呑は何処なの?」
立香自身の身体ももう限界がき始めている。
フルスロットルで起動させ続けている魔術回路は立香の神経を焼き始め、無理矢理リミッターを解除して動かしている筋線維も悲鳴を上げている。

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