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Fate/Heroes of mythology〜神域追想呪界〜
出陣
(Fate/stay night×乃木若葉は勇者である)
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だから防衛のノウハウを有する若葉に残ってもらい、自分達が『虫瘤』内のバーテックスを全力で殲滅した方が良いと判断したのだ。
「マスターがそれでいいのなら私は従います」
「しかし、我々二名のみの戦力で果たして事足りるのでしょうか? 万が一我々だけでは手に負えない場合は全滅しかねません。やはり若葉様にも来て頂くべきかと」
「巴殿、マスターが良しとする兵法なのです。そこに異を唱える事など無用ではありませんか?」
「仕える主の作戦に不備があればそれを正すのも家臣の務め。貴女の様に命じられた事のみをすれば良いという直情的な者を『猪武者』と言うそうですよ」
「兄上の御下命は常に正しかったのです。私が異論を挟む必要などないでしょう」
「マスターは貴女の兄上ではありません。誰もが同じ能力を有する等思わない事です」
「マスターの作戦はこれまでどれも素晴らしかった。貴女はマスターの御意思を蔑ろにするのですか?」
「誰がその様な事を言いましたか?」
「言ったではありませんか!」
「いいえ、そのような事は申しておりません。マスターの作戦がこれまで通用して来たとして、それが今回も正しいわけではないと言っているのです」
是も非もなく速攻で了承する牛若丸。
敵の戦力が不明な戦いに全滅の危険性を訴える巴御前。
朝からこの二人の意見は対立したままで、いつ殺し合いが始まってもおかしくない程の険悪な空気になっていた。
この四国の現状は常に外界の脅威に曝されている中で敵に浸透され、それを『虫瘤』という防壁で何とか食い止めているというとても不安定なバランスで現状を維持している状態だ。
自分達が動けば確実に事態は変化する。
どうすべきか、立香は今一度じっくり考える事にした。
「はい、二人ともちょっと聞いてくれる?」
立香の一言で二人は言い争いを止め、立香に向き直り主命を待つ。
こういう所は骨の髄まで『侍』なのだと立香は感心する。
「ゴメン、二人が私の事を思ってくれているのは分かるんだけど、ちょっと頭の整理がしたいから外に出て来るよ。二人は言い争うのは止めて、何時出発するってなってもいいように準備する事。いい?」
「・・・承知しました」
「はい、わかりました」
立香は二人にそう言うと丸亀城の本丸を出て遥か彼方にある『神樹様』をよく眺められる開けた広場の様な所に出た。
広大に広がる樹海、その奥に聳える『神樹様』という神聖な絵画の様な光景に染みの様に違和感を覚えさせる四つの『虫瘤』・・・
アレを取り除く必要がある。
それは間違いない筈だ。
でも問題は山積している。
バーテックスは本能や知性はないだろう。
だが、こと『人類を殺す』事に掛けては如何様な戦術も取るのだという。
実際若葉から聞いたところ、若葉をその場に釘付けにするほどの物量で攻める組と広域に浸透する組に分かれて侵攻する、一点突破を狙って速力特化の個体を投入する、接近戦に特化しているという若葉を近づけず倒してしまおうと遠距離特化した個体で攻める等という対応力を有しているとの事だった。
きっと私達が『虫瘤』に入れば壁外のバーテックスはこれを好機と攻めて来るに違いない。
だから後詰がいる。
でもそうすると戦力が足りなくなる恐れがある・・・
「どうすべきなんだろう・・・ねぇ? 神樹様・・・」
どれが最善か分からず、悩んでいた時だった。
立香の頭の中に唐突に強烈なイメージと共に微かな声の様なものが聞こえた気がした。
視界一面を覆い尽くす焼け爛れた大地に咲く腐った花畑とその背後に聳える大木。
花畑の中には四つの燃えた石があり、それに花畑の花々は絡まり、次々と焼き落されながらもなお絡んで苦痛の絶叫を放つ。
そして首の無い藁人形が腐汁を撒き散らしながら大木の前に積み重なって立ち、それらも次々と燃え落ち、やがて大木は燃え始め焼け堕ちると共に『暗黒』と形容すべき人影が高らかに哂い、総てが無明の闇に消え果てる。

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