序章/第0話『初陣』


 私に何か落ち度があったのか。あったのだろう。
 それは、なんだ。
 おちていく。
 しずみゆく。
 ふかくふかくふかく。
 やすらかに、
 しずかに、
 ああ、これでもう、
 だれかが、
 なにかがよんでいる、
 もういい、
 もうこれいじょうは。
 
 自身が挙げる絶叫に不知火は叩き起こされた。
 息が荒い。
 胸が灼ける、
 苦しい、思わず掻き毟る。
 大丈夫、と傍らに気遣う声があり、振り向く。
 同族の姿が視界に入る。
 不知火は額の汗を手の甲ですばやく拭い去り、彼女に微笑みを向け、

「いえ、大丈夫です」

 自身の発話に勇気付けられる、
 そう、私は大丈夫。
 深呼吸、二つ、三つ。
 完全に鎮静した。

「失礼しました」

 ベッドから起き上がり、いつもの能面を取り戻し、軽く礼。

「そう、ならいいけど」

 手を差し伸べながら相手は言葉を続けた。

「私は横須賀付け工作、兼医務艦の明石よ、何かあったらガマンしないで直ぐ診せにきて、
これからよろしくね、不知火さん」

 窓辺には午後のうららかな陽光、その日差しのような笑顔で明石は名乗った。

「不知火です。着任早々造作をお掛けしまして申し訳なく」

 再びの礼はいささか深く。
 こんこん。
 戸口の響きにふたりして貌を向ける。

「落ち着いたようだね。では改めて、横鎮へようこそ、不知火くん」

 不知火より頭二つは高い位置から上官、指揮官が部下に掛けるそれとしては柔和に過ぎる調子の言葉が降りてきた。
 上背はあるものの、体格の良さよりも線の細さを思わせる。
 涼しげな風貌も武人としての精悍さにはやや欠け、学者か或いは役人のようだ。
 男の姿に明石はぱっと顔を輝かせた。

「あ、参謀!ちょうどいいところに! 」

 反対に男の表情は陰る、やれやれという書き文字が背後に似合いそうだ。
 明石はちらと不知火に視線を送るとそのまま男のそばに近づき声を潜めた。

「不知火さんの新歓コンパなんですけど! 
 司令がまだ店を決めてないみたい…で…その……ですね」

 あうあうという明石の語尾は宙に途切れ、
 対して男は額に手を添え此の世の総てに絶望したかの深く長い吐息と共にやはり小さく応じる。

「明石技官、失礼ながら貴官は横須賀鎮守府に着任して今年で何年になったかな、あー」

 明石は男の言葉にでもでもと言い募る。

「いえあの、俺が知ってる、きれいな夜景がウリの店がってそのとても嬉しそうにその」

 男は頭をかきながら続ける。

「私を失望させないでくれ、本来聡明な君はもう判ってるだろ、
 あいつにものを頼んじゃダメなんだよ。命令系統の逆転もそうだが、
 何より奴は実務能力皆無なんだ、ましてそんな重要案件はぜったい任せちゃだめだ」

 ぴっと指を立て、

「それとも、士官学校以来奴を見てきた私の言葉が信じられないかな」

 明石は白旗を掲げた。

「はい、私が軽率でした」
「うん、君は優しい、だから断れなかったんだろ、
 でもそれはそれ、業務の一環として巧くいなしてくれ。
 了解した、本件は私が引き継ぐ」

 ぽん、と男は軽く彼女の肩を叩く。
 明石の頬に紅がさす。
 唇が、さんぼう、と動いたとき、二人の間を割るように影が現れた。

「こちらでよろしかったでしょうか、閣下」

 言葉に男は大きく頷く。

「よろしい、大いによろしい」

 三人目を不知火の前に引き連れてきた。

「夕張、こちら本日付けで着任された不知火くん、
 不知火くん、こちら、夕張、後のことは彼女に従うように。」
「宜しく、不知火さん」

 夕張は折り目正しく礼を捧げる、いえこちらこそ。
 では宜しく頼むと云い置き男は足早に退出する、実際多忙な身なのであろう。
 明石と夕張はそれを横目で少し見送り、頃やよし。

「あーかーしー」

 夕張は声を突き立てる。

「ちかい! 今のは近いなーいけないなー狭窄すれすれだなー」
「重要案件の審議でしたので」

 明石は澄ましておちついたもの。

「ちちくりあうのが? 昼下りの密会か! 」
「してないし捏造やめ。ちょっと抱いて貰っただけだから、こう、やさーしく……」
「してるじゃん! 」

 ちょんちょん。

「なに」
「ほら、“ぬい”ちゃんが固まってるから」
「あ」

 確かに、不知火はどういう顔でここにいればいいのか判らず、
 傍らに、引きつった半笑いを刻んだまま無言で棒立ちしていた。
 おほん、あーてすてす本日は晴天なりと夕張は空咳払い。

「えーと、じゃ不知火さん、そろそろ行きましょうか」

 それでも医務室の扉をしめつつ去り際抜け駆け厳禁!ときつく釘を放った。
 夕張の少し後を並び歩く。
 当たり障りのない台詞をきれぎれに交わしながら不知火はふと、
 もし人間であればここで故郷の家族がどう、などという話題も上るのだろうかと。
 幸いなるかな我々艦娘にそうした面倒はない。建造され配属されるこの身は、
 では呉を故地と郷愁を覚えるか、どうだろうそれも違うような、

「呉、ねえ」

 と、夕張。

「私はこれで技研付けなので。でももう出向してこっちの方が長いの」

 そうなんですかと相槌。
 木造の隊舎は森閑とあった。この時間ちょうど、非番を含めだれ一人居ない。

「えーと“ぬい”ちゃんの部屋は、と」

 確定したらしい。蔑称の響きはないので無理に訂正は求めない。
 朝日側の角部屋だった、起床には便利そうだ。四人部屋で、まだひとり。
 壁の両脇に二段ベッドがある。
 先行者利益として左手上段に申し訳程度の私物を納めた背嚢を放り入れ、これを確保。
 まあ充員確定後再度くじ引きしてもよい。

「次は食堂ね」

 賑わっている。珍しくも在り難い事に年中無休とか。

「司令の方針でね。例え一時なりとて兵を餓えさせるなどならぬ、と」

 それは、率直に、素晴らしいと思う。

 艦娘を識りたければ戦艦を見るがいい。
 合理に破壊と殺戮を司り、なお民族の血をまざまざと映ずる海神の城塞は見よ、
 今彼女の一身に在る。女神の慈と闘神の武を纏い人類救護の朋友として、今彼女は在る。
 撃鉄は引くでなく落とすでなし、絞る、深夜に霜が降るが如くに。
 戦陣に携える本来の長槍たる36センチ主砲に比しては
 玩具と称すもおこがましい小物なれどしかしなればこそ真摯に、
 この一弾に必中の入魂を……。
 直ぐ脇で無造作な三点バーストが鳴り響く。続けて二回。

「はいしゅーりょーでーす」

 一見雑な射撃だがしかし全弾オン・ターゲット、
 2k先の水上艦を模した標的の、その船橋を寸分違わず射抜いていた。

「やましろ〜」

 姉からジト眼で睨まれた妹はまったく悪びれる事なしに、

「でもお姉さま、決戦距離20k以遠のわたし達に小銃で2k先を撃てって、
 それは控えめに言ってもその」
「気持ちよ、魂を磨くのよ、それが大事なの」

 いやそのりくつわおかしい、単なる経費節減でわ……、
 しかし妹は姉のまっすぐな視線にそれ以上の抗弁は諦めた。

「お姉さま、私が間違っていました」

 扶桑はまさに慈母、否、妹を慈しむ至上の姉の輝きを以って、

「判ってくれて嬉しいわ、山城」
「はい、お姉さま」

 このお姉さまの笑顔に応える為なら、他に何ほどのことがあろうか。
 艦種に貴賎は無い、というより、
 艦隊とは各艦種が各々その特性を十全に果たしはじめて
 艦隊という統合戦闘単位としての戦力を発揮する、
 という子供でも知っている当たり前の事実を、
 しかしその戦艦姉妹の背中は、
 艦隊最大最強の存在としてそれでも背負うものが違うのだと、
 何気ない戯れを演じながら余人を交わさぬ孤高の屹立を示すかに、
 いや決して姉妹百合結界閉鎖空間に気後れしたというのではなく、
 戦艦はやはり役者が違うかと。
 もちろん不知火は不知火としての職分を全うする、それだけのことだが。

 着任初日、“病み上がり”につき少し短縮された、横鎮での一日が過ぎた。
 出頭申告早々無様に倒れ手当てを受けて医務室から始まった、不名誉な一日が。
 ごろりと身体をベッドに、確保した隊舎自室左上段のそこに投げ出す。
 当然除装作業後の、だまっていれば人間のそれと寸分変わらない身一つで。
 艦付担当長に業務願わなければこうして寝返り一つ自由に出来ない、
 何と素晴らしきかな艦娘。『艦』が外れるこの束の間、只の『娘』として
 もしこの世に産まれ落ちた身の上であったら、などと、
 自分はそういう不毛な願望とは無縁だと、不知火は再認する。
 『娘』であれば、
 ここではないどこか、という事はあるかもしれないが、『艦』が付かない自分は、
 そもそも此の世に存在し得ない、人間の被造物、戦闘生命体、それが、艦娘であり、
 私だからだ。でも、すこしだけ、いつでも自分で自由に寝転び寝返りを打てる身分は、
 それはもしかしたらいいものかもしれないが、
 あるいは、彼女には彼女なり自分とは異なる不自由が与えられるのかもしれない。
 数少ない私物の一つである無音動作だが起床機能は強力な目覚ましを枕元に置き、
 不知火は眼を閉じた。
 夢は見ない。

 夕張から申し渡された本日業務である午前の課業、
 練成任務のランニングで埠頭コースを回ると、

「おーぬいちゃんおはー」

 明石が日向ぼっこをしていた、いや、まだうっすらと黒煙をまとう僚艦を従えている。
 辺りにはきらきらと虹のような光の瞬き、軍属の工兵妖精が忙しく飛び交っている。

「あれからもう大丈夫みたいね元気そうでなによりよしよし」

 どうやら完徹らしい当人こそ大丈夫なのか、軽巡1、駆逐3が爆睡する中、
 明石はへらへらとわらいながら不知火に手を振り掛ける。

「あー洋上応急にくらべりゃこんなんお遊びだから、
 見世物じゃないのよさあいったいった」

 軽く頭を下げコースに戻った。
 直属上官が待つ水雷部士官公室へ、課業終了、只今戻りました、
 報告に上がると夕張は不敵な微笑を浮かべ出迎えた。

「明石には会った?」
「はい」
「見てきての通り本日未明に基地港湾沖にて敵戦力の存在を確認、
 哨戒当直の川内率いる部隊が緊急出撃これと交戦、
 敵艦隊戦力本体は殲滅、或いは撃退に成功した、が、
 依然未だ微弱な反応が検知される、発令!」

 夕張は手にした伝令を堂々朗々と読み上げた。


「発:横須賀基地参謀本部、
 宛:第二艦隊所属艦、不知火

 本文

 第二艦隊所属艦、不知火、は当発令を以って臨編、夕張支隊に編入、
 旗艦、夕張 所属、不知火、
 両二艦により編成されるものとする。

 夕張支隊は、
 作戦名、横防-00XXXXに従い作戦するものとする。
 
 横防-00XXXX
 
 作戦目標、横須賀基地作戦担当域内に於ける敵性艦艇類。
 作戦目的、同、目標の殲滅による作戦域航行保全確保並びに作戦参加戦力慣熟練成。
 作戦海域、同、作戦担当域。
 
 作戦開始日時 発令同日、11:30
 
 以上、質問は」


「ありません」

 夕張は大きくうなずく。

「たいへん結構!、では着装後定刻までに港湾にて出撃準備を完了せよ」
「了解です」

 艤装装着完了後、平時では使用制限のローラーダッシュでぶっとばしていくと、
 一仕事終え帰途につく明石と行き違う。

「お疲れ様でした」
「おーぬいちゃん、出撃?、残敵掃討?」

 はいと応え、慌てて、

「軍機につき、お察し下さい」

 赤面して訂正、明石は吹き出す。

「いい!ぬいちゃんいいねー。ま、も少し気楽にね、じゃないと」

 真顔でぼそりと付け足す、長生きしないよ、と。
 顔が強張る、
 胸の奥で、何かが灼ける、息が荒れる。
 だが、一瞬に過ぎ去った。

「“ゆうゆ”は技官待遇で無任所だけどああみえて、
 もういつでも旗艦を張れる手練だから、おとなしく後ろから付いてけば安心よ、
 初陣、ふぁいと」
「訓令、有難くあります!」

 ていねいに、礼、

「うむ、貴艦の航路に武功、武勲の多からん事を」

 5分前に現着、上官の来着を待つとなるほど夕張は悠揚たる旗艦ぶりだった。

「さっき私も“しーの字”に出くわしてね、新艦をあんま苛めるなって。
 イジメてないよね私?」
「いえ全く当艦には覚えがないことです」

 さすがに苦笑して応えると、

「昼夜勤明け呆けのあいてははなし半分でね、
 まーでも“あの”川内が蹴散らしたあとの落ち穂拾いだから、
 大胆に沈着にそして細心に」

 こきこきと首を鳴らしんーっとひとつ伸びをすると、

「ではよいか、狩りの時間だ。抜錨、我ニツヅケ」

 定刻寸分違いなく、出撃。

「不知火、続航します」
【原速】
 発光信号。
【原速、宜候】
 命令がある以上気兼ねなく最短針路で湾内を縦断、港湾開口を目指す、と、

「あら、出撃?」

 なぜか大艦が同航してきた、重巡だ。

「お早うございます足柄さんお疲れ様です」

 封じるように夕張は早口で礼。

「まだ何もいってないじゃな〜い」

 ちょっとむくれる足柄に、

「増援要請はありません、権限もありません」

 言い被せる。

「え〜いいじゃない。ちょっとくらい」
「ちょっとも何もありませんよ」
「はいはい」
「ってしれっと不知火に続航しないでください」

 出口が近づき、足柄はしぶしぶ減速、さすがに無許可で出撃はしないようだ。
 港湾開口部詰め所当直の帽振れ、
 出撃見送りに答礼すると夕張はすかさず最大戦速を指令。
 港湾基地防壁があっという間に遠ざかり、水平線に沈む。
【策敵警戒厳ニセヨ】
【策敵警戒、宜候】
 前を行く夕張の影が揺らぐのが見えた。眼を凝らす。
 分解能が向上し、左手を掲げた1k先の夕張の背中を克明に認識する。
【10時、敵ラシキモノ、距離15000】
 それを肉眼ではなく、背部艤装より肩越しに展開したFCS、火器管制装置が識別。
 旗艦が発した敵発見、の報から既に戦闘状態、“認識の拡大”が開始していた。
 物理的に最大長2mに満たない自身が、まるで100m超の、
 真の洋上戦闘艦艇であるかに感受される、その状態が。
 連装2基4門の“12.7cm”主砲が訓練通りに、滑らかに目標を指向する。
【【目標、深海棲艦イ級】】
 夕張、発砲。旗艦に続けて撃つ、が、もうその必要は無かった。
 夕張が放った一撃で既に敵は無力化されていた。
 不知火が初陣で撃った初の目標は、
 爆沈する敵艦が吹き上げる水柱で、
 ささやかな、小艦の己が末期を代償に海面を騒がせたそれは直ぐに収まり、
 何事もないしずかなうみがまもなく戻った。
 只今の射撃見事なり、祝辞を発し掛け、止める。
 違和感がある。近接し、僚艦の不審行動に顔をしかめる夕張に肉声で発する。

「通信妨害がありませんか」
「え?」

 接敵までは原則、無線封止。交戦以降は解除。
『こちら夕張、横須賀基地艦隊本部、本部、応答されたし』
 空雑音。反応なし。

「……これはいったい」

 見つめる夕張に、

「さっき、発信し掛けて、あれ、と思いまして」
「まさか!」

 突如夕張はあらぬ方を見上げ、時刻を確認し、駆け出した。

「夕張さん?!」
「遠征艦隊の帰港時間の筈なの!!」

 あ。
 あわてて不知火も後を追う、追いつき、そして、
【不知火、先行スル】
【旗艦了解、警戒厳ニセヨ!】
 遥か遠くに戦場音楽が響く、水平線の向こうから轟く砲声。
 棚引く噴煙が薄糸を曳き天に伸びる。
 艦列も何も既にない。各艦は各個に必死の回避運動。

「あと少し、あと少しよみんながんばれ!!」

 軽巡、艦隊旗艦が声を枯らして督戦。
『那珂ちゃん!!』
『あーゆうゆ出迎え』
 被弾した。
 積載物資と艤装の破片を撒き散らしながら那珂は横転し波間を撥ねる、二度、三度。
『那珂?!』
【我、突撃ス】
『不知火?!』
『……その敵は』
 知っている、当然ながら識別表の上で。
 戦艦、ル級、のようだ。
 なぜ戦艦が、こんな近海に、そうしたことは後で、今はこれを沈める、
 それしかない。
 遠征艦隊は兵装を降ろし代わりに物資を積載している。
 旗艦が身を挺していたようだがそれも今限界に達した。自艦隊旗艦はまだ後方。
 恐怖、そして昂揚。
 小艦で大艦を、戦艦を、喰う、それが我が水雷の誉。
 近弾。
 自艦を覆い隠すような巨大な水柱が立ち上る。
 敵が自艦を認識した、これで役目の半分は果たした。
 そこで不知火は自身の不明に気づく、
 今の出撃は砲力増強の連撃仕様だ、
 雷装は使いきり補助の2線のみ。
 それでも、発射。
 すでに外す距離ではない、二発とも航走最速に達する間も無く相次ぎ命中。
 ル級は巨体を一瞬水柱の影に隠し、
 それを割って再び現れた姿は確かに激しく黒煙を噴出し眼に見えて艦速は鈍っていた。
 ル級が薄く嗤う、わらったように。
 発砲。
 こちらではない。
 夕張の姿が水柱に、どす黒く濁った水隗に包まれ、揉みしだかれる。
 目線を目標から切った不知火には副砲が叩き込まれていた。
 近弾、至近弾。
 鉄板のような海面に叩き伏せられ撥ね飛びそのまま頭から海中に飛び込み、
 たっぷりと海水を飲まされながらもがきかきわけ浮上。
 当然のように狙いすましたような砲撃の出迎え、
 だが不知火もそれは読みきり、辛うじて回避。
 立て直す。
 増速。
 血の気が退けた。出力が上がらない。
『ほら、増援必要だった』
 え?。
 場違いに明るい声が戦場に割って入った。
 ル級が爆炎に包まれる。

「10門の主砲は伊達じゃないのよ!!」

 決め台詞と共に立ち現れた守護天使の砲撃が立て続けに撃ち降ろされる。
 我に返った。
 眼前の、既に爆発を繰り返し燃え立つ炎の壁と化した目標に向け、
 不知火も全力射撃を叩き込む。
 弾着観測に一息いれた足柄の、隙を補う不知火の連射に致命的命中が発生。
 ル級は遂に爆沈する。
 これが、公式にも認められた、不知火の初戦果となった。


 戦闘報告:

 第XXXX次相模湾沖海戦

 戦力:人類軍   軽巡1 駆逐艦1
   :深海棲艦軍 駆逐艦1
 損害:人類軍
   :深海棲艦軍 沈没 駆逐艦1

 第8次東京湾沖海戦

 戦力:人類軍   重巡1 軽巡2 駆逐艦6
   :深海棲艦軍 戦艦1
 損害:人類軍   中破 軽巡1 小破 軽巡1 駆逐艦2
   :深海棲艦軍 沈没 戦艦1

 遠征艦隊の帰還遅延及び交信障害について艦隊本部もこれを認識、
 直ちに対応していた。
 即応可能な、
 当該戦域至近最大戦力であった重巡足柄に策敵前進並びに遠征艦隊への触接を指令、
 そして足柄からの敵戦力、
 大型艦発見の報と同時に上申された攻撃許可を即時承認したのだ。
 機関が焼け落ちる勢いで私服のまま明石は掛け付けてきた。
 不知火単艦の突撃を傍観するに忍びずひたすら距離を詰める直線運動と
 結果狙い撃ちされてしまった夕張は中破、
 固い表情ながら明石は冷静迅速に洋上応急作業を遂行、
 ようやく落ち着いた夕張は足柄に気遣われながら曳航され、帰港した。
 そして不知火は食堂の端で一人、壁に向かい手を動かしている。

「あら“ぬい”ちゃんお疲れ〜初陣にして大殊勲じゃない」
「あ、先ほどはどうも」

 書類をまとめる背後から声がかかった。

「戦闘日報?!うわーほんとに、聞きしに優るマジメっ子ねー」

 ちら、と不知火は視線を送り、職務ですのでと。
 実は既に参謀の呼び出しを受け、
 質問への回答と戦闘経過の概略については口頭で報告済みだった。
 文書での提出は明日で構わないとの指示も受けていた。
 自室に戻ったらその言葉に甘えてほぼ確実に寝てしまう、
 誘惑に勝てまいと、食堂の隅にかじりついていた。
 ふ〜ん。

「ねー“ぬい”ちゃん。もしかしたら明石さんも言ってたかもだけど」

 え。
 足柄は声を潜める、
 この戦争は“人間”の戦争なんだから。あんま根詰めないほうがいいわよ。
 不知火は、まじまじと、足柄を見る。

「先は長いんだから、もっと気楽によゆーもって、ね、そういうこと、それじゃ」

 言いたい放題、行ってしまった。
 不知火はその背中を呆然と見送る。
 その脇に別の人影が近づき、
 とん。
 何かを置いた。
 給糧艦
「間宮」は、戦闘力では無く艦娘への兵站維持能力により艦隊戦力を支援し、
 例えばこのように嗜好品の供与も行う。

「遠征艦隊一同からのささやかな差し入れ、だそうよ。遠慮なくどうぞ」

 満面の笑みととも示されたのは慶事でもないかぎり縁の無い、
 特注スイーツである
「横須賀すぺしゃる」。
 それは特大チョコパフェに満艦飾を思わせる豪勢なトッピング。
 突如、忘れ投げ捨てていた猛烈な空腹感に襲われた。
 気がつくとスプーンを突き立てていた。
 名状し難い快楽が舌を、口の中を駆け巡る。
 あれ、私、こんなに甘味好きだったっけ。
 何故か視界がぼやけてきた。
 すこしだけ首をかしげながら右手、左手、そして口を
 それぞれ器用に動かし続ける不知火だった。

 序章 0話 『初陣』 完




あとがき

 毎度、あるいは初めまして出之です。
 
 1億ヒットーおめええええすげえええええ
 そして11周年!!!
 いやー10年一昔と申しますが。継続は力也とも。それはさておき。
 
 
「艦これ」です。
 
「艦これ」といったらアレですよねアレ!、
 我が太平洋戦域ならガンビア・ベイ、
 大西洋ならグローリアス、
 戦艦で空母撃ち放題だぜヒャッハー!!大艦巨砲主義万歳!!
 
 〜しばらくお待ち下さい〜
 
 いきなりですが虹手掛けるのに全くリサーチ不足で、
 不知火、けっこう人気なんですね、
 マイナーマジャーといいますか、
 そりゃ無論スーパースターボーキ赤城さんとか、
 夜戦川内とか不幸薄幸戦艦姉妹とかの通り名二つ名持ちとは格が違いますが。
 
 でもうちの不知火さんは“ぬいぬい”ではなく“ぬいちゃん”なので、
 まあいつものように開き直って独自路線で参ります。
 
 あと末筆になりますが、
 今回はなんと!
 泣く子も黙るシルフェの帝王、
 管理人鳩様とのリレー形式合作ですわはー。
 なんかでさんかしたいなー、
 どうしようかなー、
 あ、鳩s、艦これって知ってますてか既にお書きですね、
 どうでしょう。
 
 快諾されてしまいました有り難や。
 
 ではそろそろ早吸掘りにもどります。
 再開組にも優しい艦これ、みんなもレッツプレイ!
 
 出之でした。



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