【Side:一刀】

 陳留に到着した俺を待っていたのは、詰所での取り調べだった。

「いや、だから怪しい者じゃ無いんだって!」
「嘘を言うな! このような旅の連れが居る時点で、怪しくないはずが無いだろう!」
「こんな見目麗しい漢女を捕まえて、どこぉぉがピクピク脈打つ筋肉が気持ち悪い変態筋肉ダルマですってぇ!」
「そこまで言ってねぇー! って、違う。貂蝉抑えろ! 本気で頼むから大人しくしてくれ!」
「むぅぅ……ご主人様の優しさに免じて、さっきのは聞かなかった事にしてあげるわ」

 貂蝉が怪しいのは重々承知しているつもりだが、街や村に着く度にこれでは正直堪った物では無い。
 特になんだか街全体がピリピリとしている様子で、貂蝉と一緒だった俺は街に着くなり警備兵のお世話になっていた。
 貂蝉の迫力に怯えて、槍を構えて部屋の角で青い顔をして震えている警備兵。もう、なんか取り返しが付かない誤解を招いてしまった気がする。

「ここにバケモノが居ると聞いてきたのだが……」
「だぁぁれが見るのも嫌なバケモノですって、カワイイが抜けてるでしょうがあぁぁ!」
「それは、もういいから! 突然乱入してきたアンタも貂蝉を挑発するような事を言わないでくれ!」

 意匠の見事な大刀を持った長い黒髪の女性が詰所に入ってきて、また場は騒がしくなった。俺の今までの苦労を返して欲しい。
 こんなところでお尋ね者になりたくないぞ、と心の中でツッコミを入れる俺。それは切実な願いだった。
 よく今の今まで、問題無く……いや、問題はありまくったけど無事に旅を続けてこられたものだ。
 自分の事ながら運の良さ、我慢強さに感心する。実のところ、『貂蝉を連れてきたのは失敗だったかな』と思い始めている今日この頃だが、それは後悔しても遅い話だった。
 武術の腕は確かに頼れるが、旅の仲間としてはこれ以上傍迷惑な仲間はいない。

「関羽様、た、助かりました。街に入ろうとしていた不審者二人を捕まえたのですが、そのどうにも要領を得なくて……」
「報告は受けている。ここからは私が引き継ぐので後は任せてくれ」
「了解しました。では、よろしくお願いします」

 ビシッと敬礼をして詰所から出て行く警備兵。
 ――あれ? 関羽?
 警備兵の口から咄嗟に出た名前。目の前のその黒髪の女性の名前は、俺がよく知るものだった。

「え、関羽? あなたが関雲長さん?」
「そうだが……私の事を知っているのか?」
「知っているというか、なんというか……」
「煮え切らん男だな。名はなんという?」
「北郷一刀」
「ほんごうかずと? 姓が『ほん』で名が『ごう』。字が『かずと』と言う事か?」
「いや、えっとそれが俺の名前なんだけど……姓が『北郷』で名が『一刀』、字は無し。で、こっちが旅の仲間の貂蝉」
「……むっ」

 何か俺の名前を聞いて考え込んだ様子の関羽さん。というか、こんなところ関雲長に会えるとは思ってもいなかった。
 そもそも関羽といえば、劉備と義兄弟の契りを交わした忠臣中の忠臣だったはずだ。それがなんで、曹操の街で警備兵なんてしているのか、さっぱり事情が呑み込めない。
 とはいえ、こちらは尋問されている身、迂闊な質問など出来るはずもなかった。
 また変な事態になって貂蝉が暴走でもしたら今度は止められる自信が無いし、正直そんな最悪の事態は勘弁して欲しい。

「北郷一刀、いや北郷殿。貴殿、もしかして真名が無いのではないか?」
「へ? なんで、その事を?」
「やはり、そうか……」

 関羽さんに真名の事を尋ねられて俺は困惑する。
 真名と言うのは、その人の誇りや生き様が詰まっている大切な名の事だ。例え親しい間柄であっても、相手が呼んで良いと認めるまでは決して呼んではいけない名前。軽はずみに口にすれば、問答無用で殺されても仕方が無いという、この地方に伝わる物騒な風習の事だった。
 俺から真名の話をした覚えは無い。しかしどう言う訳か関羽さんは、俺に真名が無いと言うのを確信している様子だった。
 その理由が俺には分からない。関羽さんと俺は初対面のはずだ。少なくとも俺はそう思っている。

「どこかでお会いした事ってありました?」
「いや、初対面だ」
「ですよね?」

 益々、謎は深まるばかりだった。

「すまない。尋問はこれで終わりだ。(いくさ)が近い事もあって、兵達も少し殺気立っていてな。どうか許して欲しい」
「いえ、疑いが晴れたのなら俺はそれで……って戦!?」

 戦があるなんて初耳だ。それで合点が行った。
 街に漂う異様に張り詰めた空気。警備兵達がピリピリとしているはずだ。恐らくは、この時期に訪れた旅人や行商人など怪しい奴を片っ端から警戒しているのだろう。
 そんな中に、俺と貂蝉が現れた。うん、そりゃ捕まって当然だな。俺はともかく貂蝉を見て『怪しく無い』なんて言える奴は目だけじゃなく頭がおかしい。

(ううん……。どうしよう?)

 合点が行ったはいいが、戦となるとどうしたものかと考えさせられる。
 勇気と無謀は違う。俺一人の力で戦いを止められるなんて自惚れた考えはしていないつもりだ。幾ら水鏡さんのところで学んで、貂蝉に武術の手解きを受けたと言っても所詮は素人の付け焼き刃。はっきり言って、そんな事で戦争に勝てるなら武将や軍師は要らない。第一、その戦いがどういったモノかも理解していないし、俺には戦う理由が無かった。
 多少の正義感を振りかざしたくらいでどうにもならないのは、こちらの世界にきてから嫌というほど学んだ事だ。賊を相手に悪戦苦闘している俺が、何の理由も無く(いくさ)なんてモノに首を突っ込めるはずもない。巻き込まれない内にさっさと街を立ち去るか、いやそれだとここまで来た意味が無い。せめて商会に取り次いでもらわないと確認したい事があるし、薬の材料の件もある。そうして頭を悩ませていると、関羽さんの方からある提案をしてくれた。

「その事なのだが……北郷殿」
「え、はい?」
「私達の商会に、ご足労願えないだろうか?」

 それは俺からすれば、願ったり叶ったりの申し出。しかし、どこか不安を誘う一言だった。

【Side out】





異世界の伝道師外伝/天の御遣い編 第49話『三人目の御遣い』
作者 193






【Side:太老】

 正木太老です。ええっと俺は現在、張三姉妹と十名ほどの従者と一緒に洛陽の都に向かっています。
 実は、その案内役と護衛に洛陽から派遣された人物というのが、あの有名な三国志最強の武将、呂奉先(りょほうせん)と――

「誰がツルペタで前と後の区別が付かない胸無しのチビですか!」

 と、このようにヒステリックに喚き散らしているお子様が『陳宮(ちんきゅう)』、字を『公台(こうだい)』。自称『呂布(りょふ)の軍師』を名乗る幼女だ。
 同じ軍師でも普段から朱里や雛里、風と言った頭の切れる子供軍師を見慣れている俺からすると、呂布の軍師を名乗るこの少女は些か頼り無く映る。まあ、キャンキャン吠えている姿は子犬的で可愛いのは認めるが、風に比べると随分と扱いやすいお子様軍師だった。

「フッ、まだまだ青いな」
「何が……ですか?」
「本当に大切なモノに気付かず、喚き散らす事しか出来ないようでは三流だ」
「本当に大切な物……うっ! お前に諭されたく無いのです! 余計なお世話ですよ!」

 偉い人も言っていた。『貧乳はステータスだ』と。
 胸が無いのは寧ろ誇るべきところだと言うのに、それが分からないとはまだまだお子様な奴だ。

「ねね、五月蠅いで。メシ時くらい少し静かにしい」
「それは――こいつがねねの胸を見て、ため息を吐いたからいけないのです!」
「そりゃ、ため息を漏らしたくなる気持ちは分からんでも無いけどな……」
「なんですとー! ねねの胸には『可能性』という名の希望が沢山詰まってるですよ!」
「胸の話なんてしてないわ! そんなんやから、ため息を吐かれる言うとるンや!」

 そして、このもう一人の案内役兼護衛というのが、神速で名高い武将『張遼(ちょうりょう)』、字を『文遠(ぶんえん)』。真桜と同じ関西弁を喋る、はきはきとした気持ちの良い女性だ。
 ちなみに『ねね』と言うのは陳宮の真名だ。正確には『音々音(ねねね)』。何とも安直なネーミングセンスである。
 そして、その音々音の話に出て来た『(シア)』と言うのが張遼の真名。ついでに呂布の真名は『(レン)』と言うそうだ。
 実は色々とあって、これらの真名を預けてもらうに至った。その色々に関しては、これから追々と話して行きたいと思う。
 とはいえ、呂布と張遼といえば董卓のところの二枚看板だ。その二人が俺の案内役としてやってきたというのには正直驚かされた。
 状況が状況だけに、『何というビップ待遇!』と喜んでもいられない訳だが……。

「ねね、少し黙る。胸が小さいのは本当」
「恋殿まで!?」
「そやそや、しっかしこの缶詰って酸味と塩っ気がたまらん驚きの美味さやな。これなら酒のあてにも合いそうや」
「青州から船で運ばせた新鮮な魚をオイルサーディンにして詰めてあるからな。俺のオススメだ」
「おいるさーでぃん?」

 聴き慣れない言葉に首を傾げる呂布こと恋に、俺は『油で煮る』というオイルサーディンの意味を簡単に教えてやる。他にも色々と変わった食べ物がある事を教えてやると興味津々といった様子で頷いていた。よく食べるのは季衣や鈴々と同じだが、食べている仕草が小動物ぽいというか、何か癒される恋。こうして食事中の姿を見ていると、とても大陸最強と呼ばれる武将と同一人物とは思えない。こんな出会い方をしていなければ、華琳達とも仲良くやれたと思うだけに少し残念でもあった。
 でもまあ、まだ機会は残されている。陳宮……音々音も余り戦いに向いているとは思えない。恋さえ良ければ二人一緒に、全部片付いた後にでも商会に誘ってみても良いだろう。
 ちょっと生意気ではあるが、音々音の事も俺は嫌いではない。面白いし。子供と考えれば、十分に許容範囲だ。

「ここからやと、洛陽まで後二日ってところやな。でも、いいんか? 間者(あいつら)ノシてもうて。アンタの立場が更に悪くなるで?」
「は? 張三姉妹の着替えを覗こうとしてた痴漢を撃退しただけだけど? 悪いのは向こうだろう?」
「フフッ、そやったな。痴漢は確かに男の風上にもおけん犯罪行為や」

 酒の満ちた杯を片手に、クックッと心の底から可笑しそうに笑う霞。
 何の事を言っているのか分からないが、俺は張三姉妹が着替え中だった天幕の中を、不届きにも覗こうとしていた馬鹿二人を気絶させて捕まえただけだ。そいつ等は今、簀巻きにして後方の馬車に荷物と一緒に積んである。霞達が連れてきた兵士なのだが、もう少し兵の躾をきちんとしておいて欲しかった。
 あれでは、張三姉妹の追っ掛けをしているマナー違反のファンとやっている事は変わらん。

「白々しいとはこの事なのです。噂通りの食えない男なのですよ」
「太老は凄い。それは、ねねも認めてる」
「うっ……。認めてるのは、ちょっとだけなのです! 恋殿の優しさに感謝するですよ!」

 何かよく分からんが、音々音も感謝してくれているようだった。痴漢が居なくなったのが、そんなに嬉しいのだろうか?
 まあ、女の敵だしな。痴漢が一緒だと安心して着替えも出来なければ身体も拭けないだろうし、張三姉妹も喜んでいた。
 恋と霞が相手だと、痴漢の方が寧ろ危険な気もするけど。文字通り命懸けの意味で。

 俺達は今、洛陽まで残り二日ほどと言った位置で休憩を取り、昼食に舌鼓を打っていた。最後の大休止と言ったところだ。
 天和と地和の二人は長旅で疲れたといって、食事もそこそこに人和に付き添ってもらって馬車で休んでいる。
 これから敵の懐に飛び込もうかというのに呑気なものだ。とはいえ、あのマイペースさには随分と助けられていた。

 ――天和曰く『怖くなんて無いよ。太老様が一緒なんだもん』
 ――地和曰く『いざとなったら太老が護ってくれるんでしょ?』

 と言われたら、俺も返す言葉が見つからない。人和に『頑張ってください』と苦笑混じりで激励されたくらいだ。
 元より彼女達の安全は考慮するつもりではいたが、そこまで言われたら雇用主というより一人の男として、彼女達に傷一つ付けさせる訳にはいかなくなってしまった。

「ウチもこれが終わったら商会で雇てもらおかな? 美味しい食事に美味い酒、これさえあれば言う事が無いわ。どや? 結構お買い得やと思うんやけど」
「考えとくよ。それより、そろそろ洛陽だけど……本当に良いのか?」

 確認の意味で三人に尋ねる。俺は三人にある事を依頼されていた。
 真名はその引き替えに、と三人が預けてくれたものだ。
 真名の名が持つ重みの通り、その誇りと生き様の全てを俺に預ける覚悟の上で。

「うん。恋は(ゆえ)を助けたい」
「ウチもや。そのために、恥を承知でこんな事を頼んどる。でも、そっちこそいいんか? 危険を承知で頼んどるウチらが言えた義理や無いけど、その代償があの三人の身の安全って本当にそれだけで……」
「彼女達は荒事に慣れてないからな。適材適所だよ。それに危険って言うのなら、そっちだって同じだろう?」
「……そやな。でも、安心したわ。話に聞いてた通りのお人好しみたいやけど、だからこそ信じられる」

 (ゆえ)というのは董卓(とうたく)の真名だ。
 俺が交換条件に彼女達に頼んだ事は、張三姉妹の身の安全。俺に付き合わせて彼女達まで危ない目に遭わせるつもりはない。程々のところで折を見て、張三姉妹を逃がしてもらう約束を交わしていた。
 その代わりに俺は彼女達の願いを聞き、その依頼をこなす。互いに大切な物を預ける。これは決して違える事が許されない契約だった。
 だがこれは、俺にとっても千載一遇のチャンスでもあった。

 この件には何か裏があるとは思っていたが、やはり董卓ではなくその裏には別の人間が控えていた。
 しかも、そいつが先日の暗殺未遂事件に関わっていた可能性が高い一番有力な人物だ。
 二度とあんな悲劇を繰り返さないためにも、幼女の敵を野放しには出来ない。全ては、俺の事を『お父さん』と慕ってくれる璃々のためだ。

「もう一度、確認しておくです。これが、ねね達の置かれている状況です」

 三人から聞かされた話の内容を簡単に説明すると、こうだ。
 都で悪政を敷いていると噂される董卓は、やはり董卓の名を騙った偽物の仕業だった。しかし、それを実行しているのは間違い無く董卓の家臣達。それが噂の信憑性を高める結果へと繋がっているのだが、彼等も好きでそんな命令を聞いている訳ではない。
 罠に嵌められ幽閉された董卓を人質に取られ、その命に従わざるを得なくされているという話だった。

 ここまで話せば察する事が出来ると思うが、俺が彼女達に依頼されたのは董卓の救出だ。
 彼女が幽閉されているのは、宮中の限られた者しか知り得ない秘密の地下牢らしく、彼女達は監視の目があるためその場所を探る事は疎か、董卓の側近の賈駆(かく) を除いて宮中に近付く事すら出来ないそうだ。董卓の捕らえられている場所の見当は大凡ついているのだが、それ以上踏む込む事が出来なくて困っていたらしい。
 今回、俺を連れてくるように命令してきたのはその黒幕の人物らしく、俺を宮中に誘い出して罠に嵌める算段でいるという話だった。
 そこで俺が捕らえられれば、相手は間違い無く俺を最も安全で隠しやすい地下牢に幽閉するだろうとの事。
 虎穴に入らずんば虎児を得ず、の言葉通りその隙を突いて董卓を助け出し、都を脱出して欲しいとの話だった。
 脱出までのサポートは彼女達の方でしてくれるらしく、そのための準備は既に進めているそうだ。ようは、その切っ掛けを作って欲しいのだろう。

 余談ではあるが、恋と霞の二人が俺を迎えにきたのは抵抗した場合、俺を捕らえられるのがその二人しかいないと判断されての事だそうだ。後は、賈駆の手元から戦力を分断する狙いがあるという話だが、それを差し置いても俺の実力を随分と高く評価してくれているようだった。
 単純な武術の腕なら、二人の方がずっと上だと思うんだがな。反則的な身体能力の面で、それでも俺の方が有利だろうけど。まあ、どちらにしても戦いたい相手ではない。平和が一番だ。

 話は戻るが、俺を幽閉するのもいざと言う時の人質として使うつもりなのだろう。後は商会に無茶な取り引きを持ち掛けるためとも考えられるが、なかなか狡賢い人物のようだ。
 自分を死んだ事にして暗躍するなど、実にセオリーに忠実な小悪党らしい黒幕だ。十常侍筆頭、張譲(ちょうじょう)。それが、幼女至上主義(オレたち)の敵の名だった。
 十常侍を始末したのも自分が殺されたという信憑性を持たせるため、後は権力を独り占めするためと聞いて正直呆れた。

「絶対に成功させよう。及ばずながら、俺も力を貸させてもらう!」
「ああっ! よろしく頼むで!」
「……恋も頑張る」
「恋殿が言うから協力してやるですよ! そこを勘違いしないで欲しいです!」

 欲に目が眩み、璃々にまで手を出した幼女の敵を俺は許すつもりはない。
 挙げ句には少女を人質に取り、その少女に全ての汚名を着せて自分は安全な場所で悠々と権力を握ろうなどと許し難い外道だ。
 ただの悪党ならまだしも、外道を相手に容赦をするつもりはない。今回ばかりは一切手を抜くつもりは無かった。
 俺ばかりに注視して、連中は俺達≠甘く見すぎている。それが失策だと言う事を思い知らせてやる。

「なあなあ、それも良いけど太老。姉さんから聞いてるで。アンタ無茶苦茶強いんやろ? 恋を軽くあしらって見せたあの姉さんが認めるほどの腕、よかったらウチに見せてくれへんか? 恋も見てみたいやろ?」
「やらなくても分かる。太老は強い」
「へぇ……。恋に戦わずしてここまで言わせるなんて、益々戦ってみとうなったわ。なっ、いいやろ! 一回だけでいいから!」
「勘弁してくれ……」

 とんだ戦闘狂(バトルジャンキー)の申し出を、『それよりもやる事があるだろう?』と諫めた。

「なら、無事に生きて帰れたら、そのご褒美に約束を果たしてもらうで」

 と思ったのも束の間、なし崩し的に約束させられてしまった。
 クスクスと笑いながら、『これで死ねんようになってしもたな』と言われてしまうと、さすがにダメとは言い難い。
 これは覚悟を決めなくてはいけなさそうだ。凪や春蘭で理解している。絶対に諦めてくれそうに無いしな。この手の相手は……。

 しかし、まさか三人の口からあの人≠フ名前が出てくるとは思ってもいなかった。オレが三人の話を無条件で信じる事が出来たのは、その人の名前を出されたからだ。
 俺の事に詳しく、霞が『姉さん』と慕い、この策を三人に授けた張本人。董卓の右腕、軍師『賈駆(かく)』と一緒にいるという謎の女性。三人が俺を信じて、この策を託すつもりになった原因もその女性にあった。

(俺を迎えにきたとか? まあ、会えばはっきりするか……)

 董卓軍の頭脳とも言うべき『賈駆』すら唖然とさせる智謀を持ち、最強の武将『呂布』をも唸らせる武術の腕を持つ、華琳をも上回る天才。
 どこの完璧超人だと思える人物だが、実際のところ心当たりは大勢居る。完璧なのだが、華琳よりも遥かに厄介な人物を俺は大勢知っていた。
 まさか、その知り合いの中の一人が董卓の元に身を寄せていたなんて……。
 これが吉と出るか凶と出るか、俺には判断がつかなかった。出来る事なら祈りたい。吉であって欲しいと。

【Side out】





 ……TO BE CONTINUED



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.