※本作品は『異世界の伝道師』0話からの分岐IFルートです。 先に『異世界の伝道師』の本編0話をご覧になることを強くオススメします。



【Side:なのは】

 私は高町なのは。私立聖祥大学付属小学校に通う、極々普通の小学三年生。
 いや、今は過去形で『普通の小学三年生でした』かな?
 日常から非日常へ。私の日常は、あの日、あの時に大きく変わってしまった。

「なのはちゃん、待って。一緒に帰ろう」
「もう、なんで先に行っちゃうのよ……。なんか今日は朝からずっとおかしいわよ?」
「うっ……ごめんなさい」

 私と同じ聖祥大学付属小学校の白い制服に身を包んだこの二人は、クラスメイトの月村すずかちゃんとアリサ・バニングスちゃん。
 いつも元気一杯で少し勝ち気なアリサちゃんは、日米に幾つもの関連会社を持つ大会社『バニングス』のお嬢様で、常に学年一の成績を収める優等生。
 物静かな落ち着いた装いを見せるすずかちゃんは、工業機器の開発を手掛ける日本有数の大会社『月村重工』のお嬢様で、お姉さんの忍さんは私のお兄ちゃんと結婚を前提としたお付き合いをしている恋人さんだったりします。
 極普通(?)の一般家庭に育った私と違って二人とも凄いところのお嬢様だけど、小学一年生から同じクラス。今年からは同じ塾に通っている大の仲良しさんです。
 ちなみに私の家は二人のように大きな会社と言う訳ではないけど、夫婦で『翠屋』と言う小さな店を営んでいます。
 翠屋は駅前商店街の真ん中にあるケーキとシュークリーム、自家焙煎コーヒーが自慢の喫茶店。マスターである私のお父さん――高町士郎さんの淹れたコーヒーと、十五歳の頃から海外でパティシエの修行をしていたという私のお母さん――高町桃子さんの作るケーキは美味しいと評判で、近所の奥様や学校帰りの女子校生に人気のお店なんです。

「さっき、すずかとも話してたんだけど、今日は塾も習い事も休みだし、後でうちに来ない? 新しいゲームを買って貰ったのよ」
「あっ、でも今日は……」

 今日は……と言おうとしたところで、私は言いかけた言葉を呑み込んだ。
 とても二人に話せるような話の内容ではなかったから……。

「なのはちゃん。何か用事でもあるの?」
「えっと……桜花(おうか)ちゃんと約束してて」
「桜花? なのはの新しい友達?」

 心配そうに尋ねてくるすずかちゃん。訝しげな視線を向けてくるアリサちゃん。
 正直、二人に黙っているのは心苦しかった。でも、二人をあんな危険な目に遭わせる訳にはいかない。
 昨晩……桜花ちゃんが助けてくれなかったら、私は死んでいたかもしれない。それを考えると、二人を巻き込みたくなかった。
 でも、桜花ちゃんの事くらいなら……二人を安心させるために私は魔法の事だけを伏せ、桜花ちゃんの話をする事にした。

「うん、平田桜花ちゃん。色々と事情があって、今は私の家で一緒に暮らしてるの」
「なのはちゃんの家で?」
「初耳なんだけど……なのはの親戚?」
「えっと……お父さんとお母さんの知り合いの子で……」

 膝下まで伸びた、少し癖のある栗色の髪の毛がチャームポイントの可愛らしい女の子――平田桜花ちゃん。
 行方不明のお兄さんを捜して遠いところからやってきたらしくて、私が日常から非日常へと足を踏み入れる事となった事件を切っ掛けに秘密を共有する友達になり、色々と込み入った事情があって、今は私の両親の勧めで私の家で一緒に暮らしていた。

「……知人の子ね? その子って私達と歳が近いの?」
「多分、私と同い年くらいだと……思う」
「思う? なんで、疑問系なのよ?」
「うっ……。それには色々と事情があって……ちゃんとした年齢を聞けてないって言うか……」

 アリサちゃんは鋭いから、変に思われてしまったかもしれない。でも、嘘では無く本当の話だった。
 見た目は同い年くらいにしか見えないのに中身は凄く大人びていて、私の知らない事を桜花ちゃんは沢山知っていた。
 知識だけじゃない。他にも見た事も無い不思議な道具を持っていて、銀河とか異世界とか、桜花ちゃんの話は色々と驚かされることばかりだった。
 その不思議な道具の数々も、捜しているお兄さんが作った道具らしくて……その話を聞いたユーノくんが凄く驚いていたっけ?

「決めた! 今日はこのまま翠屋に集合よ! なのはは、その桜花って子に連絡!」
「え? ええっ!? ア、アリサちゃん!」
「ユーノにも会いたいしね。すずかも会いたいわよね?」
「え、うん……。でも、急にお邪魔したらご迷惑なんじゃ……」

 さっき話にも出てきたユーノくんって言うのは、私の大切なお友達で言葉を話すフェレットのこと。
 尤も、ユーノくんが言葉を話せる事は秘密で、その事をアリサちゃんとすずかちゃんは知らなかった。
 この事を知っているのは私と桜花ちゃん。それに当事者であるユーノくんと、私の家族……高町家のみんなだけだ。

(はあ……。ユーノくんと桜花ちゃんになんて説明しよう……)

 この話をちゃんと説明するには、私とユーノくんの出会い。
 そして『魔法』を知り、非日常の世界に足を踏み入れる事になった――あの日に遡る必要があった。

【Side out】




異世界の伝道師外伝/マッドライフ 第1話『魔法との出会い』
作者 193






 幾ら夜の住宅街とは言っても、全く人の気配がしない異様な光景。
 人は疎か、虫や動物の姿さえ見当たらない……そんな異質な世界に一人の少女の姿があった。

「はあはあ……」

 栗色の髪の毛を赤いリボンで左右に束ねたツインテールの少女が、臨海公園に向かって全力で走っていた。
 彼女の名は高町なのは。私立聖祥大学付属小学校に通う小学三年生。その華奢な腕の中には、怪我をしたフェレットが抱かれていた。

「僕に少しだけ力を貸して、お願いします。御礼は必ずしますから」
「御礼とか、そんな場合じゃないでしょ!」

 なのはに抱きかかえられた、この人の言葉を話すフェレットこそ、世界から切り取られたかのような異質な空間を造りあげた張本人。この空間は他に被害が及ぶことを危惧した彼が、咄嗟に展開したモノだった。
 封時結界――その名の通り、通常空間から特定の空間を切り取り、時間信号をズラす結界魔法。その効果範囲は数百メートルにも及ぶ。
 術者が許可した者と結界を視認出来る魔力を持つ者以外は、結果内に入る事は疎か認識する事すら出来ない便利な魔法だ。

「今の僕の魔力じゃアレを止められない。でも、あなたなら――」
「……魔力?」

 逃げ切れないと悟ったのか、フェレットが突然、なのはの腕を離れて地面に降り立ち、頭を下げてなのはにお願いをはじめた。
 今の自分の力では、この危機をどうすることも出来ない、となのはに説明するフェレット。
 事実、この結界を張るのに精一杯の魔力しか残されていない彼には、現状を打破するほどの力は無かった。
 しかし、なのはは極普通の小学生。当然の事ながら特別な力などあるはずもなく、魔法を知ったのも遂さっきのことだ。
 それでもフェレットには何か根拠があるのか、なのはならこの状況をなんとか出来る――と確信を持っている様子が窺えた。

 ――ドオオォォン!

 その時だった。建物が崩れ落ちるような大きな音が辺り一帯に轟く。なのは達の背後でもくもくとあがる土煙。
 その音は障害物を迂回せず、真っ直ぐになのは達のところに向かって来ていた。
 音のした方に振り返るなのは。得体の知れないものへの恐怖から喉を鳴らし、小さな身体を小刻みに震わせた。

 全ては学校の帰りに、怪我をしたフェレットを見つけた事からはじまった事件。
 いつものように友達二人との帰宅途中、なのはは不思議な出来事に遭遇した。
 立ち寄った公園の破壊されたボート乗り場が、夢の中に出て来た光景と正夢のように重なって見えたのだ。

 ――たすけて

 次に聞こえてきたのは助けを求める声。声のした森の方へと足を運び、そこで偶然見つけたフェレット。
 アリサとすずか、一緒に居た二人の友達には聞こえなかった声が、なのはには確かに聞こえていた。
 その後、動物病院へと連れて行き、怪我をしたフェレットを預けて帰ったのが夕方のこと――

「……どうすればいいの?」

 このままでは何れバケモノに追いつかれる。そう覚悟を決めたなのはは、一番事情に詳しい目の前のフェレットの言葉を信じてみる事にした。
 夜、再び聞こえてきた助けを求める声に導かれるように動物病院へと向かったなのはは、そこで破壊された病院と、バケモノに襲われているフェレットの姿を見つけた。
 その後の事は知っての通りだ。バケモノの隙をついてフェレットを助け出し、やっとの思いでここまで逃げてきた訳だ。
 しかしバケモノは諦めた様子は無く、何かに反応して動いているかのように、なのは達の姿を捜して後を追ってきていた。

「これを……」

 フェレットが首から掛けていたペンダント。最初に見つけた時は、飼い主が目印に付けたものだとなのはは考えていた。
 しかし実際には違っていた。それは彼の持ち物にして、魔導師をサポートするために作られた魔導端末。
 組み紐の先に付いた赤いガラス玉のような物を口にくわえ、フェレットはそれをなのはに委ねた。

「あっ……」

 受け取った瞬間、なのはは小さく驚きの声を上げた。
 なのはの中の何かに反応するように、赤いガラス玉が桜色の輝きを放ったからだ。

「それを手に、目を閉じて心を澄ませて」

 光と共に、胸の中から込み上げてくる熱い何か。
 その何かを感じ取りながら、なのははフェレットの言葉に従った。

「風は空に、星は天に」
「風は空に、星は天に」
「不屈の心はこの胸に」
「不屈の心はこの胸に」

 フェレットの言葉を追って、祈るように復唱するなのは。
 なのはを中心に広がる桜色の魔法陣。ドクンドクンと脈打つ心音とは別の何かが、なのはの身体を満たしていく。

「この手に魔法を――」

 詠唱を終えたなのはの身体を、空を覆う巨大な魔法陣と桜色の光が包み込んだ。
 そのガラス玉の名は『魔導師の杖(レイジングハート)』。少女の矛となり、盾となる魔導端末(デバイス)
 光の中から西洋の騎士を思わせる黄金の胸当て、鋼のガントレット、純白の衣を身に纏った一人の魔法少女が姿を現した。


   ◆


 と、言うのが昨晩の出来事。なのはとフェレット(ユーノ)の出会い。日常から非日常へ、普通の少女が魔法少女へと変わった切っ掛けだった。
 桜花となのはが出会ったのは、その直ぐ後の事だ。

「あ、あの……はじめまして。月村すずかです」
「なのはの親友≠フアリサ・バニングスよ!」
「平田桜花です。家庭の事情で、今はなのはちゃんの家でお世話になってます」

 先制攻撃のつもりで、なのはの親友と言う事を強調したアリサだったが、その相手に軽くスルーされて不満げな表情を浮かべる。
 翠屋の一角に、私立聖祥大学付属小学校の制服に身を包んだ三人とおまけが一匹、更に私服姿の少女がテーブルを囲って座っていた。
 肩の露出した白いシャツに、膝上二十五センチの短い黒のスカートと黒のブーツ。後で二本に結った長い栗色の髪の毛が特徴的な少女。
 見た感じ歳は、なのは達とそれほど変わらない感じだ。彼女が、なのはの言っていた少女――平田桜花だった。
 すずかとアリサの自己紹介に、笑顔で当たり障りのない応対をする桜花。しかし内心では今のこの状況に困惑していた。

「これは私からの特別サービス。他のお客さんには内緒よ」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとうございます。あの、おば……」
「おば?」
「も、桃子さん」

 人数分のジュースとおまけのシュークリームを運んできた桃子に、桜花の事を尋ねようとしたアリサだったが、不注意にも『おばさん』と言いかけ、直ぐに言葉を改めた。
 一瞬、桃子の背中から漏れでた黒いオーラに危険な気配を感じ取ったからだった。

「彼女が……なのはと一緒に暮らしてるって本当ですか?」
「あら? なのはから、何も聞いてないの?」

 なのはから、もう話を聞いているのだとばかりに思っていた桃子は、アリサの話に驚いた様相を見せる。
 なのはの方は『ごめんなさい』とばかりに頭を下げており、桜花の方は突然押し掛けてきた二人に困惑している様子が窺えた。
 すずかとアリサ、それになのはと桜花の態度を見て、大体の事情を察した桃子は、

「ええ、一緒に暮らしているわ。詳しくは本人から聞いた方が早いわね」

 そう言って注文の品をテーブルに置くと、にこにこと楽しそうに『頑張ってね』と桜花に言い残し、店の奥に消えていった。
 桃子に応援され退路を失った桜花は、この状況を作った張本人(なのは)へと恨めしげな視線を送る。

『なのは、後で詳しく説明してもらうわよ』

 と、ばかりに無言で語りかけてくる笑顔の桜花にプレッシャーを掛けられ、顔を青くするなのは。
 なのはの腕に抱かれていたユーノも、間接的にそのプレッシャーにあてられて身を震わせていた。
 その後、予め用意してあった設定を、アリサとすずかの二人に慣れた様子で説明し始める桜花。
 仕事の都合で急遽、両親が海外赴任する事になったため、高町家にお世話になっている事などを二人に話して聞かせていた。

「そうなんだ。ご両親は仕事で海外に……。それで、なのはちゃんのところに?」
「はい。私の両親と高町ご夫妻が古くからの知り合いで、その縁もあってご厄介になってます」

 桜花の事情を知って、少し暗い表情を浮かべるすずか。両親が傍にいない寂しさは、彼女もよく知っている一人だった。

「なるほどね。でも、どうして親について行かなかったのよ?」
「その……語学系は余り得意じゃなくて。それに日本には友達も居ますし、住み慣れている分、愛着もありますから。本当は親戚のお姉さんと一緒に暮らす予定だったんですけど……今は仕事が忙しいらしくて家に居ない事が多くて、『女の子の一人暮らしは危ないから、好きなだけうちに居なさい』と高町夫妻が申し出てくださったんです」

 海外=異世界、親戚のお姉さん=樹雷関係者と真実を織り交ぜながら、スラスラと説明する桜花の話にアリサとすずかだけでなく、なのはも感心した様子で聞き入っていた。
 自分には、ここまでスラスラと嘘と本当を混ぜながら説明は出来ないと、なのはは考える。
 事実、なのはだと追及されて墓穴を掘っていた可能性の方が高かった事を考えると、アリサとすずかを桜花に引き合わせたのはある意味で正解だったと言えた。
 事情を知って、桜花を心配するすずか。アリサも合点が行った様子で『なるほどね』と頷いてみせた。

「あたしやすずかのところも、仕事でパパやママは留守にしている事が多いから、気持ちはよく分かるわ」
「私にはお姉ちゃんやノエル。それにファリンがいるけど……そうか、桜花ちゃん今は一人なんだ」
「親は居ないけど鮫島や使用人達が居るから、あたしも寂しくなんてないけどね」

 ノエル・K・エーアリヒカイトとファリン・K・エーアリヒカイトは、月村家で働くメイド姉妹。鮫島は、祖父の時代からバニングス家に仕え、執事兼運転手をしている初老の男性のことだ。
 アリサとすずかの二人も本音を言えば、両親が家に居なくて寂しく無いというのは嘘になるが、家族同然に育った使用人達に囲まれ……心を許せる親友のお陰でそれなりに充実した日々を送っていた。
 こうして無理を言って、なのはの後についてきたのも口にはしていないが、一日様子のおかしかった親友を心配しての事だった。

 しかし桜花が原因なのは間違い無いが、アリサの想像していたのとは違っていた。
 桜花が嫌な奴なら、なのはのために一言いってやろうと意気込んで乗り込んできたのだが――
 話を聞いている限り自分達とも境遇が良く似ており、礼儀正しく思い遣りのある女の子だったので、アリサも少し気まずそうな表情を浮かべていた。

「ごめんなさい。私の所為で、二人に余計な心配を掛けてしまったみたいで。なのはちゃんに街を案内してくれるようにお願いしたのは私なの」
「ううん。こちらこそ、強引に押し掛けるような真似をして、ごめんなさい。ほら、アリサちゃんも」
「うっ……ごめんなさい。とんでもない勘違いをしていたみたい……あたしが悪かったわ」

 こう言った時、変にプライドを発揮してごねると、後ですずかが恐いことをアリサは知っていたので素直に頭を下げて謝った。
 それに自分に非があることは素直に認めていた。少し我の強いところはあるが、根は優しい友達想いの女の子なのだ。

(なのはちゃん、また悩み気味なのかな?)
(なのはのバカ。恥かいちゃったじゃない。考え過ぎなのよ)

 昼間、なのはの様子がおかしかったのは、桜花の事情に首を突っ込んで、また色々と深く考え込んでしまっていたのだろう、とアリサとすずかは考えた。
 アリサ、すずか、なのは――三人の出会いも切っ掛けは、なのはの一言だったからだ。

 なのはは昔から考え過ぎというか、思い詰めると真っ直ぐなタイプの女の子だった。
 その想いの強さがなのはの長所でもあり、短所でもある事をなのはの二人の親友はよく知っている。今から丁度二年前、そんななのはが居たから、三人はこうして友達になる事が出来たからだ。
 今回のこともそう――他人の事情に深く足を踏み入れても迷惑がられるだけだ。嫌がられること、面倒なことを人は普通避ける。
 でも、なのはは一度決めた事は納得が行くまで突っ走らないと気が済まない、なんとも不器用な性格の持ち主だった。
 程々にしておけばいいのに、なのははその程々の付き合いが出来ない。アリサ曰く、情熱家と言うよりは『突撃ロケット』。なのはの性格を一言で捉えた的確な例えだった。

「お詫びに……あたし達も一緒に街を案内してあげるわ」
「えっと、バニングスさん? でも、私はなのはちゃんに……」
「……アリサ。友達なんだから、名前で呼び合うのが普通でしょ?」
「え? 友達?」
「うっ、何よ。なのはの事は名前で呼んで、あたしはダメだっていうの? ほら、すずかも何か言いなさいよ!」
「えっと……うん。私も桜花ちゃんとお友達になりたい。出来れば、名前で呼んで欲しいな」

 すずかはともかく、アリサの態度に泣くか怒るかどちらか一方にして欲しいと桜花は思った。
 とはいえ、嫌な気はしなかった。
 なのはの事が本当に心配でここまでやってきた事が、二人のその態度からもよく伝わってきたからだ。

(はあ……私って弱いんだよね。こう言う真っ直ぐな子達に……)

 心配してくれる友達、想ってくれる大切な人が居るのは本当に幸せな事だ。桜花は妹達の件≠ナ、その事を良く理解していた。
 それだけに、二人の行動を否定することも怒ることも出来なかった。

「こちらこそ、よろしく。アリサ、すずか」
「よろしく、桜花」
「仲良くしようね。桜花ちゃん」

 観念して友達らしく敬語をやめ、二人の名前を呼び捨てで呼ぶ事を決めた桜花。
 そんな桜花の答えに満足したのか、アリサとすずかはにこやかな表情を浮かべた。

(良い子達だけど……。それだけに、お兄ちゃんには絶対に近付けちゃダメね)

 無駄な事と理解しつつも、この二人を捜し人に近付けさせないと決意する桜花。 
 少女達だけの昼下がりのお茶会。春風のような優しさと、陽だまりのような温かさに包まれていた。





 ……TO BE CONTINUED



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