土曜日の昼下がり第二アリーナの空、太陽の下を飛び交う、複数のIS。
 そんななかに甲龍を纏った凰鈴音と、ブルー・ティアーズを纏ったセシリア・オルコットの姿もあった。
 ふたりは学年別トーナメントに向けて、連携訓練を行っていた。

「ちょっと鈴さん! そこはそうじゃないと何度言えば!」
「戦況は常に変化するのよ! アンタこそ、支援するなら状況をもっと見なさいよ!」
「鈴さんがひとり前に突っ込み過ぎなんです!」
「何よ! 人の所為にする気!?」

 ガルルルとうなり声が聞こえてきそうな剣幕でいがみ合う二人。
 一夏がシャルルとペアを組んだと聞いた鈴とセシリアは、二人でペアを組むことを決めた……のが二日前のこと。
 優勝を他の誰かに持って行かれるわけにはいかない。それに一夏の強さは戦ったことのあるふたりが一番よくわかっていた。
 他の女生徒に勝利しつつ、一夏とシャルルに勝たなければ優勝は出来ない。
 ならば、とお互いに考えていることは同じと言うことで利害の一致をみたわけだ。
 専用機持ちで組んだ方が優勝の確率は高い。色々と考えた末の苦渋の決断だった。
 しかし一夏を巡っていつも言い争っているふたりが、急に仲良くなれるはずもなく、実際にはこの有様。コンビ以前の問題で揉めていた。

「あの……ふたりとも、そのくらいで」
「山田先生は少し黙っていてください!」
「そうよ! マヤマヤはちょっと黙ってて!」
「マ、マヤマヤ……」

 ISのスーツに身を包み、ラファール・リヴァイヴを装着した山田真耶が口論を始めた鈴とセシリアを仲裁しようと声を掛ける。
 しかし、その試みは予想通り失敗に終わった。
 この時期、自主練習に励む生徒が多いために、放課後のアリーナには監督責任のある教員が交代で常駐していた。
 連携を確認するための模擬戦の相手がいないということで、教師としての責任感から二人の練習に付き合うことを決めた真耶だったが、今になってそのことを少し後悔しはじめていた。
 後悔の原因は言うまでもなく、目の前の二人だ。

 山ちゃん、山ぴー、ヤマヤ……マヤマヤなど、生徒達につけられた渾名の数々。
 ちょっとノリがよすぎるだけで生徒達に悪気はない。それは真耶にもわかっていた。
 親しみを持って接してくれているだけで、それ自体は悪いことではない。
 実際、真耶は人気もあり生徒からの人望も厚い。頼れる先生とまでは言わないまでも授業の内容も分かり易く、生徒から質問や相談を持ち掛けられることも多々あり、それなりに学園の教師として上手くやっていた。
 でも、やっぱり教師として毅然とした態度で接し、生徒の見本となる大人になりたい。
 特に織斑千冬に憧れ目標としている真耶にとって、生徒達に舐められている現状はどうにかしたい問題でもあった。
 そこで、

 ――もっと教師らしく見えるように頑張ろう!

 と、頑張った結果が目の前のこれだ。真耶の言葉は二人に届かない。
 ここで千冬なら鬼の一喝で黙らせることが出来るのだろうが、真耶にはそうした迫力と威厳が欠けていた。

「ふ、ふたりともいい加減にしてください!」

 真耶が珍しく大きな声を上げ、二人を一喝する。
 監督責任を負っていると言うのに生徒の喧嘩を止められないとあっては、教師として致命的だ。
 怒られるのは生徒だけではない。まだ新任の駆け出しに過ぎない真耶も同じだ。
 あとで担任の千冬からも、絶対にお小言をもらうことになる。真耶はそれを一番恐れていた。
 その時だった。
 ――ドシュンッ!

「なっ!?」
「ちょっ!」

 鈴とセシリア、二人の間をかすめる砲弾。真耶はポカンとした表情を浮かべる。
 突然のことに驚き、二人は言い合いをやめて周囲を警戒しはじめた。
 弾道から発射地点を確認。そこには、あのドイツからの留学生ラウラ・ボーデヴィッヒの姿があった。
 彼女がその身に纏っている漆黒の鎧は、ドイツの第三世代機『黒い雨(シュヴァルツェア・レーゲン)』。
 異様な存在感を放つ黒いISの砲身が、今も二人へと向けられていた。

「どういうつもりかしら? ボーデヴィッヒさん」
「アンタなんのつもりよ。まさか、あたし達に喧嘩を売ってる?」
「中国の『甲龍(シェンロン)』に、イギリスの『ブルー・ティアーズ』か。フン、データで見た時の方がまだ強そうではある。乗り手がこの程度では宝の持ち腐れだな」

 カチン、そんな音が聞こえてきそうなくらい、鈴とセシリアの顔は引き攣っていた。
 ラウラの挑発とも取れる物言い。いや、明らかに挑発以外のなんでもない。

「ああ、わかった! スクラップがお望みと言う訳ね! セシリアどっちがやるかジャンケンしましょ!」
「ええ、そうですわね。わたくしとしてはどちらでも構わないのですが――」
「二人掛かりできたらどうだ? こんな極東に住む種馬≠取り合うような盛りの付いたメスに、この私が負けるものか」

 ラウラのその一言で、鈴とセシリアの心は決まった。
 目の前の女が何を企んでいるかはわからない。でも、好きな人をバカにされて黙っていられるほど、鈴とセシリアは大人しく出来てはいなかった。

「だ、ダメですよ! あなたたち喧嘩は――」
「喧嘩などではありません。これは名誉を賭けた――決闘ですわ!」
「そういうこと。キャンキャン吠える犬は、しっかりと調教してやるわ!」





異世界の伝道師外伝/一夏無用 第17話『停止結界』
作者 193






「ど、どうしましょう……。ううっ、いっそ無理矢理にでも止めて」

 今、アリーナの空では、三人の専用機持ちが激しい戦いを繰り広げていた。
 三人の機体は第三世代機。一方、真耶の装着している学園の訓練機ラファール・リヴァイヴは第二世代機だ。
 機体性能差がある上に三対一では、幾ら学園の教師と言えどかなり状況は厳しい。
 上手く連携の取れていない状態の鈴とセシリアのふたりだけなら、今の真耶でも対処できるだろうが問題はラウラの方だった。
 元代表候補生にして現在ではIS学園の教師を務める真耶の目から見ても、かなり強いと思えるその実力。二対一にもかかわらず、鈴とセシリアが押されているような状況だ。
 他の代表候補生とは一線を画す実力をラウラは持っていた。

『それよりも、他の生徒を退避させておいた方がよくない?』
「え、あ……そうですね、って桜花ちゃん!? これ、プライベート・チャネル! どうやって!」
『お久し振り、真耶お姉ちゃん』

 本来プライベート・チャネルは声をださなくても思い描くだけでテレパシーのように通信が出来る。
 にも拘らず予想もしなかった人物からの通信に驚き、真耶は混乱して大声をあげていた。
 キョロキョロと周囲を見渡し、アリーナの観戦席で手を振っている桜花の姿を見つけ、『なんでここに?』と言った様子で更に驚く真耶。
 学園の施設は関係者以外は立ち入り禁止だ。当然、生徒や教員でなければ練習中のアリーナには入れない。それなのに、桜花はそんなことおかまいなしと言った様子でその場にいた。
 この前といい、神出鬼没な目の前の少女に真耶はただ驚くしかない。
 しかもプライベート・チャネルを使って話かけてくるなんて、全くの予想外だった。

『あの……ここは関係者以外立ち入り禁止なんですよ? 幾ら正木の関係者でも』
『それなら問題なし。学園の許可は貰ってあるわよ』

 観戦席とを隔てる遮断フィールド越しに、プライベート・チャネルで話をする真耶と桜花。
 遮断フィールドは攻撃や爆発を無効化してくれるが、声も一緒に遮断されてしまう欠点があった。
 プライベート・チャネルでふたりが会話しているのも、そのためだ。

『そうなんですか? まあ、許可があるなら……』

 許可があるならと、取り敢えず納得する真耶。正木の関係者なら、学園にコネがあっても不思議ではない。
 桜花のように許可さえ取れば、IS学園には生徒や教員でなくても入れる。
 企業の人間やIS関係者が全く入って来れないわけではないのだ。

 IS学園には代表候補生や専用機持ちが大勢在籍している。彼女達は学園の生徒ではあるが、同時に国家や企業に所属する公務員や会社員といった社会的立場のある人間だ。
 国や企業から給料を貰っている以上、他の生徒のように勉強や訓練だけをしていれば良いと言うものでもない。
 定期的な連絡の義務や報告書の提出など、他にも新装備の実装テストや成果を確認するために、関係者が学園を訪れることは特に珍しい話ではなかった。
 確かにここは治外法権区ではあるが、ちゃんとした手続きさえ踏めば入れないことはない。
 ただ、その審査が一般人では絶対に条件を満たさないほど厳しいだけの話だ。

『まあ、今日は少し生徒会に用事があったのと、ついでに学園の案内をね』
『案内ですか? それって……』

 ――ドゴオオンッ!
 真耶が桜花に話の続きを聞こうとした時、突然アリーナの方で轟音が響いた。
 地表に叩き付けられるブルー・ティアーズ。セシリアが地面にクレーターを作り、苦しげな表情で横たわっていた。
 真耶は慌てて、助けに入ろうとする。しかし――

『大丈夫よ。まだシールドエネルギーは残ってるみたいだし、ほら』

 桜花の言葉どおりすぐに空に飛び上がり、鈴の援護に向かうセシリア。
 まだ彼女は勝負を諦めていなかった。

『でも、このままじゃ……』
『ただの模擬戦闘でしょ? やり過ぎなければ好きなようにさせればいいんじゃない?』
『うっ……ですが、教師としては見過ごせません』
『でも、アリーナの使用が代表候補生に優先的に認められているのは、本来こうした実戦データをより多く集めるためだよ? まあ、これは彼女達に専用機を預けている組織側の言い分だけどね。その機会を真耶お姉ちゃんは奪うの?』

 真耶の言っていることは教師の考え。桜花の言っていることは組織の考えだ。
 どちらも言っていることは間違っていない。普通の生徒なら止めに入る真耶の考えを桜花は否定しないだろうが、今あそこで戦っているのは国や企業に専用機を預けられた代表候補生だ。
 普通の生徒よりも多くの権限が与えられ優遇されているのは、彼女達がそれだけの責任と役目を背負っているからに他ならない。
 経緯はどうあれ専用機持ち同士の模擬戦闘は、実戦データを集める上で重要な機会となる。
 あの三人も代表候補生だ。多少感情的になっているようだが、そのくらいのことがわからないほどバカではない。
 そして、それを言われると真耶は辛かった。教師と言えど、学園に雇われている身であることに変わりは無い。
 上からは桜花の言うように代表候補生には配慮するように、特に専用機のデータ収集は優先して行わせるようにと厳命されているからだ。

『それに絶対防御≠セってあるんだし、滅多なことじゃ怪我はしないしね』
『うう……わかりました。でも、本音は?』
『面白そうだから。それに鈴お姉ちゃんがどのくらい出来るか、現段階での実力を確かめたいってのが本音かな?』

 ――私に師事したんだから、情けないところを見せたら再訓練だよね。
 と言ってクスクスと笑う桜花を見て、真耶は目の前の少女の性格と考えていることが、なんとなくわかった気がした。
 先日、桜花が千冬と交わしていた言葉。そこからも鈴と彼女が繋がっているのは確かだ。
 ラウラを使って、鈴の成長を確かめるつもりでいるのだと真耶は推察した。
 教師として普通ならやめさせるべきだが、織斑千冬の知り合いで『正木』の関係者という事実が真耶を冷静にさせ、しばらく様子を見ることを決意させた。
 危なくなったらいつでも飛び出せるように、ISは展開したままに真耶は警戒を続ける。
 そんな真耶の考えを察してか、桜花の方から口を開いた。

『危険になったら、ちゃんと止めるから心配しないで』
『え? それって、やっぱり……』

 プライベート・チャネルを使って会話をしていることから、やはり桜花も専用機を持っているのかと考えた真耶だったが、桜花から返ってきた答えは違っていた。

『ああ、私じゃないよ』

 そう言ってアリーナのピットに目をやる桜花。真耶もその視線に釣られてピットの方を見る。
 そこには赤い長髪を風になびかせ、じっと戦いを見守るひとりの少女の姿があった。


   ◆


「くっ! まさかここまで相性が悪いだなんて!」

 鈴はラウラの猛攻に苦戦を余儀なくされていた。いや、追い詰められていた。
 ラウラの手首から左右に伸びるワイヤーブレード。鉄をも切り裂くプラズマの刃をまとった光の帯が鈴へと迫る。
 それを両手に持った双天牙月(そうてんがげつ)で弾く鈴。身体を回転させ、円を描くように大きな青竜刀を振るい、ラウラの攻撃を流れるような動きで捌いていく。

「なかなかやる。だが――」

 ラウラの動きが変わった。
 更に肩と腰のパーツから、先程のとあわせて合計六本のワイヤーブレードを発射する。
 手数の多さに苦戦する鈴。回避行動と合わせ、双天牙月で上手く捌いているが、それでも厳しいことに変わりは無い。
 だが、鈴も入学時から全く進歩していないわけではない。桜花との特訓、そして一夏との戦いを経て、彼女の才能は徐々に開花の色を見せていた。

「舐めんじゃないわよ!」
「むっ!」

 突然、双天牙月を連結させ、ラウラに向かって投げる鈴。
 自身に迫るワイヤーブレードは機体にかすらせながらも、身体をしならせることで網の目を縫うように回避し、三次元躍動でラウラの上空へと飛び上がる。
 正面からは回転して迫る双天牙月。上からは衝撃砲を構えた甲龍の姿が。

「なかなか良い動きだった。だが、この『停止結界』の前ではすべてが無意味」
「ぐっ……ま、また……」

 鈴の動きが空中でピタリと止まる。双天牙月もラウラの目の前で回転を止め、静止していた。
 ラウラのIS『シュヴァルツェア・レーゲン』の特殊兵装『アクティブ・イナーシャル・キャンセラー』――通称『AIC(エー・アイ・シー)』。慣性停止能力。
 浮遊・加速などISの動作の基本となっている『PIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)』を発展させたもので、対象を任意に停止させることが出来る空間作用を引き起こす第三世代兵器。
 今、鈴の攻撃が止められ、動きを封じられたのも全て、このAICによる能力だった。
 レーザーなどのエネルギー兵器を除く、あらゆる実弾兵器がこの能力の前では無効化される。その上、迂闊に近付けば今の鈴のように機体の動きを止められ、身動きが取れなくなる。
 甲龍のようにエネルギー兵器を持たず、近接戦闘を得意とする機体には天敵とも言える能力をシュヴァルツェア・レーゲンは持っていた。
 しかもラウラの操縦技術は間違い無く、現時点での鈴よりも上だ。
 健闘はしているが相性が悪すぎる。そう、鈴ひとりでは絶対に勝ち目のない相手だった。しかし――

「油断大敵ですわよ」
「――ッ!」

 四機のビットから放たれたレーザー攻撃がラウラを襲う。セシリアのブルー・ティアーズだ。
 セシリアの攻撃でラウラの集中力が途切れ、AICが解除された次の瞬間――
 先程まで停止していた甲龍の衝撃砲がシュヴァルツェア・レーゲンの本体を捉え、ラウラを地表へと叩き付けた。

「危なく、私にまで当たるところだったじゃない!」
「ちゃんと弾道も計算に入れてますわ。お陰で助かったでしょう?」
「そこは感謝するわ」

 ブルー・ティアーズのレーザー攻撃に加えて、衝撃砲までその身に受けたのだ。
 あれでダメージがないということはありえない。鈴とセシリアは警戒をそのままに地表へと目を向けた。
 だが鈴とセシリアの期待は悪い方で裏切られる。土煙の向こう、漆黒の機体が先程と変わることのない姿で佇んでいた。

「アレで無傷って……冗談でしょ?」
「ダメージを受けてないなんてことはないでしょうが……恐らくは」

 地表に叩き付けられるギリギリのところで、AICを発動させて落下の衝撃を殺したのだ。
 AICはあらゆる慣性運動を停止する。それは実弾も敵も、そして自分も例外ではない。

「話には聞いてたけど、厄介な能力ね……」
「正直、ここまでの完成度とは思ってもいませんでしたわ……」

 想像以上と言っていいAICの完成度の高さに、鈴とセシリアは唇を噛む。
 ドイツが開発しているAICのことは知っていたふたりだったが、実際に戦ってみて、ここまで厄介なものだとは思ってもいなかった。

「想像していた以上の力だ」
「何? この期に及んで弱音? 今頃、後悔しても遅いわよ」
「そうですわ。私達を、そして一夏さんを侮辱した罪、その身で償って頂きます」

 先程の攻防も鈴とセシリアにしてみれば、かなりギリギリの戦いだった。
 シールドエネルギーも残り少なく実際にはラウラほどの余裕はないのだが、焦りを隠そうと強がってみせる。
 今のような奇襲は二度と通用しない。ここからが本当の勝負だということは、ふたりにもわかっていた。

「だが、それだけだ」

 ラウラのその一言で戦いが再開された。
 シュヴァルツェア・レーゲンの肩に搭載された大口径のレールカノンが、鈴とセシリア目掛けて放たれる。
 だが、そんな見え見えの一撃を簡単に食らうふたりではない。すぐに左右に散開して攻撃をかわす。
 しかし、その攻撃は伏線に過ぎなかった。

「――甘い」
「なっ!? いつの間に――」

 一瞬にして、セシリアの背後を取るラウラ。
 ――瞬時加速(イグニッション・ブースト)。一夏が得意とするその高速移動をラウラも使えることを、鈴とセシリアは知らなかった。
 ラウラの右手に光るプラズマ手刀を、その身に受けるセシリア。
 そのまま肩から伸びたワイヤーに足と首を絡み取られ、宙で弧を描くように投げ飛ばされる。

「きゃっ!」

 ワイヤーで拘束され自由を失ったセシリアと空で衝突し、絡まるように地表に落下する鈴。
 ふたりが地面に叩き付けられた衝撃で巻き上がる土煙のなかに、更に瞬時加速を使い、ラウラは迷わず飛び込んだ。
 ガンガガン、と煙の中、鉄が弾け合うような轟音が響く。
 音が止んだ、と思った次の瞬間――
 ブルー・ティアーズの青い装甲と、甲龍の肩のアーマーが煙の中から弾け飛ぶように飛び出し、その後を追うようにワイヤーで拘束されたふたりのISが投げ出されるように姿を見せた。

「ぐっ……アイツ、一夏と同じ技を……」
「ゆ、油断しましたわ……」

 ボンッ、と言う音と共に煙から飛び出し、更に急加速したラウラが地面に倒れ、ワイヤーで拘束されたまま身動きの取れないふたりへと迫る。
 シールドエネルギーはゼロ。機体ダメージは既に機体維持警告域(レッドライン)
 シールドエネルギーが限界に達した状態で、次にラウラの一撃を食らえば確実に二人は怪我を負う。

「終わりだ」

 ラウラの無情な一言が、鈴とセシリアに突きつけられる。
 右手に光る手刀。超高熱のプラズマ刃がふたりへと迫る――かに思われた。

「なっ……!?」

 ――ガンッ!
 しかしその攻撃は、六角形のビームシールドを纏ったISの腕に遮られていた。
 見た事もない桜色のISを装着した謎の少女。ラウラの首筋に突きつけられたブレードの刃。
 幾ら戦闘に集中していたとはいえ、接近されるまで気が付かなかった事実にラウラは戦慄する。

「そこまでに、しておきませんか?」

 いつもの明るい姿はそこになく、別人のように冷たい視線をラウラに向ける――五反田蘭の姿がそこにあった。





 ……TO BE CONTINUED



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