鬼神の如き戦いを見せる恵那の後方で、リリアナはひかりを守りながら敵の攻撃を退けていた。
 恵那の登場でどうにか戦いは拮抗しているが、それもいつまで保つかわからない。
 既に五分、いや十分が経過したか? 恵那の降臨術がどの程度保つかはわからないが、分はかなり悪い。
 アテナの方もヴォバンの相手に精一杯で、周囲に気を配っている余裕はなさそうだ。
 ひかりも先程から結界を張ってリリアナの援護をしているが、慣れない実戦に息を乱していた。

「え……?」

 そんな戦いの最中、ひかりの目に小さな丸い生き物の姿が映る。街に放たれた『龍皇』の端末体だ。
 つぶらな瞳で何かを探すようにキョロキョロと周囲を見渡す『龍皇』――その時。

「危ない!」

 魔女の放った炎の弾が『龍皇』に吸い込まれるように向かう。
 危険を顧みず飛び出したひかりは、咄嗟に『龍皇』を抱きかかえた。

「万里谷ひかり!」

 ひかりは抱きかかえた『龍皇』を庇うように身を低くする。
 そんなひかりを見て、リリアナはひかりのもとへ走るが、とても間に合わない。
 直撃する――そう思った刹那、神速でひかりの前に割って入った何かが、炎弾を打ち払った。

「危機一髪ってところだな。大丈夫か?」
「え、はい」

 突然のことで理解が追いつかず、ひかりはポカンとした表情で男の顔を見上げる。
 見た感じ、歳は二十歳前後。どこにでもいそうな平凡な顔付きの男だった。

「うわ……なんだ、これ。戦争でも始める気かよ……」

 次に現れたのは、ぼさぼさとした髪の高校生くらいの青年だった。
 心の底からだるそうに青年は肩を落とす。しかし、その目は光を失っていなかった。
 寧ろ、この先の戦いを楽しみにしているかのような、口元の笑みを見ればそんな印象さえ受ける。

「お姉ちゃん!?」
「ひかり!」

 青年の後から駆け寄ってきた女性の声に驚き、ひかりは声を上げる。
 いつもの巫女装束ではなく洋服だが、見間違うはずがない。それは、ひかりの姉――万里谷祐理だった。
 姉に抱きしめられ、ひかりはくすぐったい安堵感に包まれる。

「本当によかった……無事で」

 涙を流しながら、ひかりを強く抱きしめる祐理。そんな姉の姿を見て、ひかりは一言「ごめんなさい」と祐理に謝った。
 こうなった原因の一端は自分にあることを深く反省していたからだ。

「祐理、感動の再会は後にして。今はこの状況をどうにかしないと――」
「はい……草薙さん」

 後からきた金髪の美少女――エリカに促され、先程までと打って変わって真剣な表情で青年の前に立つ祐理。
 ひかりはそこから、目の前の青年が噂に聞く『草薙護堂』なのだと自然と理解した。
 だとしたら、さっき自分を助けてくれたもう一人の男の人は――と、ひかりは視線を男へと向ける。

「それで護堂。こっちは任せても本当に大丈夫か?」
「ああ、あんたこそ、あの馬鹿でかい狼を本当に倒せるのか?」
「さあ?」
「さあって……」
「まあ、なんとかなるって。あれよりおっかない知り合いを山ほど見てきてるしな……」

 そう言って、ひかりの視線に気付くと男は優しく微笑み、彼女の腕に抱かれた『龍皇』をそっと撫でた。

「龍皇、この子を守ってやってくれ。頼んだぞ」

 言葉を理解しているかのように『龍皇』は身体を震わせ、男の言葉に応える。
 まるで『任せろ』と言っているように、ひかりには思えた。
 ハッと気付いた様子で、すぐにひかりも男に礼を言う。

「あ、あの……さっきはありがとうございました! 私、万里谷ひかりって言います」
「俺は正木太老だ。恐い思いをさせちゃって、ごめんな」

 そう言って、太老はアテナを助けるべくヴォバンのもとへと向かった。
 正木太老――ひかりがずっと憧れていた、とても強くて優しい王様。

(やっぱり王様は、お姉ちゃんの言っていたとおりの人だった)

 王様はきっと助けに来てくれる。そう、ひかりは信じていた。そして、それが叶った。
 姉の話が真実だとわかり、とても嬉しかった。そして誇らしかった。
 だから、その嬉しさを少しでも知って欲しくて、ひかりは祐理へと声を掛ける。

「ねえ、お姉ちゃん」

 ――が、そこでひかりの思考は停止する。
 ひかりの前で護堂と祐理が口づけを交していたからだ。
 舌と舌が絡み合う濃厚な大人のキス。二人は身体を寄せ合い、周囲の目も気にせず求めるように互いの唇を貪る。

「ふ、ふわあ……」

 顔を真っ赤にして、思わず魅入ってしまうひかり。その時。
 護堂の右手に光り輝く黄金の剣が現れ、無数の小さな光が辺り一帯を包み込んだ。

「これって……」
「黄金の剣よ。さっき祐理が護堂に授けたのは、侯爵より盗み視た神の知識。あの剣は神格を斬り裂くのよ!」

 まるで自分のことのようにエリカは護堂の権能(チカラ)を褒め称える。それが当然あるのかのように。
 祐理はエリカや護堂に守られながらも自分の役目を理解し、霊視の力でヴォバンの権能の正体を見抜いていた。
 祐理が護堂にしたのは、ただの口づけではない。『教授』や『啓示』の法などで呼ばれる知識を伝達する呪術だ。
 伝えた知識は『黄金の剣』を抜くための鍵。『死せる従僕』――オシリスの権能を斬り裂く神の知識だった。

「これが王様の力……」

 ひかりはその幻想的な光景に目を奪われる。そこからは一方的だった。
 護堂が神の出自を述べると、言霊が黄金の剣となって十重二十重(とえはたえ)に死者達を取り囲む。
 為す術なく剣にその身を貫かれ、土へと帰っていく死せる従僕達。
 何十、何百年の時を魂の牢獄に囚わてきた死者達が役目を終え、解放されていく。

「喜び? これは死者達の声?」

 ひかりは、そんな死者達の声を耳にしていた。
 感謝や喜び、牢獄より魂を解放してくれた王に対する賛辞の声。暴虐な王の手を逃れ、彼等はようやく永劫の安息を得たのだ。
 これがカンピオーネ。魔術師達に『王』と崇められる人の戦いなのだと、ひかりは漠然と理解する。
 そして、そんなひかりが憧れるもう一人の王様≠フ戦いが始まろうとしていた。

「ところでリリィ。その格好……」
「やめろっ! 私を哀れんだ目で見るな!」

 珍しく困惑した様子のエリカ。まだ戦いは終わっていないというのに、どうにも締まらなかった。





異世界の伝道師外伝/異界の魔王 第19話『王の切り札』
作者 193






「さあ、すべての力を見せてみろ!」
「くっ!」

 力と力のせめぎ合いはヴォバンへと軍配が上がる。豪腕から繰り出された鋭い爪の一撃に大鎌を弾き飛ばされ、アテナは再び窮地に追い込まれる。
 血と闘争を求め、本能の赴くがまま暴れる巨狼の姿は小さな山と言っていい。三十メートルを超す巨大な体躯より放たれる一撃は地面を陥没させ、土と鉄で出来た建造物を瞬く間に破壊する。
 そんな強烈な一撃をもらうかと思った、その時。

「犬臭いんだよ! このロリコン野郎!」

 ――バシーン!
 ハリセンとは思えない打撃音と共に、巨狼へと化身したヴォバンの大きな身体が宙を舞った。
 これにはさすがのアテナも唖然とするが、ヴォバンを宙に浮かせた正体を見て、やはりと納得する。
 巨大なハリセンを肩に担いだ男の名は正木太老。智慧の女神に『よくわからない男』と言わしめる非常識の塊と言える男だった。
 今更ハリセンで巨狼をシバキ倒したところで驚きも何もあったものではないが、それしたって型破りだ。

「大丈夫か? 乱暴はされて……」

 アテナの身を心配する太老だったが、全身泥塗れで衣服は破け、白い肌をさらしたアテナの姿を目にして表情が固まる。
 背中からは黒いオーラが立ち上っているかのようにも見える。アテナでさえ、声を掛けづらい空気が漂っていた。

「くっ! 今のは一体……」

 頭を押さえながらフラフラと立ち上がるヴォバン。その時、太老の姿を目にして歓喜の声を上げる。
 あれから四年だ。再戦を待ち望んでいた相手が、ようやく自分の前に姿を見せたのだ。これを喜ばずにいられるわけがない。
 もはや、ヴォバンの目にはアテナの姿など映ってはいなかった。あるのは早く太老と戦いたいという欲求だけだ。

「ようやく姿を見せたか! この時を待ち侘びたぞ、小僧!」
「うっせえよ、このロリコン。しゃべるな、犬臭いって言ったろうが」
「貴様っ! この私を犬などと一緒にするつもりか!」

 しかし、そんなヴォバンに冷や水を浴びせる太老。そこには老人に対する敬意など微塵もない。寧ろ、侮蔑の色さえ滲んでいた。
 顔を歪ませ、激昂するヴォバン。誇りと強さを何よりも重んじる彼にとって、従順で媚びを売るだけの犬と同列に扱われるのは我慢のならない侮辱だった。
 ましてや、四年前と同じ『ロリコン』などと侮蔑を受ければ腹立たしく思うのも当然だ。しかし、そうとわかっていて太老は汚い言葉を吐き捨てる。
 正直、我慢がならなかった。この老人を相手に敬老精神なんて言葉は出て来ない。それが太老の考えだ。

「四年前にあれだけやられて、まだ懲りてないみたいだな。今では後悔してるよ。二度と立ち上がれないように徹底的にぶちのめしておくべきだったってな!」
「言うではないか。四年前のように行くと思うなよ、小僧。貴様の手の内は、すべてお見通しだ!」
「上等だ。後悔すんなよ、爺さん」

 二メートルを超す巨大なハリセンを肩に抱え、太老は双眸を細めて言い放つ。

「さあ、お仕置きの時間だ」

 それが戦いの合図だった。


   ◆


 激しい戦いを繰り広げる二つの影。圧倒的なスピードでヴォバンを翻弄しながら、太老は鋭い一撃をヴォバンに連続で叩き込んでいく。
 並の相手なら一撃で意識を刈り取るほどの攻撃だが、ヴォバンは限界まで体内の呪力を高め、カンピオーネの超感覚で急所を避けることで太老の攻撃をどうにか凌いでいた。
 ヴォバンは長く生きているが、護堂と同じように武術や魔術に関しては素人。単純な近接戦闘能力なら太老の方が何枚も上手だ。
 太老の攻撃を凌げているのはカンピオーネの並外れた超感覚と呪力も関係しているが、やはり三百年の歳月で培った経験が大きかった。
 それにスピードでは確かに劣るが、巨狼の身体は鋼のように硬い毛と分厚い筋肉に覆われている。アストラル体に直接ダメージを通すとはいえ、ハリセンが打撃系の武器であることに変わりはない。斬るのではなく叩くでは効果が薄いのは当然と言えた。
 その時、太老の渾身の一撃がヴォバンの防御をすり抜け、ようやく横面にクリーンヒットする。地面に顔を擦りつけながら、大きく吹き飛ぶヴォバン。
 さすがに今の一撃は効いたのか、ヴォバンの表情からは先程までの余裕が消えていた。

「はあはあ……さすがにまともに戦っては不利か……」

 かなりの体力と呪力を消耗したのか、肩で息を始めるヴォバン。彼の脳裏には仇敵とも言える中国のカンピオーネの顔が頭を過ぎる。
 まともに打ち合っては不利と言う点では、アレも正木太老と同じ化け物だったな――と苦笑を漏らした。
 一見するとヴォバンに勝ち目はないように思えるが、彼はこの状況でも戦いを楽しんでいた。
 そろそろ奥の手を使うか――と考えた、その時。

「ぬっ! 我が従僕がやられたか――」

 死せる従僕の魂が牢獄より解放されたことをヴォバンは感知する。護堂の顔が頭を過ぎったヴォバンだったが、すぐに意識を切り替えた。
 目の前の男が余計なことを考えながら勝てるほど甘い相手ではないことを、よく理解していたからだ。
 それに失った従僕の代わりなど、その気になれば幾らでも用意が出来る。太老を殺した後でゆっくりと自分に逆らった者達を始末し、その者達を死せる従僕の列に加えればよいと考えた。
 それよりも気になるのは、太老の武器だ。

「その武器――以前の武器とは違うようだが、それも貴様の力か?」

 今から四年前。太老に敗れた時のことをヴォバンは思い出す。あの忌々しい剣のことを――
 肉を斬り裂き、魂にまで刻まれたダメージを回復させるため、ヴォバンは復活に一年以上の歳月を有した。
 しかもその際、幾つかの権能は魂に刻まれた神格ごと滅ぼされた所為で、ヴォバンは三百年の歳月を掛けて集めた力の大半を失ったのだ。
 肉を焼かれ、灰からでも復活するしぶとさを持つヴォバンでさえ、あの時は死を覚悟した。それほどの恐怖を自身に植え付けた武器を忘れられるはずもない。
 それは数多の神々と戦った経験を持つヴォバンですら、一度も体験したことのない圧倒的な力だった。

 それ故に、ヴォバンは太老との再戦を待ち望んでいた。
 もう三百年だ。それだけの歳月を生き、多くの同胞やまつろわぬ神と戦いはしたが、心の底から充足感を得られたことは一度としてない。
 老人は己の渇きを満たしてくれる最高の戦いを望んでいた。
 あるのは強者と戦いたいという闘争本能のみ。それだけに、彼は待ち続けていたのだ。
 自身を殺し得る圧倒的な強者との戦いを――そして、ようやく見つけたのが太老だった。

ハリセン(これ)は俺のオリジナルってわけじゃないんだが……以前って言うとアレか」

 ヴォバンの話で、太老の頭に嫌な記憶が甦る。実は四年前の戦いで彼は零式だけでなく天樹の力まで使い、光鷹翼を発現していた。
 その際、天樹の暴走によって都市機能が麻痺し、それが原因で樹雷の女官達に泣きながら詰め寄られ、三ヶ月もの間、書類に埋もれる地獄の日々を過ごしたのだ。
 それだけに、太老にとって当時のことは苦い思い出となっていた。

 光鷹翼――それは第三世代以上の『皇家の樹』が使える頂神の力だ。
 高次元を超える超高次元の力を具現化した『最強の楯』にして『最強の矛』。星どころか、銀河を消滅させるほどの力を持つ至高(カミ)の力だ。
 そんなものを受けてヴォバンが生きていたのは、太老が少女達を巻き込むまいと周囲に気を遣って意識的に手加減をしていたからに過ぎない。
 そうでなければ四年前にヴォバンは魂ごと消滅して、今頃はこの世にいなかっただろう。

「前はカッとなってやったけど、あれを人間に使うのはな。それにリスクが大きいからダメだ。主に精神的な意味で……」
「このヴォバンをただの人間だと……!? 全力を出すまでもないということか……舐めた真似を!」

 最後の方は小さくて聞き取れなかったが、太老の言葉に怒りを顕にするヴォバン。しかし頭の中では冷静に太老の力を推し量っていた。
 あれだけの力だ。リスクが大きいということは、何か代償が必要なのだろうとヴォバンは考える。
 伊達に三百年の時を生きていない。この手の強力な権能には制限が付き物だということをヴォバンは理解していた。
 もっとも、それは太老がカンピオーネである場合の話だ。頭の固い老人に真実を話したところで、どうせ話の一端も理解は出来ないだろうが太老はカンピオーネどころか、この世界の人間ですらない。
 それに『光鷹翼』や『皇家の樹』に関しては太老の世界でもわかっていないことの方が多く、説明を求められたところで答えられるようなものでもなかった。


   ◆


「なんだよ、あれ……」

 護堂は遠巻きに太老とヴォバンの戦いを見守りながら、その戦いの凄まじさに圧倒されていた。
 小さなビルほどある巨大な狼に、ハリセン一つで互角以上の戦いが出来る人間がいるなんて冗談としか思えない。
 いや、魔王だから人間じゃないのか? 太老が聞いたら『おい』とツッコミを入れそうな失礼なことを護堂は考えていた。

 逆に言えば、この戦いを前にしても護堂にはバカなことを考えるほどの余裕があった。
 誰もが恐れる王と王の戦い。並の神経なら凄いと思う前に恐怖が勝るところだが、護堂は違っていた。
 自分ならどう戦う? 自分ならどう攻略する?
 カンピオーネとしての本能がそうさせるのか、自然とそんな考えが頭を過ぎる。
 そんな戦いを前に笑みすら浮かべる護堂を見て、エリカは呆れた様子で、

「護堂、あなた……もしかして笑ってるの?」
「いや、違うぞ! 俺はただ今後の参考にだな!」
「普通はあの戦いを見て、参考にしようなどとは誰も思わないはずです」

 エリカとリリアナの二人に言葉で打ちのめされ、そんなつもりじゃ……と護堂は肩を落とした。
 とはいえ二人の言うように、あの戦いを前にそんなことを考えられるのは、カンピオーネくらいのものだ。
 ここが神殺しと人間を分ける境界線の一つなのだろうと、二人の騎士は結論を同じくした。

「待って、戦いに動きが――まさか!」

 戦いを見守っていたエリカは、予想もしなかった事態に驚く。
 ハリセンが光を失い、先程まで神速の動きでヴォバンを翻弄していた太老の動きが急に鈍る。
 その隙を逃すまいとヴォバンの豪爪が、太老に襲いかかった。

「おいっ! あれってまずいんじゃ!?」

 もろにヴォバンの一撃を受け、受け身すら取れない状態で地面へと叩き付けられ、バウンドしながら転がっていく太老。
 護堂が慌てるのも無理はない。どう言う訳か武器を封じられ、一撃でも食らえば危険そうな攻撃を正面からまともに受けたのだ。
 普通の人間なら即死。カンピオーネと言えど、無事で済むとは思えない一撃だった。

「うわあ……痛そう。お兄ちゃん油断するから。でも、あれって……」
「なんで、そんなに冷静って……いつの間に!?」

 隣にいつの間にか桜花が立っていて、護堂は飛び退くように驚く。
 護堂は彼女が少し苦手だった。何故、苦手かと訊かれると困るのだが、妹を相手にするような……そんなやり難さを桜花に感じていたからだ。
 カンピオーネの直感がそうさせるのか、本能的に絶対に逆らってはいけない相手だと護堂は感じていた。

「ん、その子って……」

 よく見ると、ここまで引き摺ってきたのだろうか? 桜花の横には見知らぬ黒髪の少女が気を失い、横たわっていた。
 護堂は見知らぬ少女を見て目を点にするが、すぐに死せる従僕の侵攻を食い止めていた少女だと気付く。

「恵那姉様!」
「恵那さん!?」

 慌てて、恵那のもとへ駆け寄る万里谷姉妹。すぐに祐理は恵那の身体に手を当て、治癒の術を施し始めるが、

「心配しなくても大丈夫だよ。治療して、お兄ちゃんの特製ドリンクを飲ませておいたから、そのうち目を覚ますわ。それよりも……」

 よく見れば、確かに恵那に外傷はなく呼吸も安定していた。
 祐理はポカンとした表情で言葉をなくすが、すぐに太老が四年前に少女達に配った霊薬のことを思い出した。
 桜花は太老の関係者だ。なら、同じ霊薬を持ち歩いていて不思議ではない。そうした結論に祐理は至った。
 そんな祐理達の横で険しい表情を浮かべる桜花。何かを探るように厳しい視線を空に向ける。

「まさか、船のバックアップが切られてる?」

 普通ならありえないこと。しかし、それが現実として彼女の目の前で起こっていた。





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