-ハワイ攻略主力部隊は囮艦隊と別れ、太平洋を何週間か、かけてひた走る。
そこでドラえもん達はロンド・ベル隊の面々と出会い、ドラえもんの愛くるしい外見とは不釣り合いとも思えるフランクな一面を垣間見、面食らった面々もかなりいた。
なのはもその一人であった。






なのはは未来世界に来てからというもの、個人の力ではどうしようも無い圧倒的な争いを嫌と言うほど見て、聞かされてきた。`一年戦争`、`グリプス戦役`、`ネオ・ジオン戦争`など……これらの戦争は既に争いから離れて久しい21世紀の日本で平和な暮らしを享受きてきた彼女に計り知れないショックを与えていた。


−個人の力では解決できないことはいくらでもある……か。

幼少期に何かしらのトラウマを作ってしまった彼女は一種の強迫観念からか、家族や周囲の`いい子`であろうと振舞おうとしていた。それは家族すらも気づかない程に自然で、両親がなのはを`芯の強い子`に育ったと思い込んでしまうほどだった。しかしそれはそのように自分を取り繕っていただけだとこの世界に来てから自覚するようになった。自分が小さい頃から続いたその強迫観念から脱却できたと思えるようになったのはこの部隊の人達のおかげだ。

−そう。なのはにとって精神的な父親的な役割を結果的に果たしたブライト・ノア、気さくな付き合いをしてくれるスーパーロボット乗り達やアムロ・レイ。
そして`超えたい`と自分に明確な目標を示してくれた`師`である穴拭智子。彼らの存在は結果的になのはを人間的に大きく成長させた。
そして自らを`戦士`として自覚させたのは攻略部隊に合流した際に作戦会議に参加した時だった。


ドラえもんとのび太は幾多の危機を乗り越えてきたためか、大人びた側面も持つようになり、ドラえもんに至っては戦争に関する持論を持つほどリアリスト的な所がある。
それが炸裂したのである。


「敵に話し合いの余地などありません。とにかく殲滅あるのみです」
「そう。人間なんて`ゴミ`としか思っていない。それが鉄人兵団です。分かりあえる人もいるかも知れませんが、大多数はダメです」

鉄人兵団への戦闘法について講釈するドラえもんとのび太。
「とにかく殲滅あるのみ」という、苛烈とも思える彼らになのはは反発した。彼女は戦った末に分かり合えた事例を幾度と無く経験してきた。その経験がドラえもん達の言葉への反発として現れたのだ。

「……違うよ!`心`があるのならきっと分かり合えるよ!!お話すれば向こうだって……」

だが、そんななのはの幻想とも言える想いはその直後のドラえもんの言葉によってぶち殺された。−跡形も無いほどに。


「それなら争いなんて起きないさ。話し合いで済むんなら過去の全ての戦争は起こっちゃいない。僕達はそれをよく見てきている。……多くの冒険でね」

ドラえもんはなのはに`戦争は何故起こるのか`を自らが戦ってきた多くの大冒険を例に出して説明する。コーヤコーヤ星の開拓民とガルタイト工業の争い、バウワンコ王国での軍事政権の打倒に自らが関わり、王家の再興の英雄となったこと、ピリカ星での軍事政権へのレジスタンスに加わって政権を倒したことなど……そしてドラえもんは戦争に対する自らの持論を展開する。

「戦争なんてどっちも正しいと思って始めるもんさ。戦争なんてそんなもんさ」

ドラえもんは戦争の原理をそうやって言い聞かす。意外かも思えるこのドラえもんの辛口は持論に基づくものだとのび太が後でフォローを入れるほど辛口であったのは言うまでもない。









‐艦隊は二週間かけてオワフ島沖へ到着し、土佐を初めとする主力戦艦級の40cmショックカノン砲が向きを変えてオワフ島に狙いを定める。

「全艦、一斉砲撃用意!!撃てぇぇぇぇ!!」

オワフ島に青色の閃光が迸った。これがこの長い「ハワイ島海戦」の開始を告げる狼煙だった。美琴には、この戦艦群の艦砲射撃に元の時間で見た記録映像の一コマがだぶって見えていた。

この艦砲射撃による援護の後、各地のビーチに上陸部隊の第一陣が揚陸艇で陸揚げされたり、空挺部隊が降下した。
挺進連隊や第一特別陸戦隊などの`空の神兵`、に加え、降下猟兵との呼称違いの旧・各国出身の精鋭も参加した。

……が、上陸地点の内の`ラニカイ・ビーチ`に上陸した部隊を待っていたのはいきなりの十字砲火だった。兵団の指揮官は連邦軍の裏をかき、手薄に思える地域に陸戦部隊の精鋭を配置していたのだ。さながらノルマンディー上陸作戦での`オマハ・ビーチ`の様相の`血のラニカイ・ビーチ`と化していた。

「司令部応答されたし!!こちら第10歩兵師団!!(海戦に伴い、上陸作戦も開始されていた。このビーチに配置されていた師団は手薄な所を突く手筈だった)敵の激しい十字砲火に晒され、進撃不……グァァ!!」

司令部に必死に通信をかけていた彼は爆音と共に吹き飛んだ。爆発を引き起こすレーザー砲の直撃を受けてバラバラに吹き飛んだのだ。
上陸艇などに加えられた兵団歩兵軍の猛攻でこの師団はいきなり活動不能、指揮官不在、任務遂行不能状態に陥った。そして兵団の良く統制された射撃は応戦準備の整っていない連邦軍歩兵部隊に大損害を与えることに成功し、連邦軍の艦隊司令部に衝撃を与えた。少数が突破に成功したもの、この地だけでも多くの犠牲を払い、数千人が死亡したとこの作戦から数年後に出版された元兵士の回想録や連邦軍の公式記録には記されている。正に第二の`オマハ・ビーチ`の様相を呈していた。


「情報と全く違うじゃないかよ、クソッタレが」
「少尉、なんとか突破はできんのか?」
「なんとかやってみますが……装備は無事ですか」
「アサルトライフル型のコスモガンがある」
「よし!!」

悪態を突きながら師団の生き残りたちは十字砲火を掻い潜り、どうにかビーチを突破しようと策を練る。大きさは数メートルある兵団の歩兵は手持ちのレーザーガンを乱射し、連邦軍側を圧倒する。かつてのノルマンディー上陸作戦ではドイツ軍はトーチカからの重火器の攻撃で連合軍側に痛撃を与えた。だが、今回の作戦はそのようなものはない代わりに一列に並んでの砲撃が彼等の行く道を阻んでいる。艦隊司令部に果たして先程の通信兵の通信は届いたのだろうか。それが気がかりだった。


「全員、俺に続け!!」
「こうなったらヤケクソだ!!」
「おおおぉぉ!!!」

兵士たちはアサルトライフルタイプのコスモガンを乱射しながら兵団に突撃を敢行し、トーチカに向かっていくが……。







 途中で途切れたもの、前線から伝えられた報は艦隊司令部に衝撃が走った。`ラニカイ・ビーチ`に強力な戦力が配備されていた。ある程度予測はされたが、予想以上の戦死率の高さは山南を初めとする首脳部を驚愕させ、急遽、コスモタイガー隊の支援爆撃やジムスナイパーUの狙撃が行われる事となった。
そして、艦隊にも凶報が届く。兵団の空戦部隊の来襲である。問題はその数だ。百万や一千万を超えていたら通常兵器ではとても処理が間に合わず、場合によればスーパーロボットに準じる力を持つ超兵器で、量産型「マシーン兵器」の最高峰に位置する`シズラー`を投入せざるを得なくなる。反応兵器や光子魚雷などの核兵器に準じる兵器の使用は避けたいし、一部の艦に装備されている拡散波動砲では流れ弾が一発でも地上に当たれば大惨事となってしまうので、これまた使用はなるべく自重しなければならない。

「こちら駆逐艦`アーレイ・バーク`!!ものすごい数の敵をレーダーが補足した!!肉眼でははっきりとはわからんが……少なくとも数十万は超えている!」
「総員、対空戦闘用意!!モビルスーツは拡散弾のハイパーバズーカを携行して直掩に当たれ!バルキリー隊及びコスモタイガーは対空多弾頭ミサイルを使用せよ!!各砲は三式弾を装填急げ!!」

艦隊は慌てて迎撃準備を進める。レーダーには後から後から光点が加速度的に増えていくのがはっきりと移っている。刻一刻と報告される状況に、艦隊の誰もが緊張を隠せない。

「敵、我が方の射程まであと40000!」
「全部隊、攻撃準備!!」

各艦の砲撃手の手によって対空戦闘出来るように砲身の角度が最大角度に上げられる。艦載機が出払った空母の甲板には対空砲代わりのVB−6「ケーニッヒモンスター」が展開される。

ドラえもん達は艦内で情勢を見守る。揚陸艦に移乗し、LCAC(エア・クッション型揚陸艇)で待機中の美琴もこの状況には緊張する。


―そして兵団空戦部隊の第一陣が全艦の最大射程に入った瞬間。艦隊のあらうる火器が一斉発射され、空に閃光が広がる。

ここに人類と鉄人兵団のアジア太平洋での最大規模の戦いが幕を上げた。

各艦艇や航空部隊の火器が敵兵を粉砕すれば、攻撃をくぐり抜ける猛者も多かった。猛烈とも言える弾幕をすり抜けて、艦隊に攻撃が加えられ初め、被害が出始める。前列に配置された駆逐艦や巡洋艦がその中心であった。艦隊旗艦の土佐の艦橋へは続々と被害報告が入ってくる。さすがに無傷で切り抜けられるとは思っていないが、予想以上の攻撃であった。


「各員、確固に攻撃!地球人のクソッタレ共にたっぷりお仕置きしてやれい!!」
「了解!!」

兵団は弾幕の被害を分散させるために、対空砲火が来る直前に編隊をとき、迂闊な練度が低い兵士を囮代わりに熟練者達が攻撃を開始した。彼らは対空砲火の間隙をくぐり抜け、艦艇に攻撃を加えていく。第一撃のために強力な武器を敢行した爆撃部隊として。

「今だ!本命を叩きこめ!」

対艦ミサイルを砲が仰角不能となる角度からほぼ垂直に叩きこむ。落下によって猛烈な運動エネルギーが加えられるために、大打撃を与えられる。
兵団の持つ徹甲弾は地球連邦軍のそれと比べても貫通力は上回っているのも、この戦法の優位性を保証していた。これは熟練者達が猛烈な地球連邦軍の対空砲火をくぐり抜けるために編み出した戦法であった。この戦法で地球連邦軍は思わぬ損害を強いられる。


各地で閃光と爆音が木霊する。



「巡洋艦`シカゴ`、炎上!!」
「巡洋艦`フィジー` 砲塔全損、戦闘不能!!」
「駆逐艦`名取`より入電、我、後部弾薬庫誘爆による火災発生!!」
「空母`ホーネット`、飛行甲板損傷の模様。艦載機発艦不能!!」
「戦艦`初瀬`、補助エンジン大破!!速力低下します!!」

艦橋に次々と悲報が飛び込んでくる。はっきりと伝わった情報だけでも、前衛に配置された水雷戦隊のおよそ40%が何らかの損害を負った。
空母も一隻、戦艦さえ損傷艦が出てきた。これらの悲報にも山南は冷静に指示を飛ばす。今回の作戦に置いて、藤堂参謀本部総長より直々に指揮を任されたのは伊達ではない。先に飛び立った攻撃隊の航空部隊の様子を確認する。





「コスモタイガー、バルキリー及びウィッチ隊はどうか?」
「現在、ハワイ市街地に接近。間もなく接触する頃です」
「良し……。」

この作戦には物量だけでなく、質でも兵団を圧倒すべく、連邦軍単独での作戦行動ではなく、連合軍の協力も得て、ウィッチも空戦・陸戦問わず、多数が参加していた。
穴拭智子もその一人。(弟子のなのははスバルと智子の判断で待機させられた)そして今回の智子の僚機は、507統合戦闘航空団(旧・スオムスいらん子中隊)で元・同僚であり、
部下であった迫水(さこみず)ハルカ。1944年時点では海軍中尉に昇進し、エースの一人に名を連ねるまでに成長した彼女は智子が未来で戦いに参加している事を知ると2199年への出向を志願。今回の作戦に参加した。(智子と共に生活しているなのはに対してやきもちを焼いたのは言うまでもない。攻撃隊を指揮するのは連邦軍のロイ・フォッカー少佐。彼の乗機は新たに支給されたVF‐19A「エクスカリバー」(カラーリングは過去のロイ・フォッカー・スペシャルに準じる)である。


『スカルリーダーより各部隊へ。間もなくハワイの市街地上空だ。急降下し、敵基地へ雪崩れ込む』
『了解!!』
『嬢ちゃん達、無茶すんなよ?その機体は実用に近いと行ってもまだプロトタイプなんだから』
『分かってます。機体を壊さない範囲で暴れてやります』

智子とハルカが今回装備しているストライカーユニットはフロンティア船団へ行った黒江達がS.M.Sの助言を元に創りだしたジェットストライカーの『キ 201 火龍 3型』と『橘花改』。船団から送られたデータを基に各メーカーが必死に創りだした実用に近いプロトタイプだ。無論、エースである彼女らはテストパイロットの役割を負っている。今回の機体は熱核バーストタービンを參考に、航続距離の延伸が計られた機体で、黒江綾香が地球を旅立つ段階のテスト機より性能は格段に上だ。

『市街が見えた!!……全機、続け!!』

フォッカーの指示と共に飛行隊が一斉に市街地に急降下する。智子とハルカも魔導ジェットエンジンを唸らせて追従する。

『行くわよハルカ!!』
『了解です!!智子中尉!!』

2人は久しぶりに編隊を組んで戦いに臨んだ。それは1939年以来、共に戦ってきた`仲間`として、お互いにパートナーとして臨む久しぶりの戦いだった。
対空砲火をくぐり抜けながら航空部隊は一気にワイキキの市街地を乱舞する。目標はただ一つ、兵団の要塞。


市街地のあちらこちらから凄まじい対空砲火が打ち上げられてくる。まさに十字砲火といっていいくらいの濃密な弾幕。
如何に高性能兵器と言えど、蜂の巣にされて落とされるものが続出する。

「う、うわああああっ!!」

「VF‐11C サンダーボルト」が5機まとめて対空砲火に絡め取られ、火達磨となって墜落する。コスモタイガーUも隙を見せた数機が翼を折られ、各部を撃ちぬかれていく。

ウィッチも経験が浅い若手が何人も防御しきれずにストライカーユニットを破壊され、墜ちていく。


「おのれ!!」

コスモタイガーとバルキリー隊がお返しとばかりにミサイルを乱射し、対空砲を破壊していく。爆風や破片をくぐり抜けて市街地を各部隊は必死に飛んだ。
エースたちは対空砲火を物ともしないその統制のとれた機動で市街地を乱舞し、新兵もベテラン勢に引っ張られるようについていく。

その様子は素晴らしい物であった。








‐ハワイ攻略戦は今や各地で激戦が行われていた。艦隊司令部には各戦線の様子が刻一刻と入っていく。ドラえもんは司令部に堂々と陣取り、山南にアドバイスを送っていた。


「提督、航空部隊はどうなのです」
「間もなく敵基地へ雪崩れ込む筈だ」
「攻撃目標は兵舎と工場です。これを徹底的に破壊し、敵の前線への補給を断つのです」
「あいわかった」

ドラえもんは戦国時代の軍師のように冷静な判断を下す。多くの冒険を経験したことでこの手の状況は慣れっこなのだ。上陸部隊には陸戦の主力をワイキキビーチに配してある。その主力とは……。

「果たして、ぼくの戦略が兵団を上回るかどうか、だな……」
「ドラえもん君、ここはどうしたらいい〜?」
「はいはいはい〜」

ドラえもんは艦隊司令部の士官達に引っ張りだこだった。兵団に対する対抗策をこの地球圏で最も良く熟知している`ネコ型ロボット`。ドラえもんは正にてんてこ舞いと言った様子で艦内を行ったり来たりしていた。

「うぉぉぉ〜もう我慢できねぇ!!俺は歌うぞぉぉぉぉ!!」
「やめろそれだけは!!」
「20世紀のハジ……」
「こんな大事な時に……」

この戦いでまだ活躍をみせていないジャイアンこと剛田武。彼はリン・ミンメイや熱気バサラ、シャロン・アップルなどが見せた`歌の力`にいたく感動し、自分も歌で世界を救おうと息巻いていた。だが、問題があった。ジャイアンの歌声はテレビを通しても`大勢の人が倒れ、救急車がてんてこ舞いした`ほどの破壊力を誇るのだ。この事件は歴史上類を見ない『歌を聞いただけで人々をKOさせた放送』として日本のTV局界隈では`知る人ぞ知る怪事件`扱いされ、一時は縁起が悪いとしてマスターテープの処分が検討されたとの記録が残っている。しかし結局そのテープは処分されず、21世紀頃にどこかのバラエティー番組で取り上げられたのを皮切りにたびたびバラエティーに取り上げられ、その原因を突き止めようとする特集が組まれた。その要因の一つが判明するのはリン・ミンメイをきっかけに、歌に関する研究が盛んになった22世紀を待つことになるが、超科学をもってしてもジャイアンの歌の全容は解明しきれないのである。


「なんだよお前ら俺の歌に……!!」

そこまで言いかけたとき、士官の一人が止めに来た。大事な時に揉めあっている場合ではないだろうと。

「やめないか!!喧嘩している場合じゃないだろう」
「すみません」
「君達には次の第2陣に参加するように陸戦部隊司令からの要請があった。直ちに用意してくれ」
「武器はなんなんです?」
「M16A2アサルトライフルも一応用意してあるが、君たちが持ち込んだ武器が主体と思っていてくれ。やっと生産ラインが整った」

ドラえもんが保有している道具は22世紀末では戦乱で生産ラインが失われ、技術そのものが断絶したものも多い。だが、タイムマシンなどの重要物は優先して保護されていたので、発展を続けられていた。どこでもドアもその一つ。22世紀末現在では移動範囲をグンと広げた新型が各地で流通中である。

「分かりました。行くよ2人とも」
「おおっ!!」






 

 ‐キャタピラ音と共に1944年最新鋭の陸戦ストライカーユニット`M4シャーマン`に扶桑の`4式`の先行試作型を纏ったウィッチがハワイを疾駆する。この作戦にウィッチを参加させた連合軍の意図は`連邦軍に恩を売られてばかりなので、ここらでこちらも……`と言うものだ。そのため陸戦部隊の中でも腕っこきが集められ、このハワイ攻略戦に派遣されたのだ。その後には連邦軍の装甲兵員輸送車や61式戦車、歩兵戦闘車が続く。

「75ミリだ!!くらえ〜!!」

75ミリ〜155ミリ砲を振りかざし、ぶっ放して敵を倒していく陸戦部隊。現在はホノルル市の奪還に向けて全力で進撃中だ。

「ここらで一旦停止しよう。補給線が伸びきると不味い」

機甲師団長が全隊に一旦止まるように指示する。補給線が伸びきり、そこを敵に突かれる事を懸念したのだ。この判断は正しかった。
補給妨害を意図した攻撃が度々起こり、後続部隊の悩みの種として、尾を引くことになる。
このような状況は連邦軍をして、`ハワイは手強い`という認識を官僚にいたるまで持つに至る。
ハワイ攻略戦の状況を知ったレビル将軍も作戦会議で、連合軍から派遣された栗林忠道中将、今村均大将、アイゼンハワー大将(史実では50年代に米大統領になる)に「ハワイは難攻不落だ。何か手はないものか」と漏らし、4者で策を練りに練る事になる。
それほど鉄人兵団は地球連邦軍と連合軍の合同軍にとって手を焼く存在となっていた。










‐ワイキキビーチに上陸した部隊は獅子奮迅の勢いだった。攻撃部隊とは別に待機していたコスモタイガー隊(この作戦には連邦軍の太平洋方面のパイロットが動員されてはいたが、正規のパイロットだけではとても人員がまかない切れ無かった。そこで訓練学校生の内、艦載機任務に耐えうると判断された人員が臨時で参加していた。その内の一人に後々にエースとして名を轟かす逸材がいた。『加藤四郎』。かつて宇宙戦艦ヤマトの艦載機隊のチーフとして活躍し、エースパイロットとして知られた加藤三郎の弟であり、兄同様のエースパイロットの才覚がありと見込まれた逸材。小惑星イカルス基地内の訓練学校飛行科きっての俊英である。

教官に率いられ、彼等は後方援護の一環で地上部隊の援護を行う。それが彼等に課せられた今回の任務であった。

「3番機、攻撃!!」
「了解!!」

加藤四郎の機体は見事な動きで地上部隊を蹴散らす。

「いいぞ、加藤。兄貴も草葉の陰で喜んでるぞ」
「ありがとうございます」

加藤達は教官の指示に従って上陸部隊の援護に徹し、成果を上げていく。一部の訓練生達はぼやいているが、これも立派な仕事だ。


そして援護対象部隊の中にはスバルの姿があった。

「うおおおおっ!!」

彼女は今回の作戦に当たって、突破力を活かすべく最前線で戦っていた。弾幕を何とか凌ぎつつ、懐に飛びこむ。

「これでどうだぁ!…一撃必倒ぉ!!ディバイィィン……バスターァァァッ!!」

この魔法はなのはの得意とする砲撃魔法のそれと同じ名を持つが、正確に言えば別種と言うべき代物で、両手で練り上げた魔力で前方に魔力スフィアを形成。左拳でスフィアを保持し、右拳で加速をつけて撃ち出すというプロセスをとる。無論、名の由来はなのはに肖って、その名を頂いた。スバルの特性の近接格闘戦型で使う事に特化されたある意味珍しい砲撃魔法。その名に恥じず、威力も折り紙つきだ。これで倒せない敵などまずいない。(仮面ライダー達も中々の攻撃と賞賛している)これを見た子供時代のなのはは自分も習得すべく特訓中らしい(いい意味で刺激を受けた。智子も接近戦に対する選択肢として、なのはにこの魔法を身につけることを勧めている)

だが、敵は一体だけではない。大勢いるのだ。四方八方から砲撃を受け、さすがのスバルも判断に窮してしまう。その一瞬の隙を突かれてしまい、ジェット噴射の加速によるタックルまともに食らい、吹き飛ばされる。



景気よく建物の壁に叩きつけられ、そのダメージで意識が飛びそうになる。

「しまったっ……!くっ、動けないっ!」

体を動かそうとするが、見事に壁にめり込んでしまい、全く身動きがとれない。そしてタックルを仕掛けた主がレーダー砲を構える。一気に片付けるつもりか、最大出力だ。あの祝力では防ぎきれるか微妙だ。スバルはこの時、自らの不覚を恥じた。

だが、その時だった。兵士を電気が迸る一筋の閃光が直撃し、兵士を粉微塵に破壊したのだ。スバルはなにがなんだか理解出来ず、キョトンとしてしまう。そして50mほど先に電気が走る音と共に一人の少女が立っていた。ショートヘアの髪形に、どこかの学校の制服らしきブレザーを着込んだ、自分より幾分か年下に見える女の子だった。

「女の……子?」

「ふう。なんとか追いついたようね」

‐御坂美琴だった。スバルに止めを刺さんとした鉄人兵団兵に向けてとっさに`超電磁砲`を放ち、それを阻止したのだ。

「そこのアンタ、生きてる?」
「なんとか」
「そう。良かった。……悪いけど、この戦い……、手ぇ出させてもらうわよ」

その瞬間、スイッチが入ったように美琴の身体に凄まじい電流が迸る。口より先に体が動くタイプで気が短い彼女ならばの即座の判断だ。

その電撃は以前スバルが見たフェイトのトライデントスマッシャーの際の雷撃をも遙かに上回る超強力なものだった。美琴の能力を以てすれば雷を人為的に引き起こすことすら可能なのだ。雷撃の槍である。

(……魔法!?)

スバルはとっさにそう考えた。しかし即座に`相棒`のマッハキャリバーに 美琴からは魔力は一切感じないと否定される。どういう事なのか。この世界には魔力も無しに電気を操れる能力があるというのか。

‐それは当たっている。美琴の能力は`超能力`に分類されるべきモノだ。電撃使い(エレクトロマスター)`の中でも最高の逸材にして、学園都市に7人いる`レベル5`の第3位。その力を今、スバルは垣間見ているのだ。

「戦う前にあんたの名前を聞いておくわ。自己紹介する暇もなさそうだし」
「え?う、うん。あたしはスバル・ナカジマ。」
「あたしは御坂美琴。よろしく」

取りあえずの自己紹介を澄ますと美琴は鉄人兵団のほうに向き直り、戦闘態勢に入る。

「さあ……、始めるわよ!!」

これが御坂美琴とスバル・ナカジマのファーストコンタクトだった。少々荒っぽいが、非常時なのでやむを得なかった。



美琴は砂鉄の剣、雷撃の槍などを駆使して兵団をなぎ倒す。レベル5の能力者の真骨頂であると言える。スバルも己の拳で立ち向かう。






彼女らの華々しい活躍の裏では兵士達の`等身大`の苦労があった。戦争映画でよく描かれるヒロイックなものではないそれが。


‐上陸し、市街地に進撃した戦車隊の155ミリ滑腔砲やウィッチの75ミリライフル砲の発射音が鳴り響く。ホノルル市内の闘いは今や最高潮を向かえていた。銃撃とビームの閃光が入り交じり、兵士たちの死体が散らばる。そんな中、進撃を休止し、市街地に駐車されている61式戦車の周りには侵攻部隊の機甲師団の兵士やウィッチが集まっていた。

鉄人兵団兵士の`死体`が転がる光景を尻目に一人の兵士が煙草を口に食われながら、`死体を差してこう称した。`これぞ未知との遭遇って奴だ`と。彼は一年戦争から数年で予備役に退いた老兵(と、言っても40代後半だが)で、連邦軍の人手不足ぶりが窮まりないことの証拠でもあった。

「未知との遭遇?なんですかそれ」

陸戦ウィッチの一人が?マークを浮かべながら聞く。当然ながら1940年代から来た彼女らはその単語の意味を知らない。兵士は娘に語り聞かせるように単語の意味を話す。


「1944年から来た嬢ちゃん達にも分り易く言うとだな、昔‐嬢ちゃん達にとっては33年後の事だが‐にそんなタイトルの映画があってな。その映画では穏やかな形で地球人と宇宙人の初コンタクトが行われたってなってる。……まあ実際の宇宙人とのコンタクトは映画のようにはいかなかったがね……。最も人間タイプじゃない奴らは今回が初めてだ」

彼は機械による生命体とも言える鉄人兵団との遭遇は今回が文字通りの未知との遭遇と形容すると、くわえていた煙草にライターで火をつける。

「クソッタレ、煙が目にしみるぜ」

それはウィッチ達に戦争の虚しさを暗に示すものだった。だが、人間は闘いによって進化してきた。ゲッター線が人間を選んだ理由が何であるか、学会やタブロイド紙を賑わせている。人類の戦いに明け暮れる進化は神が望んだ物なのか。親と娘くらい年齢が離れているあの子供達の世界で現れるネウロイも宇宙怪獣のような宇宙の免疫なのだろうか?
それは今の人間にとっての謎であると言える。
ただタイムマシンを用いた調査で‘神‘らしき意思の声らしきものが録音されたと言うが……。









‐ちなみにその声は宇宙戦艦ヤマトが自沈した時期の西暦2200年代後半頃に政府の一部の人間に公開された。その際の音声は以下の通り。

「ビッグバンは成功だ!`時天空`は崩壊している、ビッグバンは時天空を破壊しながら拡大していく」
「しかし時天空は無限だ、いずれビッグバンの爆発力も弱まる」
「原始的だが分子構造体を組み合わせ、時天空を攻撃する生物体を作り出す!」
「遺伝子を次々と組み合わせ、進化する戦闘的な種がいい!! 我々のような意識体ではなく、おのれら同士が喰い合う種がいい!」
「喰い合う事によって強くなる、破壊せよ、同胞を殺せ!武器を作り上げろ!」
「その中で生き残った種が進化を繰り返し、星々を喰う魔物が生まれてもいい!!」
「兵器を使い…宇宙を消滅させる機械の化物でもいい!!」


その声は一体なんなのか。`神`と言える彼等をして恐れる`時天空`とは……?そして人類は彼等の言う兵器なのか?その謎を解き明かす境地に人類が至るのはここからさらに1000年を有に超える時を必要とした。そしてその時間の果てでは、人類史上最大最強とその時代で称されるスーパーロボット`ゲッターエンペラー`が蠢めく。人類に敵対する意志を示す生命体を全て宇宙から消し去さんと、その威容を表す……。

『これ以上はやらせん!!ゲッターエンペラー、チェンジだ!!』

それは人類がその時代でも戦い続けていることを示していた。ゲッターエンペラーという存在を以てして。












−ハワイ攻略戦の最中、仮面ライダー達もまた、ある`目的`の為にハワイへ赴いていた。
一つは彼らが保護している御坂美琴のクローンである`妹達`の事を彼女らのオリジナルに当たる美琴に伝えるため。もう一つはクライシス帝国が混乱に乗じてハワイへ一定の戦力を向かわせたためにそれを叩き潰す事だ。

彼らは激戦が行われているハワイにあえて足を踏み入れる。それは漁夫の利を得ろうとするクライシス帝国を探すためだ。

「オワフ島はかなりの激戦のようですね」
「スーパーロボットまでも投入される見込みというからな。間もなく市街地に入る。気をつけろ」
「了解」

この時期にオワフ島へ足を踏み入れた仮面ライダーは仮面ライダーV3=風見志郎、仮面ライダーX=神敬介、仮面ライダーBLACK RX=南光太郎の3人であった。彼らは上陸時に激戦地から命からがら抜けてきた連邦軍兵士達の援助を行いつつ、クライシスが上陸したと思われる地点に向かった。






3人の上陸は対するクライシス帝国側もキャッチしていた。とある無人となったホテルであった建物の中ではクライシスの幹部らが作戦会議を開いていた。

「何、南光太郎らの姿が?」
「ハッ。南光太郎の他にはライダーV3の風見志郎、Xライダーの神敬介の姿も」
「本郷猛……いや、仮面ライダー一号め……何を考えておるのだ?」

クライシス地球攻撃兵団の最高司令官`ジャーク将軍`は兵団四大隊長の一人の諜報参謀`マリバロン`からの報告に苦々しさを声に出していた。早くも仮面ライダー達に作戦を嗅ぎつけられたという落胆と、ここの処はRXの援軍として次々に馳せ参じる伝説の`10人ライダー`達に苦杯をなめされ続けている悔しさも多分に含まれていた。そして自分と互いに戦略を読み合う、仮面ライダー達の`始まりの男`本郷猛に今回は出し抜かれたらしい。

「本郷猛は我々の行動を先読みしていたとでもいうのでしょうか」
「……ありえん!!いくら奴がIQ600の天才といっても万能では無いだろう。連邦軍、あるいはCIAなどの系譜を継ぐ諜報組織が嗅ぎつけたのかもしれん……今後は防諜を強化せねばいかんな」

ジャーク将軍は場合によっては鉄人兵団と連邦軍との戦いに介入する事を示唆した。11ライダー(イレブンライダー)の行動によってクライシス帝国の戦略基地確保作戦は遅れるばかり。痺れを切らした皇帝からは近々、査察官の派遣がなされると通達があったばかり。ジャーク将軍は焦っていたのだ。査察官が派遣されれば、自分の指揮権に干渉されることは間違いない。`皇帝直々の派遣`という権威を振りかざし居丈高に振る舞われるのも想像がつく。また、別の組織である`バダン帝国`に出し抜かれてしまう可能性もある。

―ここらで汚名返上をしなければ……。

そんな彼の危惧は3人ライダーとの対決に耐えうるであろう戦士の選抜を急ぐという形で反映されていた。幹部らはそれぞれの軍団の現時点最強の戦士たちをプレゼンする。

「ジャーク将軍、我が怪魔獣人大隊最強の戦士が作戦参加を申し出ております。ぜひとも作戦には我が大隊を……」
「いいや我が怪魔ロボット大隊こそ此度の作戦にはふさわしいでしょう。私自らが製作しております……」

`機甲隊長`ガテゾーンと`海兵隊長`ボスガンのプレゼンは4大幹部の中でも気合が入っていた。彼らはクライシス帝国の幹部の中でも比較的歴代ライダーと対戦しており、いずれも敗北に追い込まれていた。そのためだろうか。

ジャーク将軍は戦功に焦る部下達に頭を悩ませていた。そして`選抜には時間がかかるな`とため息をついた。










そんな事を知る由もない3人は目的の一つを果たすために、無人の市街地を愛車で疾駆していた。兵団と鉢合わせすることは今の所無いが、気をつける事にこした事は無い。
情報によれば`御坂美琴はこの戦いに参加している`らしいが……。

「どうします先輩」
「この当たりに連邦軍の機甲師団がいるとは聞いている。間もなく見えるはずだ」

3人はバイクを飛ばしていき、61式戦車が駐車されている区画に止まる。

「あなた方も来ていたのですか」

連邦軍機甲師団の師団長がバイクから降りた3人に気づき、握手を求めてくる。彼ら仮面ライダーは多くの悪の組織と戦ってきた。そのことはこの時代には`伝説`とされ、多くの戦乱で荒んだ地球への10人ライダーの復活は`時代が望んだ`のかも知れない。そしてBLACKの登場、RXへの進化。彼らの宿命はまだ生きているのだ。

「ええ。実はクライシス帝国がハワイに部隊を派遣したという情報を入手しましてね」
「本郷さんの指示で我々がやって来たわけです」
「そうです。奴らは抜け目ないですから」

3人はそれぞれ自分らがやって来た理由を話し、そして御坂美琴の行方を聞く。

「御坂美琴さんの行方は分かりますか?」
「ああ、御坂君ならここより数キロ先で戦ってるはずです。別の部隊から連絡がありました」
「そうですか、ありがとうございます」

風見志郎は師団長に礼を言うと、バイクに跨り、エンジンをかけようとする。

「あ、待ってください。道案内役を付けます」

師団長は陸戦ストライカーユニットの中では比較的快速が出せる`パンター`を纏うウィッチをライダー達の案内役としてつけてくれた。ウィッチを引き連れ、3人は愛車を走らせた。





-しばらく走り、間もなく最前線というところまで来た時、風見志郎は2人と示し合わせて、`変身`を敢行した。

「……君、驚かないでくれよ?」

そういうと風見志郎はハンドルから手を放し、一定のポーズを取る。

「……ムウン!変んんッ身ッ!ブイスリャァ!!」

神敬介と南光太郎もそれに続く。

「大・変・身!!」
「……変ッ……身ッ!!」


(これが……仮面ライダー……!)

カールスラント出身の若いウィッチはこの世界に伝わる伝説の戦士達の変身を目の当たりにし、思わず感嘆の表情を浮かべる。そしてそれぞれの愛車「ハリケーン」、「クルーザー」、「アクロバッター」(ただしアクロバッターは偽装機能を持っていないのでそのまま)のエンジンを唸らせ、爆音高く、マシンを飛ばし美琴が戦っているであろう戦場へ向かった。






−御坂美琴はスバル・ナカジマを救い、そのまま彼女に加勢した。そして美琴にはさらなる強力な援軍が到着する。それはV3、X、RXの3大仮面ライダーであった。

「それじゃ自分は部隊に戻ります」
「案内をありがとう。……そうだ。最後に頼みがあるんだが」

V3は思いついたアイディアを実行すべく、ウィッチに頼み事をする。その内容を察したXライダーは溜息をついてRXに愚痴った。

「ま〜た風見先輩の悪い癖が始まった」
「何ですそれ?」
「あの人は無駄に目立ちたがり屋でな……派手に登場したいんだよ」
「ハハ……風見先輩らしいですね」

そんな2人の溜息と呆れを他所にV3のアイディアは実行に移されたのである。
内容は7.5 cm KwK 42を撃ってもらい、その爆発を背に3人でカッコよくバイクで現れるというもの。もちろんV3がセンターポジションをとって。(後輩2人はライダ−の縦社会の法則で逆らうことはできないので諦めた)


「それじゃ行きますよー!」
「頼む!」

7.5 cm KwK 42が盛大に炸裂する。その中を3人は突っ切る。そして愛車ごとジャンプして`彼女`達の元へカッコよく馳せ参じた。




−電撃を迸らせ、兵団を蹴散らす美琴だが、そこにタイミングよく爆発と爆音が響き、思わず振り返ると。盛大に地面が吹き飛ぶのを芝居がかったバイクの音と共に3人の仮面を被った男達が颯爽と現れた。−そう。それは実にそう形容するのがしいと思える場面だった。3人の`ヒーロー`が爆炎に爆音と共に現れるなどという場面などは1970年代から80年代初頭までに作られた特撮ヒーロー番組を見ない限りはまずお目にかかれないシーンだ。
しかしここは戦場だ。そんなアホな行為をするなんぞどこのバカが……と美琴はそう思ったが、その男達は本当にヒーローだったと認識するのにそう時間は掛からなかった。


「仮面ライダーV3、只今参上!!」
「仮面ライダーX!!」
「俺は太陽の子!!仮面ライダーBLACK RX!!」

−ご丁寧にポーズを決めての名乗りまであげている。確かに鎌倉時代頃には戦争の際にもそういう習慣があったと聞く。実に太時代的な方法だけど、無駄に迫力はあった。でも見かけだけで戦いができるほど甘くない。

「美琴ちゃん、スバルちゃん!ここは俺たちに任せろ。……トウ!!」
「トゥア!」
「っえっ!?ち、ちょっと!!なんであたし達の名前を!?」

V3が自分の名を知っている事に驚く美琴をよそに、3人の仮面ライダーは地面に降り立つと、その見かけに違わぬ力で続々とやってくる兵団の兵士達をなぎ倒していく。拳や蹴りだけで分厚い装甲を一撃でぶち抜くその破壊力は紛れもなく本物だ。身体能力も通常の人間を明らかに超越しているのが見て取れる。

「……っと、アイツらだけに任せておけないわね。私たちも突っ込むわよ!!」
「うん!」

『おおおおおっ!!』



美琴とスバルも3人ライダーに負けじと突っ込む。美琴は電流でアスファルトの砂鉄を剣の形に精製して、スバルはリボルバーナックルを唸らせて、足のデバイス`マッハキャリバー`の車輪をフル回転させながらそれぞれ遮二無二、突っ走った。

美琴の砂鉄の剣が兵団の兵士を派手に切り裂けば、スバルがリボルバーナックルで繰り出す拳やマッハキャリバーを纏った足の蹴りで装甲をぶち抜く。仮面ライダー達も負けてはいない。それぞれの技を見せて派手に決めてみせた。





『V3きりもみ反転キィ――ック!!』

V3の力と技が唸れば、Xがジャンプして高空から急降下し、ライドルスティックで相手を一刀両断に断ち割る。このライドルを駆使した攻撃がXライダーの真骨頂。

『ライドル脳天割り!!』

そして極めつけはRXの高い身体能力を生かした後ろ向きの宙返りの後に繰り出す、ブラックからさらに3倍の破壊力を誇るキック。

『RXキィィィ――ック!!』

これらの必殺技が唸り、兵団の前線を見る見るうちに後退させていく。目指すはこのオワフ島の前線防衛陣地。5人はひたすら突っ走る。まさに怒涛の勢いと言っても過言でもない。
彼らの通った後には沈黙させられた兵団兵士の屍が転がるだけだ。

「……答えてくれる?なんでアンタ達は私の名前を知ってるわけ?私はこの時代にはもうとっくに`死んでる`ハズの人間で、学園都市にだって私がいた頃の記録はもう殆ど残ってないはずなのに……なんで?」

走りながら美琴は仮面ライダー達に問う。何故、度重なる大戦の影響で散逸し、記録が殆ど残っていないとされる時期に生きた自分の名を知ってる理由を。名前だけは分かったとしても、どのような容姿をしているのか、どんな能力なのかまでは分からないはずだからだ。しかも一目見て自分を『御坂美琴』と認識した。それは自分を見たことがあるか、何万分の一の偶然で、世界中に散ったはずの自分のクローン体にでも会わないかぎりは不可能なはずだからだ。これに銀の仮面と額に輝くVとVの男−仮面ライダーX−が答えた。

「どういう事?」
「俺達がこうして生き長えている理由は体を改造され、人間であって人間ではない`改造人間`になったからだ」
「……そんな!?サイボーグなんて学園都市の技術でも実用化できてないはず……」
「そうだ。サイボーグはこの時代の技術でもようやっと実用化されたばかりとされている。……だが、はるか昔に実用化に至っていた組織があった。ヒトラードイツ、ナチス第3帝国」
「だ、第3帝国!?そりゃあそこには色々とオカルトじみた技術があったって噂があるけど……」

美琴は信じられない。第3帝国がそのような超技術を持っていたなら第二次大戦でドイツが敗北するはずがないだからだ。むしろそれらの技術で世界に君臨してしかるべきだ。

「第二次大戦中には間に合わなかったが、その残党が戦後にこの時代以上の技術を以てして完成させたのさ。その証拠が俺達の体さ」

ライダー達はハッキリと言う。自分達が改造人間であることを。そして自分達の本来過ごすはずだった時間を。

「俺とXは信じられないと思うが、元々は1970年代に20代だった世代の人間だ。身体的に最も充実した大学生だった頃に体を改造され、その頃の姿のまま生きてきた。最も俺とXの場合は特殊で、俺はライダー1号と2号に、Xは父親が自分の命と引換えに、それぞれ瀕死から救うために改造された。……知っている人間が老いて死んでいく中、俺達は若い姿のままというのは辛かったがな……」

それは改造された故の悲劇だった。自分達は老いる事はないが、他の人間達はどんどん年をとり、死んでいく。友人達や慕っていた人物も……。それを乗り越え、永遠と思えるほどの寿命を得た引換えに負った使命に殉じる事を選んだ彼らに美琴は圧倒された。

「俺達は君のことだけでない。`上条当麻`の運命についても一部だけだが知っている」

−上条当麻。その単語に美琴はピクッと反応した。それは彼女が想いを寄せている男子高校生だ。美琴は元いた時代で彼への想いを日に日に強めていた。そして自分がいた時期から少したった後の時期に起こった戦争の中心に関係する事を知った今となってはそれは最大に高まった。`まさか…!?`と感情を抑えきれない。

「君には辛いことだが……いいかい」

V3の言葉に美琴は頷く。V3は上条当麻が辿った運命を告げる。それを聞く美琴の表情は暗い。

「……なんでアイツのことを教えてくれたの?」

思い人の運命を知り、泣きそうになっている美琴だが、何故V3がそれを自分に教えたのか、疑問を持つ。

「上条当麻の運命を知った。その事を活かすも殺すも……たとえ大まかな歴史の流れは変えられずとも、あの少年の運命くらいなら変えられる。それをモノに出来るかは君次第だ」

この時、美琴が知ったのは運命だけでなく、上条当麻がひた隠しにしてきたある一つの事。その全てだ。V3達は世界の暗部に関わった経験を持つので、その事も知っていた。それも教えたのだ。



「じ、じゃあ`あの時`……私のDNAマップを採集した理由は`将来的にレベル5になれる可能性があったから`……?」
「そういう事だ」

御坂美琴は仮面ライダーXから知らされたあまりの衝撃に愕然とする。それは自身のクローンが大量生産された原因となった出来事、自身が`超能力`にまで才能を開花させた事実の`全て`が`学園都市によって仕組まれていた`事。美琴は自身のクローン体「妹達」を生み出すきっかけになった出来事の裏にはそういう裏の事情があったことに愕然とする。「何故その当時は低能力者であったはずの自分のDNAマップが採集されたのか」という、疑問を一気に吹き飛ばすほどの衝撃の事実は彼女を一気に打ちのめすに値した。

因みにその事は本来ならば美琴ではなく、スキルアウト(無能力者)かつ学園都市暗部の組織「アイテム」の一員であった男`浜面仕上`と、その彼との因縁があり、アイテムのリーダーであった第4位の超能力者(レベル5)の`麦野沈利`の2人が最初に知るが、時代を飛び越えた事と`時代の暗部`が生み出し存在`である仮面ライダー達との出会いによって、美琴は彼らより先にその事を知ったという事になる。

「……君の時代から半世紀くらい後には地球全体の統合が模索され始め、世界的に戦争が起きていた。学園都市も独自の戦略で動いたようだが、地球連邦の設立を急ぐ資本主義陣営と共産主義陣営の戦争は学園都市の優位を無意味なモノへ変えた」
「どういう事?学園都市は外と30年くらいの科学力の差があったはずよ。それが無意味って?」
OTM(オーバーテクノロジーマクロス)……。本格的に実用化され、独自の発展を遂げたのはここ20年くらいの話だが、21世紀から徐々に解析して手中にしていった。`道具`はその成果の一つだ」
「OTM?」
「南アタリア島に落っこちてきた宇宙船を解析して得たオーバーテクノロジーの事。学園都市の衰退の一因であり、人類全体を星間文明レベルに高めたものの一つだ」

―そう。当時の国際機関の一つ「OTEC(オーテック)による、初代マクロスの解析は`ある世界`より時間がかかった。それは科学レベルがそこまで達するまでに随分かかったのと、21世紀中盤から22世紀序盤までの数多の紛争・戦争が度々作業を中断させたのだ。21世紀からドラえもんの時代まで日本本土が比較的平和であったのは日本の軍事力が比較的精強だったのと、`学園都市`を有するというブラフを政府が活用したからに他ならない(タイムマシンを21世紀中に実用化できた点も大きいが)
ドラえもんなどの22世紀序盤に稼働していたロボットの`体`に関する技術は日本が学園都市の技術を摂取し、更にショッカーなどの組織の残した超小型原子炉等の技術を平和利用して組み合わせて生まれたモノとの噂も残っている。そしてモビルスーツなどとの技術的関連性があるとかないとか……。

「……んじゃ、ドラえもん―ネコ型ロボットには―当時の日本の最先端テクノロジーが導入されてた訳?」
「そうだ。あれほど完全なAIはその当時しか作れなかったと聞いてる。地球連邦と反統合同盟の統合戦争や宇宙戦争がその生産施設・開発データを全て無に返した結果らしいが」

それは自我を持つロボットの製造段階まで至ったはずの日本がある年代を境にパタリとそれらを作れなくなった理由にある程度の回答を与えていた。自我の源であるAIの製造が不能になったのなら`体`だけを作れても意味はない。生産ロットを維持する必要も無い。

「その間の学園都市の動向は不明とされている。ただ俺たちの行動や地球に起こった戦火が学園都市から往年の力を奪ったのは確かだ」

−皮肉にも『人類全体の発展を促した』`マクロスの超先進技術や`人類の自由`を守った仮面ライダーの行動が学園都市のアイデンティティーの一つだった`超能力者の存在`や`科学力の優位`を奪い、自分の時代とは逆の立場に学園都市を追い込んだ。美琴はそれを聞いても既に学園都市へ絶望していたせいか、さほど動揺はしない。むしろ薄ら恐ろしい思惑を知れた事に嬉しさすら見せていた。

(……決めた。アイツの望む世界を守る。たとえ学園都市全体を敵に回したっていい。散々アイツが世界を`守ってきた`けど……`今度`くらいは私が……)

「ありがとう。教えてくれて」
「驚かないのか?」
「学園都市の暗部は`あの子`たちと`一方通行(アクセラレーター)`の実験や`第4位`やその取り巻き達との戦闘でその一端を見たから薄々とは分かってた。だけど……素養格付けだけは絶対に許せない」

それは以前−元の時代の夏に美琴や黒子たちが解決した幻想御手(レベルアッパー)事件の際に聞いた`上位能力者への劣等感`などの無能力者の心の叫び−友人の一人`佐天涙子`がその当事者となった事で初めて気づけた事。その願いすらを粉微塵に打ち砕く素養格付けは許すわけにはいかないという美琴が持つ正義感、そして知らず知らずのうちに影響を受けた上条当麻への想いが彼女を突き動かしているのだ。それを仮面ライダー達も気づいているようで、次のような一言を言った。

「その意気だ。この時代を救った後でもいい。上条当麻を`救ってやれ`」−と。美琴はそれに頷くと、雷撃の槍を発生させ、それを放つ。それは仮面ライダーストロンガーの`エレクトロファイヤー`をも上回る強力なものだ。

「この世界も……アイツも守って見せる!!その為に私はここにいるんだからぁっ!!」

−それはたとえ世界を敵に回しても上条当麻を運命から救うという想い、そしてこの世界の混沌を晴らすという確かな決意のこめられた叫びだった。


−御坂美琴はこの日、自分と上条当麻に待ち受ける運命に抗うことを選択した。それが元の時代に戻った後の自分に出来るせめての運命への抵抗であった。



「あれは火炎放射器……待ち伏せしていたか」

前方に火炎放射器を持つ兵士の姿が見える。どうやら一斉に火炎放射を放つつもりだろう。V3はすぐにRXに号令を出す。

「RX!!」
「分かってます!!」

その瞬間、RXのベルトがさらなる光を放ち、彼が持つ、この場に最適な姿へ再度の変身をRXにもたらす。

『俺は炎の王子!!RX・ロボライダー!!』

−ロボライダー。いかなる灼熱にも耐えうる装甲を持つ2段変身の一つ。黒と黄色を主体としたボディカラーを特徴とする。ロボライダーが前に出て火炎をその身で防きながらエネルギ−を吸収する。

「ば、馬鹿な!!数千度の火炎を受けてなんとも無いはずがない!!」

火炎を受けても平然と歩いて来るロボライダーに恐怖した兵士たちは思わず悲鳴を発する。ロボライダーは彼らに言い放つ。お決まりの決め台詞を。

『俺は炎の王子!!炎の力は……俺のエネルギーだ!!』

王子。それはRXが元はゴルゴムの世紀王として改造された点に由来している。炎と言うのはロボライダーが炎のエネルギーを吸収し、高熱の中でも自在に戦えるからである。

ロボライダーは静かに足音を響かせながら炎の中を歩いて行く。それは兵団にとっては恐怖の象徴でもあった。









‐別領域


―駆動音と共に帝政カールスラント陸軍所属のW号戦車の砲塔が回転する。突撃してくる兵団兵に向けて「7.5 cm Kw.K.40 L/48」の洗礼を浴びさせるためだ。そしてややあって轟音と共に砲弾が放たれ、爆発と共に兵団の小隊が断末魔の悲鳴と残骸を撒き散らしながら吹き飛ぶ。

「これで敵の10%をやっと撃破って所か」

W号戦車の砲撃手は遙かな未来でネウロイとは違う宇宙からの脅威と戦っている自分に不思議な気持ちを浮かべながらこう呟く。自分達の時代では裏方に回っていたのに、未来世界ではこうして戦線の矢面に立っている。世界が違えは自分も対オラーシャ帝国戦などに戦車兵として、戦争に従軍していたかもしれない。それを考えると何かの因果を感じた。


―こうして第二次大戦中の車両をも動員せざるを得なかった連邦軍。奇しくもこの戦闘は自らのモビルスーツなどを重視した軍備整備にこの戦闘は一つの疑問を投げかけることとなった。時代遅れと揶揄されていた戦闘車両の思わぬ活躍は連邦軍の機甲師団に戦車を復権させるある一つのきっかけとなった。




前線に設けられた臨時陣地のテントでは各陸上部隊を指揮する連邦軍の将官が前線から入ってくる情報を基に熟考に入っていた。

「本日、敵歩兵師団の2%あまりを撃破するに至りました。敵前線に4キロほど食い込み、なんとか攻勢に出れそうです」
「うむ。しかし一日であれだけの弾薬を使い、ようやく2とは……辛いな」


ハワイ州の地図を机に広げながら今後の作戦計画を練る連邦軍将兵。兵団のあまりにも多い物量は連邦軍の連日連夜の攻撃にもよく持ちこたえ、連邦軍は極度の消耗を避けるため、航空部隊やスーパーロボットを除いて積極的攻勢には出られず、号砲から一週間以上、正確にはほぼ2週間近くが経過していた。御坂美琴や仮面ライダー達の協力を得てもなおこれだけの日数がかかっているのは連邦軍としては予想外の苦戦である。スーパーロボットもオワフ島の市街地を盾にされている以上は積極的に必殺技を放つわけにもいかないので、戦果は思ったより少ない。
機甲師団の作戦初日の戦果は小の上程度に留まった。





「これが……戦場……!」

‐魔法少女として戦ってきたなのはには映像ではない、`本物の戦場`は息を呑む光景そのものだった。負傷した兵士を治療するための野戦病院(病院と言ってもテントだが)、遺体を運ぶ担架……仲間の墓標を立てる兵士……硝煙の匂いが鼻につくこの光景こそ、戦場なのだ。管理局の仕事について数年になるが、これほど凄惨な光景は今まで見たことはない。かつて出会った元日本兵の老人たちもこのような光景を見てきたのだろうか。

「そう。戦場ってのはこういうもんだよ」

なのはの側にはドラえもんとのびたがいた。彼らは多くの大冒険でこのような修羅場を見てきたので、平然と構えている。これが戦場だとなのはに見せつけているかのように落ち着き払っている。

「こんな光景は近代戦じゃ当たり前さ。人が死なない戦争なんて無い。`殺るか殺られるのか`が戦いの真理さ」

古代より不変の真理を説明しながらドラえもんは足を進める。なのはもそれに続く。

道路に無残な姿になったコスモタイガーが安置されている。敵の対空砲火の餌食となったらしく、コスモタイガーの流麗な姿を形作る翼の片方が失われている。胴体も穴だらけで、操縦席には搭乗員のものらしき血がべっとりとついている。

「コックピットを中心に攻撃したか……兵団め」

ドラえもんは吐き捨てるように言う。情け容赦なく殺戮を行う鉄人兵団を嫌悪しているのだろう。
犠牲となった搭乗員を弔ってからその場を離れ、前線で戦っている機甲師団の元を訪れることにした。



「この地区は扶桑陸軍の担当だから戦車隊がいるはずだけど……あれだ」

市街地に整然と並んでいるのは日の丸が輝く栄光の日本(扶桑)陸軍の制式戦車の中では最新鋭の「四式中戦車 チト」と「五式中戦車 チリ」だ。それを装備するは史実で大日本帝国陸軍の精鋭であり、占守島の戦いで奮戦した栄光の戦車第11連隊であった。



「おお、よく来てくれた。君たちが司令部から派遣された人員だね」
「はい。早速ですが、状況を把握したいのですが」
「うむ。まずはこっちに来てくれ」

3人はテントに入って第一一戦車連隊の司令部へ挨拶を済ますと状況の説明を受ける。

「現在、わが連隊はリベリオンの第1機甲師団、カールスラントの第2装甲軍と共に戦闘に入っている。この作戦の開始当初に九七式中戦車装備の部隊が突撃を敢行したが、敢え無く撃破されてしまった。そこでわが連隊が急遽派遣され、戦列に加わった。今のところは戦線の維持に全力を尽くしている。撃破数は多いんだが、ゴキブリのように湧いて出てくる」

精鋭とされ、『士魂』精神を後の世に伝えた彼らをしても、撃破を重ねても現状維持が精一杯であるというのは状況の厳しさを物語っていた。五式中戦車などには排気のススや灼け、傷などが見受けられる。彼らの戦歴を感じさせるその情景は底知れない迫力を匂わせる。

「物量が奴らの強みです。隙を見せたら一気に落とされます。畳み掛けなければ」
「それは分かっているが、四式と五式だけでは火力が足りなくてな」
「それは心配に及びません。司令部は`七糎半対戦車自走砲 ナト`と`五式砲戦車 ホリ`を回すと言っています」
「おお!!では完成したのか!?」

連隊長の声のトーンが明るくなる。それらは史実では間に合わなかった日本の戦局打開への秘密兵器の一つ。強力な連合軍戦車に対抗するために計画したもの、配備に至ることなく歴史の闇に葬り去られた存在。`1944年`では強力なネウロイへ対抗するため、ウィッチの補助的役割を期待されて開発され、量産に成功していた。この第一次生産分が部隊定数に達し、配備が決定されたのだ。

「ええ。後二日もあれば届けられます」
「それはありがたい!!これで要塞にも十分に火力を発揮できる!!」

四式や五式は戦前・戦中の日本最優秀戦車だが、火力は第二次大戦後半以降の戦車としては標準的で、同じ75ミリでも貫通力に優れるパンサー、第2次大戦型では最強と名高いケーニッヒスティーガーを有する帝政カールスラントの部隊に比べると霞んでしまう。兵団のトーチカや陣地粉砕に活躍するのは、かの国の兵器ばかりだと憤慨する扶桑出身部隊にはこの上ない朗報だ。

「なのはちゃん、 パトロールする第2中隊の護衛をお願い。のび太くんは中隊の指揮車の砲手を」
「うん!」
「分かった」

2人はドラえもんの頼みを引き受け、それぞれの中隊に合流する。それを見送る連隊長は訝しげな表情だ。

「あの子達に任して本当に大丈夫かね?」
「何、大丈夫ですよ。なのはちゃんは時空管理局の`エースオブエース`と謳われる俊英であり、のび太くんは射撃なら誰よりも−そう。誰よりもエキスパートですよ−」

ドラえもんは不敵に笑いながら答えた。それはかの大英帝国の吸血鬼殲滅機関「ヘルシング機関」(英国国教騎士団)の長であるインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング卿を彷彿とさせる笑みだった。なのはの空戦能力やのび太の射撃の精度への絶対の信頼が彼をそうさせていた。





「全たぁーい、前進!!」

四式中戦車の三菱(1944年で正確に言えば宮菱だが)AL 四式 4ストロークV型12気筒エンジンと五式中戦車の液冷V型12気筒ガソリンが唸りを上げ、隊列を取って前進する。それは史実では実現しなかった光景であり、大日本帝国陸軍戦車隊の悲願が違った形で実現した。相手は連合国ではなく、宇宙の脅威。

−そう。それはかつての怪獣映画の名BGMがちょうど合うだろう。戦車隊の勇ましい行進は空から支援するなのはにも心強く感じられる。昔の戦争映画での光景も的外れでは無いのだ。

この日の戦闘の号砲となる第一射目はのび太が乗り込む五式中戦車の射撃だ。

「敵発見!!距離15000」
「了解」

乗員の一人からの報告にのび太は答えるといきなり攻撃を敢行すると車長に告げると、いきなりカンで主砲の仰角、向きを最適化する。改修である程度未来技術が導入されてはいるが、これほどの行為は熟練兵でも行うのは困難だが、のび太の天賦の才がそれを可能としていた。

そしてのび太はトリガーを引き、砲撃を行った。砲弾はのび太の狙い通りの地点へ着弾。兵団の歩兵連隊を混乱に陥れる。これには空中にいるなのはも「す、すごぉ〜い……」と感嘆の声を出す。まさにのび太の面目躍如であった。

(すげえ……こんな人材、我が軍に欲しい!!)

……中隊長をしてこう言わしめるほどの驚異的命中精度であった。

「隊長たちにつづけ!!データの共有は出来てるな?」
「OKです!!」

これは戦車がミノフスキー粒子で減じられた利点の復活だった。ミノフスキー粒子散布下でもある程度精度が保証された新式のデータリンクシステムを搭載された事で、四式中戦車及び五式中戦車の命中精度は製造当初より遙かに良い。データが全車両に行き渡り、そのデータを元に仰角の修正を行い、射撃を行う。士魂部隊の戦いはこれからだ。

−五式と四式の五式75mm戦車砲が火を噴く。砲弾が新たに装備された自動装填装置を通して装填され、3度ほど一斉砲撃を行う。兵団は遠距離からいきなり砲撃を加えられ、狼狽するばかり。人類が培ってきた砲技術は伊達ではないのだ。戦車隊の空中援護の役割を負ったなのはも先行して、かつての急降下爆撃機`Ju 87`のG型(かのハンス・ウルリッヒ・ルーデルが乗った地上掃射型)よろしく、レイジングハートを構えて掃射準備にかかる。花形である空中でのHit and awayや、巴戦(ドックファイトの日本での言い方。師である智子がそう言っているので、なのはもそう言うようになっていた)ばかりが空中にいる者の仕事では無い。援護を行うのも大事である。WWUで`戦闘爆撃機`が産声をあげたのは何の為か?

日頃から智子にそう教えを受けて来た。それを今、実践すべきだとなのはは「ジェリコのラッパ」を想起させる急降下爆撃を敢行した……。












−戦車隊や制空隊単独での攻勢は難しく、急降下爆撃などの近接航空支援を要すると判断した地球連邦軍はティターンズ残党同様に「A−10 サンダーボルトU」の近代化を急ぐとともに、連合軍のその方面の精鋭を呼び寄せた。その中核を担うのは……

「よく来てくれた。ハンナ・U・ルーデル大佐」
「ハッ!只今着任いたしました、提督」

その将校は鼻の辺りに傷を持つ美女だった。歴戦の猛者の風格たっぷりのこの人物こそ史実で`ソ連最大の敵`として対地攻撃で名を馳せた`スツーカ大佐`ハンス=ウルリッヒ・ルーデル に当たる存在。史実では彼は片足を失ったが、彼女の場合はまだ五体満足であった。山南に敬礼をすると、その不敵な面構えを覗かせる。

「君のその力、アテにさせてもらう。ところであの世界では大変だったそうだね」
「ええ、制空権が維持できないというのを理由にスーツカ隊は出撃禁止を上から申しつけられましたから。まあそれでも自分は危急存亡の時に何いってるのかとFw190 Dやスーツカで出撃しましたがね。書類も偽装して」

その行動はまさしく史実のルーデルそのものだった。命令に背いてまで出撃したとか、負傷した際も病院からこっそり抜け出しては出撃していたという逸話はあの世界にも当てはまるのかと山南は感心した。

「出来る限り休暇を減らして出撃回数を増やすよう上司に嘆願し、その為に書類を偽造したというのは本当かね」
「ええ。私がウィッチになって間もない頃に、当時の上官との折り合いが悪く技量未熟だと決めつけられて度重なる意見具申にもかかわらず戦闘には参加させてもらえなかったので、それで」

ルーデルはその時の境遇を思い出したのか、ホロリと涙を浮かべる。よほど悔しかったのだろう。史実でも著書の中で「男泣きに泣いた」と記しているが、それ同様の悔しさを味わったのだろう。実際彼女のスコアはどう考えても、史実同様の事やって稼いだとしか思えないものだ。宝剣付柏葉騎士鉄十字章も史実同様に受賞している。

「ティターンズには散々にしてやられましたよ。何度も撃墜されて捕虜になりかけました」
「軍用犬に追われたのかね」
「はい。それにしても勘のにぶい軍用犬でしたがね」

`ここまで史実同様`とは。山南は思わず閉口してしまう。ルーデルの扱いには苦労しそうだと心の中でため息をついた。

「失礼します」

山南の副官が艦長室に入ってきた。時計を見ると定時報告の時間になっていた。

「提督、偵察機から映像が入っています。ご覧になりますか」
「頼む」

副官は偵察機からリアルタイムで送られてくる戦車第11連隊と兵団の戦闘の様子を映像機器に映しだす。四式中戦車や五式中戦車の5式75ミリ戦車砲が火を噴き、兵団側のレーザー兵器と火線が入り乱れる。なのはの急降下爆撃による支援も映っている。

「ン、あの娘……青いな。まるでなっちゃいない、上昇タイミングも危ない」

ルーデルはなのはの急降下爆撃がすぐに練度が低い事を気づいた。急降下爆撃に対する恐怖というものが感じられるやり方だ。新兵なのだろうが、あれでは効果が薄い。上昇するタイミングも下手したら対空砲火の餌食になりかねないほどにつかめていない。

「……ええい、もう見ておられんっ!!」

居ても立っても居られなくなったルーデルはすぐに出撃しようと意気軒昂だ。着いて間もないはずなのにこの始末である。さすがはルーデルである。

「休養などはとっていられない。小官はすぐに出撃します!!」

ルーデルは敬礼するとすぐに格納庫に走っていった。ああなると、もう誰にも止められない。

山南は苦笑しつつ、彼女の後ろ姿を見送った。たしかにあの人物は`ルーデル`だ。山南はそうルーデルの後ろ姿を見てそう思った。







彼女のこの時点での相棒は初代のアーデルハイド(史実での初代後部機銃手のアルフレート・シャルノヴスキー)、
二代目のヘンシェル、三代目のロートマンの後任(このロートマンは精神的にルーデルについて行けなかった)として`ガーデルマン`が着任していた。このガーデルマンは初代の相棒「アーデルハイド」にも劣らぬ美貌と実力を持つウィッチで、高位治癒魔法を使えるために「シュトゥーカ・ドクトル」の異名を持つ。また、歴史上で最も有名なルーデルの相棒として未来世界の軍人達にも知られていた。

「行くぞガーデルマン、出撃だ!!」

出撃しようと意気込むルーデルだが、問題があった。自分達のストライカーユニットの調整がまだ終っていないのだ。未来世界の整備員はストライカーユニットに不慣れなので、しょうが無いといえばしょうが無いのだが、ルーデルは憮然とすると格納庫の戦闘機かバルキリーを分捕るつもりだろうか、格納庫を物色する。整備兵の一人を取っ捕まえて。

「私たちに乗れる機体は無いのか?モビルスーツはまだ訓練中だから、戦闘機やバルキリーがいい。あれなら扶桑で教育を受けているから使えるんだが……」
「そうですね……今は作戦中でほとんど航空戦力は出払っているんですが、一部は予備戦力として取っといたはずです」

ルーデルとガーデルマンは未来世界に行くに当たって、扶桑に停泊した連邦軍戦闘空母で未来兵器の操縦訓練を受けた。急速促成なので期間は短いのだが、内容が実に濃いので操縦法は頭に入っている。元々航空科である関係で最も違和感無く扱えるのはバルキリーなどの航空兵器だ。土佐の格納庫の機体は殆ど出払っているが、予備戦力の一つとして二機の最新型のバルキリーが置かれていた。流麗なその機体の名は救世主(メサイア)

「あった。これだ」

整備兵はエンジンやアビオニクスの調整に入る。そして最新型バルキリーには付き物の装備「EX-ギア」を装着するように促す。

「通常機は新型・旧型問わず防空に回されているんですが、バルキリーの中でもコイツは最新型だから地上での空母運用のテスト用にに二機だけ搭載されてたんですよ」
「テスト前の機体をいきなり実戦投入か?いくら戦時中だからって無茶だぞ」
「いやあ、こちらじゃよくある事ですよ。宇宙では既に実戦運用に耐えてます。それにアムロ・レイ大尉のνガンダムなんかいきなり投入でしたから……それ以上の無茶してる大佐が言う事じゃありませんよ?」
「……確かに」

整備兵の言葉に頷くガーデルマンにルーデルは狼狽えた様子で「こらそこぉ!!納得するんじゃない〜!!」と珍しく赤面した顔を見せる。どうやら図星のようである。史実では副官のヘルムート・フィッケル少尉らを救助するために、降下→そのまま地表を滑走→救助、乗載→再離陸なんて無茶をやらかしたが、あの世界で性別やモノが変わっても、同じことを実行したに違いないと整備兵は目星を付けた。

「調整完了です」
「ご苦労」

ルーデル達はEX-ギアを装着し、F-14 トムキャットとSu-27 フランカーを掛け合わせたような外観のバルキリーに乗り込む。手際のいいことか、整備兵はルーデル達が着替えている間に機体のカラーリングなどを旧ドイツ軍の迷彩に塗り替え、史実でルーデルが使ったスーツカと同じ部隊の番号と機番を書き込んでいた。即乾タイプのモノなのでペンキが服に付く心配は要らない。

−基本は教練で使ったVF−11`サンダーボルト`と同じだ。……行ける。

各種計器に異常が無いことを確認し、格納庫のハッチが開けられる。今の土佐は空中戦に備えて離陸しているので、ハッチの外は青空だ。雲ひとつ無い。出撃にはグッドコンディションといっていい。武装も完全装備だ。

「ルーデル大佐、幸運を祈る」

山南はルーデルらの出撃を了承し、映像通信を通して敬礼する。

「ありがとうございます、提督。……ハンナ・ルーデルだ。メサイアバルキリー、出るぞ!!」

ルーデルはVF−25のエンジンをフルスロットルで吹かし、アフターバーナーをかけて出撃していった。ガーデルマンもそれに続く。青空を2機のバルキリーが超音速で駆け抜けていった。














 −士魂連隊の航空支援を行っているなのはだったが、急降下爆撃の技量はまだ未熟であり、中々戦果を挙げれずにいた。

`Do you be safe or master it?`(大丈夫ですか、マスター?)
「うん。私は大丈夫。こんな事でへこたれてたらこの先戦えないよ」

慣れない急降下爆撃を敢行するなのはを気遣うレイジングハート。実際、なのはは砲撃で敵を薙ぎ払う事には慣れているのだが、味方の後方支援はまだ経験は浅い。いつものように単純な任務では無いせいか、疲労の度合いが大きい。味方に気を配る必要があるからだろうか?なにせ戦車は航空攻撃には脆い。それはWWUなどの実戦が証明している。彼女は対空砲火にも臆せずに第3弾を行う。

レイジングハートが最適なタイミングを測り、なのはに教える。急降下爆撃の肝は`如何にして正確に目標に攻撃を当て、うまく離脱するか`である。第二次大戦開戦時の大日本帝国海軍航空隊はこの名人が多く存在した。特に艦爆の神様と謳われた江草隆繁(えくさたかしげ)少佐の正確無比な爆撃術は有名だ。なのははそんな偉大な先人達の事はもちろん知っていた。そしてその手での名人の一人であるハンス・ルーデルの事も。『彼らのようになりたい』。自分の本分は大火力による戦場の制圧にある。だが、味方の支援をこなせなければ集団戦に向いてないことになる。

−この分野でも頑張らなきゃ。敵兵に砲撃を食らわせ、離脱に移る。しかし、そうは問屋は卸さないとばかりに近接信管入りの対空砲の衝撃を受け、バランスを崩し、失速してしまう。

「し、しまっ……!!」

なのはは失速し、錐揉み状態で地面へ落下していく。士魂連隊の兵士たちも思わず戦車から身を乗り出して悲鳴をあげる。


−スピードが急すぎる……立て直せ……!!

『捕まれ!!』

一機のバルキリーがガウォーク形態で突っ込んでくる。ルーデルの機体だ。彼女は身を乗り出し、手を伸ばす。それが功を奏し、なのははせめてあのバルキリーに、と軌道を精一杯修正し、ルーデルのメサイアに落下してくる。ルーデルはうまく落下してくるなのはを受け止める。流石というべきか。

「あ、ありがとうございます……」

ホッと一息ついてルーデルの膝の上に座るなのは。目立った怪我は無いようだ。ルーデルは安堵する。

よく見ると女の子の肩が震えている。怖かったのだろう。死の恐怖を味わったのだから当然だ。ルーデルは優しく抱きしめてやる。

「え……?」

赤面してルーデルの胸の感覚に戸惑うなのは。

「もう大丈夫だ。大丈夫だから」

短くだが、ルーデルは正面から女の子−なのは−を抱きしめてやる。

−そういえば昔、私も母さんにこうやってもらったな……。

今や遠い昔になった幼い日に自分の母が教えてくれた温もりをルーデルは思い出す。その何分の一でもこの少女に与えられれば。ルーデルはぎこちない抱擁でなのはを落ち着かせる。

この一瞬が`スツーカの悪魔`と謳われるウィッチ「ハンナ・ルーデル」と管理局のエースオブエース「高町なのは」の出会いだった……




















―かくして出会ったハンナ・ルーデルと高町なのは。ルーデルはなのはをVF−25の後部座席に乗っけてそのまま戦闘を続行した。
戦闘中なので、自己紹介はそこそこにすませ、直ぐ様近接航空支援に加わった。


「ル、ルーデル大佐、どうするんですか!?」
「知れた事!このまま突っ込むだけだ!!」

ルーデルはメサイアを突っ込ませて、ド派手にガンポッドやマイクロミサイルをぶっ放つ。`近接航空支援とはこういうものだ`と言わんばかりに。それはあまりにも危険かつ華麗であった。超低空でミサイルなどを放てば一歩間違えれば爆風に巻き込まれてもおかしくはない。紙一重で爆風を見極めるルーデルの爆撃術や飛び方に、なのはは感心させられるばかりだ。流石はスーツカの悪魔である。

「貴官も`管理局`の空戦魔道士の端くれなら覚えておけ。これが近接航空支援というものだ」
「え?管理局の事を知ってるんですか?」
「知り合いに`前に時空管理局にいた`という扶桑のウィッチがいてな。こっちに行く前にそいつから色々聞いておいたのさ。……お前のこともな。高町なのは空尉」
「ふぇっ?」

なのははルーデルが自分の事を時空管理局での役職を付けて呼んだ事に驚きを顕にする。向こうの世界は時空管理局は連邦を通しての接触はあるが、正式な国交はまだ無いと聞いている。何故ルーデルが一応連邦の一士官という事になっている自分の`管理局`での役職を知っているのだろうか。

−そう言えば智子中尉も私と初めて会った時に『あなたのことは聞いてるわ』って……一体誰が……?

二人に自分のことを教えたのは誰だろうか。なのははその疑問をこの戦役中ずっと持ち続けることになるが、そのことを教えた人物がスバルと並ぶ、もう一人の教え子である事を知るのはこれから何年も経過した後の事である。その時のなのはの心中はいかほどのものか。




ルーデルが爆撃で切り開いていった道を第11連隊の4式中戦車と5式中戦車が無限軌道を唸らせて疾駆する。瓦礫を踏み越えて市街地に赴く。途中でカールスラント軍の第508重戦車大隊も合流し、数十両の中・重戦車は最前線へ進軍していく。

「前線の状況が通達された。M3中戦車装備のリベリオン軍装甲師団が壊滅の危機に陥っている。敵が鹵獲したと思われる、M4中戦車の後期生産型(M4A3E8。博物館に残されていたのを鹵獲して兵団が本国から増員された小柄の砲兵用に改造した)が現れ、出鼻を挫かれたそうだ」
「M4A3E8ですか。相手にとって不足はありませんよ」

史実で4式や5式はM4などを想定して作られているが、それは世界が違えど同じであるらしく、指揮戦車に搭乗する戦車兵達は不敵な笑みを浮かべる。

「のび太君、君の射撃の腕、当てにさせてもらうよ」
「お安い御用ですよ」

隊長はすっかりのび太の腕にご満悦なようだ。他の兵士たちはやれやれとため息をつきながら各々の働きを続行する。

砲撃の硝煙が漂い、当たりにジェットエンジンと無限軌道の音が響くホノルル市はかつての賑わいを全く感じさせない静けさと、戦いの爆音が同居する不思議な状況となっていた。
現地入りしていた従軍記者の手による、この時の進軍の様子を写した写真は連邦軍の反攻の始まりを示す一枚として歴史に残っていく。
この戦役における戦争報道がどういうものなのかは後に語るが、彼らジャーナリストのありのままの報道がこの戦役で人類が一丸になれた影の立役者なのは確かだった。



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