-仮面ライダーと関係を持ったシャーリー。ヌーボパリに戻るとルッキーニを寝かせて
圭子がいる駐屯地の執務室に報告のために赴いた。

「少佐、`デルザー軍団`ってのが動きだした。目的はわからないけど、とにかく強敵だそうだ」
「ライダー達からも聞いたわ。デルザー軍団は過去に7人ライダーの最大の敵として立ち塞がった組織で、
一人一人が他の組織の大幹部レベルの戦闘力を持つと」
「そんな奴らなのかよ!?」
「ええ。少なくとも構成員の全員が歴史上の魔物(その子孫)や伝説の不死者達を更に強化した出自を持つの。
あのストロンガーも改造当初の能力じゃ全く歯が立たなかったほどよ。だからあの人は体を再改造せざるを得なかった」
「ま、マジかよ!?」

圭子は今のストロンガーの体は更に強化されたため、オリジナルの肉体は殆ど残っていない事を告げる。
体を再改造するという事は機械の割合が増える事の表れでもあり、どんどん人間からかけ離れていっている証拠であるからだ。
栄光の7人ライダーで再改造を受けたのは1号、X、ストロンガーの3人。それだけ戦いが激しかった事の表れである。
ストロンガーはシャーリーに「自分はブラックサタンの最高技術を以てして造り出されたボディを持っている」と言っていたが、
それでも再改造を余儀なくされたという点からは、デルザー軍団の脅威が垣間見れる。

「私たちの火器じゃ殆どダメージは与えられない。大口径の対装甲ライフルか37ミリ以上の機関砲でも無い限りは。
実際にやってみたけど三八式とかM1ガーランドじゃ牽制程度のダメージしか与えられない。だから対装甲ライフルの使用は
対改造人間には必須って上に報告入れたわ」
「うへぇ〜そんなに硬いのか。並のネウロイより強そうだ」

圭子はクライシスやバダンの再生組織の怪人相手に色々と火器を使ってみた経験をシャーリーに話す。
机に置かれている報告書の写しをシャーリーは手に取り、目を通す。

「何々……三八式歩兵銃……クライシス帝国怪魔ロボット`デスガロン`へ使用、貫徹セズ……
M1ガーランド……同じく怪魔ロボット`クロイゼル`へ使用、装甲に弾かれ、通ジズ……小銃はほぼ駄目って事か」

それらは航空歩兵が扱い易さを理由に使用する機会が多い小銃の一つだ。7.92mm口径の小銃では余程の腕でもなければ
ダメージを与えるに至らない(ゴルゴ13でも無い限りは小銃で致命傷は与えられないという意味でもある)事が
レポートされている。圭子は空戦ではスナイプ能力に定評があるが、その彼女の腕でも対改造人間には相当に苦労した
事が伺える。対装甲ライフル(こちら側での対物ライフル)を持ちだしてようやくダメージを与えられたという記述
がある。

「少佐はどんな対装甲ライフルを使ったんだ?」
「色々よ。ある時は九七式自動砲、別の時はパンツァービュクセやラハティ L-39を使ったりしたわ。
九七式は哀しいかな、弾丸が装甲に負けて砕けた時もあった……」
「扶桑は工業力はある割には徹甲弾とかの冶金技術が遅れてるからなぁ。`日本`と違って地下資源に恵まれてるのに」
「そうなのよ。そういう点は似てるのよね〜泣きたくなったわ……だから色々と改造して使ったわ」

圭子は九七式自動砲に扶桑純正の弾薬を使ってクライシス帝国の怪魔ロボットを狙撃したら弾丸が装甲に負けて砕けたという、
泣きたくなるようなエピソードを話す。そのため、自身で改造して他国のライフル弾を撃てるようにしたとの事。
更にこの時代で使われている対物ライフルも使ってみたが、素材などの違いで遥かに軽量化されているのでその分、取り回しはしやすいと
書いている。(口径は12.7ミリと比較的小口径だが、弾丸の冶金技術的違いと材質の違いで九七式自動砲より遥かに貫通力がある)

「この時代のライフルも使ってるのかぁ。正直どうなんです?」
「私達の時代のものより重量が軽いからその分取り回ししやすい。私は好きよ?アサルトライフルも対戦闘員にはOKだし」

執務室をよく見てみると、圭子は最近はテストも兼ねて銃を出撃のたびに選ぶらしく、かなりの数の銃火器が置かれている。
元の時代の小銃・対装甲ライフルはもちろん、後世で制式化された同種の銃、拳銃も多くあった。
その中にはハワイ戦から今日までの間にのび太に勧められたコルト・パイソンやデザートイーグルもあった。

「ん?なんだこの銃、えらく大口径だな……」
「マグナム弾を使える銃よ。仲間の子に勧められてね」
「マグナム?マグナムってあのベアハンターとかが使う……」

シャーリー達の時代でも、もちろんマグナム弾を使う拳銃はあったもの、あまり一般では有名でなく、
ベアハンターなどが好む弾丸との認識もまだ大きい時代だった。「ダーティハリー」で一躍知名度を得るには1940年代から更に四半世紀以上が
経過した1970年代を待つ必要がある。圭子は銃を好んで使う都合上、同じ得物を使うのび太と仲が良く、
ハワイ戦終了から間もない頃にのび太から後世のマグナム弾を教えられた。彼女は身体強化を発動させた状態で「S&W M500」を試しに撃ってみたが、
「拳銃とは到底思えない……まるで手持ち砲を撃ったみたいな感覚」との感想を述べている。

「ええ。この銃なんか12.7mmのリボルバーなんだけど、普通の時に連射したら健康は保証出来ないって軍医からも言われてるしね」
「うへぇ〜んな馬鹿げたもんが造られてるのか……未来って恐ろしいなぁ」

シャーリーは「S&W M500」や「トーラス・レイジングブル」などの21世紀に製造されたリボルバー大型拳銃を手にとってみる。
「コルト・シングル・アクション・アーミー」(通称ピースメーカー)やM1911より数段重く、「いかにも」という風格を感じさせる。

「人間相手にはオーバーキルだけど改造人間とかにはこれでやっと効くって感じなのな」
「ええ。でも中にはこれ食らっても平気な人間がいるのよ。しかもこの世界のヴァチカンに」
「ヴァチカンってあのローマ法王とかいる……?」
「そう。そのヴァチカン」

圭子はヴァチカン最強戦力である「アレクサンド・アンデルセン」の事をそれとなくシャーリーに話す。
アンデルセンの噂はこの時期には地球連邦軍の間ではある意味で有名で、「聖人より強い人間」と専らの噂だった。
(実際に後々、アンデルセンは神裂火織をも圧倒するのでこの噂は真実となる)
シャーリーは「ヴァチカンにそんな超人がいるのか!?」と白黒させたとか。

 

 

 

 

 

‐ネオ・ジオン軍残党が隠れているとある資源衛星

「まずはご帰還を祝うべきですかな、キャスバル・ダイクン……いえシャア・アズナブル大佐殿」
「ウム……ご苦労だったなガトー少佐」

この頃、ネオ・ジオン軍は`主`の帰還により再建の第二段階へ入っていた。
‐そう。アムロの予感は的中していた。シャア・アズナブルは健在であり、再びネオ・ジオン軍を束ね始めたのである。
シャアは実の所、第二次ネオ・ジオン戦争で敗れた後、ポットがサイコフレームの共振の奇跡か、中東付近に転移していた。
一命を取り留めた後は偽名の一つ「エドワゥ・マス」を(クワトロ・バジーナとしてはエゥーゴ時代に有名となったので
使えないため、しばし市井の人間として生きるために幼少時以降、使う機会の無かったこの名を名乗った。)名乗り、
髪形などをネオ・ジオン軍総帥であった時期のオールドバックから「クワトロ・バジーナ」と名乗っていた時期のものへ
戻し、`別人`として生きながら地球連邦の政策を見つめていた。彼としては移民を推進するようになった連邦政府を
多少は見直したもの、アムロとの再戦を望む`パイロット`としての堅持や誇り、ザンスカール帝国崩壊後のスペースノイド
に再び`スペースノイド統一`の象徴としてジオンを求める風潮が生じた事がシャアを戦いへ駆り立てた。
彼は地上のジオン残党軍と連絡を取る任務についていたアナベル・ガトーと接触。自身が赤い彗星であり、ネオ・ジオン軍総帥
であると告白し、証拠として、ジムVで編成されていたジオン残党掃討部隊をリゲルグで撃滅して見せる事で
ガトーの信頼を獲得し、ネオ・ジオン軍へ帰還を果たした。その後は連邦軍が鉄人兵団との戦いに明け暮れる裏で、戦力再編を推し進めた。
アナハイム・エレクトロニクス社からは追加生産された「ギラ・ドーカ」と遂に納入された後継機「ギラ・ズール」などの
新鋭機、旧ティターンズ残党から納入された「マラサイ」、「バーザム」、地球連邦軍内で旧・エゥーゴやレビルらを敵視する
旧ティターンズ派の生き残りからは回収された鹵獲機からリバースエンジニアリングする形で再製造に成功していた「ゼク・アイン」
、「ゼク・ツヴァイ」も裏取引で納入されていた。また、ジオン共和国極右勢力からは……。

「まさかドロス級がまだ生き残っていたとは。ア・バオア・クーで全部戦没したと聞いていたが……」
「シン・マツナガ大尉が共和国内の極右勢力から手に入れた代物です。`ミドロ`、本来は2番艦として竣工するはずであったと
聞いています」
「ほう。そんな代物をよくもまあ秘匿していたものだな」
「終戦の前日に極秘で完成したので公式文書にも載っていない艦だそうです。公式には`3番艦として計画されたもの、資材不足で建造中止になった`
とされていたのですが、有志が完成していた同艦を秘匿したのが実際のところだそうです」

シャアは「レウルーラ」を引き続き座乗艦としていたが、その隣に停泊中のドロス級「ミドロ」の巨体に思わず目を奪われる。
旧ジオン軍最大の艦であり、ア・バオア・クーでは艦固有の対空火力の低さが原因で「ドロス」と「ドロワ」は戦没してしまったが、
このミドロは戦後の秘匿期間の時期に改修が施されたようで、対空パルスレーザー砲が所狭しと増設されている他、大型化したMSに対応するためか、
艦規模も改修で大型化しており、レウルーラが小さく見えてしまう。

「ガトー少佐、君は何に乗るのか」
「ハッ、自分はリゲルグなどの機体がやはりしっくりきますのでそれを。大佐は何に乗られるのです?サザビーは失われたと聞いておりますが?」
「サザビーの後継機としてグラナダから納入された`ナイチンゲール`かアナハイムから譲渡された`シナンジュ`のどちらかだろうな。
シナンジュは改修中なのでナイチンゲールに乗る事になる」

シャアはレウルーラの総帥室でネオ・ジオン軍モビルスーツ隊を今のところ束ねる立場にあるガトーに自身の乗機を告げる。
サザビーの後継機にして、νガンダムを凌駕する性能を持つ「ナイチンゲール」だと。アムロに今度こそ打ち勝つために
ネオ・ジオンに舞い戻った。そのためにナイチンゲールの納入を急がせたと。
だが、対するアムロもシャアの復活に備えてνガンダムを超えるHi-νガンダムを準備している事をシャアは今のところ情報を掴んでいない。

‐アムロ・レイとシャア・アズナブル。Hi-νガンダムとナイチンゲール。両者の対決は何れ生起することになるだろう。

 

 

アムロもラー・カイラムの私室でそんな感覚を覚えてならなかった。

「シャア、貴様は生きているのか……?」

と、呟きながら軍服に着替え、部屋に置いてある旧エゥーゴ・カラバ時代の写真を手に取る。

 

‐思えばあの頃のシャアはカミーユにニュータイプの理想像を見出そうとしていたかも知れないな。
奴もブレックス准将のことは敬愛していたというし……、カミーユさえあんな事にならなければ……。

アムロはシャアの本質の一つを見抜いていた。シャアは今は亡きブレックス・フォーラ准将に指導者としての理想像を見出し、
彼を敬愛していた。だが、ティターンズの軍事司令官「バスク・オム」に彼が暗殺されてしまい、パプテマス・シロッコに
カミーユが精神崩壊させられた事で「シャア・アズナブル」として地球を粛清する決意を固めてしまった。
その最大の要因がカミーユ・ビダンの崩壊だが、アムロ自身はそばにいながらカミーユを救わなかったシャアにある意味で
憎しみさえ抱いていた。それは後にジュドーがカミーユの気持ちを伝えた事で多少は緩和されたもの、
グリプス戦役後にカミーユに長く療養生活を強いた事を咎めたい気持ちは依然として持っている。

‐もし、カミーユが崩壊せず、シャアが「クワトロ・バジーナ」としてジュドーやシーブックと会っていれば状況は違っていたかもしれないが…。

アムロはこの時期には新世代のニュータイプであるジュドー・アーシタやシーブック・アノーとシャアが「クワトロ・バジーナ」として出会い、
カミーユが精神崩壊を起こしてなければ第二次ネオ・ジオン戦争は起きなかったのに、と考えるようにもなっていた。
歴史にIFは禁物だが、もし
ジュドーやシーブックとの出会いがもう少し早ければ、
自分とシャアが第二次ネオ・ジオン戦争で刃を再び交えるのは避けられたかもしれないという悔恨もある。

‐あの戦争の直前だったか。セイラさんに`兄を討ってくれ`と言われたのは……

第二次
ネオ・ジオン戦争直前にブライトを通して再会したシャアの実の妹である「セイラ・マス」(本名はアルテイシア・ソム・ダイクン)
は`兄を討ってくれ`と言っていた。セイラは兄がグリプス戦役でアレだけ大手を振った演説したのに、
結局は自身が忌み嫌っていたはずのハマーン・カーンと似たような事に手を染めた事に落胆し、
アムロをけしかけるという意外な一面も見せた。アムロは兄妹でありながら、兄を憎むセイラ、妹を想いながらもジオンの赤い彗星として
人生を生きるシャアに同情の念を見せた。第二次ネオ・ジオン戦争の際にシャアはセイラ(アルテイシア)を手に掛けずに済んだ事に安堵していたのを
聞いたからだ。その時、アムロは初めて心の中で、妹が未だに自身を憎んでいることさえ知らずに妹を思慕するシャアに同情を覚えた。

顔を洗いながらそう考えをめぐらせる。それは近い将来に生起する宿敵との戦いへの想いだったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

‐1944年 秋 欧州最前線

「……あのパイロットは私を落とすことを`我が先祖の宿願`と言ってた……何故?」

501解散後に欧州へ戻っていたミーナ・ディートリンデ・ヴィルケはあの時‐501‐で遭遇したティターンズのパイロットが言っていた事が引っかかっていた。
あの時に言われた「ナチ野郎」という単語については歴史を調べて知ったが、あのパイロットが言った言葉。`先祖の悲願`とは?
それをミーナは気になっている。今、バルクホルンは哨戒飛行中でなため、Fw190が故障で待機になったハルトマンに調べてもらっているが…‥

「……あったよミーナ!これこれ!!」

ハルトマンが地球連邦軍の駐屯地から借りてきた「エースパイロット名鑑」という分厚い本をミーナに見せる。ハルトマン曰く、これなら手がかりを
掴める

2人で「ドイツ空軍の項目」をさがしていると、それに行き着いた。

「何々……`ヴォルフ・ディートリッヒ・ヴィルケ`、ドイツ空軍の中で3桁撃墜数を数えた撃墜王の一人。フュルストの異名で知られ、
162機を撃墜したもの、1944年にP‐51に撃墜され、戦死。死後、大佐に叙された……!?」
「やはり……!」

そのページを見たハルトマンの声のトーンが暗くなる。`向こう側`にもミーナに当たると思われる存在はたしかにいた。
だが、戦死したというのがハルトマンにはショックだったのだろう。
ミーナは覚悟していたとは言え、自分に当たるかも知れぬ存在は戦死しているという事実に息を呑む。
他にも調べてみたが、501の面々に当たる人物で確認できる限りでは芳佳に当たる武藤金義、サーニャに当たるリディア・リトヴァク、
ルッキーニに当たるフランコ・ルッキーニが戦死している事も判明。ハルトマンはバツの悪い想いに駆られる。
さらに関係ないがマルセイユに当たる人物も戦死している事を知ると落ち込んでしまった。

「人同士で戦争やっていたらこんな事になっちゃうんだね……」
「扶桑に当たる日本はもっと悲惨だわ。今、世界に名が知れているエースの殆どが戦死してるのよ。美緒が知ったら卒倒しちゃうわよ、こんな事……」

そう。扶桑に当たる日本の撃墜王達はその殆どが大空に散っている。美緒の戦友達に当たる人物達も殆どが`靖国に逝っている
`し、
芳佳に当たる武藤少尉も例外ではない。美緒に言ったらショックで寝込んでしまうのは確実だ。ティターンズは自分たちを少なからず、
`彼等`と同じ運命を辿らせようとするだろう。ミーナはあのパイロットと再会した暁には必ず落とすと決意を固める。

「エーリカ、あのパイロットは私が落とすわ。どんな事になっても」
「うん。向こうでの因縁をこっちに持ち込まれて世界をめちゃくちゃにはされたくないもん。あたしも協力するよ。
……そういえば連邦軍が心配してるのって`ティターンズが連合国を未来情報で分裂させてしまわないか`
という事なんだよね?特にリベリオンは人種の坩堝なのに白人が国家の意思を形作ってるから」
「ええ。リベリオンは深刻な人種差別を抱えているわ。もちろん、ウィッチにはそんな人種差別の考えは無いのだけど……、
国内でのインディアンや黒人などの有色人種への差別は深刻よ。彼等には人種差別から解放された時代の資料があるから
それを使われたらリベリオンは終わりよ。南北戦争より酷い事になる」

そう。ティターンズには公民権運動やレッドパワー運動などの時代の資料がある。
「第二次大戦の勝利に貢献しても人種差別は解消されない」という歴史と「ティターンズは人種差別しない」などの甘言を流されたら、
白人至上主義に燻っている有色人種の不満は燃え上がり、下手すれば南北戦争よりひどい群雄割拠の内戦が起こりえる。
地球連邦軍も防諜活動を必死に行なっているが、ミーナには不安は拭えなかった。その不安は翌年の核攻撃で的中してしまうことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


‐あとがき 

シャアを出す理由に色々苦労しました。

 

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