――さて、ハルトマンたちと合流した剣鉄也らはサンダーボール作戦に則ってフォールド爆弾の行方を追っていた。途中、ミケーネ帝国の生き残りらの襲撃を受けたもの、これはグレートマジンガーが撃退した。鉄也はミケーネ帝国の生き残りが自身を襲撃したことに驚きを隠せなかった。

「ううむ……ミケーネ帝国の生き残りがまだいたとは……正直驚きだ」

「ねぇ、ミケーネってあのミケーネ文明のあのミケーネ?」

「そうだ。奴らは数千年前に歴史に現れた。この世界じゃオーパーツ的な超技術で数千年前、ミケーネ王国とその敵国のアレス国を征服し、帝国を建設した。その当時の時点では世界最強国といっていい軍事力を以てすれば世界征服は容易なはずだった」

「はずだった?」

「奴らの技術も天変地異までは屈服させられなかったのさ。その結果、天変地異と敵国のそれに乗じた攻撃でミケーネ帝国は潰えた。が、それは棄民にされた身分の奴らを地上に置き去りにした結果だった。後の連中は事前に人工太陽を持つシェルターに逃げこんでいたのさ。地下で何代に渡って暮らすうちに奴らは体力の維持と軍備増強の双方を計って、自らを巨大ロボットサイボーグに改造した。それで数千年を生き延び、最終的にマジンガーZですら超える戦闘力になった。それがグレートマジンガーを生まれさせるきっかけだ。それでも数度の改装と強化を強いられたがね」

そう。ミケーネ帝国の戦力は平均的なものでもマジンガーZを凌駕する強さを誇る。そのため連邦軍の平均的戦力ではとても対抗できるものではなかった。たとえマジンガーZであろうとも、だ。それがグレートマジンガーが生まれた要因である。しかしミケーネも強力な戦闘獣を派遣してくるので、グレートマジンガーもZ同様にパワーアップを余儀なくされた。

「まっ、どんな敵が来ようが、たとえ刀折れ矢尽きても俺は戦い抜くだけさ。それが俺の存在意義だからな」

そう言ってニヒルに振る舞って見せる鉄也だが、内心には戦士としてしか生きる術を知らない故の孤独を抱え込んでいる。その深層心理が見え隠れするかのように、声の調子はどこか哀しげだった。

「テツヤには家族は……いないの?」

「……いない。俺は孤児でね。物心ついた時には養護施設にいた。小学生のガキだったころに兜博士に引き取られて、グレートマジンガーのパイロットとして育てられた。ちゃんと学校には行ってるが、それよりもガキの頃から戦闘訓練に明け暮れてたからそっちの方が思い出濃くなっちまったよ」

兜剣造は親である事を告白した、二人の実子や養子に平等に愛情を注いでいたが、鉄也の天涯孤独な孤児という出自故の複雑怪奇な心は剣造の愛情を受け止められなかった。それをを悔やんでいる反面、幼少期から少年期を戦闘訓練に費やした結果、マジンガーのパイロットとしてしか自分の存在意義を見いだせなくなった事への憎しみも捨て切れないという、愛憎入り交じる心情を垣間見せた。それは彼の成長過程における複雑な感情が成人間近となった現在においても影響を与えている表れであった。


「色々……あったんだね」

「ああ。俺は誰かからいつもマジンガーZの操縦者だった、甲児君の代わりを求められた。俺はそれすら満足に果たせなかったがね……」

かつての自らを自嘲する鉄也。それは周囲の大人達があくまで、“甲児の代わり”としてしか鉄也を見なかったという、重大な失態も関係しているが、その原因は全て自分にあると、心に重い十字架を背負って生きる鉄也の自己犠牲。彼の最大の不幸は甲児という偉大な男の代打として振る舞う事を求められた事そのものだったかも知れない……。

「そういえはウルスラ……あたしの双子の妹なんだけど……も昔、テツヤと似たような気持ちになってたな……。あたしが早くからエースになったから、ウルスラは比べられてたっけ」

そう。何か優秀な素質を持つ者が兄妹なり、姉妹の内、一人でも現れると他の兄弟はいつも比べられて育つ。これは何時の時代も、どこの宇宙でも万国共通事項である。エーリカとウルスラの姉妹もその例に漏れなかった。ハルトマンは自らの妹も鉄也のような感情を過去に持っていた事を思い出し、何時の時代もどこの世界もこの事は共通事項なのだと納得した。

「しみったれた話はここまでにして、本題に入ろう。どうやら敵はスイスの地下に爆弾を隠したらしい。これは昨日、情報機関にいる戦友から知らされた」

「情報機関って、CIAとかMI6みたいな?」

「アレとはちょっと違う。実力行使も認められていて、人類同士の戦争の抑止も担っているからな。軍のガンダムより強力なガンダムも5機有している。俺たちロンド・ベルは外郭独立部隊だからそこと付き合いがあってな……」

「でも、その5機の筆頭格の機体、どう見ても兵器に見えないよ?」

「それがあのガンダム――“ゼロ”――の恐ろしいところさ。あの外見で宇宙要塞やコロニーを一発で消し飛ばすんだから、天使の様な悪魔にも思えるぜ」

そう。モビルスーツの総合性能面に限るならば、プリベンターの有する5機のガンダム、特にウィングガンダムゼロが全ガンダム中最強である。その点を差して、鉄也は最強と評している。最もウィングガンダムゼロはその天使を思わせる外見とは裏腹の悪魔的な能力によって、旧ジオン・ティターンズ、ザンスカール系などの反連邦勢力を震え上がらせている。鉄也が“天使の様な悪魔”と言ったのはウィングガンダムゼロの射撃兵装である、“ツインバスターライフル”の一軍の戦略にさえ影響を及ぼす絶対的威力と相反する天使の様な、華奢とも思える外見を有するのがその由来だ。

「で、彼らが敵基地の破壊活動を行っているうちに旧スイスの最大都市に潜入する。経路の地図を配るから、各自良く覚えてくれ」

「了解」

プリベンターはスイスにある、鉄人兵団の欧州方面軍が鹵獲し、秘匿したフォールド爆弾の在処を突き止めたいのだ。そのために歴代の各スーパー戦隊なり、仮面ライダーを始めとするスーパーヒーローの協力や、5機のアナザーガンダムらを敢えて投入しようとも、だ。鉄也は彼らから送られてきた侵入経路が記された、かつてのスイス最大の都市だったチューリッヒ周辺の地図を皆に配る。

「俺たちが侵入するまでは敵の目はアナザーガンダムや歴代のヒーロー達が引きつける手筈だ。決行日時は今夜。あと三日でロンド・ベルが到着する。それまでに、ケリをつけないと奴らは自爆しかねん。フォールド爆弾が作動すればタイプによるが、惑星すらどこかへ消し飛ばすからな……」

フォールド爆弾の恐ろしいところは最大タイプでは平均的な地球型惑星くらいならまるごとどこかへフォールドさせてしまうという威力で、バジュラ戦役で初投入後、地球連邦軍はこれを反応兵器(核兵器)の上位互換兵器として認識し、反応兵器に代わって、反物質兵器の光子魚雷・波動砲などと共に“最終兵器”にカテゴリー分けされた。それを取り返さなくては、チューリッヒはこの世から消し飛ぶのだ。少なくとも……。鉄也はグレートマジンガーの整備を行いながら、潜入の際に使うであろう拳銃を選んでいた。最終的に選んだのは、デザートイーグルのマグナム弾タイプだ。しかも22世紀末時点の最新火薬で総合面の威力を高めた50AE弾で、22世紀末時点の最強モデルである。基本的には21世紀の頃に現れた初期型と変化はないので、無骨な印象を受ける。

「あれ?何その銃」

「デザートイーグル。オートマじゃ世界最強の拳銃だ。どんどん威力上がったからもう普通の撃ち方じゃ撃てないマグナムも出てるけど、これは“常識的”な範囲内での最強さ」

「へぇ……ちょっと持っていい?」

「ああ。君たちなら持って大丈夫だろう」

ハルトマンはデザートイーグルの22世紀末時点最新の50AE弾仕様を手に持ってみる。すると。普段、護身用に携帯しているワルサーP38と違い、ズシッとくる。

「うへぇ〜おも〜い!反動はどのくらい?」

「リボルバータイプに比べれば軽いが、けっこう来るぜ。これでも重さもマグナム弾の銃の中じゃ無い方さ」

「それと君たちにこの時代での拳銃の撃ち方教えとく。君等の時代だと片手撃ちが主流だったが、ベトナム戦争辺りから両手で持って狙いつけるのが主流になった。片手で遠距離当てられるようなヤツは俺みたいなプロじゃ無いと出来ないし、大型拳銃には両手撃ちは必須だ」

鉄也は試しに空き缶を数十m先にある岩の上において手本を見せる。軍人を差し置いて、戦闘のプロを自負する彼らしく、きちんとした射撃態勢を取る。そして狙いを定めて……引き金を引く。次の瞬間、重い銃声と共に空き缶は吹き飛ぶ。

「これは体で覚えてくれ。生き残るのに重要なスキルだからね」

西沢、雁淵、ハルトマンは鉄也が見せた見本に従って撃ってみる。さすがに三人とも撃墜王の名を欲しいままにしているだけあって、飲み込みは早く、一時間ほどでコツを掴んでいった。こうして、作戦決行時刻までの時間を過ごし、夜を迎えた……。






















――別所 スイス国内


闇夜の月に、死神を思わせるガンダムの姿が照らされる。そのガンダムはプリベンターの誇る、5体のガンダムの一体、“ガンダムデスサイズヘル”であった。

「こちらデュオ!敵基地破壊任務成功!!あとは斬って斬って、斬りまくる!!」

デスサイズヘルは改修前のデスサイズがバスターシールドなどの射撃兵装を備えていたのに対し、改修後のデスサイズヘルは更に格闘戦に特化した武装となっており、ビームサイズの強化版のビームシザース一本である。それを活用するべく、隠密行動用の電子兵装のアクティブステルス機能があるハイパージャマーなどを備え、鉄人兵団の兵士の視覚を除く、殆どのレーダーに反応しない。そのため、鉄人兵団は大混乱であった。

「コイツ……バケモノか!?何故センサーが反応しない!?」

デスサイズヘルと対峙する地球でのコードネーム“ザンダクロス”の一団は視覚に頼って戦闘せざるを得ず、デスサイズヘルになす術無く翻弄されていた。駐屯地の生き残りはもはや彼らのみ。玉砕覚悟で立ち向かったのだが……


「あんたらに恨みはないが……やらせてもらうぜ!!」

デスサイズヘルはモビルスーツとしては中程度の全長で、16m級である。対してザンダクロスは20m級。体格の差を物ともせず、その高い機動性で攻撃を全て避けきり、ビームシザースを胴体から横薙ぎに振るって、瞬く間にザンダクロスを複数、一刀両断する。辺りに散らばる鉄人兵団兵士らの屍と、燃え落ちる、兵団の基地施設。アナザーガンダムは単機で軍隊と渡り合うために造られたため、このくらいは朝飯前だ。


「さて……あとは他の連中の連絡待ちだな」

そう。デスサイズヘルの他にもあと4体のガンダムがスイス国内で暴れまわっている。こうして注意を引きつけるのが彼らの役目である。その思惑は今のところ順調に進んでいた……









−− 別の駐屯地

ここでは鉄人兵団は更に阿鼻叫喚の地獄を味わう羽目になっていた。ここを襲ったのがウイングガンダムゼロだったからだ。

「ターゲット……鉄人兵団駐屯地……!」

同機のパイロットであるヒイロ・ユイは愛機のウイングガンダムゼロで上空からのツインバスターライフルによる奇襲を敢行した。天使を思わせるウイングが装備されているのにも関わらず、実は10トントラックより軽いというガンダニュウム合金の賜物による機体重量である。放たれたツインバスターライフルのビームは凄まじい閃光を走らせ、破壊力を鉄人兵団に対して発揮。一気にエネルギー施設を消滅させた。後はそのまま地上に降下、白兵戦を行う。

「ヒヒィイイイイ〜〜!来るな、来るな!!この化け物がぁあああ!!」

この駐屯地の兵士たちはこれまで欧州が比較的安定していたため、他の戦域から「バカンス」として送られてきた兵士が大半であった。そのため士気は低く、ウイングゼロの奇襲にただただ無力であった。バスターライフルとビームサーベルによって次々と薙ぎ倒されていくだけの彼らに、流石のヒイロも拍子抜けを隠せない。

「敵は統制が崩れているか……予測より早く完了させられるが……こうも簡単に統制が崩れるとはな……拍子抜けする感は否めんな」

元々、エージェントとして徹底的に教育されたヒイロであるが、流石に総崩れした敵を流れ作業的に掃除していくのには拍子抜けしたようである。この駐屯地の兵士たちは武器を捨てて逃げ出す者も続出する有様で、お世辞にも統制が取れているとは言えない。そんな鉄人兵団にヒイロは呆れさえ見せる。当のゼロはガンダニュウム合金の頑強さにより、無傷に等しい姿を保っている。この駐屯地の総崩れという報に、鉄人兵団欧州方面軍司令部は流石に紛糾。例によって、シャールが独壇場で上層部を罵りまったが、今回ばかりは上層部も、予てから強硬に戦力集中を唱える彼の主張をを全面的に認めざるを得なくなり、フォールド爆弾を要するスイス地下要塞部の要員の大増員が「彼への最後の手向け」として認められた。

















―― 北米 地球 旧アメリカ合衆国のニューポート・ニューズ造船所

ここでは、無事であったアンドロメダ級の部品と新造された空母としての飛行甲板などを組み合わせての新造戦闘空母が建造され、既に工程の45%が完了していた。

「これが我が伝統ある米軍の新造空母かね」

「ハッ。閣下、これは日本製品ではありません。我が国のオリジナルです」

旧アメリカ合衆国やカナダなどの地域に相当する、北米地域行政府を治める、“州知事”は軍の最上位指揮権こそ持ち合わせていないもの、その権限は旧アメリカ合衆国の大統領同様に強力である。これは連邦政府設立時に、世界の宗主国となった日本と英国に、戦争で敗北した旧アメリカ合衆国へ、その戦争当事者らを初めとする、各国が配慮した結果の遺産なのだが、結果として地球各州行政庁の州知事としては、最も国連時代の各国首脳の名残を残すものになった。そのためか、この地域の地球連邦軍は陸海空宇の四軍共に、旧アメリカ合衆国軍の気風を受け継いでいるのである。


「で、この空母の艤装はどうなのか?」

「ハッ。来年中には竣工と試験航海にはこぎ着けられます。格納庫の容積もコスモタイガーでおよそ80機前後は積めます。可変戦闘機やモビルスーツを入れると減りますが、それでも70機は行けます」

「フム……ご苦労」

彼は建造責任者からの説明に満足そうに頷く。この空母の塗装はこの段階で既に旧アメリカ合衆国海軍空母特有の塗装に塗られており、この艦が栄えあるアメリカ合衆国海軍の末裔である事を示している。既に独自の理論で改良した波動エンジンの取り付けも始まっており、船としての輪郭が出来上がりつつある。


「この艦……ミッドウェイは日本人共の空母に変わりうる艦となる。ジェット戦闘機時代の空母の先駆者は我々なのだからな」

彼はこのミッドウェイが地球連邦軍宇宙戦闘空母に革命を起こすと信じており、“ジェット戦闘機の母艦は我々が作り上げたのだ”という妙な自負を持っていた。それはあながち間違いでは無いが、実のところジェット戦闘機空母の重要なシステムのアングルドデッキはイギリスがその生みの親であるし、空母着艦システムの内、アレスティング・ワイヤーは確かに米国のオリジナルだが、着艦誘導装置は日本が帝政時代に考案し、使っていたものや、フランスが使っていたシステムの発展型である。こうした対抗心が未だに残っているのも人間の性かも知れない。その証拠に艦橋は彼ら独自の設計によるもので、旧アメリカ合衆国海軍戦艦の意匠を持っていた。










――後にこの艦はアンドロメダ級を全改造した、改造空母としてはそこそこの成功を収め、数年後に、より空母として最適化された設計となった准同型艦が数隻前後新造されるという成果を上げた。が、所謂、改造空母である同艦には隠された難点があった。それは水上航行時の荒天安定性が悪いのだ。この思わぬ設計ミスが発覚し、竣工後僅か半年でドック入りするハメになったとか。そのため同級二番艦の予定であったコーラル・シーは設計変更が行われ、完全な同型艦とはならず、竣工が予定より数年遅れたという。










「わが伝統ある米国の復興!そのためには穀倉地帯を焼いてくれたジオンのクソッタレ共をこの地球から消し去らればならぬ……政府の改革派はそれがわかっとらん」

彼は式典の演説で勇ましくまくし立てる。彼は対スペースノイド強硬派の論客として知られ、過去のデラーズ紛争で失った穀倉地帯の復興を掲げて州知事選挙を勝ち抜いた。自身も一年戦争の若き日にシドニーにいた親類を失っていた。そのため彼は旧ティターンズ派寄りの右派として、レビルら改革派と衝突を繰り返している。

「閣下は一年戦争でご親戚を失われていましたね」

「そうだ。奴らは許せん。皆殺しにしてやる。デラーズの阿呆どものせいで米国地域の穀倉地帯は壊滅的打撃を被った……ジオンは根絶やしだ!!」

「閣下、口を謹んで」

……と、ジオン軍はスペースノイドからは「宇宙生まれの心情を理解している軍隊」と評され、多くの支持を獲得している。しかしアースノイドの40代以上からはその逆である。ヒトラーに比肩する大虐殺者共と罵って忌み嫌う人も多い。スペースノイドのその風潮の表れに、ひとつの例がある。2199年度のアナハイム・エレクトロニクス社調べによる、フォン・ブラウン市内のベストセラー本は「逆転!!激闘のジオン軍」という仮想戦記物で、“もしジオンが一年戦争に勝利したら”という仮定を描くシリーズが戦史に興味のある若者やマニアのみならず一般大衆にも人気というニュースが一般紙を賑わせている事からも、改革が遅れ気味の地球連邦政府を誰もが支持しているわけではないのが分かる。しかし彼の過激な物言いはアースノイドにとって、「最も」と言える側面も多いので、彼は州知事の地位につけたのだ。改革派がこの地域で弱いと週刊誌のネタにされる原因は過去の戦争の被害が大きい故に根付いた反スペースノイド感情であった。それを示すかのように、街には大昔の黒人差別時代と見間違うかのような過激な地球至上主義団体のチラシが貼られまくられ、英語で宇宙人は星へ帰れというポスターが目印のスローガンを持つ極右勢力が台頭し、州議会で議席を獲得してしまう惨状からはジオンには味方も多いが、一族郎党皆殺しにしてやると息巻くような不倶戴天の敵も地球圏には多数存在する事が伺えた。









――さて、その頃。デルザー軍団に囚われの身となったフェイトを救出せんと、仮面ライダー2号、V3、Xの三人はデルザー軍団のアジトである、アポロン宮殿へ潜入していた。


「一文字さん、牢屋へのルートはこれであってます?」

「バッチリだ。トイレに来た担当官をトイレさせながら尋問したからな。間もなくのはずだ」

三人は戦闘員の服装をしてアジトに潜入、フェイトが監禁されている地下牢へのルートを歩いていた。そうしているうちに地下牢に繋がる通路にたどり着いた。

「おっ。ここだ。俺が見張りの戦闘員を気絶させるから風見は見張りを、敬介は鍵を開けてやれ」

「よし」

そうして、見張りの戦闘員を油断させてから羽交い絞めにして気絶させる。その物音に一眠りしていたフェイトは跳ね起きた。

「え、何、何!?」

「フェイト・テスタロッサちゃんだね?なのはちゃんの頼みで君を助けに来た」

一文字隼人は牢屋に入ると変装を解いて顔を見せ、なのはの名を出す。これはなのはから一号ライダーへ伝えられ、一号から三人に通達された事項である。フェイトに自分たちの事を信用させるには、親友であるなのはの名を出す必要があると踏んだ一号=本郷猛はなのはに通信で連絡を取り、本人の許可を取ったのだ。こういう点は抜かりない。

「なのはの……って事はあなた達は……」

「そう。奴らの敵、そして人類の味方」

隼人はかつて立花藤兵衛と滝和也の前にその姿を見せた時と同じように小気味良く啖呵を切り、フェイトの腕につけられた手錠をそのパワーで鎖を千切って外す。こういう時は改造人間なのが役に立つ。

「俺たちはこれからこのアジトを爆破するが、君のデバイスはデルザー軍団の手にある。それを取り返してからだな」

「先輩、今です」

「よし……脱走するから一芝居打つぞ、いいね?」

「は、はいっ」

定時連絡が無い事を不審に思ったのか、他のセクションの責任者を伴って、別の戦闘員の一団が来た。それを敬介が適当な会話でごまかし、捕虜を便所に連れていくとの名目で一文字と風見がフェイトを連れていく。隊長格の戦闘員をそれを見届けると、トイレから出てくるのを確認し、その10分後に上司のマシーン大元帥に報告する。すると………。




「バカモーーーン!!そいつらがライダーだ!!」

「しかし大元帥……」

「しかしもクソもあるか!!追うのだ!!全セクション非常警戒に入れ!!」

こうして戦闘員のドジによってまんまと脱走に成功した4人はフェイトの相棒たるバルディッシュ・アサルトの行方を探していたもの、見つからない。

「解析室にないと言うことは……幹部の誰かが持ってると考えたほうがいいな」

「さしずめ、ヨロイ騎士あたりか」

「どうします?」

「俺たちが来るのを大元帥は読みきっているだろう。こうなったら派手に爆破してやろう」

「んな茂みたいな事を……」

「ゴッドの時にアジト放火したお前の言う台詞か?」

「確かにそうですけど」

「まっ、もう大元帥は俺らの事は見抜いてるだろうし、派手にやってやる」

「ですね。こうなったら派手に行きましょうよ」

三人のライダーはアジトを派手に爆破する事で合意し、フェイトを伴ってひとまず外に出る。すると。

「フハハハ……久しぶりだなライダー共」

「その声はヨロイ騎士か!」

「そうだ。我らは貴様らを倒すために蘇ったのだ!我が魂は大首領と共にある!」

いかにも悪の怪人といった風貌全開かつ、名前のネーミングが的外れと言ったほうがいい、甲冑姿の怪人が現れ、4人の前に立ち塞がる。彼こそ、Xライダーと因縁がある、デルザー軍団の最上位の半機械人の一人“ヨロイ騎士”である。

「あのぉ、どう見ても甲冑なのに何でヨロイなんですか?」

「それは俺も知らんわ。大首領にでも聞いてみろ」

「〜〜〜!」

意外にもヨロイ騎士はそういうところは律儀らしく、フェイトの問いにきちんと答える。昔ながらの悪の組織は子供に意外に優しいところがあるのだが、デルザー軍団もその例に漏れなかったらしい。フェイトはギャグ漫画のノリでズッコケてしまう。

「そんなあっさり……」

「事実だからしょうがない事だ。さて……本気で行かせてもらうぞ!」

「それはこっちの台詞だ!風見、敬介!変身だ!」

「Ok!!」

『変身!!』

その瞬間、三人の胴に機械のベルトが出現し、ベルトのタイフーンの小気味良い回転音と機械の作動音とともにある一定のポーズを取り、ライダー達はカッコよく一斉に変身を敢行し、それぞれの改造人間としての真の姿をフェイトの前に晒す。

「仮面ライダー二号!!」

「仮面ライダーV3ァッ!!」

「仮面ライダーX!!」

――これがフェイトが異形と言える姿を持つ、仮面ライダーという戦士の初めての邂逅であった。ド派手に見得を切って堂々と名乗りを上げるという、大昔の正義のヒーローをそのまま具現化したかのような彼らに、フェイトは言葉もなく、ただ呆然とし、その場に立ち尽くしていた……。



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