――フェイトはバルディッシュをデルザー軍団に奪われてしまった。歴代の三人ライダーもバルディッシュの奪還に失敗したため、フェイトの攻撃手段はプラズマスマッシャーとランサーなどに限られてしまった。そこで二号ライダーはフェイトに“護身用”として二本のナイフを手渡した。それは仮面ライダーZXが近接戦闘用の武器としているバダン製の短剣“電磁ナイフ”だった。

「二号さん、これは…?」

「電磁ナイフ。俺達の後輩の10号ライダー“ZX”が近接戦闘用に使っている武器だ。忍者のような隠密行動を行うZXが扱うために見かけよりずっと軽くできてるんだ」

「本当だ」


手にとってみると、電磁ナイフは見かけよりずっと軽くできている。刃もとても鋭く、人を軽く切り裂けそうな光沢を放っている。

「刃は特殊合金製で、並の怪人の装甲なら一刀のもとに両断できる。護身用にはうってつけの道具だよ」

「この世界はそんなに物騒なんですか?」

「特に最近はね。過去に連邦に負けた組織の残党軍があちらこちらでテロ働いてるし、悪の組織も大規模に動いている。悪の組織の戦闘員とかが一般市民に紛れて潜入してるのは当たり前、何時襲われても不思議じゃないからね。デバイスの代わり、とまでは行かないだろうが、何かの役には立つだろう」



二号の言に従い、電磁ナイフを受け取る。バリアジャケットを解除し、管理局の制服に戻ってから収納できそうなポケットに入れる。

「……よしっと。あの怪人達は放って置くことはなんてできません。私もあなた達についていってもいいですか?」

フェイトの目は真っ直ぐだった。デルザー軍団という猛威を目の当たりにしたことで、自分の使命を察したのだろう。その目からは確かな決意が伺える。言葉は少ないが、仮面ライダーが相対する敵がどんな者達なのか、人を虫ケラ同然にしか見ていない理由を知った事で、黙って見ているわけにはいかないという使命感をライダー達に示す。ライダー達もフェイトの決意を汲み取り、風見志郎がフェイトにバイクのヘルメットを渡す。ついてこいと言うことだろう。こうして、フェイトは三人ライダーについていく形で悪の組織との戦いへ身を投じる事となった。(フェイトのVF-22は後に仮面ライダースーパー1の手で回収され、フェイトのもとへ届けられたとか)この時を境にフェイトは単にデバイスに頼るのではない戦闘法を模索するようになり、これが後に飛天御剣流という剣術を見つけた時にそれを身につけようとする意欲に繋がる。これは17歳時にバルディッシュを再び改装した際に、日本刀を模した形態『天羽々斬』モードをザンバーモードと同等の地位を持つモードとして追加する事で一つの到達点を迎える事になる……。









――地球連邦軍の最前線は敵の鹵獲ゴースト無人戦闘機によって少なからず撹乱されていた。現時点の地球連邦軍航空兵器中最強レベルのスペックを誇るゴースト戦闘機に対応可能な腕っこきの戦闘機搭乗員は今の地球連邦航空部隊には50人に1人という割合でしか存在せず、それら腕っこき搭乗員にゴースト戦闘機に対抗可能な有人戦闘機を与えた上で対応するのが最前線での対応法だった。とある最前線基地ではそれら腕っこきらが比較的多く集められ、VF-19Aを好んで扱う“物好き”部隊が編成されていた。


「敵にゴーストが使われてるようだが、全部叩き落とせばいいだけだ。イサム・ダイソンのように」

「そうそう。奴は試作型でゴーストを落したとかもっぱらの評判だしな」

イサム・ダイソンの操縦術は前大戦時から平均練度の低下傾向が続く連邦軍に取って、もはや至宝と言えるものである。この基地に集まった腕っこきを自認する者たちに取っても憧れであるのが伺える一言である。じゃじゃ馬を地で行くYF-19を手足の如く扱えるイサム・ダイソンの腕前は連邦軍にとって貴重な逸材。だからイサムがどんなに問題行動を起こそうが大したお咎めがないし、最悪でも勲章剥奪程度で済んでいるのだ。

「さて、今日も一発行くぞ野郎ども!」

「おう!」





彼等はこの方面で生き残って腕前を平時における教官級にまで磨いた。そのためVF-11BからVF-19Aへの機種変更を認められた。彼等に配備されたのは近代化が施された新造機であるため、機体のカタログスペックは新鋭機と同等レベルで、額面上はゴーストに対抗可能な性能を備えているが、この部隊はカタログスペックを当てにせず、昔の日本のアニメをヒントに独自に熱核バーストタービンエンジンをカスタマイズしていた。それは推進力をエンジンの構造材の強度限度が許す限りの最大限にまで瞬間的に押し上げることで、軍の計測したカタログスペックを大幅に超える性能を一時的にであるが、発揮可能となる改造。アフターバーナー機構を極端に強化したようなこの改造は冷却機構や機体構造の大幅強化が前提であるが、これによりYF-29やVF-25が無くとも彼等はYF-24以降の新鋭機装備部隊に伍する戦果を上げていた。

……が、やはりエンジンに相当の負荷をかけるので、頻繁な機体整備を必要とするという相応のリスクがある。これを彼等はそのアニメにあやかって「Vマ○クス」と呼んでいる。まさに整備班泣かせである。飛び立った彼等は友軍の救援要請に従い、『火消し』のため、空域へ赴いた。しかし、目的の空域では既にゴーストが大暴れしていた。彼等のようにAVF(VF-19とVF-22を指す。本来は次世代可変戦闘機の意味だが、両機が戦で多大な戦果をあげたためにいつしかこの両機種を指す単語として、現場で定着した)をゴースト撃墜任務のために与えられた部隊を軍内の隠語で「火消し」と呼んでいた。これはゴーストを災害と見立て、それを防いだり、倒すための任を負う部隊を消防などに見立てての隠語である。いつ、誰が言い始めたかは定かでない。が、空軍及び宇宙軍航空部隊にとって、AVFは士気の拠り所となっていた。





















――とあるヨーロッパ上空

「くそっ、くそっ、くそ!なんでこんな目にあうんだよ!」」

移民船より兵士の練度が高い傾向の地球本国では少数派である最新普及機のVF-171を装備するこの部隊は今や地獄の責め苦を味わっていた。鹵獲された友軍の無人戦闘機がリミッター解除状態で編隊を組んで襲いかかってくるのだ。彼等の動体視力では軌跡を追うので精一杯。逃げることしかできなかった。

「機体の限度一杯まで加速しても振りきれねぇ!死ぬ〜!」





ゴーストの機動力は鉄人兵団の手によって改修された結果、この当時の最新普及機であったVF-171を超え、エース用のAVF(配備当初のスペック)を僅かながらも上回る(ギャラクシーのAIF-9Vに比べると劣るカタログスペックだが、これは地球本国で使用されていたゴーストの主流がAIF-7Sなためである)。コックピットのヘッドアップ・ディスプレイの表示される数字は機体の限度一杯にまで加速している事を示しているが、ロックオン警告が響きっぱなしである。つまり敵機は正確に照準に捉えているという事だ。

「みんな大丈夫か!?」

「4番機がやられたぞ!くっそ……こんなことならAVFの機種転換訓練受けとくんだった」

パイロット達は自分らが選んだこのVF-171の力不足を大いに嘆いた。普及型の中では最新型なのでそこそこの性能はある(そこそことは言え、前AVF世代機の中ではトップレベルの性能ではある)が、やはり凡庸の域は出ない。そのためここ最近の戦での損耗率は高く、上層部はVF-171の生産打ち切りを決定したとの事。現場で高性能機が求められた末の自明の理であった。


――コントロールスティックを迂闊に動かせばゴーストのユダシステムに突けいられる。幸い大気圏ではゴーストと言えども耐熱限界の都合上、宇宙空間ほどの圧倒的速度は出せないからこのまま最大戦速で飛び続けていれば……!





コンピュータの愚直なまでの任務遂行性を彼は逆手に取り、敵のゴーストを引きつける。これで生き残った僚機は逃げられるはずだ。敵のレーザー砲の掃射は一、二度は耐えられるが、如何せんエネルギー変換装甲は近代化されたAVFや次世代機に比べると格段に劣る強度だ。機動限界も原型機と比べても一歩劣る(これは操縦性改良の代償である)。これがエースやベテランにとって大いに不満であり、戦線最前線の現場で限界性能が高いAVFが好まれる理由となっている。

「くそ、味方はまだか!」

姿を見せない友軍に苛立ちを募らせる。が、それはすぐに晴れた。雲を切り裂くようにVF-19Aが現れたからだ。カラーリングは大英帝国空軍伝統のカラーと標識。本国での好成績部隊に許された“特権”とも言うべき、旧各国軍時代のカラーリングは味方に安心感を与える副次効果を生んでいた。

「よう。まだ生きてるか?」

VF-19部隊の隊長は悠々と通信を入れる。AVFに乗りなれた貫禄十分なのが声だけでわかる。VF-171のパイロットはこれに安堵した声で応える。

「多少やられたが……まぁ生きてるよ。あとは任すぜ、大英帝国空軍の末裔さんたち」

彼は生き残っている部下を率いて、急いで戦線を離脱する。普及機である171では、19の特務仕様であるA型の助けどころか邪魔にしかならないからだ。ゴーストは単機なのが災いし、19A複数に追い立てられ、171を堕とすどころではない。


「さて、と。各機、“ハンティング”の時間だ。機械ごときに負けるなよ」

「了解!」

彼等はイギリス人である。ゴーストを鴨などのハンティングの標的に見立て、標的を追い立てて逃げ場をなくし、隙を突いて撃墜する事をハンティングと呼んでいた。これは彼等が無人戦闘機を嫌っている証であると同時に、戦闘機乗りという職業に先祖代々受け継ぎ、誇りを持っているからでもあった。彼等の部隊では無人戦闘機撃墜スコアを有人戦闘機を1とするのに対し、0.5と換算しているのがその表れであった。





「いつもどおりにやれ。そうすれば勝てる」

「ハッ」

彼等はゴーストと言えども隙が生じるのを知っていた。それはゴーストは制式化の際に半自立式へ設計変更が行われており、いくら兵団が改造したところで限界があるからだ。そして機械は決して人を超えられないのだ。もはや機械を超え、人の域と認められていた22世紀初頭時のロストテクノロジーのロボット郡(ドラえもん等)のような自我を持ち得ないゴーストは人の行動の真似事にすぎないのだから。







「さて……遊んでやるよ幽霊野郎」

VF-19A(正確にはA型の近代化改修型)はVF-171とは次元が違う機動を見せ、ゴーストを猛追する。ゴーストを超える速度性能とVF-25に伍する旋回半径の小ささでゴーストの放つ攻撃を避け、ガンポッドで牽制する。VF-171が逃げるので精一杯なのに対し、彼等はむしろ優位に立っていた。さすがにイサム・ダイソンのように『ゴーストを単機で真っ向から撃墜する』事は彼等には出来ない。そんなたいそれた行為はコスモタイガーでのエースであった加藤三郎、可変戦闘機でのロイ・フォッカー、マクシミリアン・ジーナスなどの超エース級でなければ不可能だからだ。

「5番機、そのまま追い立てろ。3番機は真上から行け」

隊長はミノフスキー粒子散布下ではゴーストの電子機器と言えども完全には稼働しないという弱点を利用し、近距離無線を駆使して編隊を動かしていた。彼等は電子戦機を帯同させずに戦闘機だけで作戦行動を行うが、これは彼らの空中戦への考え方によるものだ。それの埋め合わせか、隊長機の電子装備は電子戦機並に強化されているとか。


「ほう。AIの性能をあげたようだな」

ゴーストは大気圏内でも有人機を超える速度性能こそ発揮可能だが、宇宙のような超絶的機動は空気抵抗や耐熱限界の都合である一定の制限があるが、超機動を行うタイミングの精度が向上し、ガンポッドの弾幕を回避してくる。

「コイツのガンポッドは他の系列の機体に比べて、弾倉に携行できる弾数が少ないからな……次の斉射で当てるしかないな」

(余談であるが、VF-19系列の数少ない弱点の一つに、「ガンポッドの携行可能な弾数がVF-11やVF-25などの他機種に比べて少ない」というのがある。大口径化で一発辺りの威力は従来機用を上回っていたが、カートリッジ化によって弾丸の交換が容易になった反面、一個のカートリッジあたりの携行弾数がVF-11のガンポッドに装填される弾より少なめである。これは試作機の当時からの課題で、近代化によりエンジン出力が新型機と同レベルになったので、YF-29用の量子ビームガンボッドへの換装も取り沙汰されるほどだが、量子ビームガてンボッドの生産ラインが従来型のそれと比べ、まだ小さいので、検討段階に留まっているという)

彼らはゴーストとの高機動戦闘を繰り広げつつも、自機の残弾をチェックする。ミサイルはゴーストの逃げ道を塞ぐための煙幕。そこをガンボッドの弾丸で中枢をぶち抜くためにヘッドアップディスプレイ(AVF系列まではファイター形態ではヘッドアップディスプレイが主である)のロックオン音が響くと同時にトリガーを引き、煙幕と進路妨害を兼ねたミサイルを複数機で多数を放つ。

「今だ!3番機!突っ込め!」

「了解!」

三番機が指示に従って突っ込む。スロットルレバーを限界にまで押し込み、カスタマイズされた際につけられた機構を発動させる。

「Vマ○クス、発動!」

アフターバーナーの効果を倍加させるこの機構。エンジン出力を瞬間的に設計限度にまで最大限に発揮させるが、加速時の荷重が通常の倍になってしまう。アフターバーナー使っても大気圏内では燃料切れの心配は無いが、機体構造にかかる負荷の大きさから多用はできない。この一瞬でケリをつけるのがこの機構の使い所だ。直上から急降下し、バトロイドに変形してピンポイントバリアパンチで破壊する。


「これで終わりだ!」

ゴーストも爆炎に紛れての直上からの急降下によるピンポイントバリアパンチには反応できなかった。最大加速中にバトロイドに変形し、急降下の加速度も加えてのストレートパンチは見事にゴーストを胴体から粉砕する。時間にして数分の死闘であった。が、濃密な経験を彼らに与えた。このような部隊の活躍は戦線の随所において見られ、AVFの評価を確固たるものへ変えていった。これによりAVFは2201年度にVF-171を退けて、再度、主力機に選定される事になる。



































――時空管理局は地球連邦政府と国交を確立させたのを境に、相互交流を兼ねてメカトピア戦争(戦役とも)に多数の魔導師や技術者を派遣した。これは地球連邦軍の兵力不足による要請に応えてのものであったが、地球連邦へ探りを入れる政治的目的もあった。フェイトからなのはの無事は報告されたが、なのはと行動を共にしている陸戦魔導師(スバル・ナカジマ)のことは伏せられた。これはスバルがなのはを通してフェイトに自分の存在を伏せて欲しいと頼んだためだ。

「地球連邦政府は聞けば聞くほど強大な国家だ……内輪もめや外宇宙の敵との戦争を短期間で経験し、勝利している」

クロノ・ハラオウンは地球連邦の調査を行なっている八神はやてや義妹のフェイトからの報告書にため息を漏らしながら頭を悩ませる。地球連邦軍の強大な軍事力は管理局が遭遇した国家の中ではピカイチと言えるもの。管理局の艦艇では太刀打ちできるか怪しい艦艇群に艦載兵器。そして……。

「更に地球を数百年に渡って守護してきた者達……」

報告書には歴代仮面ライダーの写真が添えられていた。V3、X、RXなど、なのはがこの時点までに出会い、面識があるライダー達のものだ。はやてからの通信に答えるその姿は疲労困憊なようで、目にクマができている。どうやら上層部との折衝で精魂疲れ果てているようだ。

「この仮面ライダーという存在を上に話しても与太話に思われるだろうな」

「どうしてなん?」

「あそこは観測指定世界になったとはいえ、元々は管理外世界だ。そんな世界に管理局でも実用化が見送られていたサイボーグを実用化できるわけ無いと右派がのたまうだろうし、自分たちの人間としての未来と引き換えに未来永劫、地球を無償で守護する宿命を負って生きる事を選ぶという行為を信じられないだろうからさ」

「確かに。仮面ライダーつーヒーローがいること自体が信じられないのに、未来永劫、地球を守る為に生き続けるなんて酔狂な選択に見えるやろからな……」

はやては仮面ライダー達が取った『正義と人間の自由』のために、自らの人間としての未来を擲って宿命に殉じるという選択に地球人として理解を示しつつも、それを酔狂と解釈してしまうミッドチルダの上層部の気持ちも読み取っていた。

「しかし、ありのままを受け入れるしかない。それがミッドチルダが選んだ道なのだから」

クロノは時空管理局とその上位の統治機構が地球連邦を許容する道を選んだ事を指して、そう言う。一枚岩ではないミッドチルダをまとめるために、裏で起きている内ゲバともいうべき極右、極左などの政治派閥への粛清作業が佳境を迎えていたこの時期、ミッドチルダ政府の主流派は地球連邦と友好関係を持つことで自国の安泰を間接的に図ろうとする保守+改革派の合同派閥が多数を占めるようになった。事実上の司法・警察・軍隊・統治機構である時空管理局の局員もこの政治家の争いには無縁ではないのだ。




「平和を望む心と強大な力の相反する二つを併せ持つのがあの世界の地球やと思う。その証拠にスーパーロボットもスーパーヒーローもいるし。それにそう言う事は私たちの世界の日本みたいなもんや。日本は戦後、平和主義を謳いながら自衛隊を持っとる。地球連邦が軍隊を捨てないのも同じような理由やと思うんや」

それは地球連邦が戦を呆れるほど経験した故に、平和を望みながらもそれを維持するための力を持つことを必要としている事実は自分の時代の日本との共通点であると彼女はいった。力がなければ何も出来ないし、大切な何かを守れない事を知っているからだろう。ましてや観測指定世界になった地球は幾度も滅びの危機を迎えている。それ故に軍隊を捨てるわけにはいかないのだろうと。


「強大な何かに抗うための力か……。フェイトもそんな事を言っていたな」

「そういうことや。そうや、この間、フェイトちゃんと電話で話したんやけど、なのはちゃんのあの事件の時、そばに居て守れなかった事を凄く悔やんどる。だから仮面ライダー達のような『力』を渇望してるフシがある……気をつけなあかんで……」

「……やはり」

クロノははやてのこの一言で義妹が過去に大切なモノを失った経験のトラウマから、強大な力を求めている事を改めて痛感した。フェイトはそもそもは利用されていたとは言え、プレシア・テスタロッサ事件の被疑者の一人である。その事への贖罪意識、一度は刃を交えたなのはへは親友の域を超え、家族同然に思っている事、“姉”の遺体(フェイトはアリシア・テスタロッサの遺伝情報から造られたクローンである。遺伝情報提供者にあたるアリシアの存命時にプレシアは20代であり、それから数十年の月日が経った後に造られた。しかしプレシアはフェイトを“創造”する時には既に精神バランスを崩壊させており、“クローンであっても全てがオリジナル通りにいくわけがない”という至極当然な事項を受け入れられず、アリシア・テスタロッサを生き返らせる事に固執していた)を回収できなかったばかりか、“母”を心の闇から救えなかった事への自責の念、更にこの事件の発端となったあの「なのはの撃墜」時になのはを守れなかった事への後悔が複雑に入り交じり、フェイトの心を大きく揺るがしているのだと察した。





「どうすればいい、はやて」

普段冷静沈着なクロノもこれには頭を悩ませる。こればかりは彼にもどうすることの出来ない、心理の問題である。はやてはそんな彼に助け舟を出した。

「これはフェイトちゃんの問題や。クロノ君がどうこういう問題じゃあらへん。でも、フェイトちゃんは強い子や。心配しなくても、ちゃんと答えを見つけると思うんや。それに今のフェイトちゃんには仲間がぎょうさんおるし」

それはロンド・ベル隊の戦友や仮面ライダー達のことである。彼らがフェイトを必ず導き、フェイトの心の闇を晴らしてくれると信じているからだろう。





















――はやてはこの後も調査の都合上、表立っての行動を避け、メカトピア戦争終戦前にミッドチルダへ帰還したため、戦線には参戦しなかった。だが、地球連邦の現状を管理局に伝え、管理局に自省ある行動を心がけさせ、間接的に時空管理局の舵取りの方向を地球との友好に切らせたという意味での政治的功績を残し、帰還一年後に一尉へ昇進。以後の彼女は速いペースで出世コースを歩む事になる。これはなのはが反骨心旺盛な“政治に興味が無い、実務優先の実直な職業魔導師”としての道を歩むようになった事とは対照的である。はやての19歳時までの運命は出世が早くなった事以外は大きな変化か起きなかったのだ。だが、バダンによって19歳時以降は色々な意味で多大な苦労を強いられるとはこの時の当人は知る由もない…。



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