――マジンカイザーとグレートマジンガーが戦闘を開始する中、地球連邦軍本隊もまた行動を開始していた。


――大西洋沖 地球連邦海軍所属空母「アドミラル・クズネツォフ」

連邦海軍はここ最近は宇宙軍がかつての海軍の役割を吸収してしまった感があるため、予算は宇宙軍に比べて半分程度。しかもその半分以上が一年戦争で失った水上艦艇の補填に回され、独自MSの開発はとても不可能。一年戦争中のアクア・ジムや水中型ガンダムが未だ現役機という有り様であった。空母艦載機も宇宙軍と空軍に遅れること数年後しにコスモタイガーへ更新完了するというお涙頂戴な状況も相なって陸軍同様に『冷や飯食い軍隊』の評判が立っていた。しかしながらこの空母は一年戦争後に建造された、比較的新しいもの。ティターンズが採用していた二代目『ニミッツ級航空母艦』の准同型に当たる。建造年次が二代目ニミッツ級航空母艦より新しいので、設計が改善されて最新鋭可変戦闘機や新コスモタイガーも60機以上、同時運用可能な性能を保持している。海軍にとってはまさに『虎の子』である。

「レビル将軍から入電です」

「読め」

「『海軍はただちに欧州方面の敵海軍基地を空爆で無力化、空間騎兵隊と協力し、これを制圧せよ』です」

「よし、航空隊は直ちに発進!敵海軍基地をぶっ飛ばせ!」


海軍艦隊司令はここ最近の戦乱で『冷や飯食い』と内外から揶揄されている海軍の現状を打破するべく、航空隊を発進させた。航空隊のみは防衛上の観点からか、なるべく新型機を配備していた。それが吉と出たのである。同艦と僚艦から機体上面を濃緑色、下面を明灰白色とする配色の新コスモタイガーが120機以上発進する。全機が爆装フル装備状態。その攻撃力はかつての米軍戦闘爆撃機で最大搭載量を誇ったストライクイーグルが比較対象となりえないほどで、その気になれば中規模都市を一瞬で更地にできる。敵レーダーはアナザーガンダムの破壊行動で封じられているので、安全に攻撃可能なのも大きかった。






『あれだ!第一目標のトゥーロン港を視認!孤立しているためか、敵の艦艇の姿は見られない』

『よし、ここはA編隊のみで釣りが出る。他の編隊は他地域の軍港へ向え!』

海軍のコスモタイガー隊はいくつかの中規模編隊に分けて空母からの管制を受けていた。この手法はかつての米軍などが得意としたが、ミノフスキー粒子が軍事利用されてからは廃れてしまった。最近は宇宙軍に優秀な航空兵が取られてしまう場合が多く、今次大戦開戦半年前に行われた演習では海軍航空隊は宇宙軍航空隊に全敗するという屈辱も味わった。高練度を誇る宇宙軍に頼らない作戦遂行を指向する海軍高官らは空軍で冷や飯食いを食っていた旧米国系出身者らが取り組んでいるプロジェクトに協力する見返りに資材やノウハウの提供を受けた。それは急ぎ行われ、今次作戦に間に合わせたという訳だ。

「提督、空軍のアメリカ野郎共を取り込んで作ったこのシステムは良好です」

「宇宙軍に高練度兵が集中している以上は当然の権利だ。近いうちにこのシステムを宇宙軍も導入するとのことだが、パテント料をたんまり分捕ってくれるぞ」

「これで我が海軍の復権もできるのですね」

「うむ。本当、ドーリアンのお嬢さん方ははた迷惑な置き土産をしていったものだ。あれでかなりの兵士が辞めたからな」

「ですね。あのお嬢さんは青いですよ。おかげで今次大戦の緒戦で大負けする結果を招いたのですから」

「ああ、全くだ」

「航空隊のB編隊は直ちにロタへ向かい、基地機能を無力化させよ。繰り返す…」

彼等の私怨じみた会話をよそに、航空指揮管制オペレーターがコスモタイガー隊へ第二攻撃目標を通達する。第二攻撃目標を往年のスペイン海軍の主要軍港『ロタ』。そこでは必死の大空中戦が行われた。










――旧・スペイン ロタ海軍基地

ここ、ロタはベルギーへ物資を送る上で重要拠点と目されており、兵団も相応の防衛体制を整えていた。ただしそれは敗残兵や工作兵を転科させた急造の防衛部隊であったが。

「敵機発見!西方向から40機ほどが爆装状態で近づいております!」

「迎撃準備!コスモタイガーの新型の爆装能力ならここはひとたまりもないぞ!」

「ハッ!」

兵団は慌ただしく迎撃準備を進めるが、それより早くコスモタイガー隊がミサイルを一斉に放った。一発一発がガミラス艦を轟沈させるのに十分な威力を有するミサイルはドックの港湾施設(兵団用に改造されている)を火の海へ変えていく。停泊していた彼等の補給船も土手っ腹をぶち抜かれ、炎上しながら着底する。港湾の迎撃施設は先鋒の10機が放った対レーダーミサイルと電子戦機のハッキングで無力化され、港湾部はあっさりと無力化に成功した。が、戦いはこれからが本番であった。


「隊長、敵の反応!数はおよそ数千体!」

「来たか!全機、丁重におもてなししてやれ!強行突破だ!」

コスモタイガー隊は槍のごとく突っ込み、群がる鉄人兵団と空戦を開始した。ここのところ宇宙軍が華々しく戦果を挙げている中、『海軍?奴らは沿岸警備隊だろ?』と宇宙軍や国民から半分嘲りの目で見られている彼等の汚名返上とばかりにミサイルをお見舞いする。共通規格の対空ミサイルは兵団兵らに痛撃を与え、既に散り散りになった敵を背後からパルスレーザーで狙い撃って落とす。敵レーザー砲の攻撃を高機動バーニアを活用した細かな機動で避けながら適度なドックファイトを行いつつ、強行突破していく。『海軍の名誉回復』がために戦果を挙げようとする彼等はこの時、確かに往年の『花形』と言われていた時代の栄光の再来とも言える輝きを見せていた。

「クソッ!何が『宇宙の虎』だ!」

兵団兵らは口々にコスモタイガーへの怨嗟を口にしながら攻撃するが、コスモタイガーの航空機とは思えぬ機動性に翻弄され、一機も落とせない。逆にパルスレーザーの弾幕を浴びて堕ちていく兵士が続出する。コスモタイガーの機動性は純粋な航空機故に空中で取れる機動には限界があるが、それでも平均練度にムラがある兵団兵を撹乱するには十分な効果は発揮していた。

「三次元的機動では向こうに分がある!敵の誘いに乗らずに目的を果たすぞ!」

「了解!」

コスモタイガー隊の隊長はコスモタイガーが『航空機』故の限界を認知していた。兵団兵は人型故に自由度は向こうのほうが圧倒的に高い。航空機としては驚異的な機動性を誇るコスモタイガーも人型兵器の自由度には及ばない。それを熟知しなければ戦いには生き残れないのだ。敵機とのドックファイトは程々に、中央突破を図る。兵団兵は物量こそあれど、練度が伴っていない分隊のところを突かれて包囲網に穴を開けられていく。さながら虎に群れを散り散りにされる草食獣のように。





――この時の地球連邦軍の軍の質は、宇宙軍及び空間騎兵隊(かつての海兵隊相当)を上とし、空軍を中、海軍を中の下、陸軍が下である。何故このような事態が起こったか?それは一時期に軍縮が唱えられ、軍備撤廃も撤廃検討された事があり、半分はそれからの大転換の名残だ。宇宙人の理不尽な攻撃で『宇宙時代では軍備の完全放棄は幻想に過ぎない!』と断定され、けして無抵抗主義ではない完全平和主義(サンクキングダムも侵略に抵抗している)は極端な論者によって、『無抵抗主義である』との風評が立てられてしまい、折しも白色彗星帝国の侵略が起こったのが宇宙戦艦ヤマトによって明らかにされた時であったのも重なり、政府高官らは手の平返しで軍備増強を推し進めた。リリーナは自らが乗り込んでの話し合いを望んだものの、白色彗星帝国は奴隷か死を要求する帝国主義国家であったがために叶わぬ事だった。理不尽に銀河系をその超重力で蹂躙する姿に、リリーナは真に遺憾ながら防衛戦争を決意。しかしながら戦争指導は自らに向かない事を理解していた彼女は防衛戦争を決意した旨の演説の後に政権のレームダック化を進める軍需産業の先手を取る形で退任(政権を追われたという評もあるが、実際は先手を打って退任を表明した。)地球連邦軍の再編は後任に託したが、それはマスコミのゴシップの格好の獲物になる事でもあった。その後の今次大戦開戦時には、揚げ足を取るしか能がないマスコミから凄まじいバッシングを受け、更に最も軍縮で人員削減された陸海軍から『日和見主義』と公に批判されている。海軍艦隊司令が『はた迷惑』と言ったのは、海軍の優秀な兵士が辞め、その後の戦役で宇宙軍に再就職したりする事例を苦々しく思っているからだ。(リリーナからすれば、自分の信念に基づいて行動した結果が裏目に出て、結果的に多くの人々を死に追いやってしまった事を気に病んでおり、守るために戦うことを肯定する考えを表に出すようになった。そもそもサンクキングダムを解体したのは、争いの元を断つ目的であったが、それは理解者以外の周囲からは弱腰外交、日和主義との批判を受けた。人は平和を望みながらも家族であろうとも、理不尽な事をされれば憎むし、罵り、差別する。それらと戦うことでしか、人は何も守れはしないという古来からの人類のジレンマに最も苦悩したのは彼女かもしれない)航空隊の攻撃が上手くいっている事に安堵しつつも、司令は今次大戦での緒戦での敗北を招いた平和主義政策の置き土産への嫌悪を垣間見せたが、本来の平和主義は武力の否定ではない。それは日本国が長らく『自衛隊』という力を持ち、活用してきた(後に正式な再軍備がされるが)歴史が証明している。




――平和を望みながらも争いを望むというのは、人が猿から進化した時からある、矛盾した『種族的本能かもしれない。後の世から『地球連邦の時世での第一の戦乱期』と評される、この時代。次々と戦乱が起きるという特異な状況は、結果的には地球連邦軍に過剰なまでの軍縮を行せようとする極左勢力を抑えこみ、軍部にその後の戦乱を闘いぬく力を保持させる事に成功する。かつて一時は『解体』目前であった地球連邦軍は奇しくも宇宙戦争と宇宙文明という、新たな文明のステージに人類が立つ上で必要とされ、『海洋国家』としての地球の外交を優位に運ばせる道具となっていった…‥。






――地球連邦政府 アデレード 臨時議会の通信室


「レビル将軍、よろしいですか」


「構いませんよ、外務次官」

レビルは外務次官となったリリーナ・ドーリアンの相談役も引き受けていた。『自分がピースクラフト時代に行った施策である軍縮と平和主義政策が宇宙戦争で否定され、国民から少なからず誤解され、恨みを買ってしまった』事に思い悩む彼女の相談役をレビルが引き受けたのは彼女と関係が深いルクレツィア・ノインの要請であり、『弱冠16歳にして外務次官』の箔がつき、出自も相なって絶大なカリスマ性を持つ彼女もやはり人の子、歳相応の少女らしい弱さも持つ。レビルは彼女の立場が白色彗星帝国戦役などの宇宙戦争で悪化し、バッシングを受けているのを擁護している高官の一人であった。

「将軍、今でも思うのです。あの時の私の選択が今次大戦に至るまでに多くの人々を死に追いやってしまったのでは無いか、と」

「何がどうして、どうしたかなど結果は誰にもわかりません。あなたが気に病む必要はありませんよ」

レビルはリリーナがピースクラフトを名乗っていた時期に政府で行った軍縮施策が結果的に裏目に出てしまった事を気に病んでいるのを察し、なだめる。リリーナは自国や父の理想を時間を掛けて連邦全体に適応しようとした。だが、結果的に防衛力の低下を招き、一般人を大勢死なせてしまったことに少なからず負い目を感じているのだろう。


「確かにあなたがサンクキングダム女王として来たことは素晴らしい。ですが、まさか宇宙人襲来までは誰も思わなかった。あなたとてそうでありましょう?終わってしまった事をいつまでも悔やんでいては前には進めません。今は少しでも早くこの戦争を終わらせることを考えましょう」

レビルは乗艦からリリーナにこう言い残す。自分や彼女にできる最善の方法はあらゆる方法でこの戦争を終わらすことだとレビルは告げる。それが結果的にしろ死んでいった人々への供養なのだから……。こうして、今次大戦で人々が『平和は一人ひとりが自分の力で勝ち取るものである』という考えに至った事で、地球連邦軍は防衛的側面から新たな価値を見出され、以後も存続していく。『守るために力を持つ』のは恥じることではないのだから……。







――鉄也と甲児に促されてドラえもん達の下へ向かった箒となのは。その途中、彼女らを待ち受けていたのは鉄人兵団一個軍団だった。

「なんてこった……たった二人相手に軍団規模とは……」

「どうする?」

「一体一体は雑魚ですから中央突破で行けばなんとかできます」

「……よし、行くぞ!」

箒は表面的には年下(実際は生年月日の都合上で年上だが)のなのはの手前、先輩風を吹かせているように見えるが、内心では才覚に溢れるなのはや美琴に対して引け目を感じていた。彼女らはそれぞれの所属場所で『エース』と目されており、この世界でも存分に活躍しているが、自分は誰かに助けられてばかり。『最新最高のIS』である赤椿の性能を引き出すばかりか逆に皆の足を引っ張っている現状を箒は心の中で嘆いていた。だが、まだ小学生であるなのはの手前、高校生である自分が弱音を吐くわけには行かない。

(私はこれまでなのは達の足を引っ張ってばかりだった……だからこそだ!一夏、私に力を貸してくれッ!!)

今は別離してしまった幼馴染の顔を、姿を、そして楽しかった幼少期の頃の思い出を糧に、長期戦闘では必須である絢爛舞踏を発動させ、自らに喝を入れた箒はなのはを守りながら突貫した。





「おおおおおおっ!」



雄叫びを上げながらスラスターを吹かし、雨月と空裂を二刀流で構える。箒は本来、実家に伝わる道場での剣術を主に使うが、ここ最近はなのは達の師である智子と黒江のアドバイスで他の流派の心得も得ていた。その内の一つが二刀流を使う流派で著名な二天一流である。二人は未来での修練の都合上、一個の流派に凝り固まない柔軟な発想を持つようになっていたので、なのはやフェイト、箒に知る範囲での剣術をある程度仕込んだ。この時の鍛錬がなのはやフェイトにとっては後々に飛天御剣流を体得する上での下地となり、箒にとっては自信を取り戻す上で重要な要素となった。


「ふっ!」

空裂で周囲の敵を蹴散らしつつ、雨月で目の前の兵士を脳天からぶった斬る。二天一流はなんでもありの兵法なので、箒は智子と黒江に教えられた通りに頭をフル回転させて敵と渡り合う。

「そうはさせんぞ!でやあああっ!」

飛びかかかってきた者は柔道の一本背負いのごとく盛大に投げ飛ばし、倒れたところを雨月を突き刺して止めを刺す。ISを纏った状態であれば兵士と真っ向から殴り合えるだけの体格となるために可能な事だ。

「これで陣形に穴を開けてやるっ!」



次いで穿千を召喚する。肩部の展開装甲を変形させる形で展開し、それを手に持つ。今回は真田志郎が改造したウェスバータイプではなく、通常のクロスボウタイプを使用した。連射能力より一発あたりの打撃力を重視した結果だ。その姿はどことなく勇者ライデ○ーンやドラ○ンカイザーを連想させる。(あれらは弓だが)機能そのものはウェスバータイプと同一だが、威力面ではこちらが優れている。それを発射する。反動は見かけによらず大きいので、パッシブ・イナーシャルキャンセラー(地球連邦軍がISの模倣に成功した背景には既にイナーシャルキャンセラーをマシーン兵器分野で開発成功していた事実がある)を全開にする必要があるが、威力は保証付きである。発射された閃光は鉄人兵団一個軍団の陣形を崩し、混乱に陥れてみせ、更に吶喊を続けた。






――なのははソードフォーム(片手持ちの西洋剣状)で前進しつつ敵を切り捨てていく。先刻のゲッター線に取り込まれた事で内に秘めた自身の闘争本能を自覚したのか、これまで違って、いい意味で『戦いを愉しむ』表情を見せる。

「隼人さんのいう通りにあたしに燃えたぎる闘争本能があるなら、もう『いい子』であるように取り繕うのは無しだ!思い切り、ありのままに生きて、戦うっ!」

この一言はなのはが真に幼少期の鬱屈としたトラウマを吹っ切って、確固たる『自分』を見出した証でもあった。これが青年期以降の『熱血系だけど、ズボラな面もある』生き方への苗となり、この時以後の立ち振る舞いに変化を生じていく。


「でぇりゃ〜!」

兵士の胴体を切り裂き、泣き別れにすると同時に頭部に切っ先を突き刺す。なんともバイオレンスな戦い方だが、本人はバイオレンスな戦い方にある意味で抵抗が無くなったようだ。ゲッター線、恐るべしである。

「そろそろアレ行くよレイジングハート!」

ここで砲撃形態に変形させ、ディバィンバスターの発射体勢に入る。チャージタイムは短めの威力を抑えたバージョンである。しかしそれでも最新計測では、MSで言うところのZプラスC1型のビームスマートガン相当の破壊力を発揮するという結果が弾き出されている。それでは最大出力ではどうなるのか?それは地球連邦軍本部をも震撼させる恐るべき計測結果が出たとだけ記しておこう。


「ディバイィィィン……バスターァァァァッ!」

桜色の閃光が無人となったチューリッヒ市街を走る。兵士達を問答無用で消滅させる鮮やかな光。その鮮やかな光はスイスの別の地で破壊活動に出ていたアナザーガンダム達からも観測できたようで、後にデスサイズヘルのパイロットのデュオ・マックスウェルは甲児達に『まったく、最近の魔法少女はどうなってやがるんだ!?』と零したそうな。



――そして、戦場に向かう歴代ヒーロー達。マシーンを駆り、兵団を蹴散らしつつ、なのは達の援護に急ぎ、」スーパーロボット大戦も出撃し、戦場へ向かう。戦いは最高潮を迎えていた。



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