短編『とある学園都市の超電磁砲と正義の男』
(ドラえもん×多重クロス)

パート2


――さて、学園都市にて、よほどのイレギュラーな出来事がなければ出会うはずの無かった二人が出会っていた。常盤台の超電磁砲の異名を持つ御坂美琴、そして聖人である神裂火織であった。


「貴方が御坂美琴ですね?」

「……ええ。あなたの事は聞きましたよ。初めまして。神裂火織さん」

と、互いに接触を予期していたためか、細かい説明抜きですぐに互いの事を理解した。話をする内に、お互いに上条当麻に関係する何かの借りを持つ者同士である事も。




「あなたも上条当麻に借りがあるのですね?」

「そう。ものすごく大きい借りがある。それを返したいのはあなたと一緒です」

上条当麻はその体質の都合上、多くの女性と関係を持つ。しかし当麻への感情が明確に恋愛感情にまで発展したのは美琴だけだ。

「そうですか……。ですがこの街の今の状況はあなた一人の力はどうにかできるレベルを超えています。首を迂闊に突っ込んでいっては五体満足でいられるかどうかさえ保証しかねますが」

「……それなら知ってるわ。たしか“神の右席”とかいう宗教的な力を持つ連中がこの街を襲うんでしょう?あたしもあの世界に行って、アイツが関わってた世界を知ったし、ある人達から教えられた。信じられないけど、科学の理解を超えた世界がある。私の力なんて及ばない次元がある。だからってこのまま黙っていろなんて、あたしには出来ない!」


美琴は元来、正義感が強い。それは未来で出会った歴代の仮面ライダーらも一目置くほどの強さである。それ故に上条当麻がまたも戦いに臨む事を見過ごせなかった。未来を知ったのなら尚更である。神裂もこの美琴の思いの吐露に自身と共通する何かを感じたらしく、根負けしたようだ。そして彼女らの出会いとは別に、仮面ライダーストロンガーは激闘の真っ只中であった。


























――学園都市暗部の部隊と交戦に入ったストロンガーは学園都市のパワードスーツ相手に奮戦していた。学園都市のパワードスーツはこの時代から言えば十分に高性能であるが、更に高性能を誇るインフィニット・ストラトスやEX-ギアを知っているのでストロンガーの通常時の攻撃力でもお釣りは十分に来る。

「トウ!」

回し蹴りで学園都市製パワードスーツをぶっ飛ばす。元々、ブラックサタンの戦闘用サイボーグの最上位として造られたストロンガーに取って如何に学園都市製パワードスーツであろうと屁の河童である。蹴られたパワードスーツは装甲を砕かれても余りある衝撃で、生身の人間の部分が露出し、昏倒させられる。これに予想外だったのは襲った側の部隊。


「何だよ糞、クソッタレが!バケモンじゃねーか!」

「ガトリング砲は弾かれ、ミサイル撃っても平気で向かってくるぅ!もうやだ〜〜!」

彼らは暗部組織の一員。重火器やミサイルを当ててもそのプロテクターなどに傷すらつかないストロンガーの防御力に辟易し、弱音を吐く。彼らとしてもこれほどの敵は初めてであるようだ。

「これで終わりにしてやる!!」

一人が人が撃てるように小型化したレールガンでストロンガーを狙う。これは彼ら暗部組織に与えられた中では最強の火力を誇るもので、理論上の火力は美琴の能力を上回る。ストロンガーにも通用するレベルだ。


「エネルギー充填、100%!いけぇ!」

これにはストロンガーも回避する選択を取り、レールガンが命中するのにも早くジャンプするが、予想以上の爆風で吹き飛んでいく。

「おわっ!しまったぁ!」

空中で態勢を崩したところを狙撃されれば如何に彼でもどうしようもない。その第二射が行われようとする瞬間だった。バラがレールガンの砲口に入れ込まれ、レールガンが暴発し、周囲に被害をもたらす。ここぞとばかりに高笑いと共に一人のタキシードを着込んだ男が気取って登場する。その男はジャッカー電撃隊の行動隊長の番場壮吉である。



「ハハハ。ストロンガーはやらせんよ」

「ば、番場さん!アンタどうしてここに!」

「一号ライダーからの要請で君を援護するように頼まれてね。最も、来たのは私だけではないが」

「俺たちもいるぜ!」

「随分ベタな登場じゃねえか、お前ら」

そう。番場壮吉が引き連れてきていたのは数人の歴代スーパー戦隊のレッド。ヒーローとしてはストロンガーのほうが先輩なのでタメ口である。やって来ていたのは、太陽戦隊サンバルカンの二代目リーダーの飛羽高之=バルイーグル、高速戦隊ターボレンジャーの炎力=レッドターボ、五星戦隊ダイレンジャーの天火星・亮=リュウレンジャーである。

「お前らど〜やって学園都市に潜入したんだ?」

「亮の奴が普段は中華料理店の店員だからそれを使って一緒に学園都市の中華料理店のバイトとして潜入したのさ。結構大変だったぞ」

飛羽曰く、亮の普段の仕事が中華料理店店員である事を利用し、ストロンガーがこの時代に来たのと時を同じくして潜入していたとの事である。普段は民間人である亮の身分を利用して学園都市に潜り込んだというが、どうやって潜入したのかとストロンガーは訝しぶ。

「さて……みんな、行くぞ!!」

「おう!!」



各々がそれぞれの方法で変身を行う。ブレスを起動させて変身を行う者が大半だが、ビックワンは自らの変身スイッチをオンに入れる事で変身する。


「ビッグワン!」

「レッドターボ!」

「バルイーグル!」

「リュウレンジャー!天火星・亮!」

毎度おなじみの名乗りを上げる戦隊ヒーローら。そのため敵から見れば“馬鹿な集団”にしか見えなかったらしく、問答無用で火器を叩きこむ。が、もはや変身した彼らには通じずに逆に殲滅させられていった。




「ビック……フィニッシュ!」

ビッグワンは手に思ったバトンでパワードスーツを切り裂く。これはバトンに核・電気・磁力・重力の4つのエネルギーが宿っているためにできる芸当だ。やられた方は身体的ダメージより精神的ダメージが大きいらしく、放心状態に陥っていた。



「新・飛羽返し!」

バルイーグルはバルカンスティックを変化させた日本刀で銃弾を弾きながら熟練された剣技を披露する。(因みに確認された限りの各戦隊のスーツは程度の差はあれど、ほぼ平均的な仮面ライダーと同じ程度の力を発揮できるようになっている。そのため学園都市製のパワードスーツを圧倒して然るべき力を持っている)パワードスーツ突き出してくるナイフを払い、そこから秘剣・流れ十文字→新飛羽返しのコンボを見舞う。これによりパワードスーツの機械を狂わせ、撃破する。


「天火星・稲妻火炎破ァ!」

リュウレンジャーを始めとするダイレンジャーは系統的には気力を使うために彼ら以前に活躍した光戦隊マスクマンとの共通点がある。(マスクマンはオーラパワーだが)……が、ダイレンジャーのポテンシャルは歴代スーパー戦隊の中でも特に高いと番場壮吉にも高く評価されている。そのため今回最も活躍しているのは彼、リュウレンジャーこと天火星・亮であった。気力と拳法を使い、敵を蹴散らしまくる。



「とう!」

この中では戦隊活躍時の年齢が高校生と最年少の炎力であるが、実際のところは亮と同年代の人間である(ターボレンジャーとして現役時の1989年には亮・力の両人はほぼ同年齢)。ただしこの場には現役当時の姿でいるので、一番若い。身軽な動きで敵を翻弄しつつも、バルイーグルには及ばないが、十分に熟練された剣技を見せる。

「GTクラァシュ!!」

彼の武器であるGTソードの刀身にエネルギーを込めて袈裟懸けに一刀両断する。これがレッドターボ個人として最大最強の技“GTクラッシュである。その威力は歴代の剣技を必殺技とするレッドらの中でも上位に位置する。それは彼らターボレンジャーが現役時に相対した“暴魔”の殆どがこれで撃破されていた事からも分かる。戦いは当然ながらスーパーヒーローの優位に運み、ストロンガーの超電子稲妻キックが最後に炸裂し、暗部部隊はこれで散り散りに逃げて行き、スーパーヒーロー達はひとまずの勝利を収めた。













――このスーパーヒーローらの活躍は非日常的に過ぎたのか、学園都市の警備員や風紀委員が動く事は殆ど無かった。それはいくら学園都市が“外”から見て非日常的な風景がある街と言っても、わずかに流れた映像を見て、スーパーヒーローの活躍は特撮ヒーローの撮影と思われたりしたからだ。その映像は黒子達の詰所でも確認できた。


――風紀委員 詰所

「し、白井さん……これって!」

「え、ええ。間違いなくあの方らですわね……お姉さまから“仮面ライダーストロンガーが来てる”とは伺っておりましたが、まさか彼等も来ているなんて……これは予想外ですわね……」


黒子達は未来世界に赴いていたため、歴代スーパー戦隊の面々と対面している。そのために事態を正しく認識出来た。学園都市に歴代スーパー戦隊のメンバーが来訪していたという事実は初春も黒子も驚きの一言であった。

「どうします、白井さん」

「彼等の存在は殆ど知られていない。存在を公にして戦った戦隊は軍などの組織が組織していた数例ですのよ?殆どの戦隊の存在は歴史の闇に消えていった。この事を固法先輩に言っても恐らく信じてもらえないでしょうから私が行きますわ。初春、映像から彼等がいる地区を特定して頂戴な」

「わかりました」

黒子は自ら確認のために戦地に赴くことを決意し、テレポートで現地に向かった。初春は黒子に目標地点の正確な座標を教えつつ、スーパー戦隊のメンバーの何れかに通信をかけた……。周波数は……。















――話は戻って、美琴と神裂。美琴は神裂からこの学園都市に地球連邦軍の軍人が既に相当数潜入していて、兵器も持ち込まれている事を教える。

「ええっ!?連邦軍が学園都市に相当潜入してる!?」

「そうです。私は政府の要請で未来へ行っていましたから、不本意ながらコネクションがあるのです」

「なるほどね……確かにOTMや波動エネルギー研究が進んでいるあの世界なら学園都市への潜入も容易にできるけど……なんでなの?タキオン文明化してるあの時代から見れば、今の学園都市の技術は……」



「詳しくは存じませんが、2010年から2200年までの190年程の期間に生まれては廃れて消えたり、戦争で失われてロストテクノロジー化した技術はかなりに登ります。加えて“組織”に流れた技術も多く、彼等はその解明が第一目的だそうです」

そう。統合戦争を含む長きに渡る戦争は人類を一つにしていったが、失われた技術も多岐に渡る。その代表格がドラえもん本体のAI関連技術なり、ひみつ道具であろう。そして組織の手で悪用された技術も多岐に渡る。それにはまず学園都市に潜入する必要があったのだろうと神裂なりに目星はつけていた。

「はぁ……。この街もずいぶんと真っ黒なもんね。反吐が出そうだわ」

美琴は夏休みに“学園都市は最高の居場所”と発言していたが、それを前言撤回する形で発言した。“反吐が出そう”だと。それは8月中に経験した“一方通行と妹達の一件”、未来世界で仮面ライダーらから教えられた“上条当麻の運命”、“他のレベル5の多くが暗部に関わっている事”で暗部組織の事を知ったゆえか、学園都市に嫌気が指しているのだろう。


「できるものなら暗部組織とやりあいたくないのよね。重大案件前だし」

「それは彼等がどうにかするでしょう。それよりも私たちは本番に備えておきましょう。歴史通りなら今日の夜のはずですし」

「そうね」



神裂もスーパーヒーローらの事を知っているような素振りを見せた。彼らの戦いは基本的に暗闘なので、神裂もどこかで会っていたのだろう。ただし全てが歴史通りに運ぶとは限らないというのは両人ともよく分かっていた。未来から大量に介入者がいる以上、歴史は流動性を増す。これからやって来るであろう神の右席も歴史通りに“前方のヴェント”が来るとは限らない。“左方のテッラ”かもしれないし、はたまた“後方のアックア”や“右方のフィアンマ”かもしれないのだ。もはや聖人である神裂でさえ五体満足でいられるか自信がないほどに強大な相手だ。最ももっと強そうな面々と出会ってしまった都合上、以前よりは危機感は薄れたらしく、その足どりは普段通りであった。こうして、科学の申し子とも言える御坂美琴、聖人の神裂火織はそれぞれの思いを胸に、戦闘準備を進め、それぞれ武器を手入れしたり、超電磁砲の媒介に使うコインの補充と予備を調達したりする。美琴にとってはこれが史実より早い魔術サイドとの戦闘となった。






















――神裂火織の言うとおり、地球連邦軍は大規模に部隊を学園都市へ送り込んでいた。その超軍備は主に航空行政施設が揃う第23学区のある空港施設を核融合炉を積む兵器用に改修して使用し、秘匿していた。中には最新鋭の兵器も配備されており、「RGM-122 ジャベリン」、試作段階の「ジェイブス」、「VF-25TP装備」などの最新装備が用意されていた。

「本当、最盛期の学園都市がここまでの規模だったとはな。驚きだぜ。制圧にちょっと時間かかったぜ」

ジャベリンのパイロットが制圧任務で苦労した話を同僚に話す。彼によれば、巨大ロボットに近いパワードスーツと高速大型戦闘機、戦闘ヘリを持ちだして抵抗してきたが、モビルスーツなどで制圧したとの事。戦闘機はVF-25が叩き落したらしく、施設周辺には残骸が転がっているところがある。

「どうするだこれから」

「任務は技術の回収だ。既にハッキングを行い、成果をあげている。戦闘機の残骸をこれから解析にかける。何せ部分的にはVF-25以上だもんな」

そう。学園都市の誇った戦闘機や爆撃機はカタログスペックで大気圏内速度がマッハ8に達するものもあり、これはOTMで固めて生産されているはずの2200年後の最新装備の歴代VF(可変戦闘機)さえも上回る驚異的速度。学園都市が衰退した200年後ではそれら超大型戦闘機らはもう存在しない。より安定した性能を出せ、人道的にも問題ないOTMが外で実用化されたことで学園都市の人道的に問題ある戦闘機などはその意義を次第に失い、遂には製造中止になったのだから。地球連邦軍が求めているのは素材技術。エネルギー転換装甲の進歩を最盛期の学園都市の技術で起こそうという兵器関連メーカーの思惑が見て取れた。現在、どの可変戦闘機も大気圏内での速度限界はマッハ5台に留まっており、決戦機であるYF-29でさえもその鎖からは逃れられていない。そのため現在(2201年)のエネルギー転換装甲の限界を超えるための何かが欲しいのだろう。











「上は最盛期の学園都市の技術を手にし、兵器の性能強化を目論んでいる、か……。何のために、だ?ひみつ道具関連ロストテクノロジーの解析も進んでいるし、デンジ星やナチを発端とするテクノロジーだってあと数年でものに出来そうって話なのに、なんで今さら学園都市なんだろう?」



「上の連中はミンメイアタックが通じない種族の出現を見越してるのさ。そのために兵器の性能強化に余念が無いのさ」

兵士らは連邦軍上層部がミンメイアタックが万能でない事を悟っている事を言い合う。連邦軍の一時の“ミンメイアタック、無敵!ヒャッハー!”な風潮も落ち着いてきたと言うことだろう。

「バルキリーの新型もまた開発されているって噂だしな」

「まじかよ」

「惑星ウロボロスにいる俺のハイスクール時代のダチから聞いた事だ。間違いない」

それはYF-29に続くであろう可変戦闘機のこと。最近は最新技術の開発ペースが速いので新型機の開発ラッシュである。YF-24の完成が新たな開発競争の幕開けとなり、VF-25、27、YF-29と次々と新型機が就役している。しかもひとつの船団が二機種を開発している。彼らが話す新型機とはなんであろうか。





こうして学園都市の情勢は様々な勢力が入り交じっての複雑怪奇さを醸し出していく。スーパーヒーロー、学園都市暗部、御坂美琴と神裂火織、そして地球連邦宇宙軍。それぞれの思惑が入り混じる中、運命の時まであと少し。それぞれの戦いが本格的に幕を開けるまであと数時間であった。ただしその相手が確定せぬままであるので、美琴も神裂も緊張を隠せなかった。史実通りの相手なら二人とて、戦わずして無力化させられる(広範囲で、敵意や悪意を抱いたものを自動的かつ無差別に昏倒させる“天罰術式と呼ばれる魔術が発動された場合、美琴は愚か、神裂とてその効果からは逃れられない。スーパーヒーロー達もそれは例外でない)可能性が高い。そのためむしろ“前方のヴェント”より”も、“右方のフィアンマ”を除いたメンバーならまだどうにかできると踏んでいた。(元々、宗教関係者である神裂はもちろん知っているが、美琴は未来世界でその情報に触れていた)そしてその招かれざる来訪者が学園都市へ近づいていた……。



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