短編『次元震パニック』
(ドラえもん×多重クロス)



――話を聞いた翼Bは、シンフォギアを圭子に預け、普段着姿で64Fの事情聴取を受けた。ここで翼Bは、調Aから『平行世界の同位体』の存在を聞かされ、驚愕していた。さらに、過去の英霊が転生している世界がある事を――

「それでは貴方は……」

「ええ。あくまで『前世』ですが、私は伝説のアーサー王という事になります。」

「だからエクスカリバーを?」

「ええ。『生まれ変わって』も、王族の係累なのは因果でしょうか」

微笑むアルトリア。選定の剣の騎士王であるのなら、自分が圧されるのも無理はないと納得したようだ。

「まさか、かの円卓の騎士と剣を交える事ができようとは。我が人生の誉になるな」

「翼さんはどこの世界でもその調子なんですね」

「月詠、最初見た時は何の冗談だと思ったが、私の知るお前より気さくな印象を受けるぞ?」

「私は色々あったんで」

吹っ切れているため、調AはBより人当たりがよく、気さくな印象を翼Bに与えていた。黒江との同調の影響もあるが、見かけでも、自分との身長差がだいぶ縮まっている。軍服を着ているため、何らかの事があったのだろうとは悟る翼。

「立ち方も変わっている。その服装であるのなら、相応の鍛錬と訓練を積んだのだな」

「ええ。正規の戦闘訓練を受けたんで、銃も撃てますよ。響さんが聞いたら、顔を曇らせるでしょうね。殺すための訓練をしてるから」

「立花は生き方には干渉はせんだろうが、喜びはしないだろうな。立花は手を取り合う事を第一に考えている。軍人となったお前の事を聞けば、微妙な顔をするだろう。二課やその後身のS.O.N.Gは人を救う組織であって、殺すための組織では無いからな」

翼Bは、調Aの事情に配慮した答えを返す。これに調Aもこう返す。

「軍は人を殺す為の組織じゃ無いですから。国を、国民を害するものを排除するのが、軍の根本ですから、その辺を忘れて戦争を起こす人たちは国を保てなく成っているし。昔のドイツがそうだったように」

「たしかに、それが防人が本来あるべき姿だな。お前は何を見てきたのだ?」

「宇宙時代の戦争です。ボタン戦争じゃ無い分、私達の時代よりはクリーンかもしれません」

「その分、神の如き力を持つマシーンも生み出したがな。この映像を見て欲しい」

事情聴取の進行役の圭子が映像を見せる。それは黒江を智子がラ號で迎えに行った際に撮影されていた映像だった。黒江を迎えに、シンフォギア世界(A)を訪れたラ號。その格納庫で出撃態勢を整えるグレートマジンカイザー。そして、アルカ・ノイズをゴッドサンダーで一閃し、ビル街の屋上にその勇姿を見せるGカイザー。ドラマティックな登場の仕方である。Gカイザーの武器はどれも、翼の常識での如何なる兵器の常識を超えていた。雷はアルカノイズを、歌無しで消滅させ、ミサイルは弾道弾級の破壊力、剣は敵の手で再生し、再起動した『チフォージュ・シャトー』(キャロル一派が世界を分解するために作り上げた大型装置にして拠点)を『魔刃一閃』で跡形もなく消滅させ、神の攻撃でも傷つかない装甲を持つ。(逆説的に言えば、マジンガーZEROが超合金ニューZαを破壊できるのは、『マジンカイザーが敗北した』という希少な世界線から、その因果を呼び出しているにすぎない。後続機のマジンカイザーが最強の魔神であることに我慢ならなかったZの邪の自我がその因果を探し当てるのに、何回もニューZα破壊の因果を予測したのかは想像できる。ZEROの根源であるZの邪の自我が何故、グレートマジンガーやマジンカイザーを目の敵にしているのかは、ドラえもんが『マジンカイザーやグレートマジンガーが活躍すると、Zの功績は忘れ去られていく。その恐怖がZEROの傲慢で偏執的な性格に繋がったんじゃないか』とする予測を立てている。ゴッドがZの善の魂を継承し、Zも超合金ニューZ製の二号機が再建されるので、ZEROが癇癪を起こすほど心配であった事は今回で杞憂に終わるのだが。)正に無敵の超兵器だ。翼Bはその威容や力に目を奪われる。

「月詠、このロボットはいったい……」

「人が作った『魔神』ですよ。マジンガーZってアニメ、知ってます?」

「ああ、前にマリアに、TVでの話題の割り振りに対応できるようにするためという名目で見させられたが?」

「その本物の後継機種なんですよ、あれは」

「本物だと……!?」

「最終回にグレートマジンガーってのがいたでしょ?あれの系統ですけど、後継機種です。平行世界には、実現してるんですよ、あれが」

正確に言えば、そのグレートマジンガーがゲッター線で変異した末に進化した個体がGマジンカイザーなのだが、そこには触れず、後継機種として説明する調A。すべてを説明する必要はないからだ。その外観からしても、グレートマジンガーのラインを引き継ぎ、そのまま崩さずに、より力強さを強調したデザインであるので、公の説明通りに『後継機種』として説明した。

「後継機種といっても、グレートマジンガーの試作機の一つを新技術で改装、強化したんで、実質は近代化改装ですけどね」

実際、グレートマジンガーは建造中、塗装前は腕と脚の色が青ではなく、黒だった。塗装前の酸化被膜の関係だ。それを指して、アーリータイプと言える姿であった時期が極僅かだがあった。その写真を見た事があった調Aが咄嗟に考えた説明だった。この説明は圭子も感心するほどもっともらしいもので、後で聞かされた鉄也も感心するほどの出来栄えだった。(そのカラーリングは量産第二期型グレートマジンガーに採用されたので、不思議なものである)Gカイザーは進化したら、カラーリングがマジンカイザーを思わせる黒主体のものとなったのが真相だ。そのマジンカイザーは改装でオリジナルのグレートマジンガーと同じ青の手足のカラーリングに変わっているので、不思議な縁があるのも事実だ。Gカイザーは存在の出自がオリジナルのグレートマジンガーの進化体なので、公の説明が二転三転し易いのだが、これでひとまずの安定を得る。

「オリジナルのグレートマジンガーというのはどんなものなのだ?」

「こんなのです」

「うーむ。面影はあるが、全体的にマッシブになっていて、肩に補助機関のような意匠が見えるな」

比較画像を見てみる翼B。グレートマジンガーとGカイザーは、元が同一の存在という事を感じさせないほど体格などに差があるが、マジンエンペラーほどの顕著な差異はない。基本は同じだが、マジンカイザー系はZの重厚さを残しつつ、グレートマジンガー系の洗練された強さを持とうとした表れだが、ゴッドやエンペラーも新規設計機ながら、マジンカイザー系統と似た進化を遂げている。違うのは機体特性で、機動性重視か、防御力重視の特性かで微妙な差異がある。

「まあ、基本はグレートマジンガーで確立されてますし、そこから強くすると、だいたいは似た形になります。響さんがパンチの時によくやる、腕のアーマーの回転機構があるけど、あれもパンチの直進安定性強化と貫通力強化って役目あるのが、これで分かりました」

グレートマジンガーやグレンダイザーなどのスーパーロボットには、ロケットパンチの直進安定性を強化するため、また、回転時の安定性を持たせるためのフィンを持つ。マジンカイザーやマジンエンペラーになると、高速回転による貫通力も攻撃力の内に入る。その為、間接的に響の突進力の説明になった。

「このようなモノが切り札として使われているのか?」

「星間戦争は、星が軽く吹き飛ぶ力を持つ文明のぶつかり遭いですから。これでもまだ可愛いほうです。もっと上が、因果律すら書き換えるような機体も多いですし」

「因果律……だとッ!?」

「上には上がある。どんなモノでも、破壊される因果はどこかにある。それを断ち切れる力を持たない限り、神格には勝てない」

因果律。あのマジンカイザーですら屈したモノ。魔神皇帝『マジンカイザー』と言えど、全ての世界で絶対無敵とはいかず、どこかにはミケーネかDr.ヘルに何らかの原因で負けてしまい、かつてのZとグレートのように、グレートマジンカイザーに襷を引き継がせた世界も存在する。中には、皇帝から神へと引き継いだ世界も存在し、Gカイザーもどこかには、マジンガーZEROに屈する世界がある。それ故、ゼウスは『因果を断ち切る剣』になる機体である『マジンエンペラーG』を鉄也に与えたのだ。

「神格……」

「人の意思は力を呼び起こす。どんな機械、どんな力を使っても、最後は人の意思ですよ。神が人をどこかで恐れるのは、それですよ、翼さん」

「月詠。お前は私の知るお前自身と違い、確固たる個を持てたようだな」

「色々な人達が私を変えてくれたんですよ、翼さん」

ニコッと微笑む調A。翼Bは自分の知る調よりも人として大きく成長が窺える言動である事に関心する。自分達とは関係がない世界のために命をかけたスーパーヒーロー達の姿に感銘を受けた事もあり、彼らの背中を追うという、かつてとはかけ離れた生き方をしている。以前と違い、行動の端々にどこか『善』を感じさせるのは、そういう事だ。

「しかし、お前はどこで『分かれた』のだ?」

「私はフロンティア事変の初期段階で別の世界に飛ばされたんで、そこで枝分かれしました。根本的に辿った道が変わったんで」

「初期段階で、だと……?」

「はい。それも極めて初期の段階で。マリアが宣戦布告してしばらくした辺りで」

「どういうことだ?それではお前の役目は誰が……」

「私が今、師事してる方が私に成り代わって、私の役目を担っていたんです。なので、私がいなくなっても、万事は回りました。ややこしい事にはなりましたけど」

「ややこしい事?」

「私は本来、フィーネの次の器になるはずだったでしょ?それで切ちゃんが暴走しちゃって、私の師匠を全力で殺そうとしたんですよ」

「うーむ…。暁の性格からすれば、やるやも知れん」

「でしょ?流石に引きましたよ、私」

翼Bは調のほうが依存心があると思っていたようで、切歌のほうが暴走したのは意外そうだった。

「まぁ、生き残るのが精一杯だったんですよ。私。行った先で戦争だったんで。それで人生観も変わった自覚はあります」

「戦争か。お前は苦労を重ねていたのだな」

「ええ。実のところ、そこで過ごした年数入れると、24ですし」

「うーむ。で、お前自身とはどうなのだ?」

「なんとか説得しました。シンフォギアはケイさんに預かってもらってます。私のと共鳴して暴走する危険もあったんで」

「そうか、お前ももっているものな」

「漫画でよくある『対消滅』はないだろうけど、一方が暴走するのは考えられたんで」

「どこにしまったのだ?」

「あたしの部屋にある特殊合金製の金庫に入れた。ガンニグールで殴っても傷一つ入らない強度の合金のな」

「オーバースペックでは?」

「響が来て暴れられた場合を考えたんだ。最悪の場合、それでぶん殴るのも考えてる」

「貴方達は立花をなんと?」

「ビル崩壊の衝撃加えても気絶しないタフネスだが?」

「……」

流石に、圭子のこの一言に閉口した翼B。シンフォギア展開時はタフネスさを見せる響だが、特殊合金の金庫でガイーンと殴れば、いくらなんでも卒倒すると思われる。これはシンフォギアに身体強化機能があるためで、黒江のローリングクラッシュや彗星拳に持ちこたえたという証言からの言だが、いくらなんでも化物扱いなので、流石に閉口した。

「本人が聞いたら怒りますよ、いくらなんでも」

「仕方ねぇよ。こっちには光速でパンチ繰り出せる化物連中がいるんだ。そいつらの一人の攻撃食らって食らいつこうとしたんだぞ?そうもなるぜ」

圭子の言葉に、なんとなく納得の翼B。圭子は黒江から、響にローリングクラッシュを100mの高さからからマッハ5でぶち込んだのにも関わず、立ち上がろうとした(フラフラで継戦能力は失われていたが)姿に引いた事を聞いていたので、人外扱いであった。そのため、調は万が一、交戦に入った場合、250mの上空でアニメ版レッ○バロンのローリングサンダーをぶちかまし、そのまま地面にマッハ20で叩きつける事を思案している。

「私も、万が一のときは前中踵落としをマッハ20でかまそうかと……」

「月詠、いくらなんでもそれは必要ないぞ、多分」

「いや、マッハ5の攻撃で大丈夫だったし」

「マッハ20と言ったら、空気がプラズマ化したり数秒で圧縮断熱で2000℃超えるんだが……?お前、いったい」

「光速の攻撃できるんで、そのくらいは朝飯前に」

「……シンフォギアでも、エクスドライブでないと燃え尽きるような速度だぞ?イグナイトはあるのか?」

「一応、積んではあるみたいなんですが、私は素の時点で響さん以上の総合力あるんで、テストで使ったきりで」

魔剣ダインスレイヴの破片はシュルシャガナの修復時に他と同じく組み込まれていたが、黒江は山羊座の黄金聖衣を纏ったため、実戦使用の機会がそもそもなかった。調も帰還後のテストで使用しただけだ。また、A世界の切歌が正気に完全に戻ったのも、シュルシャガナが破壊されたタイミングで、黒江が山羊座の聖衣を呼び出して纏い、エクスカリバーを放ったからであったりする。

「何故だ?」

「私は神の闘士になってるんで、わざわざイグナイトを使う必要はないんです。シンフォギアをいつでもエクスドライブにできるし、いざとなれば、その力を扱うための鎧を纏えばいい話ですし」

「なんだとッ!?」

「お前、たしか前、訓練中に気分が高揚した時にそれになったな?」

「はい……。力を強めると、リミッターがイカれるんで、大変でした」

実際は秋にのび太と映画を見に行った帰り、のび太にマフラーをかけてもらった際に、恥ずかしくなって赤面した勢いでなったのだが。少宇宙に目覚めていると、シンフォギアの使用時に意外な苦労が多い。

「それにシンフォギアを歌わずに歌い使うことも出来るんですよ、ちょっとした事に気が付けば」

「信じられんな……。フィーネやエルフナインすら知らぬことだぞ、それは」

呆れるが、シンフォギアの最大ポテンシャルを神の力で自家薬籠中の物にしている事に興味津々の翼B。

「しかし、何故そんな事が可能に?」

「神と同質の力である、『第7感』に覚醒める事は、人を超えた存在に昇華することでもある。ましてや、調は『成り代わっていた』あたしのダチが第九感に到達していたおかげで、その境地に到達している。生身でビッグバン以上のエネルギーを引き起こせるんだ。シンフォギアのリミッターなど、あって無いようなもんだ」

「ビッグバン以上のエネルギー、だと……ッ」

「技一つで銀河くらいは吹き飛ぶぜ?本気でやればな。それを機械の力で引き起こすのがスーパーロボットの究極だ。お前らのいう適合者でない者がシンフォギアをホイホイ扱えるのは、そいつの存在が既に、常人を超えているからだ」

「それが貴方達なのですか、加東女史」

「そういうことだ。第七感の時点でシンフォギアは普段着感覚で使えるぞ」

「なッ!?」

「見せてやれ」

「はい。Various shul shagana tron……」

「なッ!?LINKERも無しにいきなり起動だと!?」

「別の私が見たら血涙確定ですよ、これ。これで生活する訓練してたんで……」

「なんだとォッ!?こちらの価値観がおかしくなりそうだ……」

第一種適合者であるので、翼もその気になれば可能だが、二課及びS.O.N.G、国連の条約でそれは禁じられている。調は本来、LINKERを必要とする第二種適合者なので、それを投与しないで、負荷もなくシンフォギアを纏うのはあり得ない。だが、人を超える事で、正規適合者と第二種適合者の壁を乗り越え、聖遺物を使う側に真になる事で、真の意味でシンフォギアを御したと言える。要は神の力による力任せなわけだが。

「神の力を使った力任せですよ、要は。ねじ伏せるのと等しいんで。ケイさん。たしか今、アガートラームを持ってますよね?」

「んじゃ、試してみっか。Seilien coffin airget-lamh tron」

「!?」

圭子はここで、箒がメンテで圭子に渡しており、それが終わり、A世界のエルフナインから受け取っていたコピーのアガートラームを起動させた。まさしくそれはアガートラームそのものであり、翼Bは我が目を疑う。

「アガートラームをいとも簡単に……馬鹿なッ!?」

「私は神格なんでな。そのくらいの事は余裕で出来る。弟子と共有しているから、テストしてみただけだ」

アガートラームを纏う圭子は、ゲッターの化身らしい緑色のオーラも同時に纏い、アガートラームの力にゲッター線の力を上乗せしているのが窺える。

「お前にはショッキングかも知れんが、これは現実だ。慣れないと力の引っ掛かりが有るから、ダチのいう『リミッター代わりに丁度良い』になるかもな」

「ギアを纏ってタバコですか……?」

「馬鹿、喉の薬だ。最近のガキは知らねぇのか?面倒だぜ」

シンフォギアを着ていて吸うのも、なんともシュールだが、圭子は薬を定期的に服用している。喉に良いからで、神格になっていても、これは守っている。マルセイユもツッコミを入れたが、レヴィのキャラで返されたのが怖かったか、一度きりだ。もっとも、マルセイユも今は切り替えているが。

「これで信じてもらえたか?」

「は、はい。色々とショッキングでしたが……。女史、どう説明するんです?この事態」

「うーむ……」

事情聴取用の部屋のドアがすごい勢いで開く。なんだと思えば、調Bがパニック状態で血相を変えている。アガートラームの起動がショックだったようで、若干の怒気を孕んでいる。圭子も調Aも、困った顔で互いに顔を見合わせ、ため息をつく。

「どうして貴方がそのギアを纏っているの?」

若干の怒気を込めた言葉であり、明らかに膨れている。二人は怒った調Bを宥めるのに、予想外の労力を使うのだった。翼Bもこれは予想外であったようで、戸惑いつつも二人に助力するのであった。



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