短編『次元震パニック』
(ドラえもん×多重クロス)



――次元震パニックによって現れた、平行世界のウィッチたちだが、A世界の戦闘には色んな理由で適さない事から、混乱防止を理由に、ホテルに軟禁状態であった。それに不満を持つ菅野直枝はA世界の中島錦に模擬戦を仕掛けた。憂さ晴らしも兼ねていたはずが、錦がシャイニングドリームに変身した事で形勢を逆転された――

「そんなチャラチャラした格好で、オレを圧倒するのかよ!?」

「格好は問題じゃないよ、直枝。要するに勝ちゃいいの、勝ちゃ」

「テメー!」

管野はどの世界でも血気盛んな振る舞いだが、基本的に年の離れた姉の『かほる』に頭が上がらない。一方、のぞみは基本的に、変身すると現役時代のテンションに戻る。

「直枝、あまりイキってると、お姉さんに言うよ?」

「テメー、なんで姉さまの事を!」

「別のあなたは同僚だし、ねぇ」

「ズルいぞぉ!!」

管野は顔を真っ赤にして、闇雲にパンチを打つが、シャイニングドリームには尽くいなされてゆく。

「さあて、そろそろ本気出すよ!」

ここからが二年の時間で会得した真骨頂であった。のぞみ自身、何故使えるのかも定かでなく、自らの素体である錦の血筋のどこかの代で使い手が『いた』としか思えないという。だが、特訓で会得した武術はルージュやソレイユと属性が被っているものの、炎を扱う点では現役時代の枠をぶち破ったと言える。

『弐百拾弐式・琴月!!』

肘打ちから相手を掴み、炎を奔らせて爆発させる。ドリームがティターンズの誇る超人に対抗するために極めたものが『他家から中島家に養子に入った遠い昔の誰かが会得していた』古武術であるのは、なんとも言えないモノがある。

「どうわぁ!?ほ、炎を出しやがった!?」

管野は離脱せんと、紫電改ストライカーのエンジンを吹かす。だが、それより前に次の技の発生が早かった。

「裏百弐拾壱式・天叢雲!!」

直線状の火柱が立ち、管野を追尾し、それは一瞬で巨大な火柱となり、対象を焼き払う。威力は抑えてあるが、見栄えのする奥義である。

「なんだよ……、今のは反則だぞぉ……!」

管野は大ダメージを負い、辛うじて飛行可能なほどにまで追い詰められる。防御に魔力を全振りしたのにも関わらず、火柱はそれを上回る火力で焼き払ったからだ。

「悪いね、今のはこの先祖のウチの先祖の誰かが継承してた古武術なんだよ。その代のみだったみたいだけど、わたしが伝説を漁る事で、どうにか間接的に継承したんだよね」

半分は口から出任せの『嘘』だが、半分は本当である。草薙流古武術を得たことで、仮面ライダー達に再改造されたスバル・ナカジマと対等に渡り合えるだけのポテンシャル(精霊の力を加味すれば超えているが)を手に入れているドリーム。こうした意外な事実がプリキュア達に力を与えたのである。それを導いたのはドラえもんとのび太である。のぞみは壮年期のび太のもとに『養子の妻』として嫁ぐ関係上、その数十年前の時間軸になる青年のび太からも『家族』と認識されている。戸籍上はことはの義理の姪(のび太の養子のの妻であるため)にあたるという、ややこしい問題もあるが。

「そんな古武術なんて、聞いたことねぇぞ!?」

「この世界のものだしね」

管野は模擬戦でとは言え、先輩に当たるウィッチに色んな意味で圧倒され続きであった。A世界では、孝美との繋がりも『軍の同期の桜』という形であり、ひかりとの接点もないなど、そもそもの流れが違っているという事に苛立った管野は憂さ晴らしの模擬戦をしたが、その度に実力差を思い知らされるという不本意な結果続きである。黒江には色んな意味で叩きのめされ、圭子にもボコボコにされるなど、相手が悪すぎの嫌いがあった。管野は元々、実力で自分を超えてないと、命令に従わないという体育会系の気質であるため、黒江達は実力を見せるしかなく、管野はその度にボコボコにされている。A世界での戦闘記録を見ろとその度に言われるのが、管野の最近のお約束でもあった。

「まだ、やるつもり?」

「もちろんだ!!アンタが炎使いだろうが、オレはこれ以上負けるわけにはいかねーんだ!」

管野は吠え、最後の力で『剣一閃』を発動させ、ストライカーユニットの全速で殴りかかるが……。

「勝ったな」

地上で黒江がそう呟いた瞬間、管野の最後の一撃はあまりに直線的であったため、シャイニングドリームの『質量を持った残像』を残す高速回避で容易く避けられてしまう。

(残像だってのか!?嘘だろ……!?)

それに気がついた管野は判断が遅れてしまった。それが勝敗を分けた。

『プリキュア・スターライトォォ…ソリューション!!』

管野が模擬戦で最後に見たのは、神々しいまでのシャイニングドリームの姿だった。スターライトソリューションは無数の光で相手を蜂の巣にする大技で、黄金聖闘士や仮面ライダーなどのヒーロー、のび太、ゴルゴでなければ対処すら難しい。通常ウィッチでは防御を貫かれる。ウィッチ最高の防御力の芳佳であっても完全には防げないほどの火力。模擬戦で使うには大仰だが、管野を調教するにはいい薬である。

「先輩、この子を」

「うむ。こいつらが腰抜かしたぜ?」

「あ、やっぱりですか」

「まーな」

B世界でのレイブンズはA世界の魔境ぶりに納得の表情、芳佳Bはウィッチと違う力があること、そして、それが『世界を救うための力』である事を悟る。

「それがあなたの力なんですね…」

「うん。正確には、世界を守るために与えられた感じなんだけどね」

芳佳Bは驚きを以て、シャイニングドリームを見ている。錦としては荒くれ者的な粗野な口調であるのに、ドリームとしては優しく、穏やかな口調と高いトーンの声色なので、別人のように思えるらしい芳佳B。

「まるで別人だな」

「先輩、まるで双子みたいですよ?」

「声はオレのほうが高いがな。声のおかげで損する事も多いが、得する事も多い」

「なんで、そうなったんだ?」

「色々あったと言っただろ?」

Bの問いかけにニヒルな返しをする黒江A。Aはこうした振る舞いで、周囲に『ストイックでニヒルな人物』とよく誤解される。本質的には気さくであり、のび太やドラえもんと長年の親友である点からも、その本質がわかる。Bが気さくさで後輩から慕われるのなら、Aは『敵も作るものの、それ以上に心酔する者が圧倒テキに多い』という生き様である。黒江Aに心酔する者は多く、『菅野』、『西沢』、『黒田』など、長く行動を共にした者に心酔している者が多い。その黒江も赤松を母親のように慕っているため、基本的にA世界のウィッチの精神的支柱は若松と赤松の古参コンビという事になる。その考えでいくと、黒江の後輩の後輩である錦(のぞみ)は妹弟子の一人と言える。

「そもそもは二年前にだいたいの出来事があってな」

「二年前、私達がいた頃に何があったんですか?」

「お前らは関係ないし、これは機密に属する話も多いから、全部は話せないが……」

黒江Aらは45年に公式に現場に復帰。その流れで、智子が過去に属していた『いらん子中隊』関連の機密が連合軍の想定外のところから一般バレして政治的圧力がかかった結果、モンティは現場の士気の関係で補給関連部署に押し込まれ、彼に機密指定を進言した参謀は根こそぎ北方戦線に左遷させられた。扶桑では事変にまで遡って、江藤が処分された。形式上は当時の書類不備の軽い処分だが、半分は政治的見せしめであった。江藤を裁くのは『形式上』の問題で、事変当時に部署の責任者だった者たちは退官済みか、45年までに死去した者も多く、その者達を遡って裁く事に異論も多く、仕方がないので、復帰間もなく、当時に直属の上官であった江藤に責任を被ってもらうしかないためであった。折しもミーナが無知から、過去の英雄を冷遇した事がすっぱ抜かれ、カールスラントも座視はできなくなった時期であったため、ミーナの降格とレイブンズの昇進が同時に報じられた。それが現役ウィッチ至上主義的風潮のウィッチ閥の反発を招いたのも事実だが、神通力が昔年から衰えるどころか、磨きがかかっている七勇士らに憧れる者も現れ、ダイ・アナザー・デイの激戦とクーデター鎮圧で反発は平定され、47年には掌返しで『ウィッチの軍事的価値の証人』として持て囃されつつある。

「なんか、周りが持ち上げたり、落とす事の繰り返しなんですけど?」

「出る杭は打たれる。近世以降の扶桑じゃ、よくあることだよ。俺らは特異体質で魔力が無くならないから、疎んじられたのさ。お前の一族と同じだ」

「なんだか、馬鹿げてます!そんなの」

「坂本を見ればわかるが、ウィッチは10代が終わると普通は力を喪う。そいつらもそうだ。だが、この世界での俺たちは特異体質で生まれ、魔力が20代で却って強くなった。だから、上も現場に復帰させたんだよ。だが、元はエクスウィッチの経歴を調べねぇアホもいてな…」

――ミーナは覚醒前は私情も入っての冷遇である事が三将軍に見抜かれ、ドイツ領邦連邦結成後初の処分者という不名誉をおっ被りそうになったが、エディタ・ノイマンがそうなったため、それは免れ、本人の人格の変容であまりに重い処分は理不尽であるという事で、扶桑世論の納得する『二階級降格』で手打ちになった(人事的意味では、考査にマイナス査定がつくため、将官への道は閉ざされた)。それらの不祥事も兵科解体に大義名分を与えることになった。黒江達は昔年通り、あるいはそれ以上の神通力で戦場を席巻したものの、ダイ・アナザー・デイで生じた流れを完全には止めるには至らず、ウィッチ兵科の招来的な『発展的解消』そのものは1947年の年頭に方針として決められた。この決定は『ウィッチの立場が強いはずの扶桑が選んだ』という点で分水嶺となり、『金食い虫』である事を理由に、大国の少なからずがウィッチ兵科の解消の流れに乗る。扶桑は移行期間として、『竹井少将の存命中』という猶予期間を設ける事で混乱を最小限にしようとするが、竹井少将は老い先短いと見られていたため、却って混乱したのも事実だ――

「その代わりに定年まで前線勤務は確定だがな。力がある故の責任は生ずるから」

「どうしてだ?」

「お前らの世界と違って、エースパイロットは前線で戦ってたほうが銃後の都合に合うんだよ。官僚にとっちゃ、現場を知ってる連中が転属されることは『自分らの領域を侵す』ってなるからな。連中の物言いで言うなら、分業が進んだって奴だ」

日本連邦の風潮として、『エースパイロットは現場で使い倒す』という認識がある。坂本はこの世界では、その風潮に異議を唱えるために後方に退いているが、『指揮官先頭』の文化が強く残る日本連邦であるが故の苦労も多い。坂本は『501の戦闘指揮官だった』経歴が箔付けとして機能している事に苦笑いだが、なのはの『やらかし』も知れ渡っているため、日本連邦では『エースは現場で働くほうが物事が上手くいく』とする認識が強まり、坂本も完全な後方勤務ではない。この記録は日本側での記録の散逸後、年月を経て、ジオン公国の手で発掘され、巡り巡る形で、のび太の世界の22世紀終盤以後の戦争を変えていくのだ。


「それに、今の戦争はウィッチがメインでもないしな」

苦笑い気味だが、A世界では『戦争への認識』が近世以前のものに立ち還り、ウィッチは『数ある特技の一つ』というものになりつつある。また、MSなどが普通に使われた結果、航空、陸戦を問わず、ウィッチの立場も変化したからだ。

「別の世界の改造人間とかも混じってきたから、これまで通りの立場じゃいられなくなったのさ。おまけに軍事技術そのものが長足の進歩を遂げたから、ウィッチを兵科として維持するのに疑問符も付いた」

「何故なの?」

「そりゃ、ウィッチでなくても、要はコアを壊せればいいわけだし、通常兵器で隙を作って、ウィッチでとどめを刺すドクトリンは過去のものだ」

怪異の再生能力は核兵器のウィッチ世界での価値を暴落させたが、その一方で、ゲッター線や光子力などの超エネルギーには弱い事が判明した。各種スーパーロボットによる掃討作戦が実行され、46年7月に北極圏の巣が『六神合体ゴッドマーズ』によって討伐されたのを以て、怪異の行動は鎮静期を迎えた。MATはその残存勢力の掃討とウィッチの社会的地位の保全も当初の設立目的だったのだ。

「ウィッチも戦争にいかない連中も増えたから、実質の代替役になる組織もできた。今じゃ、軍隊行くのは物好きか、家の都合だって言われてる」

「なら、どうやって軍隊のウィッチ組織を維持してるのよ」

「半分は先輩達の威光ですよ。二年前の激戦を戦い抜いたって実績と、この世界での貴方たちの過去の功績、竹井少将閣下への配慮ですよ」

黒江達の過去の功績、ダイ・アナザー・デイでの64の活躍による実績、竹井少将への配慮で扶桑のウィッチ組織は存続しているが、既に『彼の死』を以て、組織の発展的解消を行うことは決議済みである。

「あなた達は何のために戦ってるの?国が正当に評価してくれるとは限らなくなったのなら……」

「自分の信じるモノに従って戦ってるまでさ。俺は持ち上げた後の貶されを経験してるから、聖上への忠節と親父さんたちへの恩義はあるが、軍の組織そのものに尽くす考えはもう無い。だが、俺たちは俺たちなりの戦う理由への答えを見出してるさ」

黒江はこの時、明確に『軍組織に無条件に尽くすのは止めた』と自分の同位体らに告げた。また、以前と違う『戦う理由』を見出した事を明確にした。それはウィッチの多くが自分を『売る』ために言うような『虚飾に満ちた美辞麗句』とは関係の無い『戦う理由』を見出している。

「戦う理由の答え…?」

「そうだ。俺たちなりの、な」

黒江Aはニヒリズムを好む面もあるため、こうした振る舞いをするのだが、少なからず、損もしている。だが、基本的には『気のいい姉ちゃん』であるので、損が幸運に変わるのも多いのだ。

「あなたの異名は?」

「魔のクロエにミスティ、扶桑海の雷光だよ。お前らと違って、俺は現役なんでな」

「どうして、後方に引っ込まないの?」

「引っ込んだんだら、いじめられたんですよ、先輩」

「え!?」

「前線帰りのエリートさんに来られると迷惑だ、なんて審査部で言われてな。それでお上がカンカンになって、大騒動になったんだ。それで前線に送り返されて、以降は一貫して前線だよ」

黒江Aは審査部問題以降は一貫して前線勤務であり、505壊滅後は行き場を失っており、未来世界に送り込まれた。そこから現在に至る。現在は64Fの先任大隊長の一人という階級に見合わぬポジションだが、審査部問題以降は後方に置けなくなったのと、戦闘力が47年当時でも最強レベルのままであることから、64Fの中核を担っている。また、扶桑天皇と皇室の軍事的役目が儀礼的な役目しか有しなくなり、軍事顧問の侍従武官の役職が正式に無くなったため、黒江達は将官でありながら、前線勤務のままになる事が確定したのだ。

「でも、いいの?前線で培ったものを若い子たちに…」

「それが、ガキ共があまり入らなくなったんだよ。さっきもいったけど、今は事実上の代替役のほうが安全ってんで、7割位は向こうに取られてるし、入る奴は取り合いでな。うちは精鋭って触れ込みだから、他部隊から一本釣りするしか無くなった。対策は急がれてるが、今すぐの改善は無理だ。入ってきた連中は鍛えられるが、まっさらな新人へ教える機会は減ったよ」

本来、エースパイロットは後方で教官を務めるべきだが、史実の太平洋戦争では最終的に特攻しか攻撃手段が無くなったことの反動もあり、エースパイロットは前線で使い倒す事が政治的、義勇兵の心情的にも好まれた。このドクトリンがジオン公国と地球連邦軍に巡り巡って、影響を及ぼしたのである。

「そんな、それじゃ、この世界はあなた達だけで!?」

「ナンバリングされた全ての統合戦闘航空団の精鋭の多くを一箇所に集めた以上はな。それと、俺達は孤独じゃないさ」

一同の前をフライパスする黒いゲッタードラゴン。ゲッタードラゴン改のリペイントで、漆黒のボディはもちろん、改修されて変わった目の色などはド迫力である。

「え!?」

「ケイ先輩がスクランブルから帰ってきたみたいですね」

「アイツはゲッターの乗り回しも担当してるからな。俺も、明日はフルアーマーガンダムMK-Vのテストあるの忘れてたぜ」

「あれ、調達したんですか?」

「アナハイムがものはついでってんで、倉庫に眠ってた機材を送ってきたんだよ。御丁寧に近代化改修して」

「あの、何がなんだが」

「後ろ見てご覧、芳佳」

「え、えぇー!?」

「嘘、何よこれー!?」

一同を驚かす光景をシャイニングドリームは『ニヤリとした』茶目っ気たっぷりの表情で見せた。黒江Bと智子Bも大ハンガーの全容に言葉を失う。そこにはストライカーユニットを除くと、明らかに技術レベルがおかしいものがそこら中にあった。64Fに送り込まれたガンダム系のMS、量産型ゲッタードラゴン、イチナナ式、量産型グレートマジンガーなどの機体である。

「別の世界から取り寄せた超兵器の山だよ。俺たちは別の世界に行った事があってな」

1947年には史実の戦後の技術レベルになりつつある扶桑だが、人型ロボットなどの兵器はあまりにオーパーツすぎる代物である。

「部外秘になってる代物だから、そこんとこはよろしく」

「信じるわきゃないじゃない……。こんな大仰な代物!」

「念押しですよ、念押し」

念押ししておかないと、芳佳Bの線から漏れる可能性があるからだろう。

「こんなのを持って、文句でないんですか?」

「2年前の時は途中から実働部隊がウチだけになったから、別に言われなかったよ。敵も同等のやつを持ち出してきたからね」

「あなた達はいったい、何と…?怪異でないのなら…」

「別の世界の未来で、戦争に負けた敗残兵連中だよ。そいつらが3年前に事故かなんかで現れて、それで状況を掴んだ後、この世界を意のままにしようとして、リベリオンを占領したんだ」

「それで、俺達が行って、世話になってた『その戦争に勝ったほうの』軍隊の助力を願って、その助力で二年前の欧州で激戦があった。結果は勝つには勝ったが、ウィッチの政治的立場には大打撃ってわけだ。こいつと同じ力を持つ仲間達もいたんだが、それでも血で血を洗う死闘ってのが似合う戦だったぜ」

黒江とドリームの語る概要。大まかな概要については話してもいいので、掻い摘んで話す。SFじみた展開になり、宇宙までも戦いのフィールドになり、大気圏突入や衛星軌道からの質量攻撃。B側にとってはサイエンス・フィクションもかくやの絵空事にしか思えないが、ハンガーにある各種のオーバーテクノロジー満載の超兵器(MSなど)がその実在を物語っている。

「敵の兵器を少数で圧倒せにゃならんから、助力を頼んだ軍隊の最高級ワンオフモデルを取り寄せないとならなくてな。ウチにあるのはそのモデルの数々だよ」

「ワンオフねぇ…」

「綾香、あんた、わかるの?」

「そっちのウォーモンガーと違って、私は航空審査部でテスパイしてんだぞ?ワンオフったって、ごく少数の生産しかしないなんて」

「レーシングカーも金かけて数台しか作らんだろ?そういう類の開発手法が人型ロボットの実用化されとる世界じゃ当たり前にある。組織のシンボルになるエースパイロット専用の超高級品は特に」

「兵器って、そういうものじゃないだろ?」

「シンボルになる機体をダウングレードして量産型を作るのが人型ロボットでの定番なんだよ。そういう超高級品は一騎当千を期待出来るエースパイロットにしか与えん慣習もある」

「詳しいわね、アンタ」

「いや、現在進行形でパイロットだよ、俺」

「はぁ!?」

「郷に入ったら郷に従えの要領でな。俺も元々はテスパイ経験者だから、その世界で使われてるのは乗りこなしてるよ。粗方」

「アンタ、どんだけなのよ」

「お前らと違って、前線勤務で居続けると、求められるものが大きいんだよ」

「でも、なんで部外秘になってるんですか」

「色々な理由からだよ、芳佳。政治的、ゴシップネタの防止、とかね。二年前、先輩の友達で、わたしの『親戚』の人が協力してくれたんだけどね、その人、有名人だったから、ゴシップ紙とかの格好の標的にされたんだ」

もちろん、それはのび太の事である。のぞみは近々、のび太の義理の娘(養子の妻なので)になるので、親戚という表現は間違ってはいない。二年前に散々に振り回された誹謗中傷のことはそれが終わって二年も経てば、いい笑い話にできるが、ダイ・アナザー・デイ当時は怒り心頭だった。二人はそこについては苦笑交じりである。

「その教訓なんだよ。仕方がねぇけど、二年前に上が戦局打開のためってんで、新兵器をバンバン使いまくって、撃ちまくったから、装備の優遇のない他の部隊から顰蹙を買ったのも事実だしな。」

「前線でいきなりだったのか?」

「そうなるが、説明がややこしいから、後でな」

「わたしのこの力についても、話す必要はありますしね」

「おっと、医務室にこのガキを届けてくる」

黒江は管野をお姫さま抱っこしたままである事に気づき、医務室に向かう。

「それはどういうことだ、中島?」

「色々とややこしいんですよ、黒江さん」

のぞみはB世界の黒江にはさんづけであり、A世界の黒江相手には先輩と呼ぶが、これはB世界ではお互いに接点も面識がないためと、A世界の黒江は錦の士官学校の先輩であるという接点がある違いであり、芳佳Bは『頭がこんがらがる』とぶーたれているが、A世界ではお互いにプリキュアであるため、対等な関係であるのに対し、B世界では単純に先輩後輩関係であるため、のぞみのほうが『頭がこんがらがる』と思っているのであった。



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