「シンフォギア世界の一つのIF」編 2
(ドラえもん×多重クロス)



―黒江の元の実力は『剣技で鳴らした』ものの、魔力は平凡に入る数値のウィッチであり、引退後はテストパイロットとして余生を送るはずであった。黒江はそれを良しとせず、運命に抗い、転生を重ねた。転生の度に限界まで己を限界まで鍛え、最終的な結果が現在の超絶的戦闘能力なのだ。ある日、マリア・カデンツァヴナ・イヴに捕捉され、そのまま交戦した。近接戦闘向けのギアでないはずのシュルシャガナの性能を用いないのにも関わず、マリアは劣勢になりつつあった――

「貴方、どこでそんな力を……」

「そうだな、輪廻転生をマジで何回もして、記憶を引き継いで、その上で肉体をその度に鍛えた最終的な結果だ。お嬢ちゃんとは差があって当たり前さ」

「輪廻転生…フィーネのような?」

「違う違う。本当に死んでから、生まれる頃に戻って…を繰り返した結果だよ。その内にオリンポス十二神の闘士になっただけだ。」

聖闘士はなれる確率は低いとは言え、一応は女性にも門戸は開かれている。黒江の代では特別枠の『聖闘少女』が廃止され、完全に通常聖闘士と統合された(聖戦後はそんなに人間を確保できない上、先代黄金聖闘士の全滅で育成制度も崩壊しているため)ため、黒江が素顔を晒したままでも黄金聖闘士である事が許容された。黒江は世代的には星矢の後輩であるが、黄金聖闘士であるのと、童虎の弟子筋であるため、タメ口を聞いても許されるのだ。

「オリンポス十二神…?」

「そうだ。オリンポス十二神は配下となる軍団を持つが、俺はその内のアテナの軍団の最高位の階級に属している。そいつらが神話の時代から定期的に聖戦を繰り返してるのさ」

オリンポス十二神は配下となる軍団をそれぞれ有する。アテナの聖闘士はその中でも大規模な軍団の一つであるが、真っ向から神と戦えるのは神話の時代を除けば、12人の黄金聖闘士のみ。黒江はその内の山羊座を掌るが、聖衣自体は射手座、天秤座、獅子座を拝借することも多い。また、ハーデスを倒した後の聖闘士は空位が目立つ。蘇生した先代達はZ神の厚意で派遣される『ゼウス直轄の軍団』扱いに変わっているので、黒江、智子、箒の三人を空位の星座の内、要となる星座につかせたのが始まりであった。この時点では黒田が蠍座に叙任された頃で、その内の射手座と水瓶座は本来の資格者であり、先代の正統後継者でもある『星矢達が成熟する』までの繋ぎ扱いである。

「貴方、どうして……」

「お前、この姿の元の持ち主のガキの保護者だろ?そいつがいずれ帰ってきた時に備えて、お前には事情を知ってもらわんと」

「貴方、どうするの。これから…」

「しばらくは一匹狼でも気取るさ。お前もあの緑のガキの面倒をみなくちゃならんだろうから、大変だよな」

「貴方のおかげで……あの子。精神に変調きたし始めてるのだけど」

「なぬ?あのガキ、百合だったのか?」

「ど、同人用語!?」

「同人誌即売会のサークルやってんだよ、プライベートで。で、精神バランスが狂ったのか?」

「ええ。貴方のその振る舞いから、フィーネに乗っ取られたに違いないって思い込んでしまって…。いくら言っても……」

「……チッ。まずったな、そりゃ。一応、いなくなる前に情報は仕入れたが、確か…ルナアタック事変の黒幕だったやつだな?」

「ええ。フィーネはリーインカーネーションという仕組みを使い、有史以前から、自分の子孫達、あるいは僅かでも血を継ぐ者を自分の輪廻転生の素体にする仕組みを構築していた。あの時に倒されし者の次の転生体を演じるのが私に課せられし役目……。私と妹、それに調と切歌はその素質を持つと見込まれて、米国に連れてこられた子供達の一人」

マリアは黒江がこの世界の住民ではない事を確信したらしく、身の上話をしだす。溜まっていたものを吐き出すようであるのは、彼女の置かれている立場と境遇によるものであり、亡き妹であるセレナ(後に、十六夜リコ/キュアマジカルへの転生が確認された)は自分が悪事に手を染める事を喜ばないはずと考え、オリンポス十二神の闘士という黒江の前で懺悔する選択を取った。その表情は哀しげなものに変わっており、場をシリアスな雰囲気に戻した。

「妹がいたのか?」

「亡くなったわ。実験に失敗した尻ぬぐいをして、ね。妹は私のたった一人の肉親だった。それを米国は奪った!」

マリアは米国を憎んでいるようだった。ウクライナとロシアの領土紛争で両親を失い、残された唯一の肉親を米国の行った実験で奪われたことから、米国へ復習したい気持ちがあるからだ。だが、テロ行為をして、心優しい性格だったセレナが喜ぶのか?という良心の呵責に悩んだマリアは第三者である黒江にその胸の内を明かす。セレナを奪った米国は滅べばいいとする元・難民としての復讐心、記憶の中の妹の笑顔が年月とともに薄れていくことへの恐怖がマリアを破滅的な行動に駆り立てた。

「貴方が輪廻転生を重ねたのなら、妹もしている。そうよね」

「きっと、どこかで新しい人生を歩んでるさ。幸せに、な」

と、その場は言ったのだが、帰還後にキュアマジカル/十六夜リコが『セレナ・カデンツァヴナ・イヴの転生体』であると判明した後、黒江はマリアにそれを知らせた。リコにも記憶が蘇っており、再会。マリアは二度と戻れないと思った『妹との日々』を取り戻せたわけでだ。リコの現在の生活には干渉しないが、転生後にプリキュア戦士になっていた事には狼狽し、リコの相方の朝比奈みらいに詰め寄るなど、シスコンぶりを見せている。マリアの切なる願いが天に届いた形であった。

「できるなら、もう一度……あの子に会いたい、話したい……。分かってはいるけれど……」

マリアは本来、妹思いの穏やかな人物である。それ故に成人後も妹の死を受け入れられないという脆さをさらけ出す。ガングニールのギア姿で泣き言を言うあたり、誰にも聞かれていないからだろう。

「妹に報いたいのなら、悪事への加担をやめろ。テロ行為をしたところで、その子が帰ってくるわけじゃない」

「なら、残された私はどうしろというの!?両親を紛争で殺され、私にはあの子しか……家族がいなくなったのよ!?あいつらの尻ぬぐいを妹はして、死んだ!!死んだのよ!?もう、引き返せない……するつもりもないわ!!」

マリアはセレナを失ったことへの復讐心のタガが外れかけ、ヒステリックにわめき出す。元々が戦災孤児であった事、残された唯一の肉親であった妹を理不尽に奪われた形だったため、そのきっかけとなった実験をした米国を滅ぼし、その同盟国である日本もメチャクチャにしてやりたい。それがマリアの選んだ復讐であったと言える。

「今更、復讐をしたところで、その子が喜ぶものかよ!!」

「何も知らない貴方に……私たちを……いえ、私を止める権利があるというの!?」

「ないさ!……だがな。お前が復讐をすれば、必然的に、お前ら姉妹のような子供達ができるんだ。戦争の被害者のお前が今度は加害者になるのか?」

「知ったようなことを!!私はただ、妹の魂にやすらぎを与えたいだけなのよ!あの子は報われずに死んだのよ!?誰かのために犠牲になったのに!!」

マリアは支離滅裂な言葉を発しつつ、穂先が破砕されたアームドギアを再構築し、小型の槍にして、黒江へ突き立てようとする。黒江はカッと目を開き、エクスカリバーを両手で構える。

「……お前の家族に代わって、俺がお仕置きしてやる!天国のお前の両親、お前のために死んでいった妹のためにもな!!」

「お前なんかに………!お前なんかに、お前なんかに!!私達の……私とセレナの何がわかるのよぉぉ――ッ!!」

「この……バカヤロウがぁ!!」

マリアは突撃しつつも泣いていた。妹を奪った世界への復讐。それが彼女の成人後における行動原理だったからだ。黒江はマリアを止めるため、約束された勝利の剣を全力で放つため、周囲の魔力も一点に集束させる。

『束ねるは星の息吹、輝けるは命の奔流……!』

エクスカリバーに周囲から集めた魔力が集束し、更に黒江自身の魔力を注ぎ込むことで、伝説の通り、いや、それ以上の輝きを放つ。これがこの世界には存在しない『宝具』の力だった。

『お前のその復讐の心……この一撃で断ち切る!!!!』

『約束された勝利の剣――!!』


鼻垂れし『光芒』はマリアの持つ槍の穂先からのビームを押し返し、そのまま飲み込む。マリアは悲鳴すら挙げる前に飲み込まれ、次の瞬間には『魔力由来の大爆発』を起こす。その光は光の十字架のようであった。

(セレ……私は……)

飲み込まれる瞬間、マリアは涙を流しつつも亡き妹の笑顔を思い出していた。姉らしいことをしてられぬままに天へ旅立ったセレナこそ、彼女の中での良心の象徴であったと言える。全てを薙ぎ払う聖遺物の光が自分を断罪しようとすると悟り、マリアは目を閉じて、全てを受け入れた――。








――その様子を遠くから確認した二課の装者達――

「クソ、あの光は…!」

「間に合わなかったの……!?マリアさん!!」

「待て、立花!!彼女の技が完全聖遺物由来の物なら、我々はこれ以上は近づけんぞ!」

「そんな………!?あそこにマリアさんがいるのに……!こんなのってないよ……」

「彼奴はまさか本当に完全聖遺物を……?馬鹿な……エクスカリバーの伝説はたかがここ千六百年くらいで生まれたもののはず……先史文明の異端技術として存在するはずは…!?」


完全聖遺物のエネルギーの強大さを知る翼はいきりたつ響を諌める。響は青ざめた顔を見せ、マリアの生死を心配することしかできない現状に涙する。翼とクリスは改めて、聖剣と呼ばれる技の破壊力に震え、言葉もなく立ち尽くすだけだった。光の柱が生ずるほどのド派手な炸裂であったが、実際には、マリアとガングニールのその場における繋がりを断つのみであり、マリアの命に別状はない。ギアを強制解除されたマリアはショックもあって昏倒しており、黒江によりその場から連れ出されていた。


――10分後――

「……と、言うわけで連れてきた」

「連れてきたって…。どう説明するんです?10分後にはネット喫茶の中だなんて」

「俺のテレポート能力とでも言うさ。それにあの青いお嬢ちゃんの爺様、100を超えるってことは、1920年代以前の生まれか?」

「翼さん、自分の家のことを語りたがらないんですが、家の宿命には忠実でも、家そのものは嫌ってるみたい。詳しい事はわからないです」

風鳴翼の実家は二次大戦時には特務機関の長だった家柄であり、祖父の風鳴訃堂は『21世紀には時代遅れ』な軍国/国家/全体主義の権化である。また、血が薄れるのを嫌がり、息子の妻を強姦し、自分の子(翼)を産ませるなどの所業を平然と行う外道。その外道ぶりは後に『アテナ』によって裁かれ、五感剥奪と精神的死という制裁を乙女座のシャカが執行する。訃堂の生年月日は『国体が大日本帝国であった』1920年代から1930年代の前半までのどこかと思われ、世界によっては学徒動員を経験しているらしい。黒江はその彼が日本軍への従軍経験を振りかざそうが、1945年に佐官であるという権威で黙らせられる。軍隊とは階級と先任で偉さが決まるのだ

「まぁ、いい。そのじいさんが来ようとも、俺は黙らせられる。俺は1945年で既に大佐だからな」

「軍隊の世界って、そういうものなんですか?」

「基本的に日本の軍隊は階級よりも、そいつの入隊時の期で偉さが決まる。海軍には『ハンモックナンバー』って言葉も残ってるくらいだ。同階級でも、な。自衛隊でもそういう文化は残ったし、警察でも序列はある。俺も世話になった人には頭上がんないからな」

「でも、かなり軍国主義的だって噂ですよ?」

「なーに、いざとなれば、某ドラマよろしく、過去の罪を暴いて、公衆の面前で土下座させてから、精神攻撃で廃人にすればいい」

後々のことだが、風鳴翼の『祖父』である風鳴訃堂が自らの策謀に失敗する伏線(ひいては翼の父であり、訃堂の子である『風鳴八紘』が誅殺されずに存命する伏線)は、黒江の登場で貼られたと言える。黒江はネット喫茶のPCチェアにシンフォギア姿のままで座っている。一件すると、調を17歳前後へ成長させたような姿だ。(後に、黒江が調の姿は変身している時はお互いの見分けのために瞳の色が違うのだが、この時期は瞳の色も同じであった)

「なんだか、言うことがぶっ飛んでませんか?」

「ま、よく言われるよ。俺は転生を二回以上繰り返して、今の強さを手に入れたが、『異世界の連中相手にイキって楽しいか?猿扱いしてんだろ?』なんて、ひでえ陰口も言われてる。仕方ないが、俺と親友達は『一騎当千』を近代戦争で実現できるだけの力を持つからな。それがネットギークの連中は気に入らんのだろう。個人で一騎当千に強いってのは、集団主義の日本人の大半には理解できん理屈なんだろうさ」

黒江はこの時期より、言動にニヒリズムが表れ始める。それは『軍に有益になるはずの個人としての戦闘力』が部隊で疎まれる対象にされてきた時期があった事、彼女の現在の地位は昭和天皇の寵愛によるものだという陰口が海軍ウィッチを中心に存在していたからだろう。元・上官の江藤敏子が政治的にピンチになったのは、部下が国家元首の寵愛を受けていた事実を知った上、第一次現役時代の終わりまでに『人事部に上げたはずの注釈が人事部のミスで顧みられず、ミーナに冷遇をされた』事に昭和天皇が怒りを見せたからだ。ミーナは政治的保身を図るカールスラント空軍高官の生贄にされた形だが、現場での能力が惜しまれた結果、降格処分で済んでいる。黒江の帰還後に扶桑軍ウィッチの間での派閥抗争が極限に達するが、昭和天皇という錦の御旗を掲げる改革派が最終的に勝利を収めるわけだ。

「転生って本当は無作為じゃ?」

「普通は動物になったりするからな。だが、神の眼鏡に適った魂はそのまま転生できる。俺は事実上のやり直しのようなもんだが、その度に鍛え直しになったが、何回も繰り返す内に死を超えちまってな。今は事実上の不死属性を手に入れちまった。ギリシア神話かなんかの英雄みたいにな」

「不死……」

「それが気に入らん連中は星の数もいるからな。不死ったって、好きでそうなったわけじゃない。神様に奉仕した褒美のようなもので、ゼウスから与えられたものだ」

「ゼウス……ギリシャ神話の最高神。本当にいるんですね」

「神話のとおりに浮気しまくりだが、基本は親バカで気のいい神様だよ。お前の友達の使ってるグングニル、この世界だと、ガングニールったっけ。俺の職場(この場合は聖域を指す)先輩たちが本物を破壊した事あるって、訓練生だった頃に聞いたことがある」

「え、本当ですか?」

「調べて回ったが、この世界だと、ロンギヌスと同一視されてるみたいだな。それがこの世界での絶対性を確立させたんだろう。だが、別の世界の存在にはロンギヌスとしての神殺しの力が働かなくなる。もし、お前の友達がこの世界とまったく別の世界の神々に喧嘩を売る事態になったら、全力で止めろ。一方的に『こいつ』を破壊されて、瞬殺されかねん」

黒江は未来に警告する。『シンフォギア世界とまったく別の世界の神々には、ガングニールからロンギヌスとしての効力が失われ、効果を発揮しない可能性』があると。これは後に的中してしまうのである。

「どうすれば?響は自分がこうだと思ったら、私の言うことも耳を貸さないようなところがあるんです。そのスイッチが入っちゃうと……」

「うーむ……。その子には、少しづつ事実を理解させるしかないだろうな。そんな事態……、そうあるもんでもねぇが…」

二人もこの時は知る由もないが、そう遠くないうちに『それは起きる』のである。

「うぅ……ん。こ、ここは……!?」

マリアがそこで目覚めるが、状況が飲み込めずに目を白黒させ、パニクりかける。黒江は口をとっさに抑え、静かにしろと言う。そして、自分が街のネット喫茶へ連れてきた事を教える。

「え!?そんな、どうやって……」

「俺の力を以てくれば、10分もあれば、街まで連れて来れる。この子もいることだ、クールにいこうぜ?」

黒江はおどけてみせる。マリアはこうして、なし崩し的に小日向未来とも面識を持つこととなった。

「そうだ、私のギアは!?」

「回収しといた。だが、聖剣でお前とギアの『繋がり』を強引に断ったから、少なくとも一週間は、どんなことをしても纏えんよ」

「う、嘘!?」

「聖剣は威力を加減すりゃ、そういう芸当もできる。ところで、連れてくる時にお前の体からこぼれ落ちた、これはなんだ?」

「LINKER。聖遺物に適合はしても、そのままではギアを纏えない人間を強引に装者に仕立て上げる薬よ……。私達は日本の装者と違って、適合率が低いのよ…」

「なるほどな。人工的に仕立て上げる代物ってわけか…いけ好かねぇな」

「貴方は人を超えた身だから、そんな事言えるのよ」

「この境地は人間の誰にも可能性があるんだがな。だからこそ、育成枠があるんだ。誰にでも可能性はある。心の中に小宇宙を感じられれば、な」

「心の中の小宇宙ですって…!?」

「そうだ。そうすれば、こんな薬品に頼らずギアを自由に使えるようになる。整備の頻度も減るから、いいことづくめだ。俺を見てみろ」

黒江は首にマフラーをしている以外、史実での魔法少女事変以後の時間軸でのシュルシャガナと同一のデザインのシュルシャガナを使っている。『脱走してから、まともな整備をしていないのに、フルポテンシャルを発揮できている』のは、小宇宙の力で聖遺物の力を自然に発揮させたためでもある。

「貴方はどうして?」

「私はタワーで襲われたところを助けられたんです、マリアさん。米軍を綾香さんが退けてくれて、そのまま……」

「そう…。その米軍はおそらく、私たちを拉致するか、始末するために送り込まれた部隊よ…。貴方はそれを見てしまったのね…」

「そう、なんですか」

「ええ…。そういえば、貴方の名前を聞いていなかったわね?」

「黒江綾香。こことは違う世界の日本陸軍の将校……だったというべきか」

「私は小日向未来。貴方と戦った立花響の親友って感じです」

「マリア・カデンツァヴナ・イヴよ、本当なら、私と貴方達は敵同士なのだけど…、黒江綾香、貴方の事を教えてくれるかしら?」

「いいぜ。長くなるが」

黒江はマリアに事のあらましを教えた。自分が別の世界の日本陸軍航空部隊のパイロットであり、魔女である事、平行世界との交流の一環で派遣された先で遺跡の調査に立ち会い、その遺跡をミスで起動させてしまったら、偶々、魂の波長があったのか、月読調と入れ替わる形でこの世界に飛ばされてしまった事、自分がアテナの聖闘士もしている事、その関係で調本人がこの時点で成し得ない『高出力のシンフォギア』を纏えている事。要するに、黒江自身のミスに起因するが、予想外の事態なのだと。

「切歌は信じないわね、こんな事。赤の他人が調と同じ姿になって、シンフォギアまで普通に纏えるなんて……」

「実際にそうなっちまったんだよ。あのガキはフィーネにそいつが乗っ取られたって考えてるようだが、実際は事故で他人が入れ替わっただけだ。俺としてもはた迷惑な話だが、誤解を解く手段がないから、困ってんだよ。事故だけど、調って奴を巻き込んじまったのは詫びるよ。とは言え、気休めにしかならんな」


とは言え、この事故は必然と言えるものであった。調が黒江の姿になって古代ベルカに飛ばされたことは『ベルカの子孫達に言い伝えられている伝説の実在の証明』であったからだ。そして、この入れ替わりが縁になる形で、調は後に、自分と入れ替わった人物である黒江を師と仰ぐ事になり、『帰還後』も史実と違う道を歩むのである。

「一応、三週間の猶予はもらってるから、貴方の事をもっと知った上で戻るわ。手ぶらで帰るわけにはいかないもの」

「それがいいだろう。あの緑のガキのことを知りたいしな」

「取引成立ね。あなたのおかげで、私は自分の心の闇を自覚できた。復讐をしたって、妹が生き返るわけじゃないのに……」

「その気持ちは分かる。だが、妹のためにも、前を向け。それが大事なことなんだ」

「人間、誰にでも闇はあるんですよ、マリアさん。大切なのは、自分を赦すことですよ」

未来も言葉でアシストする。マリアはこうして、黒江が自分のミスが原因の事故でこの世界に迷い込んだ『迷い人』であること、入れ違いで調がどこかの世界に飛ばされたという事を知った。マリアは切歌の思い込みを正す絶好の材料を手に入れたとも言えるが、なまじっか、フィーネの覚醒という可能性があったり、調が自分を切り捨てるはずがないという確信があったことから、切歌は精神の平静を保てなくなっていく。また、『大好きな調を取り戻すには、他人がどうなっても構わない』という思考に至ってしまったのは、ナスターシャ教授とマリア最大の誤算であった。切歌の調への執着や愛が気づかないうちに、それと真逆とも言えるはずの『憎しみ』へと転化し始めていたのだ。それをこの時の黒江とマリアは知る由もない。

「それで、どうするの?」

「お前がいないかぎり、お前の仲間は行動を起こさんだろ?俺もまだこの世界の事はよく知らんからな。情報を集めるために、しばらくはぶらつくさ」

黒江はそう明言する。米軍が観光名所にいた理由は知れたが、念の為、未来を当面は匿うしかないとも考える。マリアも第三者である黒江を自分たちの事情に巻き込んだり、自分の復讐を止めてくれた借りを返すため、しばしの間、協定を結ぶ。特異災害対策機動部二課はこの一連の動きからは蚊帳の外に置かれた形であり、彼らの知らぬところで事態は動いていたのだ。マリアはこうして、黒江たちと同行する選択を選び、切歌の暴走を懸念するが、ナスターシャ教授も危惧するほど、切歌の心は病み始めていた。





――この時期、シンフォギア世界の日本政府は米国からの干渉を受けまくっていたが、第三勢力のシンフォギア装者がいる事は断固認めず、対外的には二課の装者として、『シュルシャガナの装者』の存在を肯定する選択を、敢えて報じた。自分たちに都合が良かったのだ。黒江の強さは他国への示威になり、なおかつ抑止力になると、政府に見込まれたからである。これに本人はかなり苦笑したが、シンフォギアの目撃者が増えすぎたので、隠し通すのは無理だと判断した政府の判断であるのは分かった――

「ち、ちょっと!どうなってるの!?これ!?」

「都合がいいからだろ?俺の強さは一国の軍隊とピンで戦えるくらいだと見込まれてるそうだし、外国の内政干渉への抑止力になると踏んだんだろう?実際は協力もクソもねぇってのに」

こうして、『月読調』という存在は最初から日本の装者であるかのように情報操作された。彼女の出自は似た平行世界では、『調神社の当代の宮司の孫娘で、両親が死亡した現場から連れ去られた』というもので、後に調本人がそれを知り、自分の故郷の世界に嫌気が差したとも言っており、かなりのショックであった事が分かる。(行った先でも国が滅んだため、調が野比家に定住する理由となる)。切歌はこのニュースに激怒したが、イガリマをナスターシャ教授に没収されているため、独自行動はできない。間接的に言えば、切歌が躍起になる原因はそのニュースであった。

「これを切歌が知ったら……」

「間違い無しに俺を殺しに来るな。周りがどうなろうがな」

「あの子はそんな子じゃ……」

「愛は臨界点を超えると、逆に憎しみに変わっちまうこともある。俺はそういう光景を見てきたんでな。昔、伝説的ロックバンドのメンバーが狂信的なファンに殺された事件があったろ?あれを思い出してみろ」

「……」

「ま、いざとなれば……切り札がある」

「切り札?」

「そう。オリンポス十二神から授かった防具だ。それを呼び出す」

マリアは切歌の愛が憎しみに変わってしまう可能性を提示され、恐怖で震える。黒江はいざとなれば、黄金聖衣を呼び出し、纏うことでイガリマを防ぐことを明言する。イガリマの絶唱は『魂を刈り取る』特性を持つが、それは神の加護を持つ宝具には無力である。そもそも、その特性はイガリマ本来の特性ではないからだ。黒江はそれを確信している。切歌はイガリマの絶対性を信じているため、それを木っ端微塵に壊すものが存在するという事実を受け入れない可能性が大である。

「神授の宝具を使えば、確かにシンフォギアはねじ伏せられる。けど……」

「仕方ない。あのガキに暴走されて、一般人の被害お構いなしに、あぶねぇ武器を振り回されるわけにもいかんだろう。かと言って、加減しないと殺しかねないぞ、俺」

「あの力は全力ではないと?」

「俺の本気は神と戦えるレベルだ。お前らには視認すらできないと思う。シンフォギアは身体能力は上がっても、知覚は強化されないようだしな」

シンフォギアはあくまで『身体能力を引き上げるもの』で、感覚が特に強化されるわけではないので、白銀聖闘士までとは戦えても、光速を誇る黄金聖闘士相手には赤子同然である。(逆に言えば、映画の見様見真似だけで白銀聖闘士と戦えるレベルになった風鳴弦十郎は超人である証である)

「見えた瞬間には攻撃が当たってるから、鍛えてても、防御すらできんよ。攻撃に耐えたところで、反撃を掠らせるのが関の山だろう」

黒江は黄金聖闘士の中では珍しい、『素の身体能力を鍛えている』聖闘士である。一時は天秤座の後継を目されたこともあるが、シュラの死後に空位であった山羊座を継いだ。箒と智子が『正資格者が成熟するまで』の繋ぎ扱いであるのに対し、こちらは正式な後継である。

「なんだか、超人じみた話ね……」

「別の世界には、素手でビルを蹴り上げるバケモノがいるからな。俺なんざ、かわいいほうだ」

「嘘ぉ!?」

「そんな連中がゴロゴロいる世界にいたから、必然的に強くなったってわけだ。まさに魔境だよ」

黒江は未来世界で人類最高峰の格闘家たちの手ほどきを受けてもいたので、小宇宙頼りの黄金聖闘士もいた(蟹座のデスマスクなど)先代たちの多くと違い、肉体を鍛えた上で聖闘士になっている。そのアドバンテージはシンフォギア世界で実証されたわけだ。また、この頃には既に歴代昭和ライダーの技のいくつは再現可能な領域に達していたため、風鳴弦十郎でもない限りは対等に戦う事もできない。(他には、織斑千冬は最高の戦闘力を持つ人間をコンセプトに生み出されたデザイナーベビーであったので、なんとか戦える)

「素で音の速さを見切れないと、聖闘士と戦える土俵に立てないからな。たぶん、今の時点のお前らじゃ無理だろう」

黄金聖闘士と戦うには、最低でも青銅聖闘士最高位級の力を持つ必要があるため、この当時の装者全員が通常形態で束になろうと、相手にもならない事を黒江ははっきりという。黒江の実力は赤松には及ばないが、それでも当代屈指と評される実力を持つ聖闘士でもある。当時の装者達の実力では、戦う土俵にも立てないレベルの実力差である。

「どうして、そこまで断言できるのよ」

「神の聖戦が起きたら、いの一番に突っ込ませられる立場だからな。並の異能くらい、素でねじ伏せないとまずいだろうが」

「言えてますね…」

「だーからー!!」

未来はたいていの事には動じなくなっているのか、普通にコメントする。マリアは改めて、二人の会話がぶっ飛んでいる事にツッコミを入れる。

「ま、深く考えるのはやめろ。マジンガーZやゲッターロボが本当にある世界だってある上、そいつらが敵を倒すために惑星破壊級のエネルギーを奮うまでに進化していくんだからな」

「昔のアニメが本当に実現した世界もあるというの?」

「俺は実際に見てきたが、マジンガーZやグレートマジンガーどころの話じゃないぜ」

――終焉の魔神と魔神の神、魔神皇帝の対決はもはや、単なる機械の範疇を超えた戦いである。地球が滅ぶか否か。そのレベルである。当時、既に門矢士からマジンガーZEROの脅威を知らされていた甲児はカイザーの強化、ゴッド・マジンガーの調整、マジンエンペラーGの完成を急いでいたし、グレートマジンカイザーにエンペラーの『エンペラーソード』をテストさせるなどの対策を施している最中であった。また、旧・新早乙女研究所地下に眠るゲッタードラゴンの発するゲッター線濃度が急速に低下し始めている(進化を終えつつある)のもこの頃だが、敷島博士の発案で『ゲットマシンそのものがゲッターロボとしての能力を持つ』ゲッターの開発計画がネイサーで始まったのも、この頃にあたる。ブラックゲッターの後継機を目指して開発されるそのゲッターのベースには戦闘用ゲッターの祖である『ゲッタードラゴン』が選ばれた。だが、ゲッタードラゴンも元のままでは旧式化が目立ってきたので、真ゲッター世代の設計を取り入れることで新世代化が図られるはずである――

「スーパーロボットもどんどん威力上がってるからなぁ。マジンガーZが玩具扱いのとんでもない代物が生まれまくってるんだよ、その世界。たぶん、異端技術ってのも超えてるかもな」

「何よ、それ!!」

「俺に聞くな。実際にそうなんだから。つか、口じゃ説明できねぇよ、あんなの」

それは一年後、剣鉄也が『グレートマジンカイザーで援護に駆けつけた』ことで証明される。Gカイザーは異端技術をもねじ伏せるほどの威力を以て、『魔神』の名を冠するのは伊達ではないと思い知らせる。同時に立花響に『自分の居場所を奪われる』と誤解されるが、別の世界の超科学が生み出した超兵器だと説明されることで冷静になり、とりあえずは落ち着く。しかしながら、わざわざ助けに来た鉄也にものすごく失礼な態度であるのには変わりないため、未来が怒る羽目になるのだ。響がダイ・アナザー・デイへの従軍を選んだ要因は『恩返し』であると同時に『自分なりのヒステリックな喚き散らしへの贖罪』でもあるのだ。

「つまり、昔のアニメみたいなロボットが暴れてる世界なんですか?」

「スーパーロボットとリアルロボットが混在する、ゲームみたいな世界だよ。俺が行ってる世界はそんな世界だし、おまけに宇宙戦艦ヤマトのオリジナルシリーズも内包してるから、異星人が馬鹿みたいに攻めて来るんだよ。そんなカオスってる世界だ。おまけに仮面ライダーとかもいるしよ」

「どれだけカオスなのよ、その世界……」

「スーパーヒーロー作戦とスーパーロボット大戦+宇宙戦艦ヤマトの世界……としか言えねぇよ。波動砲やマクロスキャノンや光子魚雷が平気で飛び交う宇宙戦争だぞ?お前らが見たら、泡吹くぜ?」

地球連邦軍は光子魚雷、マクロスキャノン、波動砲、次元兵器の四本柱の切り札を持つが、波動砲はその最高位に位置する。コズミック・イラ世界の軍勢には『拡散波動砲』、『マクロスキャノン』が使用され、地球連合軍、ザフトの双方に再起不能寸前に大ダメージを与え、停戦に持っていった実績を持つ。異端技術は所謂、『超高度な技術を持つ異星人のオーバーテクノロジー』であるため、それをも超える技術レベルの代物が現れれば、ねじ伏せられるのは当然である。グレートマジンカイザーはそのレベルの代物であっただけだ。(逆に言えば、それすらも破壊するマジンガーZEROの因果律兵器の威力がわかる)

「銀河全体を支配するような文明になると、惑星なんて軽く破壊する戦争になる。人類はとある世界だと、太陽系サイズの宇宙船で宇宙戦争する時代に突入していくからな。この世界での神様はアナンヌキかもしれんが、こっちは本物の神々と会ってるからな。その世界の人類も元はおとめ座銀河団で栄えた超文明の残党が猿に遺伝子操作を加えて生み出したとも言われてるし、地球の水は回遊惑星がもたらした説まで出てきてるんだ」

「その世界に先史文明は?」

「いた。だが、そいつらはある星を支配して、いずれは地球を攻めてくる。そいつがシュメール人の子孫だ」

未来世界でいずれ現れる『ディンギル帝国』は最初の地球人の末裔だが、エゴだけが肥大化した種族であり、和解は不可能。殲滅あるのみ。ハーロックもクイーン・エメラルダスも彼らの『ハイパー放射ミサイル』の脅威を警告しており、真田志郎へ対ハイパー放射ミサイル艦首ビーム砲の設計図をリークし、真田志郎も開発を急いでいる。また、30世紀の地球が起死回生のためにすがったシャルバート星から提供された技術が地球艦隊を強化したと聞かされ、彼がアケーリアスを祖とするシャルバート文明を理解するに至る道筋も築いている。

「この世界の先史文明がシュメールなのも、なんかの因縁かもな。そいつらとの和解は論外、絶滅戦争あるのみって結論だ」

「なんでですか?」

「回遊惑星がノアの大洪水を起こした時、宇宙人の円盤に救われた一団が先住民を駆逐した後に地球を移住先に決めて攻め込んできた。奴らは今の地球人は殲滅あるのみと考えてる。なら、こっちも情け容赦不要になる」

ディンギルは地球と同祖ながら、エゴだけが肥大化した傲慢な種族である。地球連邦軍も真田志郎に『対ハイパー放射ミサイル艦首ビーム砲』を開発させているように、殲滅あるのみという方向である。マリアと未来は『種族同士の生存競争の前に、文化は無力なのだろうか?』という虚無感に囚われる。別の世界でのこととは言え、心が痛む。

「わかりあえる時はわかりあえるが、無理な時は戦いあるのみ、さ。宇宙人の多くが言うことは奴隷か死だ。なら、相手を叩きのめすしかないのさ」

未来世界では、遭遇する宇宙人の多くが『侵略者』だったため、敵と見なせば、素直に降参しなければ、敵本土を破壊することにも躊躇がない。地球連邦軍もそのドクトリンに基づき、波動エンジン艦を持つ。ガイアと違い、アースは凄惨な生存競争を経ているため、いざとなれば、敵本星を滅ぼすことで戦争を終らせる。ウィンダミア王国の穏健派が怖れているのもそこである。波動砲を撃たれれば、星団そのものが波動砲で滅びかねない。彼らにとって、波動砲は『アケーリアスの滅びの光』の伝説そのものだからだ。

「地球の象徴はなんなの?」

「宇宙戦艦ヤマトさ。あれが地球最強の怪物だよ。いくつも星間国家を滅ぼしてきたからな」

「宇宙戦艦ヤマト……」

「もう古典の位置づけのアニメだけど……実在する世界あるんだ……」

あっけにとられる二人。宇宙戦艦ヤマトの名前くらいは聞いたことがあるからだ。

「オリジナルの宇宙戦艦ヤマトだから、沈没してた戦艦大和を直して宇宙戦艦にした代物だけどな。馬鹿みたいに強いんだ、これが」

地球連邦軍最強の戦艦はヱルトリウムでも、バトル級戦闘空母でも無く、宇宙戦艦ヤマト。その事実がヤマトのネームバリューの強さを示唆する。実際に、23世紀を過ぎた後、地球連邦軍はヤマトの名を受け継いだ戦艦を代々、総旗艦にする慣習を持つようになるからだ。(30世紀の大ヤマトは正規のルートでの後継艦ではないが、正統後継と見なされている)

「どうして、第二次世界大戦の沈没艦を?」

「完全に一から造る時間も余裕がなかったのさ。だから、戦艦大和の構造を基に、いくつか試作品を用意してテストし、大和型を修繕して改造し、宇宙戦艦に仕立て上げるしかなかったのさ。元はノアの箱舟に使うつもりが、戦艦になった。それがどうしたのか、地球最強戦艦だ」

ヤマトの見かけは宇宙時代には古臭く見える舟型の宇宙船だが、以後の地球連邦軍艦艇の多くが着水能力を重視するというインパクトを残した。また、ショックカノンなどとの兼ね合いで第二次世界大戦までの超弩級戦艦と同様の形態が取られる事が多くなったこともあり、地球連邦軍のヤマト以降の宇宙船は船形の姿が増えた。(観光用宇宙船ではロケット型が残っていたが、ある事故で撤廃される)結局、ジオンが航空機然とした大気圏航行能力を持つ船を持つのに対し、連邦軍は船形の船を持つ一方、ペガサス級などの『如何にもSFチック』な風体の艦を持つため、設計思想を使い分けていると言える。

「そんな世界で仕事してた身だからな。だから、情報が欲しいわけよ。この世界で何があったか。大まかには知れても、細かいデータは機密扱いだしな」

黒江は情報が欲しいことを素直に言う。それがなくては、今後、どう動くべきかの指針も立てられないからだ。

「切歌が見たら、泣くわね……その姿」

「俺だって、好きでこうなったんじゃないからな。それに、使えるもんは使う主義だしな」

シンフォギア姿のまま、PCチェアに座る黒江(姿は調)。マリアがここで気づくが、本来の調より遥かにギアへの適合率が高いせいなのか、シンフォギアのカラーリングが暖色系の組み合わせに変わっているのだ。ギアは纏う個人で形状が変わるが、適合率が高く、なおかつ心象の違いでカラーリングと細部の形状が変わることもあるというのは、机上の理論として知られていたが、実際のケースとしては、この時の黒江が(非公式だが)初である。

「あなた、そのカラーリング……」

「やっと気づいたか。これでわかんねーって、お前の仲間は相当にテンパってんぞ。」

「言われてみれば……」

マリアは頷く。未来は知らないが、調はこの時期、本来はその適合率の低さと、後ろめたいさがあった事の反映で、『黒主体のカラーリング』であった明るい配色のギアに変わるのは、史実では、フロンティア事変の最終局面でXDモードを経た後の『魔法少女事変』からである。黒江はそれを一年以上は『先取り』した形である。

「それと、貴方が使う武器、どうやって?」

「このエクスカリバーは『霊格の実体化』だが、他は元素単位に分解したモノを再構築して呼び出してる。剣、斧、銃…。あと、元から技は撃てるから、それも使ってるな」

「以前の調と、大きくかけ離れてるはずなのに…、切歌はなんで、気づかないのかしら…?」

「うーむ…。つまりだな。愛は盲目……って言うだろ?」

「ま、まさか……?」

意味を悟り、みるみるうちに青ざめるマリア。

「いえ、マリアさん。心当たりあるんで…、それはありえます」

「嘘!?……って!どーいうこと、貴方!」

「こ、コメント控えます、はい……」

「うーむ…」

未来は響と夫婦のような関係なので、そこはお茶を濁す。マリアは猛烈に突っ込みたいらしいが、黒江が困った顔をしているので、ツッコむのをやめる。

「口八丁で三週間は稼げたから、その間は付き合うわ。この子を巻き込んだのは、私達のようなものだもの」

「サンキュー。よろしく頼む」

マリアは三週間ほどを調査の名目で稼げたので、その間は行動を共にすると明言した。未来にこのような生活をさせる事になった責任が自分たちにあるからだろう。装者の中で、比較的に黒江と良好な関係になるのは、この期間が大いに関係しているのだ。


ネット喫茶がまだ残っててよかったぜ。お前の友達らがたぶん必死に探してるだろうから、街外れの裏道にある店を選んでる」

「でも、貴方はその格好で大丈夫なんですか?」

「俺にとっちゃ、この『シンフォギア』は普段着と変わらん感覚だ。これを普段から使ってれば、バレる可能性はむしろ低い」

「貴方、1920年代の生まれにしては、サバサバしてるわね……」

「別の時代や別世界を知れば、必然的にそうなる。面倒見てる奴が平行世界を股にかける組織の調査官でな。今頃は俺を探しとるだろう」

調の外見になっているものの、口調その他は普段と変わりない黒江。この頃には、後々に繋がる伏線のようなことを『意図せずに』やっていた。この日はノイズに『プリキュア・シューティングスター』を放ち、見事に倒していたのだ。これは転移する前に、『プリキュア5』をTVアニメという形で見ていたからだが、この出来事が終結してしばらく経った後、そのプリキュア5の戦士であった『夢原のぞみ』が部下となるのであるが、当然ながら、この時は知る由もない。

「貴方、元の世界でどんな事してたのよ」

「日本陸軍の航空部隊でパイロットだった。だが、今となっちゃ、宇宙戦艦ヤマトにも乗った事あっからなぁ。あ、本物だぞ。但し、イスカンダルから帰ってきた後だけど」

「そんな若々しい口調なのに、本当は90歳超えなんて、誰も思いませんよ」

「普通にこの時代まで生きてりゃの話だ。俺自身は1945年にいたから、ピチピチの20代だ」

黒江は1945年当時、22歳前後。21世紀の基準では大学生で通じる若さだが、ウィッチの基準では『超高齢』になってしまう。この固定観念がミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの運命を狂わす事みになるのだ。

「ま、自分が別世界に事故で飛ばされることはあまり経験はねぇ。俺の仲間がこの世界を早く見つけてくれる事を祈るしかないさ。もっとも、今は容姿まで変わっちまってるがな」

調の容姿となっているが、黒江の普段の振る舞いは健在である。本来の調より背丈が10cm以上も高いこと、口調も調本来のものとはまったくかけ離れている事、姿が同じになったものの、黒江がギアを普段遣いしている事もあってわかりにくいが、実は指紋などは黒江のものであるので、当時の特異災害対策機動部二課が必死に捜査しても、限界がある。そこも黒江が風来坊的な事をしていても、捕まることがなかった理由である(黒江自身、忍術の心得もあったため)。

「どうして、ギアを大っぴらに使ってて、向こう側に居場所がばれないの?」

「俺がコスプレ喫茶でこいつを堂々と使ってるからさ。それに、以前の『こいつ』とは、色と形が微妙に違う。それもあって、探すのに手間取ってるんだろう」

これは黒江の推測であったが、実際にはギアを起動させると『アウフヴァッヘン波形』という特殊な波形パターンが感知されるが、黒江はセブンセンシズで以て起動させたため、その波形が感知されない。更に小宇宙が自然な形で力を引き出しているためか、この時期の調本人が使用していた段階のギアより遥かに能力が高い上、聖遺物の探知システムに反応を示さない。(ただし、黒江の宿す聖遺物の霊格のエネルギーは感知されるが)その関係もあり、二課は捜索に四苦八苦していたわけだ。

「何故、そんなに気楽なの?」

「俺は神を守るための軍団の最高位の闘士でもある。オリンポス十二神のうちのアテナ。彼女に仕えてる関係で、いつしか『死』を本当に乗り越えちまったんでな。普通に人生を数回やり直したから、本当は500年近く生きてる。死ぬのも何度も経験したから、怖いものは殆ど無くなったさ。よく不死身になると、人間らしさが無くなるなんて言うが、神様のほうが意外に人間くささを見せるんだよ。人の持つ感情こそが神も理想とするものだしな。人間社会で普通に財閥経営してるしな、アテナ」

「なっ!?」

素っ頓狂といえる一言に、驚くマリア。だが、アテナは人の姿で現世に降臨する。そのスパンはおおよそ、聖戦がある数百年ごと。神話の時代から長らく続いてきたことだ。ハーデスとの決着がついたのは、星矢達が生きている『1990年代初頭』の頃。その時期におけるアテナこそが『城戸沙織』なのである。マリアは後々に城戸沙織に出会うことになる。神々しくも美しい姿だが、なんと、聖戦当時は人間換算で十三歳である。それで20代前半のマリア以上に美しく、神々しさを感じさせるのだから、オリンポス十二神は伊達ではない。

「アテナは神々の喧嘩を止める権利をゼウスから与えられててな。数百年ごとに神々は軍団を率いて、裏でドンパチしてんだ。俺はその戦いの一つが終わった段階で門戸を叩いた。とは言え、才能があったみたいで、数年の修行で最高位に任ぜられた」

黒江は修行時代が数年ほどあるが、黒江は下級聖闘士からの昇格ではなく、黄金聖闘士候補生として修行をし、選抜試験を勝ち抜き、任ぜられた。この頃は叙任から間がなかったが、黒江は転生を経ていたため、100%の戦闘能力を発揮できる。響、クリス、翼の三名を初見で圧倒出来たのも、単純に言えば『経験値の差』だ。

「俺は仕事柄、体を鍛えるのが日課でな。数百年で踏んだ場数は相当だが、常に何か新しいものを覚える。それが慢心しないコツだ。慢心した奴は死んでいく職場だしな、軍ってのは」

黒江は聖闘士としての転生分の経験値と軍人としての経験値が全て加算された状態なので、『経験豊富な黄金聖闘士』である。二課の装者がエクスドライブ状態で襲いかかろうとも、正面から倒せる力を全員が持つと言ってよく、この当時のシンフォギア世界で対抗し得る存在は風鳴弦十郎のみだろう。

「俺のいた世界は色々な平行世界と交わったから、お前らの知る形の第二次世界大戦は起きなかった。だが、これから、史実寄りになっていくだろう」

「何故なの?」

「日本にいるだろ?近代の頃のの日本をやたら否定する連中。そいつらがあれこれ介入したから、俺らは苦労してんだ」

扶桑はM動乱の頃より、日本側の介入が激しいことに悩んでいた。軍隊への食料品供給体制も日本の左派が批判し、国としての供給をよりによって、ダイ・アナザー・デイが控えていた時期に廃止されたため、各部隊は市井への買い付けを慌てて行ったりする有様である。結局、予想外の混乱に慌てた防衛省は自衛隊の戦闘食を緊急で提供することにしたが、左派の政治的妨害と予想外の備蓄品の払底で上手くいかず、事態を憂慮した地球連邦が備蓄品を放出することにし、防衛省と財務省は各世界に恥を晒すことになる。黒江はちょうどその時期に休暇を取っていたわけだ。

「あなた、別の世界に行った時はどうしてるの?」

「基本的に自衛隊の隊員。俺は一応、将補(ダイ・アナザー・デイ直前の当時)の階級を持ってるんでな。元の世界でも、昭和天皇から少将昇進の確約をもらってる」

黒江はマリアにそう言ったが、この少将昇進の確約は『前例がないから』という現場の判断で反故にされる。事態を知った昭和天皇が人事担当者を直々に叱責(その担当者はそのショックで後に寝込んだとか)した事、黒江がその時点で自衛隊で少将相当の階級になっていた事(すぐに空将となる)で人事部は大荒れとなり、陸上幕僚長の助け舟で准将の階級を創設し、それに充てがった。(ダイ・アナザー・デイの長期化で中将へ昇進するため、結局は人事部にとっては『余計な手間がかかった』だけであった)この人事部の失敗は『将官にしちゃうと、前線に出せなくなるやん?』という参謀らの危惧からのものだったが、日本連邦体制が本格化すると、『指揮官先頭や!』という風潮が定着してしまい、この時の人事部の判断は『誤りであった』と語り継がれてしまう。(『将官が前線で戦う』風潮は間接的にジオン公国に引き継がれ、地球連邦にも影響を与えたわけだが、ダイ・アナザー・デイでは大規模な作戦会議がなかなか開けないという弊害が生じた)

「あなた、皇室に気に入られてるの?」

「若い頃にクーデターを鎮圧してから、何かと目をかけられてる。22歳で大佐になれたのも、半分は陛下の七光りだと思われてる。おかげで、今の職場でも冷や飯を食ってる」

黒江は昭和天皇のお気に入りであるという認識は事変終結直後からあり、妬まれていたのも事実だ。だが、501へ着任しても冷や飯を食うとは思ってなかったようだ。(ただし、戦うたびに強すぎるのは感じたためか、ミーナも少しづつ認識を改めつつあった。悲劇が後年に殊更に強調された理由は、ミーナがその後に出世コースから外れた事や、カールスラント軍が衰退する流れのきっかけとなったためである。とは言え、実際には、黒江達はパトロールや訓練を名目に出撃しては、何かかしらの戦果を挙げてくるので、それとなく情報を示唆したりしていた効果もあり、改善の糸口が見えてきていた時期である)

「こうなったそもそもの原因は、その時は休暇だったから、面倒見てる奴の仕事についていったからさ。そこで遺跡を起動させちまってな。気がついたら、こうなってた。ま、俺のミスだ。それと、その遺跡になんとなく『きな臭い』匂いを感じたからでもある。

「その割に気楽に構えてますね」

「色々な出来事を体験したから、こんくらいで驚いてちゃ、仕事にならんよ。問題はその後だ。この姿の元の持ち主が帰って来たら、どうなると思う?」

「……間違いなく、苦労するわね」

「その時になってみないとわからんが、俺が面倒見なけりゃならんだろう。俺がこうして、生活していることで確立されるだろう評判や認識に否応なしに合わせなくてはならなくなる。そいつの性格にもよるが、嫌気が差すだろうからな」

黒江は後々の調の運命を予期するような発言をした。なんとなく察しているようでもあり、黒江のカンの良さの表れでもあった。立花響は単純に『元の状態に戻したいだけ』と述べたが、その時は『月読調』への周囲の認識が『破天荒な人物』という風になっており、それを無視するのは色々な意味で無理な相談であった。

「最悪、この世界から連れて行かなきゃならんだろうな。このガキに家族はいないし、あの緑のガキとの関係もこじれるだろうし」

「私の友達が知れば、絶対に反対しますよ」

「どうであれ、それ以前の生活には戻れんよ。それは頭に入れといてくれ」

黒江はそこは冷静に判断を下した。どの道、調は単純に元の生活に戻れなくなっているであろうことをなんとなく察しているからだった。ただし、調当人の判断で黒江を頼り、小日向未来の手引きで野比家に居着くことになったので、多少は予測は外れたが。

「ん?外が騒がしいが……」

「ノイズじゃない!いったい誰が……」

窓から『ノイズ』の姿が見えたことに驚愕するマリア。誰の差し金かを悟ったようで、苦虫を噛み潰したような表情だ。

「しゃーない。ちょっくら、ぶっ飛ばしてくる。このギアのスペックには頼らんがな」

黒江は窓越しにノイズの大群の姿を確認すると、迎撃に打って出た。この頃には聖闘士として既に完成された戦闘力を持つため、ギアのスペックを用いなくとも戦える。心配するマリアと未来を他所に、一暴れすることになった。



――戦場――

「毎度のことだが、絵心ない奴が書いた生物みてぇな姿しやがって。この世界の先史文明のセンスを疑うぜ。ミサイル・ストーム!!」

黒江は空中元素固定とゲッター線のコントロールでストロングミサイルを形成し、ぶっ放つ。そのストロングミサイルはクラスター弾頭であり、子弾が途中で発射され、その指弾が広域に広がり、ぶっ飛ばす。なお、ギアを纏っているが、ギアの性能を用いた攻撃はしていない。

『ゲッターサイクロン!!』

腕をゲッターポセイドン型のパペットのような形状の送風機にし、暴風を起こして吹き飛ばし……。

『フィンガーネット!!』

瞬時に武器をフィンガーネットに切り替え、網で大量に捕縛し……

「大・雪・山おろしぃぃぃっ!」

大雪山おろしで〆、地面に叩きつける。通常、ノイズは位相差障壁を備えているので、通常の物理的攻撃は受け付けないはずだが、黒江の攻撃は小宇宙とゲッター線などを用いており、通常の物理法則を超えてしまっているために『ギアのスペック』に頼らなくとも、ノイズを普通に蹴散らすことができる。そうでなくては『神』と戦えない。(のび太やゴルゴがそうした攻撃から運を含めて、必ず生き延びられるため、異能生存体という定義が生まれるに至ったのは言うまでもない)

「さーて。あいつらに来られても面倒だ。ぶっ飛べ!!」

『試すのは初めてだが…、メテオライト・ストライク!』

黒江は空中に巨大な隕石を小宇宙で形成する。それを落下させ、その隕石を地面に激突させ、周囲のノイズを一掃する。

「牡羊座の闘技を前教皇に頼んで、勉強させてもらった甲斐があったな。さて、ガキどもに移動するように言うか」

道路に巨大なクレーターを作るが、周囲のビルには被害は生じていない。小宇宙での攻撃なので、衝撃波の発生などはコントロールできるらしい。また、黄泉帰った『牡羊座のシオン』(先代教皇)に頼んだという発言から、牡羊座の聖闘士に伝わる闘技である事がわかる。これほどにド派手な技であったので、当然ながら二課側もキャッチしており、装者達を向かわせたのだが、三人の装者が到着した時には、現場に巨大なクレーターのみが残るのみであった。その後、二課の分析は必死に行われたが、衛星からの映像に映る『シュルシャガナの装者』は完全にギアの性能に頼らない戦闘を行っていたこと、無から隕石を作り出し、それをぶつけるという所業、それでありながら、周囲に目立った被害がないという超常現象は科学的な説明がつかなかったという。『非常Σ式 禁月輪』を使い、その場から離れ、マリアは未来を連れ、その場に遺棄されていた(鍵がついたままという幸運もあった)大排気量のオートバイで黒江についていった。基本的にノイズが発生した時には、人々が例外なくシェルターなどに避難するため、区画そのものが無人になる。警察も死人を出さないため、シェルターの警護や周囲の封鎖という名目で出払う。それが幸いし、三人は『現場に装者が来るより前』に、その地区から離れることができた。

「あの隕石も、貴方の技なの?」

「そうだ。とはいっても、覚えたてだがな。本当は俺の受け持つ守護星座の技じゃないんでな」

「貴方、何座なの?」

「任命されてる守護星座は山羊座だ。もっとも掛け持ちしてるから、今はそれでない星座の技も撃てる」

「いいの?」

「大きい戦の後で、聖域も人手不足なんだ。だから、優秀な人材は星座を掛け持ちしないとならんのだ」

「……でも、シンフォギアの機能をよく、調と遜色ないレベルで使いこなせてるわね」

「元々、仕事やプライベートでオートバイ乗り回してたからな。一輪車だろうと、慣れりゃ簡単だ」

ただし、『非常Σ式 禁月輪』は小回りが効かないために、バイパスに入る時には足下のローラーでの走行に切り替えるという。

「ここからはバイパスに入るから、ローラーに切り替える」

「どうしてですか?」

「小回りが効かんし、高架を抜けたら更に裏道に入りたいからな。それに、今から入る高架道路を抜ければ、封鎖地区から抜けるしな」

「どこまで行くつもり?」

「今日は北北西の町外れだ。町外れから町外れに移動してるようにしてる。街の端から端までにゃ、車やオートバイを使っても、20分ほどかかるからな。それくらいあれば、移動は容易だ」

二課はヘリコプターも持っていたが、本部が潜水艦になってからは、あまり使う機会がない。この頃には、この世界の日本は防衛大臣がアメリカ合衆国による謀略で代替わりしていたため、防衛省がヘリコプターをあまり貸し出さなくなっており、意外な苦労を強いられていた。それも二課の捜索が上手くいかなかった理由である。とは言え、人伝いに『ノイズと戦ってくれている少女がふらっと現れる』という噂は飛び交っていたため、それが調(黒江)であるとする推測は立てていたのも事実である。得られる映像から能力の解析を試みていたが、無から物質を造り出すとしか見えないものや、どう考えても物理法則無視の変形をさせているとしか思えない場面があるため、いくらシンフォギアが変形機構を有すると言っても、歌唱無しで能力は発揮させられはしないため、その謎も残った。また、装者達が現場につく頃には『事態が終息している』事が続いていたため、『シュルシャガナの装者』が確認された当初より遥かに戦闘力を増している事が実証され、単独での接触は風鳴翼であっても危険と判定された。小日向未来のことが気がかりであった立花響であったが、交戦すれば、タダではすまないとされ、単独行動を禁じられたために、仕方ないが、従うしかなかった。







※あとがき 今回の話は今回の話は私がハーメルンに掲載中の『ドラえもん対スーパーロボット軍団 出張版』にて掲載中の『回想〜シンフォギア世界改変編』をシルフェニア向けに再編集と校正を加えたものとなります。



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