‐RXはその力を発揮。IS学園の面々を守るかのように、タイガーロイドとの死闘を展開する。

「トゥア!!RXキィィ――ック!!」

逆回転の宙返りから得意のドロップキックをぶちかます。その破壊力はパワーアップを重ねた後の
BLACKのライダーキックの更に3倍を誇る。60m以上のジャンプから繰り出されるそのキックは
歴代中でも有数の破壊力を発揮し、タイガーロイドを壁に叩きつける。

「中々の破壊力……さすがはRX」

タイガーロイドもさほど堪えてはいないようで、尚も余裕を見せる。その姿はZXと交戦した時とは
多少異なっており、強化改造の代償か、アルビノ化している。更に体のどの箇所からでも砲身を
生成出来るようになっており、目から砲身を生成し、砲弾を撃ちだしてRXへダメージを与える。

更に驚くべきはバダンが警備員に化ける形で送り出していた戦闘員(コンバットロイド)である。
煙に包まれるかのように「量産型ZX」と言える姿へ変身する様は面々を驚愕させた。

「ち、ちょっ……何よアイツら!?」

鈴はコンバットロイドが見せたその変身に驚愕を顕にした。それこそマンガのような変身を何度も
繰り返し見させられては開いた口が塞がらないし、智子らの話も真実味を帯びてくるというものだ。

複数のコンバットロイドの腕からZXのそれ同様のマイクロチェーンが撃ち出され、空中にいたセシリアを磔にする。

「……!セシリア!」

鈴は思わず叫んでしまう。何かの拷問よろしく、鎖で拘束されたその姿はどことなく、
時代がかった雰囲気を纏っている。無論、セシリアもブルーティアーズのスラスターを吹かして拘束を逃れようと
するが、コンバットロイドの核融合炉による怪力が推力を上回っているようで、びくともしない。
スラスターの噴射炎が虚しく燃えるだけだ。追い打ちとばかりにコンバットノイドはその腕の力を強め、
引っ張る。サーボモーターによるそのパワーはセシリアに激痛を、
更にマイクロチェーンを通して高圧電流が加えられ、凄まじいダメージを与える。

「ああ、ああああああっ!!」

腕を引っ張られるのと、電流の熱量による痛みで悲鳴を上げるセシリア。しかも
バリアを突き抜けて電流が走ってくる。操縦者を殺すためだろうか。しかも急激にシールドエネルギーを
消耗していく。ミサイルや航空機関砲、荷電粒子砲でもそう簡単に磨り減ることはないはずのエネルギーが、である。

(ダメですわ、この状態ではブルー・ティアーズを……!)

そう。セシリアのブルーティアーズの弱点はオールレンジ攻撃を自由に行えないことである。νガンダムにしても、
キュベレイにのファンネルにしても本人の脳波で動くのには変わりはないが、
本人が意識を集中していなければコントロールを行えないという事はないが、ブルー・ティアーズは不可能だ。
これは未来世界ではサイコミュシステムと兵器の熟成が既に終わっているという点を考慮に入れても、
ブルー・ティアーズの不便な点である。
(最も、フル稼働ならビームを曲げれるという点ではファンネルなどを超えているのだが)
セシリアは火事場の馬鹿力でビームの偏向射撃を一回成功してはいるが、
もう一度できるか保証はない。

「セシリア!!」
「まずいっ、一夏くん、その爆弾を`食らっちゃいけない`!!」
「なっ…くぅっ!!」

一夏はセシリアを助けに行こうとするが、圭子が慌てて爆弾を受けるなと警告。回避行動をとるが……。

その瞬間、爆発力と衝撃波が制御されたかのように一夏へ集中する。

「ぐああああっ!」

白式は衝撃集中爆弾の直撃を受け、腕の装甲が一部破壊される。まるで
そこに衝撃が集中したかのように。

「な、何だ……今、爆発と衝撃波が……」

一夏は驚愕した。普通、爆弾というのは炸薬量によって爆発の規模も違うし、衝撃波は辺り一面に広がる。
だが、今の爆弾は明らかに爆発も、衝撃波も`制御された`ように一点に集中している。
これは織斑千冬と山田真耶も解析を試みてはいたが、バダンの超技術の産物たる衝撃集中爆弾の原理は解析
できずにいた。

「いったいどうやって爆発を制御している……?爆発の威力や衝撃を操るなど……」
「今の技術ではどこの国も不可能なはずです。例え篠ノ之博士でも……」

その言葉に千冬はうなづく。爆発の威力はおろか衝撃波すら制御を可能にする技術は今の段階では、
あの束すら実用化は不可能だ。だが、目の前の「怪物」らが智子らの言うとおりに受け取るならば
「ナチス・ドイツの残党」の産物だが、ならば彼らはいったいどうやってその技術を手にしたのか。
いくら数カ月前にナチス・ドイツの残党を名乗る一団が一度姿を見せているといっても、
にわかには信じがたい。

‐そんな技術を持っているなら第二次大戦で負けるはずは無い。ヒトラーの理想であったという
『世界首都ゲルマニア』を実現して然るべきだ……。

千冬は過去にラウラ・ボーデヴィッヒの教官として、ドイツ軍に在籍していた経験がある。
それ故にナチス政権が夢見ていた『千年王国の栄光』がどんなものだったか知る事もできた。
その一環として計画されていたのが「世界首都ゲルマニア」。
あの戦争に勝利した暁にはその過程で、建築面でパリやロンドンに見劣りしていた(1940年代初頭当時)
ベルリンを大改造し、パリやロンドンに匹敵しうる世界都市に大改造しようと目論んでいたという事も。
これは一般にもある程度知れ渡っているが、軍施設などの細かい配置などは`模型`には
残っていない。だが、千冬が在籍時に発掘された資料によると、ヒトラーは独ソ戦を考える前に
この計画を自らの引退の花道と後継者へ残す「遺産」として考えるほど思い入れがあり、
軍施設の配置レイアウトを自らの美学に従って配置し、アルベルト・シュペーアによる細部の手直しを
経て、構想が完成し、着工を待つだけであったという。この計画はもし、
大戦がナチの思惑通りに事が進んでいたのなら、ヒトラーが61歳となる1950年に完成する見込みだったという。
サイボーグを実現できる技術が戦中にあるのなら、あのような敗北はそもそも迎える筈はない。

‐戦後、ナチズムの求心力は急速に衰えた。いくら当時からのシンパが援助していたとしても、
子孫らにそれが受け継がれるとは限らんからな。…別の思想で動いているとしか思えん。ナチズムとは違う何かで。
……例えれば『闘争」か?ナチズムでなくとも、ドイツにそういう右派的思想は第二帝政期からあったからな。

千冬は『ナチス残党が戦後も生き残っていた』理由に自分なりに答えを導き出した。ナチ党が唱えていた思想は
主にプロイセン時代を知る人間には嫌われ、軍内にも数多く反感を持つ人間がいた。もし戦中と同じ思想で動いているなら
組織はとっくに瓦解しているだろう。だが、闘争を旗印にしていれば?ヒトラーのためではない、
『ドイツ軍』という一つの組織としての闘争なら戦後も求心力を保てるだろう。
しかしこの仮説では、存在意義に説明がついても、敗残兵に過ぎぬはずの彼らが
「何故、現在科学さえ上回るオーバーテクノロジーを実用化できたのか」については
説明できない。一応、都市伝説や陰謀論には「巷に出回っている技術より世代の進んだ技術が既に……」というものも
あるにはあるが……ISにしても一応、前々から束が研究していたものであるから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‐さて、智子と圭子はRXをサポートする傍ら、サイボーグに対する戦いかたを鈴達にレクチャーしつつ、自らも応戦していた。

「ふっ!!」

圭子は狙撃で態勢を崩したZX型コンバットロイドの一体から奪い取った電磁ナイフに魔力を通し、威力を強化。それで渡り合う。
射撃だけが能ではない事を示す。

(良さんの言うとおりなら刃に伸縮機能がついているはず……おっ、これだ)

電磁ナイフはZXの武装の一つ。ZXはこれで怪人を一刀両断することもあるという。剣の達人には到底及ばないが、一応軍人である以上、
そういう戦闘術の心得はある。ネウロイもナイフで落とした経験もある。それをある程度刃を伸ばして同じ武器を持つ敵に対応する。
元々空戦をテリトリーにしていた圭子であるが、引退後にカメラマンとして働いていた時、復帰後の地上での雑務などで
護身術を覚えている。その時の経験を活かすと意気込み、ナイフで斬り合う。その斬り合いの際に巫女装束の一部が斬られ、血が吹き出し、
裸体が一部露わになるが、構わず戦闘を続ける。その時の圭子の目は完全に若き日の「やんちゃ娘」に戻っていた。

「さあて……この礼はさせてもらうぞ」

ナイフを持ち、闘志をむき出しにするその姿は往年の「扶桑海の電光」の片鱗を感じさせた。
その相方はラウラだ。ラウラは光太郎がRXへ変身した辺りから、
敵・味方の双方に無視されていたのに多少ムカッ腹が立っているようだ。

「よくもこの私を無視してくれたな……。いいだろう。さっきのお返しにはちょうどいい。
…貴様、私の足手まといにはなるなよ?」
「わかってるわよ、ラウラ・ボーデヴィッヒ`少佐`」
「アイツから聞いていたのか」
「まっ、色々とね」
「しかしよくもまあ、そんなモノを担いであんな立ち回りができるな」
「改造して重量は軽くしてるけどね」

圭子はラウラに微笑んでみせると互いに戦闘態勢に入る。
背中にはこの日に用意していた九七式自動砲(日本軍が実用した対戦車ライフル)
の現地改良型(未来技術で貫徹力などが強化されている)を担いでいる。
それで立ち回れるというのは圭子の意外なフットワークの軽さが垣間見れた。

 

 

 

‐智子は得意の日本刀を披露、鈴をサポートしていた。

「はぁぁっ!!」

圭子と違い、元々刀による近接格闘戦を得意としていたため、こういう場面では血が騒ぐとばかりに刀を振るう。
その剣筋は一夏や鈴から見ても達人だと思わせる冴えを見せている。日本刀は元々戦いの武器としての
実用性は時代が進むにつれ低くなり、幕末・近代の戦争で需要が持ち直した末に「戦い」の武器としては「軍刀」
で完成を見た。扶桑皇国では刀を使うウィッチの一部(智子や武子がそれで、古来から名刀と呼ばれるモノを使用している)
では先祖伝来の刀を使っているが、それはウィッチとしての才能と経験がなせる業であり、
黒江や黒田は実用性からか、換えが効く軍刀を使っている。(特殊軍刀々身のなかでも最高品質のものだが)

今、智子が使用しているのもその先祖伝来の刀なので、黒江からは「美術品なんだぜそれ」と言われていたが、
智子はお構いなしに実戦で使いまくっている。そのため魔力を通しているとは言え、刃毀れが起きた際には高い金を払って
研ぎに出さなくてはならず、扶桑新三羽烏の自宅の生活費を圧迫している要因の一つでもある。
(そのため生活費やりくり担当の圭子は頭を抱えているとか)

「ねえ、セシリアを助けなくても大丈夫なの?あれじゃ……」
「大丈夫よ、光太郎さんに任せまさい。……ほら」
「え?」

智子は自分たちの目の前を「ゲル状」になった何かが通り過ぎていくのに安心したようで、笑みを浮かべる。
鈴は何が何だかわからず、キョトンとしてしまう。それは空中でセシリアと一体化し、その状態で実体化する。
これはRXが二段変身形態では敏捷性に優れる「無敵」ともクライシスからも賞賛される形態「バイオライダー」へ
二段変身した事を意味していた。

そしてセシリアを救い出し、バイオライダーとなった光太郎は改めての名乗りを上げる。「怒りの王子」としての
その名を。

『俺は怒りの王子!!RX・バイオッ、ライダー!!』

名乗りはヒーローのお約束だが、これに鈴は思わずツッコむ。

「ねえ……なんでいちいち別の変身の度に一度は名乗んのよ。まあお約束だけどさ……」
「アメリカンヒーローからの不文律よ。たぶん」

智子もそうとしか言えない。この時点までに出会っていたすべての仮面ライダー、スーパー戦隊のどれもが
「お約束」を忠実に守っている。しかも時々は敵も付き合っている。これは永遠の謎だろう。

「鈴ちゃん、セシリアちゃんを頼む」
「は、はい」
「よし。……バイオブレード!!」

バイオライダーは左腰付近で光を結晶化させ、バイオブレードを召喚する。そしてすぐさま鈴達に迫る一体を
「スパークカッター」で下から斬り上げ、一刀両断してみせる。その様は鮮やかそのものだ。
ダメージを負ったセシリアを鈴に任せると、バイオライダーは智子と共に残りの面々の救援に向かった。
一夏はこの様に唖然とし、ヒーローの「実在」に思わず息を呑む。

「ヒーロー……か。中学に入ってからは絵に描いた餅みたいだって思ってたけど……信じてみたくなったぜ」

そう。男は千差万別あるとはいえ、誰もが子供の頃に『ヒーロー』に憧れる。
一夏が覚えているかぎりでは、TVの特撮ヒーローからも勧悪懲悪という図式は次第に廃れていったが、
子供たちの憧れではあり続けた。一夏も幼少期には見ていたが、いつからか「子供っぽい」という理由で
見なくなっていた。これはテレビ時代の男子なら誰もが経験がある事だ。
だが、「ヒーローの活躍が素直に楽しめた時代」が懐かしいのか、大人になった後に見返すようになる事がままある。
そんな昔ながらの「正義のヒーロー」を具現化したかのような「仮面ライダーBLACK RX」に久しく忘れていた何かがこみ上げてくるのを
ひしひしと感じていた。

 

 

 

 

 

 

‐ 西暦2201年 日本

−反陽子エネルギー炉を搭載して生まれし魔神。それは弓教授らがマジンガーZを生まれ変わらせし証であった。
その名はゴッド・マジンガー。箒は真田志郎の言葉に頷きながら、ゴッド・マジンガーに想いを馳せる。

(ゴッド・マジンガー……か。グレートマジンガーやグレンダイザー以上のスーパーロボットだというが……カイザーと同レベルなのか?)

気になっているのがマジンカイザーという魔神が既にあるのに何故今更ゴッド・マジンガーを作るのか。
甲児の父の兜剣造博士曰く、マジンカイザーの強さは「神を超え、悪魔をも倒せる。」という、
その言葉が真実ならばマジンカイザーの強さは既にグレンダイザーすら超えているはずだ。だが、ゴッド・マジンガーを敢えて造るのか?

「ゴッド・マジンガーはどうして造られているんですか?カイザーがあるのに」
「マジンカイザーは強力無比なスーパーロボットだ。
しかし一歩間違えば、『去年の新早乙女研究所のゲッター線が引き起こした事故』のようになる。それを政府は危惧しているのさ。
いわば暴走の危険性を孕むマジンカイザーに安易に頼るより、
安定性が高いゴッド・マジンガーを造らせたほうがいいと……」

−ゴッド・マジンガーは反陽子エネルギーの制御に成功すればマジンカイザーと同レベルのパワーを安全に運用できると弓博士は言っていたが、
カイザーは正規の開発系統に属さない「異端児」である故に、
政府や科学者はゲッタードラゴンのような事故を引き起こすのを恐れているというのか……?

箒は新早乙女研究所で起こったゲッタードラゴン(ゲッターロボG)の暴走事故がきっかけで、
スーパーロボットに対する恐怖が政府に芽生えてしまった事に残念な気持ちであった。
確かに強大無比な力が暴走してしまえば破壊がもたらされるが、
甲児や竜馬のように強い心、信念を持つ者が信念を持って接すればマシンは想いに応えてくれる。
甲児に対するマジンカイザー、鉄也のグレートマジンガー、そして自分の赤椿のように……

「ふう。これでスーパーチャージャーの取り付けと君の赤椿の整備は終わったよ」
「え!?まさか同時にやってたんですか!?」
「ハハッ、いくらなんでもそんな器用な真似はできんさ。波動エンジンの扱いは慎重にやらないといけないからね、
スーパーチャージャーを取り付けを終えてからすぐに整備を行っただけさ」
「そんな、短時間で!?」

教えられた知識だけでISの整備を短時間で完璧に終えてしまうのは真田志郎くらいなものだろう。
正規の教育がなされているIS学園の整備科の人間と同等のレベルの整備が行えてしまう彼は正に宇宙の至宝レベルの逸材と言われ、
連邦軍内での発言力が高いのも伺える。

「整備のついでに、元の世界に戻った時のために一応「リミッターモード」をオープンしておいた。
今のままでは他のISとのパワーの差がありすぎるからね」
「ええ。今の赤椿は完全に戦闘用として進化してしまっていますからね……
姉さんはこのことを想定していたのですか?」
「わからんが、君の姉さんは少なくとも、君が今後、世界でスポーツにしろ、有事にしろ、
何かかしらの形で活躍する事を念頭に置いていたのは確かだろう。
そのためにこの機体は織斑一夏君の「白式」とのセット運用が想定されていた。絢爛舞踏はそのためのものとしていたのだろう」
「やはり……姉さんはそこまで考えてくれていたのですか」
「誰だって肉親は大事なものさ。特に兄弟姉妹というものはかけがえのない人さ……」

真田志郎はベガ星連合軍との交戦で赤椿が純粋に戦闘用ISとして進化してしまったがために、
このままの状態では元の世界で競技に使えない(武器の威力が22世紀最新鋭兵器を基準に強化されていたがため、
武器の威力を調節しなくては元の世界で使えない)ために武器にリミッター機能がついていたのを開示させたと告げる。
さらに絢爛舞踏についての考察も実に的を得ていた。その点は真田志郎の面目躍如であった。
束は妹に疎んじられながらも箒の頼みを聞き届けてくれた。
束にとって箒は、なんだかんだ言ってもこの世で2人きりの姉妹であり、たとえ何があろうとも束は箒の味方である事は確かであった。
これが真田は過去に姉を失い、兄弟の大切さを痛感しているからこそ言える事であった。

「ありがとうございました真田さん。それじゃ私は宇宙科学研究所に戻ります」
「ああ。宇門博士によろしく」

真田と別れると、箒はヤマトを降りて、横須賀軍港を歩きながら鉄の神について自分なりに考えてみる。

―甲児がおじいさんから託されたマジンガーZ。`神にも悪魔にもなれる`と言っていたというが、
ゴッド・マジンガーは言うなれば`善神にも邪神にもなれる`とも言うべき存在。その完成をミケーネ帝国も放ってはおくまい。
その時になってグレートマジンガーだけで防ぎきれるのだろうか……。

箒は一年間、軍役についていた故か、ゴッド・マジンガーの完成を座して見守っている敵は一つとて存在しないという憂いを持っていた。
流石にミケーネ帝国も残存戦力の再編は終わっていて然るべきほど、グレートの戦いからは時が流れた。
真ゲッターロボの封印は百鬼帝国に行動を起こさせるのには十分。
地下に車弁慶と共に眠りについたゲッターロボGはそれら脅威に対抗するために進化するつもりだろうが、それまでに間に合う保証はないからだ。

―そんな憂いを晴らすかのように、光子力研究所では一つの吉報が入った。

「遂に外装が完成だ!!」

ゴッド・マジンガーの外装が完成した事に喜ぶ弓博士。その姿はマジンカイザーの双子機といっていいほどほぼ同じだが、
胸の「Z」のエンブレムの位置が異なるのと、カイザーがスクランダーによる飛行で全機能が開放される仕組みに対し、
ゴッド・マジンガーはグレートマジンガーのスクランブルダッシュの改良発展タイプの内蔵式である。
武装はカイザーはグレートの特徴を出しつつもZ寄りの武装が多いのに対し、ゴッドはグレート寄りである。
サンダーブレイクを強化し、トールハンマーブレイカーに匹敵する威力を持たせた「ゴッドサンダー」を持っているのがその証拠。
だが、依然として反陽子エネルギーの制御に苦戦しているのには変わりはなかった。
起動実験を行うべく新型パイルダーの「ゴッドファルコン」をドッキングさせてみる。テストパイロットは剣鉄也である。

『ファルコンオン!!』

鉄也は科学要塞研究所から出向する形でゴッド・マジンガーの開発に参加していた。
それは甲児とその弟「シロー」に対し背負った十字架の、鉄也にとっての罪滅ぼしでもあった。
鉄也は孤児であった出自に憎いまでのコンプレックスを抱えていた。
それが年下の甲児、いや兜家へのジェラシーとして具現化し、危うく兜剣造博士を死に追いやるような愚かさとして鉄也を支配した。
それは甲児達が許してくれた事で消え、兜剣造も一命を取り留めた事で、鉄也が抱いていたコンプレックスは嘘のように解消された。
だが、鉄也はその時の自分の愚かさを気に病んでおり、ゴッド・マジンガーの実験に志願したのも甲児への彼なりの罪滅ぼしであった。

ゴッド・マジンガーの瞳に光が宿り、そして反陽子エネルギー炉の鼓動が響く。鉄也は出力を上げていくが……。

エンジン出力が40%を超えた(それでもグレートマジンガーの3倍のパワーは発揮可能)辺りで、
コックピットの計器がいくつか内部の部品のショートを起こす。そしてファルコン内部の計器から光が消え、エンジンがストップする。

「くそ、まただ!!」

鉄也は悔しがる。数年経ってもまだ予定出力の半分にも到達しないという悔しさ。
エンジンに問題はないはず。ではどこが原因なのか。動力伝達機構の設計ミスか、エンジン部品の耐久性の問題か、弓博士達も頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

そもそもスーパーロボットの技術はその源流を辿っていくとスーパー戦隊達が使用していたロボに行き着く。
日本政府が造っていた試作ロボットを巨大に作り直し、
戦闘用に改良したのが3番目の戦隊「バトルフィーバーJ」が用いた、人類初の巨大戦闘用ロボット「バトルフィーバーロボ」である。
更に「電子戦隊デンジマン」が用いた、変形型ロボット「ダイデンジン」で宇宙からのオーバーテクノロジーが伝わると、
以後はバトルフィーバーロボとダイデンジンを戦闘用巨大ロボットの基本フォーマットにして、
そこから改良発展を重ねる形で、日本でのその時々の地球科学系戦隊のロボットが建造されていったという。
サンバルカンのサンバルカンロボやチェンジマンのチェンジロボは間接的にはダイデンジンの地球製の発展後継型にあたるという。
それでその製造技術を学園都市から得られた技術で民生用に小型化した上で改良したのがドラえもんなどのロボットの体である。
そして大地を揺るがす『スーパーロボット』と言えるほどの戦闘力を最初に得たのがマジンガーZである。

「スーパーロボットの技術はバトルフィーバーロボから来ている。ネコ型ロボットなどもそこから派生したものだ」
「へぇ……そういうものですか」
「ああ。この世界の地球は宇宙からいろいろ技術が伝えられたからね。それと学園都市のおかげで技術が発展したのさ」
「サンバルカンやチェンジマンはもちろん、ダイナマンやゴーグルファイブ、ライブマンにターボレンジャーのロボもそうなんですか?」
「その4戦隊については民間の`戦隊`だったというから詳細は不明だが、
バトルフィーバーロボやダイデンジンの技術的資産が使われたのは確かだろうな」

箒が名を上げた正規軍の一部隊であった、
サンバルカンとチェンジマン以外の4つのスーパー戦隊は民間の伝承に伝えられる、詳細が不明な戦隊である。
戦乱による資料の散逸により、民間の有志の手で結成されたということしか伝わっていない戦隊。
協力関係にはあるが、その詳細は未だにはっきりしていない。
それを知っているあたりは真田志郎の知識の豊富さを伺える。

真田志郎は横須賀で宇宙戦艦ヤマトの大改造
(波動エンジンへの過給器装備、ショックカノンの波動カートリッジ弾への本格的対応、波動爆雷の搭載など)に携わる一方、
ISの整備や改造などを引き受けているために篠ノ之箒と面識が出来ており、
それらを行いながら箒と雑談に興じていた。

(ちなみにISの定期点検のため、箒はたまにドックで改造中のヤマト艦内に足を運んでおり、古代達とも面識がある。
また、今回は途中で過給器の取り付け中の波動エンジンや、
格納庫でオーバーホール中のコスモタイガーやVF、可変モビルスーツなども見てきている)

(いかんいかん、宇宙科学研究所にいるせいか、一年間この世界にいるせいか、この光景に慣れてしまっている〜!!)

……と、花も恥じらう16歳の春を、
『宇宙戦艦ヤマト』という非日常的なところで過ごしている事を全く気にしないようになってしまった自分に心の中で首を全力で振る箒。
最もヤマト自体、戦艦大和を宇宙戦艦に再生改造したという事自体が驚きなのだが……。

 

−鈴やセシリアの奴、一夏にあんな事やこんな事していないだろうな……。
いやシャルとラウラもあなどれん……ええい気になる……一夏は、一夏は誰にも渡さんぞ〜!!

箒はこの時期には元の世界に置いてきた面々の現況を伝え聞いていた。そのためブラックRXこと南光太郎に頼んで、
一時的にも一夏達を連れてきてでも会いたいと相談を持ちかけているのだが……。

−今、自分は戻れない。いや戻る訳にはいかない。ベガ星連合軍や暗黒星団帝国のこともある……。
戦いを放り出して自分だけ安穏とした暮らしに戻るにはいかん……。

箒は光太郎からの連絡で元の世界の所在が判明したとは言え、
ベガ星連合軍との戦いや暗黒星団帝国が襲ってくるであろうこの世界を放り出して元の日常に戻ることは自分の心情が許せなかった。
この世界に留まっているのはそうした責任感も絡んでいた。

「ゴッド・マジンガーの反陽子エネルギーの制御が上手くいかないのはどうしてですか?」
「反物質の制御は20世紀より研究が遥かに進んだとは言え、その安定的な制御は普通の物質の制御より難易度が段違いなんだ。
光子魚雷が実用化されているとは言え、エネルギーとしての研究はまだまだなんだ。弓博士はそんな中でも実用化に尽力している。
これは凄いことだよ」

真田志郎は波動エンジンに取り付ける過給器
(ターボチャージャーやスーパーチャージャーの原理を波動エンジンに独自に当てはめた出力向上策。
白色彗星帝国戦役の際に主力戦艦級などの推力が彗星帝国の引力に負けて吸い込まれる事例が確認されたため、
それにも負けないように波動砲発射後にもエンジン出力の維持が必要と判断されたため)の制作にとりかかりながら箒の質問に答える。

甲児から以前に聞かされたゴッド・マジンガーが気になっていた。そのため真田に聞いてみたのだ。
箒は真田の説明に聴き入りながら地道に実用化に励む弓博士を改めて応援したくなった。

 

 

 

−この頃、既にゴッド・マジンガーのことは有名であった。
「マジンカイザーにポジションを取られた哀れなマジンガー」として。
ゴッド・マジンガーは本来、グレートマジンガーの正当な後継機としてプロジェクトが開始され、
既に2年以上の歳月が経過している「鉄の神」計画。

 

事の発端はミケーネ帝国の戦力がグレートマジンガーに敗れ去った時。
光子力研究所と科学要塞研究所はミケーネ文明の生き残りとの最終決戦用に、
グレートマジンガーをも超える絶対的な魔神が必要とされた。
そこで理論が確立された反陽子エネルギー炉(理論的には光子力を超える出力を確保できるとの事)を搭載した新マジンガーを建造していた。
本来なら一からの建造を行うつもりであったが、ミケーネ帝国の行動と百鬼帝国の暗躍のこともあり、
戦場から回収され、一応はフレームが修理されていたマジンガーZをベースに新造パーツとエンジンを組み合わせて改造する事になった。
パイルダーの試作段階からの練り直しなどのトラブル、
反陽子エネルギー炉の安定性の問題がとうとうメカトピアとの戦争中には解決できずじまいに終わった。

そのためゴッド・マジンガーが担うべき最強のマジンガーというポジションは、
今ではグレンダイザーとマジンカイザーによって完全に奪われた感が強い。
だが、カイザーを解析して得られた技術を応用する形でゴッド・マジンガーは少しずつ完成に近づいている。

 

−光子力研究所の第3格納庫に鎮座するその姿は計画当初に構想された無骨な姿とは異なり、
必然とマジンカイザーと似通う姿となっていた。マジンガーZの生まれ変わりである事を示す胸の「Z」のエンブレムは、
「カイザーがマジンガーが行き着くべき姿を具現化させた」事を補強していた……。

第7格納庫では、カイザーは神に力を貸すかのように、光子力反応炉を静かに唸らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

−宇宙科学研究所に帰ると、箒は一年前から気になっていた事を甲児に聞いてみた。
それは何故、マジンガーZがミケーネ帝国に敗れた時にマンガのように、タイミングよくグレートマジンガーが現れたのか。
よく考えてみるとご都合主義的にも思えたからだ。甲児は鉄也から聞いた話を伝える。

「アレはあんまりにもタイミング良かったから、思い切って後で鉄也さんに聞いてみたんだけど……。
それはグレートマジンガーの開発に関係しているらしいんだ。
それと……おじいちゃんがマジンガーZの完成に目処をつけた頃に、もう父さんに後継機開発を指示していたらしいんだ」
「なんだって!?」
「鉄也さん曰く、父さんがサイボーグになったのにはグレートマジンガーの開発実験が関係しているらしい」
「グレートの?」
「ああ。当時、光子力エンジンと超合金Zを実用化したばかりのおじいちゃん達は、
バードス島やペロポネソス半島に眠っていたミケーネの遺産を悪用しようとしてるドクターヘル……後の地獄大元帥への対策を考えてた。
それでマジンガーZをいくつかのプロトタイプを経て造っていたんだけど、
遺跡の調査でミケーネが紀元前の時点ではあり得ない、その時代からみれば明らかなオーバーテクノロジーで造られたロボット兵器を使っていた事、
ミケーネ文明の中枢は地下で天変地異や他民族の侵攻から生き延びていた事がわかったんだ」

その時の兜十蔵・剣造親子はミケーネの真実に驚愕し、当時サイド3で実用化されたばかりのモビルスーツや、
日本に残されたかつてのスーパー戦隊達の戦闘用ロボットの技術を組み合わせて建造中のマジンガーZでも、
多くの月日で技術を発展させているミケーネに勝てるかどうか分からないという、
なんとも言いがたい例えようのない不安に襲われ、マジンガーZをベースに更なる強力なスーパーロボットを造るように兜十蔵は息子に命じた。
その時の様子は以下の通り。

『剣造、お前に命ずる。この儂が現在作っているマジンガーZをベースに更に強力なスーパーロボットをつくるのだ』
『しかし父さん。マジンガーZは十分過ぎるほどに高性能です。それは杞憂では?』
『できれば杞憂であってほしいが……過去、いくつもの憂いが現実となって世界に破壊と殺戮をもたらしたのはお前もわかるだろう』
『は、はい』
『Zの基本設計と儂が構想中の更なるマジンガーの案をお前に託す。もし、ドクターヘル
の攻撃で儂が倒れた時は……甲児とシローを……世界を守れるスーパーロボットを造ってくれ……!』

当時、兜十蔵は歴史上のいくつもの戦争の際に抱かれたであろう憂いが的中してしまい、
世界に破壊と殺戮が起こった事、サイド3がいずれ、実用化に成功するであろうモビルスーツを以てして連邦に挑んでくることを予期していた。
ドクターヘルの野望を止めるためにマジンガーZの完成を急いでいたが、ミケーネ帝国はドクターヘルよりも遥かに強大な敵である。
それに完全に対応出来るスーパーロボットの開発は急務であった。
そこで兜十蔵は自身の息子にマジンガーZの基本設計図のコピーと十蔵が考えていたZの後継機案(後にそれはゴッド・マジンガーとして結実する)を託した。

「つまり……グレートマジンガーは元はZと同じ設計から分かれたのか?」
「グレートはZの後継機というよりは兄弟機なんだよ。元はZで陸戦を、兄弟機に空戦をやらせて役割分担させるつもりだったようだしね」

そもそも祖父はマジンガーZを飛ばせようとする考えは無かったようだと甲児は言う。
彼は宇宙科学研究所に移る過程で祖父の遺品を色々と整理していたが、その時にZとグレートの開発メモがあったのだ。
それによると後に父親によって完成するグレートマジンガーの素案はZに当初から空戦機能を盛り込んだものであったらしい。
だが、彼自身や剣造のミケーネ帝国に対しての研究が進むに連れ、当初案の通りでは駄目だと判断、
剣造独自の研究も盛り込んだ。その結果、生まれたのがZを超えるグレートなのだ。

「お父さんは超合金Zをさらに鍛えていく事で更に硬い合金が出来上がる事を発見したんだが、
その矢先にグレートに積む予定の高出力型光子力エンジンの実験に失敗してしまった。
その時に母さんは死に、父さんも瀕死の重傷に陥った……。
おじいちゃんが駆けつけた時には母さんは手遅れで、父さんは脳は生きているが、肉体が死も同然の状態だったそうだ」

それは十蔵が犯してしまった生涯最大のミス。
彼は自身よりも孫たちを見守るべき親を孫達から奪ってしまったことへの罪悪感とその償いで、
辛うじて剣造のみは脳を機械の体に移植させ、「サイボーグ」として蘇生に成功。
(これには兜十蔵にサイボーグを作る技術があった事も関係している)
剣造はこの「死」をきっかけにミケーネの諜報軍から行方をくらませ、グレートマジンガーの研究に没頭。
その時に当時、剣造の知り合いが営んでいた孤児院から小学生時代の剣鉄也を引き取り、その翌年に炎ジュンを里親として引き取ったという。

 

そして鉄也達を学校に行かせながら戦闘員として鍛えあげ、自身が作り上げた二大スーパーロボットのパイロットに仕立て上げたというのが本当の所。

「そして俺がおじいちゃんの今際の際にマジンガーZを託され、ドクターヘルと戦い始めてから何ヶ月か後にグレートマジンガーは完成したらしい。
だけど、父さんから不安は消えなかったんだ」
「何故だ?グレートマジンガーは強い、真ゲッター程ではないが、一騎当千は間違いないんだぞ」
「デビルマジンガーのことがあるからね。どこにいったのかは今でも分からないけど……恐ろしい奴なんだ」

−デビルマジンガー。それは兜十蔵がZを造る過程で生み出してしまった悪魔。
感情エネルギーを変換する機構を備えていたが、
後にガンダムファイト競技で活躍し、同じような機構を持つシャイニングガンダム同様に欠陥を抱えていた。それは当時の技術的限界とも言えるものであった。

シャイニングガンダムのそれが、ドモン・カッシュが明鏡止水の心に目覚めるまで怒りのエネルギーにしか反応しなかったように、
デビルマジンガーのものは妬みや恨みなどの負の感情により強く反応した。
それに応じて進化し、エネルギーを食らう異形の化物となる。
Zの後継機案はこのデビルに対抗する手段を探っていた十蔵の願いでもあった。

−グレートマジンガーは確かに出来栄えは素晴らしいが、剣造にはまだ不安があった。
父がマジンガーZのプロトタイプの一体として造ってしまった`悪魔の魔神(デビルマジンガー)`が誰かによって楔から解き放たれた時、
Zでは到底太刀打ちできないし、グレートさえ悪魔に対抗できる自信はない。
グレートマジンガーは、そもそもが後継機案を基に自分なりに形にして造った処女作の機体なのだから。
そこでミケーネ帝国を退けた直後にグレートマジンガーの成果を反映させた新マジンガー開発を弓博士に持ちかけた。
それが`黒鉄の神`たるゴッド・マジンガーである。

‐ゴッド・マジンガーは元を正せばデビルマジンガーを倒すためのスーパーロボットとして構想されていたのだ。

「悪魔を倒すための神……か。カイザーが生まれた理由もそこにあるのか?甲児」
「たぶん。おじいちゃんの願いをゲッター線が聞き入れたんだろうな……」

−『悪魔を止めて欲しい』。それが亡き兜十蔵博士が望んだ事。
ゲッター線はそれを聞き入れ、マジンカイザーを誕生させた。カイザーの元の姿は何であったのか。それは今や永遠の謎であった。

 

 

 

この年、日本ではヤマトを初めとする波動エンジン艦艇の改修が進められていた。
報告された暗黒星団帝国の戦艦のショックカノンに対する防御力は地球連邦軍を驚愕させ、
ヤマトの技師長でもある真田志郎が考案したコードネーム「T弾」(波動カートリッジ弾)を「二式波動弾」との制式名称で制式採用。
「波動カートリッジ弾」への対応改修と各艦艇の波動エンジンへの過給器装備がなされていた。

篠ノ乃箒はヤマトの大規模改修が行われている「横須賀宇宙軍工廠」(横須賀はガミラス帝国戦以後は宇宙軍港としても機能している)に、
火龍後継のジェットストライカーユニットと、
箒の赤椿を解析して作られた試作の軍事用IS(平和利用の他に、将来地下勢力が生産するであろうISへ対抗するために軍用も並行して研究されていた)
のテストを行なっていた黒江綾香に宇宙科学研究所名物の弁当(食堂で評判)を差し入れするために来訪していた。

「綾香さんはいますか?」
「おお、箒ちゃんか。少佐なら今、試作ISのテスト飛行中だよ」
「ああ、例のアレですか」

箒はこの世界で唯一無二の正規IS操縦者である。それ故にISがナチス残党らの手に渡った事を誰よりも危惧していた。
研究施設にISの解析を許したのは平和利用と並行して起こり得るナチス残党らによる悪用を危惧してのものであった。
ISのコアは精製法が不明なため、赤椿のそれをひみつ道具「コピーミラー」(データのサルベージ型。性能はオリジナルと同等であるが、
複製品の向きの反転の欠点は内部回路の改良で是正)で複製したものを使用したのでスラスターや装備などのレイアウトは、
真田志郎による解析後の赤椿に近い。ただし、武装の刀が一振り、手持ち火器が最初からあるなどの違いがある。機体名はまだない。

空を見てみると、軍用であることを示す迷彩塗装が施されたISが飛翔している。この世界の人々が模倣という形ではあるが、
初めて生み出したISは必然的に赤椿に似ていた。

『おっ、箒、来てたのか』
『ええ、弁当を差し入れに来ました。どうですか、それは』
『何せコイツはまだよちよち歩きの`赤ん坊`だからな。デリケートに扱わないとな』

黒江がテストパイロットに選ばれたのは『軍内でISを最も近くで見てきた』からという単純な理由。
平和利用をするにも開発ノウハウがなければ何も始まらない。軍用が先行して試作されている理由にはISを作り、
その製造・整備・保守のノウハウを得るための技術陣の思惑があったのだ。

『どうして軍はこれの実用化を急いでるんだ?この間も催促されたぞ』
『ベガ星連合軍の事もあるんでしょうね。それに暗黒星団帝国も動きそうですし』
『危機感か……まあ分からんではないけどな』

黒江はISの通信越しに、ISの開発に対する度重なる軍上層部の催促に疑問をもっているようだ。それに箒は答える。
宇宙科学研究所が遭遇したベガ星連合軍と、宇宙科学研究所が匿っていたグレンダイザーとの交戦は軍へ危機感を抱かせるのに十分に働いた。
そしてヤマトが撃破した暗黒星団帝国が復讐戦に打って出てくる可能性は大きい。それを軍の将軍たちは恐れているのだ。

こうして、暗黒星団帝国などへの備えもあって各種新兵器の実用化を急ぐ連邦軍だが、最悪の事態は翌年に現実のものとなってしまう。
それはまさに運命の皮肉としか言いようのない未来であった。

―実験を兼ねて、箒が使っているそれを模したISスーツを纏い、ハイパーセンサーをつけた黒江の姿は新鮮に思えるが、
箒の姉であり、ISの開発者である束がこの実験の光景を見ればぶったまげるだろう。
箒は自分のISがこの世界の技術発展に貢献した事に嬉しさを、
同時に見上げているこの、澄み渡るような、どこまでも青い空は自分たちが勝ち取った平和を象徴しているように思えた。

 

――空は青い。翌年に起こるであろう災厄など全く思わせないほどに……。
彼女らが戦乱に再び駆り出されるのは皮肉にもわずか一年後の事である――

 

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