魔法少女リリカルなのはStrikerS×HELLSING編


 

ティアナとスバルという2人の若手のエースを失った機動六課はその組織力を大きく減じてしまい、
今や隊長陣自ら前線に立つを得なくなっていた。

そして時空管理局が次元犯罪者「ジェイル・スカリエッティ」のアジトを突き止め、
その報を受けた機動六課は残存戦力をつぎ込んでの攻略作戦を実施した。

−だが、彼等はそこで思わぬ蹉跌を余儀なくされる。それは……。

この時代のミッドチルダが最も恐れていた、
旧時代の遺産「聖王のゆりかご」と呼ばれる宇宙戦艦の目覚めは正に絶望的な物だった。
それは管理局の資料で記されていない質量兵器による武装が施されていたためである。
元々管理局の保有する下手な艦船より遥かに強力とされていたが、それがさらに強化されていたのだから。

浮上の際には`目覚めの駄賃`とばかりに管理局の最新最強の艦「XV級大型次元航行船」を数隻ほど血祭りに挙げ、その力を示した。
月明かりの照らす夜にその艦体は国民に恐怖というものを示していた。

「まだ復活したばかりのはずなのに……なんて事だ」

ある局員は浮上する「聖王のゆりかご」が最新鋭艦を容易く屠る光景に思わずこう呟いたという。
その言葉の通り、ゆりかごは誰かの意志のもとにミッドチルダを蹂躙していく。
首都クラナガンへの爆撃に使われたのはかつて、
旧・ドイツ軍が用いた「V1飛行爆弾」や「V2ロケット」のマイナーチェンジ版。
−そう。高町なのはと八神はやてにとっては、
故郷で人類が引き起こした忌ましき`世界大戦`の遺物にして、元凶「ナチス・ドイツ」第3帝国の用いた兵器だったのだ。

ゆりかごの中でほくそ笑む男たちがいた。それはこの世界にはおよそありえない服装。旧ドイツ国防軍の軍服を纏った男たちだった。
彼らは今回の作戦に先立って予め時空管理局内部に送られていた`スパイ`。10年ほどの準備期間を経て、動いたのだ。
この作戦のために。

「全くもって、実に面白い。あのクラナガンがこうもあっさりと堕ちるとは」
「大尉殿、もはや管理局の防衛網は無力です。降下猟兵の投入を許可願います」
「許可する。少尉、キミが指揮を取りたまえ。機動六課に恐怖というものを教えてやれ」
「ハッ!!」

ジェイル・スカリエッティをも手駒として扱う、元ナチスドイツ武装親衛隊将校。彼等は二つの目的のもとに行動していた。

一つは「ミッドチルダを大ドイツのものとするため」、もうひとつは「闘争」。

全ては別次元より中継されたこの演説にあった。一人の肥満体の眼鏡男の奮い立つ演説。

「総員、傾注!!」

ゆりかごに乗り込むすべての人間が整然とその男の演説を聞く。総統代行と呼ばれたその男の名演説。

 

諸君 私は戦争が好きだ 
諸君 私は戦争が好きだ
諸君 私は戦争が大好きだ

殲滅戦が好きだ
電撃戦が好きだ
打撃戦が好きだ
防衛戦が好きだ
包囲戦が好きだ
突破戦が好きだ
退却戦が好きだ
掃討戦が好きだ
撤退戦が好きだ

平原で 街道で
塹壕で 草原で
凍土で 砂漠で
海上で 空中で
泥中で 湿原で

この地上で行われるありとあらゆる戦争行動が大好きだ

戦列をならべた砲兵の一斉発射が轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ
空中高く放り上げられた敵兵が効力射でばらばらになった時など心がおどる

戦車兵の操るティーゲルの88mmが敵戦車を撃破するのが好きだ
悲鳴を上げて燃えさかる戦車から飛び出してきた敵兵をMGでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった

銃剣先をそろえた歩兵の横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きだ
恐慌状態の新兵が既に息絶えた敵兵を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える

敗北主義の逃亡兵達を街灯上に吊るし上げていく様などはもうたまらない
泣き叫ぶ捕虜達が私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げるシュマイザーにばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ

哀れな抵抗者達が雑多な小火器で健気にも立ち上がってきたのを80cm列車砲の4.8t榴爆弾が都市区画ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える

露助の機甲師団に滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死に守るはずだった村々が蹂躙され女子供が犯され殺されていく様はとてもとても悲しいものだ

英米の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ
英米攻撃機に追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ

諸君 私は戦争を地獄の様な戦争を望んでいる
諸君 私に付き従う師団戦友諸君
君達は一体何を望んでいる?

更なる戦争を望むか?
情け容赦のない糞の様な戦争を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な闘争を望むか?」
 
『戦争! 戦争! 戦争!(クリーク!!クリーク!!クリーク!!)』
 
よろしい ならば戦争だ

我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ
だがこの暗い闇の底で永き時を堪え続けてきた我々にただの戦争ではもはや足りない!!

大戦争を!!
一心不乱の大戦争を!!

我らは僅かに`数個師団`数万人に過ぎない敗残兵に過ぎない
だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している
ならば我らは諸君と私で総力100万と1人の軍集団となる

我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう
連中に恐怖の味を思い出させてやる
連中に我々の軍靴の音を思い出させてやる

天と地のはざまには奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる
`数万人`のあらうる化物の戦闘団で
世界を燃やし尽くしてやる

最後の大隊大隊指揮官よりミッドチルダ方面の全部隊へ
目標首都クラナガン上空!!

第二次バルバロッサ作戦 状況を開始せよ 逝くぞ諸君`

『逝くぞ、前線豚共。しっかり付いて来い』

カタパルトで降下する降下猟兵。彼を皮切りにゆりかごからはドイツ第3帝国の降下猟兵が次々と射出され、地上に降下していく。
ドイツ国防軍の最後の制式小銃「StG44」を携え、対戦車装備のパンツァーファウストなども装備した兵士もいる。その様子をレーダーで確認した時空管理局側は狼狽した。

「し、市街上空から質量兵器を持った兵士が多数降下してきます!!」
「この地上本部を直接狙うか……どこの馬鹿だ!?」
「こ、これは……そんなバカな!?ベルカ兵です!!」
「バカな……あの国は滅んだはずだ!?」

このミッドチルダで過去存在した国「ベルカ」。
大昔のベルカという国はドイツ語が使われるなど、地球出身者から、ドイツとの繋がりが指摘され、
ある学説では`戦乱期のベルカの軍組織などは管理外世界のナチス時代のドイツとよく似ていた`と言われていた。
ミッドチルダで管理外世界を知らない人間がドイツ兵をベルカ兵と見間違えるのも無理はなかった。
更に市街地にはW号戦車やX号戦車、Y号戦車というかつての名戦車群が現れ、街を火の海に包み込み、
管理局員、一般市民問わず虐殺していく。中には区間ごと80センチ列車砲「ドーラ」に吹き飛ばされた哀れな街も存在する。

 

−彼等はこの光景を差して、こういった。「かくして役者は全員演壇へと登り、惨劇は幕を上げる。」と。

『諸君、夜が来た

無敵の敗残兵諸君

最古参の新兵諸君

万願成就の夜が来た 戦争の夜へようこそ!! 』と後の世に形容されるミッドチルダの惨劇が幕を開ける。

`化物`と化したかつてのドイツ降下猟兵の精鋭達は統制の取れた行動で管理局の防衛網を無力化していく。

そしてその光景を目にした19歳のなのはとフェイトはこの一言だけ言ったという。

『ここは………地獄だ……』

地獄と呼ぶに相応しい阿鼻叫喚の光景は、
まるで`ミッドチルダ`が地球の大災害で滅んだ街`ポンペイ`や神話の`ソドムとゴモラ`になったと思わせるほどに赤く燃えていた。
ここにクラナガンは吸血鬼などの人外が跳梁跋扈する`死都`に成り果てた。だが、なのはとフェイトから闘志は消えなかった。

「ヴィータちゃん、敵の航空機の機種は!?」
「メッサーシュミット Bf109だ!艦載装備ついてるから珍しいT型だぜ」
「わかった。来たわね……ナチ共!!」
「なのはさん、海のほうに凄く大きな船がいます!!これからフリードで攻撃を……」

更に通信をかけてきたこの時の部下の一人「キャロ・ル・ルシエ」の行動をなのはは慌てて静止する。
艦砲射撃をかけているのはナチ海軍の誇った超弩級戦艦だと目星をつけていたからだ。

「やめろ!!相手は`戦艦`なんだ、お前とフリードでもどうにかできるものじゃあない!!!下がれ、下がるんだ!!」
「は、はいっ!」

なのはにしてはえらく荒い口調だが、それは幼少時代から師らの影響を多大に受けた為。そのため普段の穏やかな
姿を知るキャロは驚いた。とりあえず`飛行機`の追撃を振りきり、なのは達の元へ急いで戻った。

−あの時から恐れていた事が現実になったか……。

隊舎の窓から燃え盛る市街地と上空を我が物顔で飛び回るメッサーシュミットの姿に、
なのはは軍人であった故に恐れていた事が現実になった事に落胆していた。

では、なのはが恐れていた事とは……?それを少し語ろう。

 

 

−新暦72〜3年頃 

戦いが終わった後、記念がわりに私物として、ミッドチルダに`バルキリー`を持ち込んだなのは達。
無論、管理局の規則に触れるので、`自宅`の地下に徹底的な管理で隠匿していた。
彼女のそれは`聖剣`の名を持つ機体であり、かつての戦いの末期において愛機とした代物。

「指紋認証に暗証番号を入力っと」

彼女はミッドチルダに買った自宅の地下に設けた秘密格納庫に定期的に出入りし、バルキリーの手入れを行っていた。
地球での高校生活との兼ね合いもあるので、数ヶ月にいっぺん程度しか整備は行えないが、
`向こう`から精度の高いパーツを回してもらって最高のコンディションを維持している。
前進翼が特徴的な`VF−19S`。11歳の頃の自分の腕ではA型やP型は乗りこなせなかったが、F型から乗り換えてS型となった経緯がある。
`向こう`ではメサイアをも凌ぐ機体−VF−19の血統を継ぐ前進翼機だと言う−が試作段階に入ったと聞く。今度はそれをちょろまかしたいが…。

−戦闘機乗りになって正解だった。これで鳴らした空戦機動で中一の頃は助かったからね。

それは彼女が中学一年の頃、帰還してから間もない時期の事。教導隊に引きぬかれて、訓練で`先輩`達による教導隊の洗礼を受ける。
通常の空戦魔導士と教導隊の者とでは大きな壁があり、入隊したての隊員は少なからず挫折を味わうと有名で、はやてやシグナムなどがそれを心配した程だ。
−だが、結果は彼女が空戦機動で教導隊の猛者を出し抜き、模擬空戦で勝利を飾った。この時の経緯は以下の通り。

−あの時は『あれ?バルキリー乗りしてたせいかな?誘導弾の動きが……見える!?』って驚いたなぁ。
まっ、実際問題、あのミサイルの雨に比べればどうってことなかったけどね。

教導隊の猛者が操る誘導弾は確かに一流のものだ。だが、この時のなのはにとっては決して見きれない程の動きというわけではなかった。
サイコミュで有機的に動く、νガンダムのフィン・ファンネル、
洗練された誘導機能で空や宇宙に華麗な軌道を描く`マイクロミサイル`の雨霰のような攻撃を、体で感じ、見て、
それらが飛び交う戦いの中を生き残った経験は伊達ではない。
わざと引きつけ、当たる直前で意表をつく動きで回避したり、
レイジングハートを使った射撃で撃ち落とす。それらはVF−11や19などのバルキリー乗り達が見れば、
すぐに`セオリー通り`の動きだと分るものだが、彼ら空戦魔道士の定石からは外れていた。
動揺し、対処に一瞬遅れが出る。彼女は直ぐ様そこに漬け込んだ。そしてまだこの時は未完成の域だが、師である穴拭智子の必殺空戦機動「ツバメ返し」を使った。

(すいません、智子中尉。技、借りますっ!)

「うぉぉぉぉあああああっ!」

この時、なのはは自然と雄叫びを上げていた。師への思い、バルキリー乗りであった性質が彼女をそうさせたかも知れない。
腕に握られているレイジングハートが一瞬だけデータベースには載っていない刀剣形態へ変化し、
それを智子から教わった`居合`の要領で横一文字に振るった。
(レイジングハートが未来世界で修理された時に向こう側の科学者たちによって付与された機構などは、
管理局非公式の改造なので、あの時に立ち会った当人達しか知らない)

「……なにっ!?」

教導隊隊長と言えどもこれには虚を突かれた形となり、バリアジャケットの上着の一部が切り裂かれる。この時、彼は不思議に思った。
砲撃用に特化しているはずのレイジングハートが一瞬だけ、
フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官の「バルディッシュ・アサルト」の刀剣形態に似た姿を取ったのだろうかと。

当のなのは本人はあの戦いでの智子の動きの見よう見真似とはいえ、`ツバメ返し`を使えた事に猛烈に感動していて、彼のことを気にかけていなかったが。

(あの動き…思い出したぞ……)

この時のなのはの体験相手の教導隊隊長はこの後すぐに管理局を退職。故郷の世界に戻ったが、
それは彼本来の`職`に戻れる目処がついたからであった。その職とは。

−この時なのはが使った`刀剣形態`の噂は数年後には都市伝説の一つに数えられるようになり、訓練生の間で上がるうわさ話の定番になってしまったとか。

 

 

 

「そんな事もあったなぁ……。ええと、このプラグはここで……」

少しだけ昔を思い出し出しながら、VF−19を整備していく。つい2ヶ月前までは友人や知り合いに任せていたのだが、
管理局には`戦闘機`の類は無く、輸送用の回転翼機があるだけだ。回転翼機しかいじったことのない人間に固定翼機、
それも戦闘機を整備しろと言っても無理がある。やはり自分で覚えないといけないので、向こうにいって覚えた。

−その時、不意にインターホンが鳴り、ひとまず応対にでる。すると、訪ねてきたのは彼女が世話になった人物の一人だった。

「久しぶりだな。お前にとっては2年ぶりか?」
「く、黒江大尉!どうしてミッドチルダに!?」
「いやあ、ジェットストライカーの技術援助への礼を言うためにフェイトのツテを頼ってきたんだが、
アイツがいなくてさ。それでお前ん所に……バルキリーの整備してんだろ?手伝おうか」
「お願いします」
「それじゃお邪魔するぞ」

バルキリーの格納庫に入れるのはなのはのやフェイトの他には、それぞれの師である智子、黒江などの限られた人間だけである。黒江もなのは同様の認証を済ませ、格納庫へ入ってきた。

「精が出るな〜VF−19Sか」
「はい。あの時の奴をそのまま持ってきたんですけど、コンディションは最高にしてます」

この日の黒江は管理局への挨拶のためか、陸軍軍服姿である(昭和18年制式軍服。航空胸章、空中勤務者胸章付き。
階級は大尉のものでなく、`少佐`のそれであり、彼女がジェットストライカーユニット制式化の功で昇進した事を示していた)

「……そうだ。お前あてに穴拭の奴やドラえもん達から手紙を預かってる。後で渡すぞ」
「ありがとうございます。そういえば……昇進されたんですか?」
「ああ。つい一週間ばかり前にな。とはいうもの、なんか落ち着かなくってさ。階級章はここに来るときに大尉から変えたばかりなんだよ」
「確かに昇進の時って落ち着かないですよね」
「だろ?」

黒江は軍服を脱いで、なのはは整備向きの服装で、それぞれバルキリーを整備しながら雑談を楽しむ。話題は自然と向こうの情勢の事になる。

「向こうはどうなんですか?」
「……実はな。また雲行きが怪しくなってきてるんだ。`暗黒星団帝国`ってのが動き出した。
`ヤマト`と`ガミラス`の生き残りがガミラスやイスカンダルに送り込んだ艦隊をやっつけたが、
このまま黙って引き下がるとは思えないと連邦政府は睨んでる。軍も新星インダストリーとかの尻を打っ叩いて新型機の開発を進めてる。
今日はそのテストも兼ねてその新型をストライカーユニットと一緒に持ってきてる」

「それって例の……?」
「ああ。`YF−29 デュランダル`。まだ試作機が数機完成したに過ぎないが、メサイアの`妹`だよ」

−デュランダル。フランスに伝わる`聖剣`の名であり、VF−19の愛称のエクスカリバーが、ブリテン島の正当な統治者の象徴の聖剣なのを考えると、対になっている。
次はさしずめ、ジュワユーズかアロンダイト(いずれも歴史的な名剣の名前である)だろう。
YF−29もついに試作機が完成した段階に進んだらしいが、メサイア以上の高性能など想像もつかない。

「たしかもう一機はいるだろう。後で置かせてもらうぞ」

 

−そういえばアイツはアフリカ戦線で頑張っているな。曰く、この時点でもまだ会ってないらしいから……まだ言わないでおくか。

黒江は1945年を迎えた故郷の世界のアフリカにいる友人であり、
隣にいるなのはの`部下`−この時点からでも2年ほど後の事だが−のティアナ・ランスターの事はまだ胸に閉まっておくことにした。
19歳になれば必然的に知る事だからである。知ったら知ったで後で詰め寄られそうだが、今は……。

ちなみにティアナ・ランスターは激戦地に身をおいたのが効いたのか、1945年現在では、
ネウロイなどを5機撃墜し、扶桑皇国陸軍エースの末席に名を連ねたと連合軍の公式記録に記されている。
黒江は彼女から送られた写真入りの手紙を持っているのだが、その時の写真には同じ釜の飯を食った戦友の加東圭子
(黒江が最初に所属した飛行第1戦隊で、穴拭智子などと共に新人当時にエースだった江藤敏子中佐の配下であった)が隊長を務める「STORM WITCHES」の面々が写っていた。
共に駐留している地球連邦軍の連中が撮ったらしく、1945年時点ではまだ珍しいであろうカラー写真である。
同隊最強のエースのハンナ・ユスティーナ・マルセイユや、巫女装束に小具足を組み合わせた扶桑陸軍では当たり前の戦闘服を着た加東圭子、
稲垣真美の隣にそれらと同じ服装のティアナがいる。彼女が5機撃墜を達成した日に撮られたのだろうか、嬉しそうに微笑んでいる。

(これ、なのはが見たらどう思うかな?……それはそれで面白いが)
「……どうかしましたか?」
「いや、何でもない。ところで、熱核バーストタービンエンジンは元のままか?」
「ええ。でも、潤滑油とかは最高品質の奴を入れてますから一般的な奴よりパワー出ますよ。エネルギー転換装甲も新型に変えてありますし」
「かなりいじくったなぁ」
「元々そういう方面には興味あったんです。それで覚えたんですよ。向こうに整備研修にいったときに、ちょうどいい機会だったから軍令部の知り合いに頼んで、エンジンとかの部品とかは工面してもらいました」
「へえ……お前がねぇ……」

VF−19はその性質上、VF−171よりも数段上の性能を持つ。
バジュラ戦で使われたEX型にしても原型機(VF−171は元はと言えばVF−17の焼き直しに過ぎない。
モビルスーツで言えばジェガンを焼き直しして、ヘビーガンにしたようなもの)の設計を無視し、
VF―19Fのエンジンを載っけただけに過ぎず、エンジンに見合う強度を持っていたとは言いがたい。
扱いやすさを優先した故に多くの犠牲を強いた事への反省からか、2201年では熟練搭乗員への育成が重視され、
それに伴って、高性能を持つエクスカリバーが再度主力機種へ返り咲き、上位機種としてメサイアの配備が進められているのだが、
その辺は黒江が詳しいだろう。

ここで誰もが疑問に思うだろう。なのはが何故バルキリーに独自の改造を施すことができ、潤滑油などの知識を持っていたのか?
それはここにいる`なのは`はある並行世界の自分とは多少異なる性質を持っており、
機械に関する知識に造詣があった。それがパイロットも整備を手伝うことがあるロンド・ベルで生活することで、より専門的な形で培われたのだろう。

「ここまでしてるって事は……、コイツをいざという時には使うつもりか?」
「……嫌な予感がするんです。今の時空管理局は一年戦争やティターンズの暴走を避けられなかった地球連邦政府と同じです。
部隊にいると、一部の人間達が管理局の理念を履き違えて傲慢に振る舞ってるのを時々耳にするんです。
別の世界の国の国宝をかってに`ロストロギア`と認定して強奪に近い形に持ち帰って、
国際問題になったケースもありますから余計に……」
「ティターンズのように反感を作り続けていれば、いずれグリプス戦役のような事が起こるのは確実なのも確かだな。
それに魔法といえど、決して万能ではないのは私もよく知っている」

それは一度は`あがり`を迎え、未来世界への移動と若返りの際にはそれとは無縁な体質へ変わったが、
`戦士`としての力を失っていくという怖さ(これは現在、坂本美緒が非常に恐れている事)をよく知っている黒江だから言える事だ。
なのはも魔道師は決して無敵では無い事を熟知している。
反管理局組織の一部は既に魔法(と言っても本物の魔術と比べれば科学に分類されるが)を阻害・無効化するECMを実用化しているし、
大昔のミッドチルダとベルカの戦乱の遺産との噂があるエクリプスウイルスとそれに伴って起こる「ゼロエフェクト」の存在も明らかになっている。
それらを軍事利用されれば魔道師は戦わずして無力化されてしまう。
確かに普通の機械は使い方を一歩間違えれば広島や長崎、ソロモン、オーストラリアのような多くの犠牲を伴う悲劇を産んでしまう。
だが、正しい事に使えばドラえもんなどのロボットを産み出すことも、歴代仮面ライダーのような者を輩出することもできる。
純粋科学の利点はそこなのだ。
無論、万能と言えるものは存在しない。ドラえもんのひみつ道具でもどこかに欠点は存在するし、
御坂美琴が見せた超能力にしてもスタミナを無視して無限に使えるものではない。
魔法とて、決して万能でもないことはこの時点ではなのはの知り合いの「ヴァイス・グランセニック」が事件の犯人でなく、
人質であった自らの妹を誤射し、結果、片目を失明させてしまった事故が証明している。

「魔法を無効化した上で普通の兵器で攻めこまれたら間違いなく管理局は制圧されます。その時の対抗手段として`エクスカリバー`をとってあるんです」
「それが的中しなければいいが……」
「私もそう思ってます。聖剣は突き刺さったままにしておきたいですから」

それはあの世界で戦乱を経験し、生き残った軍人としての危惧だった。
だが、彼女の願いも虚しく、この年より僅か2年で破綻が訪れてしまう。
皮肉にも突き刺さった聖剣を引きぬく時こそが、ミッドチルダの火急存亡の時だったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

−ミッドチルダはナチス残党軍の前に電撃的に
制圧されていった。
ドイツ国防軍は対魔法処理を念入りに施されたStG44などの兵器の火力で管理局陸士部隊を押し返していった。
艦砲射撃と併せた効果は絶大で、精強な管理局も次第に兵力を減じていった。
事実上の地上本部総司令たる「レジアス・ゲイズ」は恐れていた事態が現実となったことに歯噛みして悔しがった。
8年ほど前から管理局が進めていた「質量兵器使用解禁」
(これはかつてなのはらが`あの世界`で見てきた事を帰還後に報告した事、
さらにストライクウィッチーズの存在が明らかになった等の背景により、
極限のカルチャーショックを受けた彼らの派閥が推し進めた事項)が魔法至上主義者の妨害で、まだ携帯火器(拳銃レベル)に留まっている事は残念な事実だ。

「……彼等は分かっているのか?自らの怠慢や奢りが今日の腐敗を招いた事を」

燃え盛る地上本部の執務室で彼はいつの間にか魔法の強大な力に溺れ、一部で傲慢な支配を敷くようになった時空管理局の現状を嘆いた。
黒い噂が絶えなかった彼だが、ミッドチルダを守りたかったという`少年期`の頃からの気持ちはこれっぽっちも変わっていなかった。
史実ではジェイル・スカリエッティの放った`刺客`たるナンバーズに`暗殺`されたレジアスだったが、
この世界ではその努力に見合うだけの最期は迎えられていた。

「閣下、早く脱出を!!」
「いや、君は行き給え」

脱出を促す局員にレジアスは首を横に振った。彼は`自らはそれ相応の報いは受けるべき人間`との遺言が描かれた手紙を託し、
かつて`地球`の有名な軍人であったダグラス・マッカーサー元帥の名言「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」との言葉を残して
若者たちに後を託すように炎の中に消えていった。

 

−そして、いたずらに戦死者と俗に言うゾンビの概念に近い`グール`を増やすだけの戦闘が続くことを危惧するなのは。
あの世界での戦いを経て、軍人として、人間として、一人前に成長した彼女は帰還後、
戦死扱いだったため二階級特進で一尉に昇進。今では`管理局の英雄`とも謳われるほどの名声を得ている。
彼女はフェイトと共に部下の救出をするべく、一つの秘策を使おうとしていた。
飛行魔法が敵の魔法妨害のために使用不能になった状況で頼れるものはかつて使った`鋼の翼`。

 

なのは達は急いで自宅に戻り、地下の格納庫の電源を入れる。そこには、先についていたのか、はやての姿もあった。

 

そこには明らかに管理局の規則に違反するモノが秘匿されていた。それは二機の戦闘機だった。
一機は前進翼を有し、もう一機は一見するとかつての「F−22`ラプター`」にも見た印象を受ける機体。
機体には`地球連邦宇宙軍`の所属であることを示す`U.N.T. SPACY`、のマーキングと2人の指揮する分隊のパーソナルマークが描かれていた。

「2人とも、バルキリーを隠してたんなら、なんで私に教えてくれなかったん?私が何とでも誤魔化ししたんやけど」
「にゃはは、ごめんね。まさかはやてちゃんもあの世界に行ってたなんて知らなかったんだ……」

感心しながらも半ば諦めの交じる声を出すのは八神はやて。彼女はなのは達の`私物`がとんでもない代物なのに初めて気づき、ため息すらついている。
それもそのはず。隠されていたのは`バルキリー`との愛称で知られる、あの世界で広く普及している超兵器。それもただのバルキリーではない。
はやてが以前、出身世界のアニメで見たVF−1 バルキリーやVF−4ライトニングVなどとは次元の異なる性能を有すると言われる、
「AVF計画」の産物である高性能機「VF−19 エクスカリバー」(技能との兼ね合いで形式はF型仕様の指揮官機のS型)と「VF−22 シュトゥルムフォーゲルU」だ。
あの世界でもそんなに普及していないAVFをどうやってちょろまかしたのか?

「2人ともこんな大層なモン良く隠してたもんやね……。しかもAVFのエクスカリバーとシュトゥルムフォーゲルU!!
ここまでくると凄いとしか言いようがないわ……私、自信なくなってきた……」
「あはは……元はあの世界で宇宙空間の戦闘の時に使ってたんだ。せっかくだから、帰るときに山南提督に頼み込んで私たちに回してもらったの」
「そうそう。提督、相当困ってたけど、どうにか許してもらってね」
「完全装備な上にファストパックやフォールドブースター込みで?どうやって整備とかしてたんや?」
「しばらくはロングアーチのみんなに任せてたんだけど、手に余るって言われちゃってね。向こうに行って整備の研修受けたんだ。
向こうじゃ1年くらいしか経っていなかったから驚いたけど。数ヶ月ビッシリ抗議受けて、VF−11Cを弄って覚えたんだ」
「そ、そうなん……」
「そういう事。さあ行くよフェイトちゃん」
「うん!」

2人はバリアジャケットではなく、連邦軍の次世代可変戦闘機で普及しつつある「EX-ギア」を着ている。
できるだけ魔力は温存して置きたいのだろう。因みになのはは白亜に塗装されたエクスカリバーに、
フェイトは黒を基調に金のラインが入る塗装のシュトゥルムフォーゲルに乗り込む。
すでに機体にはファストパックは装備済みだ。エレベータで機体が滑走路代わりの道路まで運ばれる。

「二人とも、バルキリーでの実戦は久々だからあんまり無茶しないでくださいよ」

六課の中で秘匿物資の事情を知っているルキノ・リリエから通信が入る。なのはとフェイトは「了解」と心地良く応える。
久しぶりの「兵器による空戦」。この高揚感は変わらない。今は火急存亡の時だが、子供の頃はこれが日常であった。それだけの事だ。

なのは達はナチから仲間を救出し、安全圏まで脱出させるために、
このミッドチルダで禁忌とされた「質量兵器」を使った。

−懲罰なら後でいくらでも受けよう。−だが、仲間を助けられなかった事を後悔したくは無い。そして今は自分が正しいと思ったことをするだけだ。

機体にそれぞれ搭載される熱核バーストタービンエンジン「FF2550J」と「FF-2450B」が唸りを上げる。
そして二人はスロットル全開でアフターバーナーをかけて機体を離陸させる。ミッドチルダの闇の空に舞い上がる`鋼の銀翼`。
それはナチスが聖王の揺りかごの技術を解析し、創り上げた(これは改造人間や吸血鬼を作り出せる彼等の超技術が成せる技。
これにより時空管理局は空戦魔導師での迎撃が不可能となり、制空権を維持出来なかった。)対飛行魔法用のECMが創りだした結果であり、状況であった。
時空管理局にとっては皮肉にも自らが禁じた質量兵器の存在意義を見直すきっかけとなる出来事であった。

 

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